味方からも敵からもヤベー奴扱いされた指揮官達のいるドルフロ   作:ホワイトアクア

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苦戦したァ!過去話考えるだけでどんだけ時間掛かってんだよって話……まだまだ書く分とかはあるのにね。
どうでも良いけど、モンハンやりたい……ポータブル世代でも良いからやってみるのも手かなぁ……プレステ3とか4とかも無いし。

次回はちょっと遅れる。最大の原因は言うまでもなく台風で仕事が増えたから……(白目)


紅の混沌 下 トンプソン「やっぱり妹は最高だぜ!」エル「同士よ」

「到着っと……さて、アイツ等は何処に避難してるのかな?」

 

 後々合流するトンプソン達よりも先に基地へと辿り着いたグレイと鷹山。着いたとしても、ここは既に敵地のド真ん中。迂闊な行動は出来るだけ裂けて合流するのがベストだろう。だが、そんな悠長な事をやってる暇なんて無かった。

 何処から行こうかと悩んだ瞬間、鷹山が何か見つけたかのかそれに近付いて確認を取る。それはまだ完全に破壊されていなかった車で、ご丁寧にも車のキーが付いたままの状態になっていた。

 

「あ、この車まだ使えるわ。ほれ、グレイ。乗れ」

「……嫌な予感しかしないんだけど、その車で何するんだ……?」

「ちょっと試運転でシティトライアルして来るわ」

「ちょ、止めろオオオオオォォォォォ!!」

 

 グレイが叫ぶがもう遅かった。エンジンを起動させ、ハンドルを握る。次第に車のスピードも上がり、何故だか車のパラメータが全て上がった気がした。

 よりにもよって、そこ等に置いてあった車を見てピンと思いついたのが運の尽き。彼の運転はまるでピタッとすぐに止まるアレと同じ操作方法で動かしていた。

 近くに居た鉄血兵は鷹山が動かした車の音に気付き、その車さえも鉄血兵の居る方向へと近付きつつあった。

 

「おい、何の音だ?」

「車の様な音が聞こえるが……ん!?おい、あれに人間が乗ってるぞ!」

「人間がここに迷い込んだというのか、馬鹿な奴め。構わん、殺してしまえ!例えグリフィンの奴等が乗っていたとしても纏めて爆破しろ!」

 

 人間だと分かった瞬間に迎え撃つ鉄血兵。だが、変則的で変態的な動きをしている車相手には流石に「!?」と言わざるを得なかったという。

 たった少しの坂でも一気にフワーッ!と浮き上がり、物凄いスピンで鉄血兵を轢き飛ばし、何故か上下にフワフワと浮きながらも轢いた時にはガガガガガッ!!という有り得ない音を出していた。ちなみに轢かれた鉄血兵はこれでもまだ生きてるレベルで留まっているという。

 

「や、やめ……酔う……うッ……!オロロロロロッ!!」

 

 耐え切れなかったのか、窓を開けて外に向けてゲロを吐いたグレイ。そのゲロもスピンしながら周りに飛ばす状況は他から見れば「これは酷い」と言ってもおかしく無い。

 そりゃコマみたいに車がスピンしながら走行するというのは一緒に居た人からすれば驚きと迷惑のダブルセットになるだろう。鷹山はそれでもまだ足りないのか、キュッといきなり車をストップさせた。

 

「と、止まった……!?今だ!ありったけの弾を―――」

「プラズマァ!!」

 

 そう叫んだ瞬間に鷹山の身体から電撃がバチバチと放ち、バシュッ!バシュッ!と何かを発射していた。見れば、電撃の弾らしきモノが散弾しながら地面を這いずり回っていた。

 直撃した鉄血兵は痺れながらぶっ飛ぶという光景がループして続き、大幅な戦力ダウンを強いられていた。このままではマズいと急遽応援を呼んだ鉄血兵。運が良かったのかそれとも悪いとも言えたのか、ドリーマーやアーキテクト、装甲機会や装甲人形と言った面々がゾロゾロと大量に現れたのだ。

 

「さっきから騒がしいと思ったら、随分と面白いモノを見せてくれるじゃない。もしかしなくても、噂で囁かれている戦う指揮官サマ達かしら?」

「アレ殺っちゃって良いの?全然動いて無さげだけど」

「余程腕に自信があるって感じだけど……死角からの攻撃は当然防げないでしょうね。やっちゃいなさい」

 

 待ってました!と喜ぶアーキテクト。そして、鷹山の操縦している車に向けてバスーカを放った。愚かな人間は爆破して焼かれるのがお似合いだと嘲笑うドリーマー。だが、ドリーマーはこの時彼等の実力を見誤っていた。

 寸前まで来た瞬間、一気に急加速してはアーキテクトのバスーカを避け、更にはマンティゴアやニーマムとかを軽々と轢き飛ばした。

 

「「……は?」」

 

 これには2人もビックリ。しかも、何か駆け抜ける音が後ろから聞こえ、振り返った時には鷹山の運転している車が直前までに迫っていて、理解した時には「\(^o^)/」と諦めながら空を飛んだ。

 ちなみに、グレイは鷹山の運転に耐え切れなかったのか、終始白目を向きながら少しの間気絶していたという。

 

 

 

 

 

「ここか……」

 

 鷹山達が派手に暴れてから数分後、ようやく合流したエル達。エル達の方では派遣部隊と合流する為、最後に通信した場所に向かって走っていた。向かった先はボロボロとなっている廃墟。この場所から通信した記録が残されている。 

 何処かに居ないか部屋の1つ1つを確認し、居なかった場合は上へと登って行った。すると―――

 

「指揮官!」

 

 エルの姿が見えたのか、パタパタと駆けつけてはギュッと抱き締める戦術人形。こんな状況でも変わらないなとエルは若干溜め息をついた。

 

「9A-91……抱きつくより報告すべき内容があるだろ?」

「あ!そうでした!」

 

 慌てながらもキリッと表情を正すのは9A-91。彼女は今の現状を簡単に説明し、メンバーの怪我の具合とかも細かく伝えた。

 

「9A-91とWA2000、トカレフは中傷。重傷はDSR-30とTMPにM590……こりゃ派手にやられたな」

「すみません、指揮官……こんな姿になってしまって……」

「喋るな、傷口が開く。とにかく簡単な応急処置するから待ってろ。弾薬もそれなりに持って来た」

「俺も手伝おう。少なからず、お前の処置をこれまで見たし、相手にもなったからな」

「助かる……まずは傷口を消毒するぞ」

 

 救急道具を使い、戦術人形の傷を治し始める2人。特にエルは随分と慣れているのか、包帯の巻き方や手順など1つも間違えずに出来た事に彼女達は驚いていたという。

 その上、DSR-30からの誘惑な言葉を言われても「病人は黙ってろ」の一喝でしょんぼりしていたという。ある程度治療させた後は少し彼女達を安静に休ませ、敵が来ないか見張っていた。もっとも、グレイと鷹山のお陰で多分こっちに来るのはあんまり有り得ないかもしれないが。

 

「スゲーなボス……まさかアンタがそういう知識に詳しかったとは思わなかったよ」

「ちょっとした経験があったからな。この手の作業は慣れている」

「指揮官、ありがとうございます。後少し遅れていたら私達の部隊は壊滅していたと思います……」

「いや、お前達が無事だったならそれで良い。もう二度と俺の前から消えないでくれトカレフ……」

「はい……」

「………」

 

 まるで恋人みたいなそんな雰囲気を出していた。本当ならばお熱いねー、ヒューヒューとからかうつもりだったが、トンプソンはそんな気すら起きなかった。

 逆に引っ掛かっていた疑問に関して、もしかして……と思う部分があったのかトンプソンは思い切ってエルに話し掛けた。

 

「なあ、ボス……少し聞いて良いか?」

「何だ」

「さっき言ってた「お兄ちゃん」って何だったのか分からなかったけど……もしかして、お前とトカレフってそういう仲だったのか……?」

「……言ってしまえばそうかもしれないが、半分は間違ってる」

 

 どういう事だ?と頭を悩ますトンプソン。ただ、トカレフとエルは何か決意したかの様に互いを見合わせた後、再びトンプソンの方へと向いた。

 そして、最初にトカレフがトンプソンの疑問について答え始める。

 

「私……元々は人間だったんです」

「は……?人間?お前が?」

「戦術人形「トカレフ」としてなる前、私はエル指揮官……エルゼラ・クロウバックの妹として生きていました。妹と言っても、血は繋がっていないのですが」

 

 あまりにも唐突な言葉にトンプソンは唖然となった。彼とトカレフが家族関係だったとは思わなかったのだから。ただ、仮にも彼女が人間だったとするのなら、何故戦術人形としてここに居るのか気になった。

 

「信じられないかもしれませんが、私はそうして生きていましたし、何よりもエル指揮官ともう1人居る指揮官……ドクターが私の事を一番良く知っています」

「ちょ、待て!アイツも!?人間が戦術人形の真似事なんてしてるって言うのかよ……?いや、だとしても何でそんな……お前、一体何者なんだ……?」

「……何度も言いますが、私は元々人間です。その人間だった私がどうして戦術人形となったのか……そろそろ言わなければいけませんね」

 

 そして彼女は語った。かつて人間だった頃の話を。

 

 

 

 

 

 かなり昔だった頃のエルは親がおらず、孤児院で育てられた。彼は孤児院の中では一番のしっかり者で、食事や教える事など彼が全てやっていた。ただ常に彼一人だけやってる訳では無く、孤児院を経営している大人とかも彼と一緒にやっていた。時折、子供達の誰かが病気になった場合はエルではなく、彼がやっていた。

 

『どうだ……?』

『……風邪だな。暫く安静していれば大丈夫だろう』

『そうか……助かったよ、ケンジ』

 

 三和葉健志(みとば けんじ)……それが彼の名前。エルや他の仲間達がドクターと呼んでる彼の名前がそれだった。健志はある病院の一人息子で、将来は継ぐ予定でもあった。しかし、まだまだ勉強不足な所もあり、彼は精々孤児院で子供の病気の治療とかを担当する役割をする羽目になっていた。少しでも慣れておく必要がある為に。

 親友でもあり、互いに困った場合は助け合う仲同士ずっとこの日が続いていたが、ある日にエルが少しだけ外に歩いていた時にそれは見つけた。

 

『ん……?』

 

 ふと、誰かが居る気配を感じて視線を向けるエル。そこには一人の少女が見上げながら空をずっと見ている姿があった。何処か儚さがありながらも雪の様に綺麗な姿はエルの視線を釘付けにするのも容易だった。そんな彼の視線に気付いた少女は彼の方へと振り向いた。

 

『あ……』

『や、やあ……君、一人だけ……?』

 

 エルの存在に気付いた少女は驚きはしたものの、逃げる様子も無ければ警戒して怪しむ様子も無かった。ただじっとエルを見つめたまま互いに立ち尽くしたままで。これでは会話も続かないので参ったなと困った瞬間、少女の方から喋り始めた。

 

『……私……誰も居ないの……友達も……お父さんもお母さんも……』

『え……?じゃあ、君はずっと一人で……?』

 

 そう言い返すと、コクリと頷く少女。この子もまたエルと同じく一人で生きて来たんだとエルは思った。そう思った時、尚更彼女を一人にさせたくないとエルは決意した。

 

『あのさ……だったら、俺と友達にならないか?』

『え……?』

『あ、ごめん!唐突過ぎたよね……でも、何か寂しそうだったし……色々と放っておけなくってさ……君で良いなら友達だけじゃなく、家族として迎え入れたいけど、どうかな……?』

 

 孤児院に身分も年齢も関係無く、迎え入れれば友達として家族として共に過ごす事を余儀なくされるが、互いに協力して生きていられる。一人で寂しく過ごすより、一人でも多く一緒に過ごせるならそれで良い、とエルはそれだけを理由に生きてきた。彼女もまた救えるならば救いたいと。エルの強い願いが伝わったのか―――

 

『うん……!』

『そうか、良かった……ちなみに名前は?』

『名前……分からない……』

『うげっ……名無しで今まで生きていたのか……名前どうしようか……』

 

 何か良い名前が無いか、頭の中で探し続けるエル。白くて綺麗な彼女に相応しい位の名前にしようと奮闘した結果、ある1つの名前が思い付いた。

 

『カトレア……そうだ!カトレアだ!それが良い!』

『カトレア……?それが私の名前……?』

『うん。元々は紫色の花なんだけど、白いカトレアも存在してるんだ。だから、ピッタリだったかなって思ってたけど……どうかな?』

『ううん……凄く良い名前……ありがとう、お兄ちゃん……』

『ぐほっ!?』

『お兄ちゃん!?』

 

 そんな可愛らしい無垢な笑顔でお兄ちゃん呼びされたら誰もが耐えられないだろう。エルは思わず鼻血を垂らす程大きなダメージを受けたが、喜びという意味での方が大きかった。こうして、カトレア・クロウバックはエルゼラ・クロウバックと共に孤児院を過ごし、足りない知識をエルから補い、カトレアは更に綺麗になって成長していった。ケンジとも知り合い、友達が増えた事にも喜んでいた彼女とエルだったが、その幸せも長くは続かなかった。

 

 

 

 

 

 最悪の事態が訪れたのは突然の事だった。カトレアは何時も通りエルの手伝いをしていたのだが、不意に咳き込んでしまった。最初は喉の痛み程度な位だったので、風邪か何かだと勘違いしていたらしく、風邪薬を飲んで早めに寝たりしていた。しかし、一向に治まる気配は無く、悪化していく一方だった。身体の倦怠感や足取りが上手く取れなかったりと……更にはその影響で咳き込んだ際に血まで一緒に飛び散ってしまう事があり、エルもこれには異常だと感じたらしく、急いでケンジの所へと向かった。

 診断の結果、病名は不明。ケンジの家族も最善を尽くしてありとあらゆる方法で診断したが、結果は変わらず。何が原因なのかハッキリと分からないまま、カトレアは病院生活を強いられた。幸い、コーラップスによる汚染ではなかったものの、それでも原因不明の病にはケンジ達にも相当参っていたという。

 

『すまない……俺が医者としての知識があったなら……!』

『お前が責める事は無い。俺とてこの事態を把握出来なかった事にも問題がある。今はただ見守りながら祈るしか無いが……それでも自分が出来る事があるなら協力させて欲しい』

『エル……本当にすまない……』

 

 どんなに診断しても解明されない病……最悪、不治の病と診られる可能性も高かった。カトレアの咳とかを通して感染するタイプでなかったのが救いだが、それでも現状が重苦しいのは変わらない。

 二人は急いで病気を治す為の研究を続けた。素材を探し、調合と投与による経過を調べたが、それでも容態は変わらないまま。月日が過ぎて行く毎にカトレアも日に日に弱ってしまってしまい、ついには動けぬ身体となってしまった。

 

『兄さん……』

『カトレア……ごめんな……お前の為に頑張ったが、何にも出来ないままで……本当にダメな兄で悪かった……』

『謝らないで兄さん……私は兄さんやケンジさんと一緒に過ごせたならそれで楽しかったから……』

『カトレア……』

『それに……きっと私はこうなる運命だったんだって……何となくだけど、自覚はしていたから……それでも……兄さんと過ごせて本当に私は幸せだよ……』

 

 これが最期になるのかもしれないと悟ったカトレア。それでも彼女は笑顔を絶やさずエルやケンジに向けた。その無垢な笑顔が二人の心を突いたのか、ギュッと抱き締めながら涙を流した。己の弱さか、それとも一人の少女との別れなのか……どちらにせよ、二人は泣き続け、カトレアも笑顔を見せながらも涙を流していた。

 彼女も本当はきっと生きていたかったのだろう。だけど、頑張ってくれてるエルやケンジに迷惑を掛ける訳にもいかず、彼女はずっと奥底で死の恐怖や別れの辛さ等をずっと胸の奥底に仕舞いながらも笑顔を振る舞っていたのだろう。

 

『そうだ……どうせなら音楽を聞かせてあげるよ』

『音楽……?お前、何か弾けたのか?』

『ピアノとかをちょっとね。俺、本当は医者じゃなくて音楽を目指したかったんだ。医学なんて難しい内容なんてやってられるかって思ってた時、ずっとそっちでめり込んだのを覚えてる。だけど……今回の事を通して、命を救う事が一番大事な役目なのに、それを逃げてばかりでいたんじゃ人として最低だと考える様になっちゃって。だから、もう一度医者を頑張ろうと決めたんだ』

 

 医者になったら、きっとカトレアみたいに命が消えるまでの最期までを見届けなくてはいけない。それは自分にとっても辛い光景かもしれないが、その人が良い人生だったと後悔しない為にも自分なりの努力を突き通したい。どうにかして後悔を残さない為にケンジはある方法を閃く。かつて自分が続けていた音楽を最期に聴かせる……言うならばレクイエムの様なものだった。

 ケンジの演奏が聞きたいとカトレアはお願いし、それに応える様にケンジは車椅子を用意してからピアノがある場所まで移動した。殆ど誰も居ないその場所でエルはそこで近くの椅子に座り、カトレアもケンジの演奏を待っていた。静かな病院でケンジがピアノ前の椅子に座り、演奏を始める。綺麗な音色が病院内に響き渡り、二人は終止ケンジの演奏を聞いていた。まだプロというレベルではないが、ミスの1つも無くスムーズに演奏している姿はまるで医者ではなく奏者に近かった。

 ケンジはずっと弾き続けた。何分、何時間、何日も。カトレアが後悔を残さない為に彼はピアノを弾いた。それでも、彼の心の中にはカトレアと過ごした楽しかった気持ちや何時しか別れるという辛い気持ちもあり、混ざった気持ちが溢れながらも一心不乱に演奏を続けた。ケンジの演奏にカトレアは笑顔で拍手して―――

 

『綺麗で素晴らしい演奏でした。ありがとう、ケンジさん』

 

 と、答えてくれた。それが彼にとっての救いだったのか、また彼の目から涙が溢れては泣いてしまっていた。

 

 暫くして、カトレアは最期まで笑顔を見せながらこの世を去った。

 

 

 

 

 

 カトレアという少女はこの世から居なくなったが、彼女の遺体はまだケンジの病院で残されている。人体冷凍保存という方法があり、少なくとも再びこの病気が広まらない様にし、未来の技術で研究や解明を託す事にしていた。

 だが、それはあくまでも建前。本音としては、あれほど美しいカトレアを焼いて無くすなど出来ず、寧ろまだ自分達が勉強不足なだけで本当ならば救える技術や方法があったのではないかと、少しでも思っていたとの事だった。けれども、それを実現するにはまだ力不足というのが分かっている。そうだったとしても、このまま止まっては居られなかった。

 

『エル……俺、どんな病気も治せる様な立派な医者になりたい。だけど、今の知識だけじゃ駄目だ。世界を廻って、様々な治療技術や研究を学んで、人の為に役立てたい。それにはエルの力も必要だ。協力してくれないか?』

『こっちこそ願ったり叶ったりだ。俺にはお前の様に治す力も無ければ、誰かを守る力も無かった。唯一の妹を守れなかったのは今でも後悔しているが、それでもお前が人の為に守りたいというのなら、俺はお前を守る為に力を求めてやる。世界を廻る道中で襲われたりなんかしたら元も子も無いからな』

『ありがとう……やっぱりお前とカトレアは良い家族だよ……!』

 

 そうして二人は旅に出た。1つでも病に関する知識を得る為に。一人でも多くの命を救う為に。そして、2度と大切な誰かを失わせない為にも。

 

「これが俺とケンジとのこれまでの経緯だ。随分と長い時間を経てしまったが、もうあの時の俺達とは違う。誰かを守れる様になったし、救える様に努力を尽くした結果、多くの子供の命や患者を救う事が出来た。こうしてグリフィンに所属している身だが、今の仕事も悪くないと思ってる」

「そうだったのか……ん?ちょっと待ってくれよ。だったら、ボスの銃って結局何処で入手したんだ?それに、死んだ妹が何で戦術人形なんかになってんだ?」

「順番に答えるよ。エルの銃は道中で見つけた物だったんだ。箱の中に入ってたんだけど、中身を覗いたらまだ誰も手付かずだったのか綺麗なままで保ってたんだ。でも、トリガーが弾けなかった」

「トリガーが弾けない?そりゃ何でだ?」

「あの銃は魔銃だったんだ。意志を宿した銃……持ち主の意志の力によって守る力にも破壊にも成り得る禁断の兵器……触れた途端、何故だか知らないが、自分に相応しい契約者が現れたとか言っていたが」

 

 魔銃と呼ばれたデスペナルティの意志はエルにこう語ったという。「お前が望むモノは何か」と。その問いにエルは「過ぎた力も全てを破壊する力も要らない。俺には誰かを守れる力さえあれば十分だ」と答えを返した。

 

「そしたら、そいつはフッと軽く笑ったんだよ。バカにしてるのかと思ったら、「前の主と同じ様に、お前も誰かの為に戦っているんだな」と言われたんだよ。気まぐれだったのか何だか分からないけど、とにかくエルと同じ親近感が沸いたんだって」

「そうか……って、銃って喋れるのかよ……」

「もっとも、俺もまさかそんな所で出くわすとは思いもしなかったからな……まさかとは思ってたけど、改めて振り返れば現実なんだよな……」

 

 一体何の事だ?と疑問を感じているトンプソンだったが、エルとケンジからすればその出所については心当たりがあった為、実物を見るのは初めてだったという。

 

「それと、カトレアについて言わせて貰うけど……グリフィンに就職してから鷹山が結婚したって報告を受けてな。結婚祝いも含めて飲み会をしようと誘ったんだ。AR小隊達はどんな感じだったとか色々聞いた際に、鷹山の口からある情報を得たんだよね……」

「情報?」

「聞いた話だと、M4A1の頭には生前、人間の少女だった頃の脳が入っていたらしく、今でも動いているとの話だ。そして、人間の脳を使った戦術人形を担当したペルシカ……それを聞いた時、俺とケンジは思い付いたんだ。カトレアの脳を戦術人形に入れようと……」

「………!」

 

 以前、鷹山が結婚したという報告をペルシカに告げた際に、ペルシカから伝えられたM4の秘密を代わりに聞かされた事があった。その内容の通り、M4の頭部には人間の脳が入っておりながらも戦術人形として生きていて、彼女なりの苦しい人生を歩んでいた。しかし、鷹山はそれを受け入れる他、逆に自分の方が気持ち悪くないか?と問い返した程。自分達ですら異常というのは分かっていたからこそ、付き合っても苦労するんじゃないかと悩んだが、結局M4達もそんな事は無いと否定してくれたらしく、良かったと彼は笑っていたという。

 

「飲み会が終わった後、俺とエルは急いでペルシカさんの所に訪れては全てを話した上でカトレアを蘇生させて欲しいと頼んだんだ。例え偽りの記憶だの戦術人形として変えてしまったとしても、もう一度あの日みたいに笑って過ごしたかったんだ……」

「………」

「こんな人道の反する行為、気持ち悪いと思ってるだろう?それでも俺達は何言われようが構わない。もう二度と彼女を失いたくないから……」

「……いや、そう思わないよボス。二人ともずっと辛い思いを味わったんだろ?だったら、私がとやかく言うのは御門違いだ。ずっと暗いままのボスなんて見ていらねねぇしな」

「ありがとう、トンプソン……」

 

 気にすんなって、と笑いながらエルの頭をグシグシと撫でるトンプソン。彼女もまた仲間想いな部分があるので、エルの気持ちは良く分かっていた。

 

「ペルシカには本当に申し訳無い事をした。彼女にもまた重荷を背負わせてしまったものだから、これは俺達がその責任を負わないとな」

「そうだな。良くても何か奢る事しか出来ないけど、少しでも満足出来れば俺としてもありがたいな」

「それでこそ私のボスだな!それで話は変わるけど、作戦は良いのか?」

「「「あ……」」」

「おいおい……しっかりしてくれよ」

 

 つい昔の長話をしてしまった性なのか、鉄血の基地を攻める内容をすっかり忘れていた。随分と遅れた分、ここから巻き返そうとエルは姿を変えた。かつて世界を救った紅い混沌と同じ姿に。

 

「捕まれ。手を離したら死ぬぞ」

「あいよ」

 

 そろそろ動こうとケンジの手を繋ぐエルだったが、「待って、兄さん」とトカレフから少し止められる。

 

「どうした?」

「……行ってらっしゃい、兄さん。ケンジさん」

「うん、行って来るよ」

「必ず戻って来る」

 

 それだけを伝え、エルは基地に向かって飛び去った。後に敵味方から紅の混沌と白衣の殺人鬼と呼ばれる様になった。

 

 

 

 

 

 トカレフ達が遭遇した基地を壊滅させた後、数日後に拷問室で聞いた基地もまた壊滅任務という形で赴き、数多くの鉄血兵を捕まえた後、お決まりの電撃マッサージを受けて正気に戻すという方法を繰り返し、かなり多くの味方をつけたエル達。一応、上層部にも報告はしたものの、不満やら反論やら多くの人物がいたものの、少しぶちギレしてから黙らせたとの事だった。とは言え、鉄血の罪は確かに数え切れない程多くの人を殺したという理由もあり、今後、彼女達の処遇をどうするかはまだ判断には悩めるとの事らしく、一旦はグリフィンで預かる事となった。そして、今は処理に追われる毎日を送っている。

 

「指揮官、書類纏めました」

「ご苦労。次はこの書類なんだが……」

「ボス、派遣部隊のメンバーが帰って来たみたいだぜ」

「傷があった場合はすぐに癒す様にしておけ。少しの間は休ませる」

 

 鉄血の基地を破壊したからか、忙しさもまた段違いになっていた。ある程度終わらせ、一旦休憩に入ろうとトカレフがコーヒーを持って来てくれていた。

 

「お疲れ様です。どうぞ」

「ヘヘッ、悪いな」

「すまない」

 

 三人でゆっくりとコーヒーを飲む。絶妙な静けさがまた独特な雰囲気の良さを引き出してくれる。飲んでいる最中、ふとトンプソンはトカレフに少しだけ疑問をぶつけた。

 

「なあ、お前ってボス……エルの事を兄さんって呼ばないのか?」

「えっ……!?い、いきなり何を言い出すんですか……!というか、トンプソンさん今エルって……」

「あー、その、何だ。全部引っ括めてボスって呼ぶのって何だかなと思ってな。折角名前あるんだし、せめて呼んだ方が苦労しねぇからな。で、肝心のお前はどうなんだよ?んー?」

 

 この、この、とツンツンと指でトカレフの頬をつつくトンプソン。トカレフもといカトレアはちょっと恥ずかしそうにしながら正直に答えた。

 

「や、やっぱり立場上で私情を挟む訳にも行きませんし……それに、私はまだ生きてるんだって実感してるし、今度は私が兄さんを守ろうと決めたんです」

「生きてる、ね……」

「私は死んだ筈だったのに、暗闇から私を呼ぶ声がしたんです。目を覚ました時、二人は大きくなっていて、私は戦術人形として変わり果てていた……確かにショックでしたが、それでもまたこうして一緒に居られるんだって思ったら嬉しくて……だから、私は後悔していません」

 

 この子は天使かよ、とトンプソンが心の中で悶絶する。彼女の笑顔がとてつもなく純粋な位ヤバかったので、マフィアとか目指そうとしているトンプソンからすれば効果抜群のダメージを受けていた。ついでにちょっとした事も思い付く。

 

「なあ、それで私の事をお姉ちゃんって呼んでみてくれよ。無理なら姉さんって呼んでも良いから!」

「お、お姉ちゃんって……」

「エルから少し聞いたぞー。何でも小っちゃい頃はエルの事をお兄ちゃんって呼んでいたらしいけどなー?そんでもって、お兄ちゃんのお嫁さんになるーとか言ってたけど」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!どうして私の黒歴史を暴露しちゃうの兄さん!」

「すまない、ついうっかり……」

「ほらほら、バラされたくなかったら正直に従いなよー。言ってくれたらこの事は黙っておいてやるからよ」

「うぅ……一回だけですよ……?」

 

 ちょっと涙目な部分が可愛いと二人が思いながらも、コホンと咳払いした後、カトレアはトンプソンに向けて呟いた。

 

「トンプソンお姉ちゃん……大好き……♡」

 

 ハンドガンで撃たれた位の衝撃だったのか、彼女のハートにクリティカルヒットし、ブホッ!と吐血するトンプソン。血を垂らした彼女を見たカトレアは慌てるが、トンプソンに至っては満足そうな顔を浮かべていた。

 

「妹って、最高だな……」

「ようこそ、こっちの世界へ」

「バカやってないでさっさと仕事をして下さぁぁぁぁぁい!!!!」

 

 今日もグリフィンは平和な一日を過ごす事になりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ……指揮官はお兄さんで、トカレフは妹だったんですかぁ……良いなぁ……」

「「「!?」」」

 

 扉の隙間からじっと見ていた9A-91を見て、全員がゾクッと恐怖を感じたのは言うまでも無かった。そして、何処から情報が漏れたのか、私の事をお姉ちゃんと呼んで!と、M4やUMP9、更には他の戦術人形から詰め寄られ、ひたすら逃げる羽目になったとか。




ちなみに、妹キャラ候補は9A-91が真っ先に浮かんでたんだけど、白髪キャラオンリーで探してたらトカレフが目に留まって、結婚スキンとかあったのでそっち採用。しかも、トカレフの名前に近いカトレアという名前すらあったので、そっちに採用しました。

ちなみに名前の由来と理由は花言葉から。
エルゼラ・クロウバックはエンゼルランプとクローバー。
・エンゼルランプ(あなたを守りたい、幸福を告げる、小さな思い出、おおらか)
・クローバー(私を思って、幸運、約束、復讐)

カトレアはその名の通り白いカトレアから。
・白いカトレア(魔力、純粋な愛)

ここまで来ると、もうトカレフ=カトレア・クロウバックというキャラクターに段々と近くなり、良い感じのイメージになっちゃいました。ホントにスマン9A-91。



で、いつもの。

・シティトライアル
カービィのエアライドに登場するフィールド。エアライドは普通のレースだけじゃなく、広大なオープンワールド状のコースであるシティでアイテムを集めてエアライドマシンを強化し、一定時間後に行われる競技でライバルと競うモードとなっている。その為、競技まではどんなルールでも自由なので、他プレイヤーを攻撃させてから能力アイテムを奪ったり、マシンを破壊したりするなど……友情崩壊ゲームとして名高く評価されていたりする。

・ピタッとすぐに止まるアレ
エアライドマシンで言うルインズスターの事。基本、エアライドマシンはチャージしながらドリフトの旋回をするのだが、ルインズスターはピタッとすぐに止まり、方向転換しながら直角に曲がれるという利点がある。ドリフトが出来ない分使い辛さはあるものの、シティトライアルのアイテム集めにはかなり有利。スピードをカンストさせればそこそこの実力を発揮出来るので、その辺はプレイヤーの腕次第。

・物凄いスピン
アイテム「パニックスピン」の事。本来、スティックを左右に倒すとクイックスピンという攻撃ができ、これで相手にダメージを与える事が可能。パニックスピンは一定時間高速でスピンを続けるアイテムで、通常のクイックスピンとは違って威力が非常に高い。クラッカーとかのアイテムを組み合わせると強力。

・痺れながらぶっ飛ぶという光景
エアライドのTAS「TASさんが牧場で虐殺するようです」を参照。ルインズスターに乗り、プラズマで電撃を放ち、敵を吹き飛ばす光景は正にピンクの悪魔。バトルロイヤルの1人プレイで409体を叩き出すってどういう事なの……?(白目)

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