味方からも敵からもヤベー奴扱いされた指揮官達のいるドルフロ   作:ホワイトアクア

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そろそろ他のキャラクターにスポットライト当てようかなと思ってます。一応これまでメインストーリーっぽいのを書いてましたが、殆ど404とARばっかなので、他のキャラも書きたい意欲もあるので、近々そっちもしようかと。

あの子を出して欲しいとか要望あれば遠慮なく言って下さい。それまでネタを考えないといけないのも事実ですが……。


ロマンシング馬鹿 下

 ドリーマーとアルケミストの捕獲に成功し、残す鉄血兵も反撃のチャンスを失ったのか投降してグリフィンの元へと連れて行かれた。後始末や情報の引き抜き作業をしている間、ザックは元仕事場の様子をただじっと見つめていた。

 

「……こんな形で戻って来るとは思わなかったよ。自分から出て行ったのに、今更ノコノコ戻って敵討ち……とまでは行かなかったけど、やるだけやったよ」

 

 彼の手元には予め用意してあったのか花束を持っていた。それを足元にスッと置いてから仲間の為に黙祷と祈りを捧げた。

 

「ザック、もうそろそろ時間……って、ああ……邪魔しちゃったか?」

「いや、構わないさ。そろそろお別れも言っておこうと思ってた所だ」

 

 やれるだけの事をやったのか、グレイ達は撤収の準備を始めていた。これから先、来るのは多分無いだろうなと感傷に浸りながら、ザックも準備を済ませようと行くが……。

 

「……指揮官命令。一堂整列!」

「え……?」

 

 一体何なんだと戸惑うザックを後に、戦術人形達が駆け足で集って来た。そして、揃った所でグレイが話し出す。

 

「今日の任務はご苦労だった。ただ、もう少しだけ付き合って欲しい。こんな事を言うのも何だが、鉄血が暴走したとは言っても、そこで働いていた人間達も暴走した鉄血によって殺された。今日、ザックはその為の償いとして、弔いとしてここまでやって来た。それは俺達も同じだ」

「グレイ……」

「故に、ここで散って逝った彼等の為に弔銃を行いたい。身勝手な命令かもしれないが、彼の為にしてやって欲しいんだ」

「そういう事ね。弾も残ってるし、やるには充分じゃないかしら」

 

 HK416の後に続き、他の戦術人形達も頷いては弔銃の準備を始める。グレイなりの優しさだったのか、ザックは少しだけ嬉し泣きをしながら―――

 

「ありがとう……お前等は最高の仲間だ……」

 

 と、答えてくれた。ただ、死んでしまった仲間の前で泣くのは逃げて行った自分にはその資格が無いと己を厳しくしながら涙を拭き、真剣な顔付きで仲間の為に弔銃を始めるのであった。

 とは言ったものの、指揮官全員が弔銃の回数がどうだったかなんてのは覚えていない。寧ろ知らない方だった。少なくとも、そういう弔い行事があったというのは何となく聞いてはいたが、発砲する回数がバラバラだったりするので、正直どれが合ってるのかは分からなかった。しかし、何もしないで終わらせるつもりは無いので、とりあえずは自分なりのやり方で弔銃を行う事にした。

 

「死んで逝った彼等の為に、黙祷!」

 

 一斉に目を閉じる彼等。戦術人形達も同じく目を閉じて祈った。暫くして「止め!」とグレイの声が響き、次の段階へと移る。

 

「天に向けて弔銃!構え……撃て!」

 

 戦術人形全員の銃が天に向けて発砲される。同じくグレイ達も配属された時に渡された短い拳銃を使って天に向けて撃った。最後に―――

 

「君達の事は一生忘れない!記憶の中に留まる限り、私達は君達の為に戦う!今は少しの別れだ!敬礼!」

 

 敬礼で彼等との別れをここで示した。軍とは違うかもしれないが、こうするしか思い付かなかった。それでも彼等の元にこの気持ちが届くのならば本望だろう。敬礼を終えた後、彼等はグリフィンへと帰投した。

 

 

 

 

 

 かくしてドリーマーとアルケミストという難関とも言うべき鉄血人形を捕獲する事に成功したグレイ達だったが、鉄血には最後の親玉であるエルダーブレインが残されている。また、捕獲した彼女二人をグリフィンに引き込めるのかどうかすら難しかった。その様子をグレイ達が揃って話し合っていた。

 

「今も話し合いが続いてると思うか、担当誰がやってる?」

「ケンジとエージェント」

「人選ミスってないかそれ……?」

「いいや、ミスってない。確かに一見すれば鉄血との関わりを持った男と裏切ってしまった固有型の鉄血人形だからな。居合わせても素直に従うとは到底思ってないさ。ただし、対話ならばアイツが妥当だと考えてな。将来カウンセリングも担当するかもしれないからって自ら名乗り出たんだと」

 

 以上の理由があってか、今ではケンジとエージェントが二人の対応に当たっていた。しかし、グレイの言う通り、ドリーマーとアルケミストは中々素直に従おうとはしなかった。

 

「そろそろ選んで貰おうか。グリフィンと協力するか、それでもまだ足掻くかを。俺はせめてグリフィンの方を選んでおく方を推奨するが」

「この期に及んでまだ仲間に入れようと考えているとはな……全く、人間というのは理解出来ないな」

「脅したって無駄よ。どうなろうと私達は貴方の元には行かないわ。自分で死ぬならまだしも、ここから逃げるか、残された鉄血の皆が貴方達の所へ襲い掛かるかもしれないわよ。そうなったら……本当に人類は終わりを告げる事になるわよ」

 

 クスクスと笑うドリーマー。しかし、ケンジは表情を変えずに淡々とある話を持ち掛けた。

 

「随分と威勢と信頼があるみたいだな。だが、その時は五体満足のまま無事でいられるかな?良くも悪くも、お前達は同胞に殺される可能性が高いがな」

「何ですって……?」

「仲間に殺されるだと?そんな馬鹿な話―――」

「ありますよ。それを証言した貴女達と実際に体験した私が言えるのですから」

 

 ついさっきまで黙っていたエージェントの口が開いたが、並べられた言葉は仲間に向けて言うべき内容ではない冷徹で残酷な言葉だった。

 

「貴女達は私とこの御方と話しただけでも私を裏切者扱いとしました。それと、何もしなかったデストロイヤーに向けても。それを踏まえた上で話させて頂きますが、貴女達が幾ら攻めようとも散々グリフィンの指揮官達に返り討ちにされ、逃げ続けても捕まった挙げ句に基地を破壊されたと同時に生産プラントまで奪われた……そんな貴女達がグリフィンの情報を引き抜いた後、鉄血に戻った所であのエルダーブレインが許すと思いますか?何度も喰らった返り討ちと捕まったという情けない汚点を着せられてまで……」

「くっ……!」

「もう1つだけ言わせて貰いますと、鉄血がグリフィンに攻め込んで来た時、同胞は捕まった貴女達を見てどう思っているのでしょうかね。まあ、十中八九貴女達を哀れで愚かと蔑んではその場で撃ち殺しているでしょうね。それと、人類と戦術人形を全てを殺し終えた時、エルダーブレインは何を言うのでしょうかね。エルダーブレインも所詮は人の手で作られたモノですから、後の事を考える程の知能はありませんし。その役目を終えた際、エルダーブレインから死んで欲しいと言われた時に貴女達は素直に従う事が出来ますか?」

「………!?」

 

 ドリーマーの顔に冷や汗が流れた。あのエルダーブレインが最後にどうするかは分からないが、仮にもエルダーブレイン自身が本当に一人になりたいという理由で味方全てに自害を命令させた後、強引に鉄血達を動かそうとする展開も少なからず有り得る。暴走したAIが一体何をするかなんてのは誰にも分かる訳が無いのだから。それを追撃しようとケンジから無慈悲な言葉が投げ掛けられる。

 

「何を驚く事がある?それを言ったのは他でもないお前達だ。鉄血のルールがどういうのかは知らないが、他人の死に関しては興味が無かったり、命を軽く扱う辺りはそうなんだろう?」

「元鉄血の私ですら覚えていますよ。何かあった場合、我々鉄血はどんな事情であろうと戻らない者は見捨てる。資材がある限り、我々がそういう存在でいる限り、替えは幾らでもある……と。貴女達は私と同じ様な立場へと近付いているのですよ」

 

 何度も失敗続きなら、流石の鉄血ですら使えないと判断して処理するだろう。今更になって分かったのか、二人は絶望でもぶつけられたかの様に顔を青褪めていた。どんなに生意気な性格だったとしても、まだ生きたいという願いもあったのだろう。

 

「敗けを認めなさいドリーマー、アルケミスト。貴女達は戦う相手を間違えたのです。彼が敢えて協力を言い出したのは、貴女達が無惨に散ってしまわない様に……本当のあるべき世界に戻す為に一人でも多く救おうと考えていたのですから」

 

 その言葉を最後に二人は泣きながらも協力に応えてくれたとの事だった。敵だとしても、これまで生きてきた証を残されないまま仲間に殺されて死んで逝くのはケンジからしても悲しい事だったのだろう。

 

「ま、そういう訳でドリーマーとアルケミストを無事に歓迎したって事らしいよ」

「流石ケンジ。対話ステータス極振りしただけの事はあるな」

「極振りって……でも、確かにケンジじゃなければ出来ない芸当だったな。アレか?前にエージェントと対話したという前提があるからこそすんなりと条件呑んでくれたのかね」

「可能性としては高いな」

 

 彼等の勢いはまだ止まらない。だが、エルダーブレインをどうにかしたとしても、まだE.L.I.D.が残されている。鉄血との問題が終わり次第、次はそっちの問題に移らなければならないと思うと苦労が絶えないなと溜め息を吐くグレイ達だった。

 

 

 

 

 

「で、これをこうして……どうだ鷹山?」

「んー、問題無い。バッチグー」

 

 更に数日後。ザックはある開発の為に作業を続けていた。前回の追走作戦でハードボーラーが大破寸前まで追い込まれてしまったのだ。修復をしている最中に鷹山がその様子を見に来たらしいのだが……。

 

「それにしても、まさかお前からこんな提案を持ち掛けて来たとはな。お陰でハードボーラーを応用したイメージが次から次へとドンドン膨らんで来やがる」

「元々そういう発想をしていなかったってのが大きいんだろうけど。で、提供してくれたお礼に動かして良いんだろ?」

「まあな。悪く言ってしまえばテストプレイすらまだだからな。プレイ第一号がお前になるが……まあ、お前だからこそ問題無いだろうな」

 

 鷹山の方を見ると、鷹山は何やら機械のパーツを装着していた。鷹山が言うには、大破したハードボーラーを見た途端、某機動戦士や人形ロボットみたいなのを想像した時に自分でも装着出来ないかという考えが浮かんだのだ。これにはザックも頭に電流が走ったかの如く閃きが生まれ、その手があったか!と納得していた。要するに……。

 

「俺が戦術人形だ!!」

 

 という、ブッ飛んだ発想から出たのが「指揮官戦術人形化計画」だった。しかし、まだ実用とか必要あるのかどうかすら微妙だが、テストプレイ第一号である鷹山に任せるというのは嫌な予感しかしなかった。戦術人形化と言っても、所詮はパワードスーツの様なモノだが。

 最終チェックを済ませ、いよいよ鷹山が出撃した。動き方はまるでゼロシフトを連発して動いているかの様に気持ち悪く速く動いていた。当然ながらターゲットとなるのは鉄血人形。移動した先で出会うか、偶然基地を発見出来たらラッキー程度でついでながら破壊をしようと考えていたが、中々見付からなかった。

 

「おうっ!?」

 

 だが、下からミサイルやら銃弾の嵐やら、果てにはビットらしきものまでもが鷹山に向けて襲い掛かった。小さくて見え難いが、下には鉄血兵と固有型であるスケアクロウ、ハンター、エクスキューショナー、アーキテクトが居た。丁度良いタイミングだと思ったのか、鷹山はニヤッと笑みを浮かべながら襲撃を始めた。

 

「ちょっくら実験に付き合ってくれよ!」

 

 開幕早々取り出した銃はラグナロク3rdと呼ばれるモノで、喰らった相手はそれなりに体力をゴッソリと持って行かれるヤバい武器だった。それにゼロシフト並の高速移動で相手の隙すら与えないままとなれば、やってる事は最早一方的な殺戮(死なない程度に)と勘違いされてもおかしく無い。

 

「あの野郎!俺が相手だ!」

 

 次にエクスキューショナーが鷹山に向けて襲い掛かるが、鷹山は武器をチェンジしてスタンガンを取り出す。このスタンガンも特殊な仕様で、簡単に言うと連射する事で攻撃の威力が増える代物だが、これにフレーム単位での連射した場合となると……後はもうお分かりだろう。

 

「喰らえッ!」

 

 エクスキューショナーの太刀が振り落とされるが、寸前の所でスッと避けては至近距離まで詰め―――

 

「おりゃっ!!」

「あばばばばばばばばばば!?」

 

 こちらもゴッソリとエクスキューショナーの体力を開幕6割で減らし、間髪入れずに攻撃を続行。10秒も満たない内にエクスキューショナーがほぼ一撃で倒された事に鉄血達は驚くしか無かった。

 

「な、何だアレは!?」

「人間の動きじゃない……」

「私達はこんなのを相手にしていたのですか……!?」

「次はお前だァ!」

 

 グイッとアーキテクトの所まで近付く鷹山。アーキテクトも思わず「ひっ……!」と悲鳴を上げたが、もう遅かった。今度はナックルガンというこれもまた至近距離での武器に切り替え、連続のパンチ(弾丸)を喰らってしまう。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

「うわらば!?」

 

 こっちは開幕8割。ガッツリと削られてはエクスキューショナーと同じく5秒すら満たずにKO。途中で援護しようとしていたのか、鉄血兵が割り込んで来たものの、「ユクゾッ」と呟いた後に一瞬で迫られては1発ダウン。鉄血兵すら歯が立たず、スケアクロウとハンターは恐怖に震えていたが―――

 

「撃ち合いしよーぜ!お前、的な!」

 

 スナイパーライフルでハンターを撃ち抜く鷹山。ただし、遠距離ではなくゼロ距離からの射撃。これには少し耐えたハンターも「スナイパーって近距離で撃つ為の武器だったか!?」と叫んでいた。多分スナイパーの子が見たら吃驚仰天になるだろう。スナイパーとしての意味も無いし、ゼロ距離でインファイトするなんて誰が予想出来るか。

 ハンターが驚くのも束の間、ゼロ距離で何度も撃たれた彼女もダウンし、残すはスケアクロウのみ。次に鷹山が切り替えたのはショットガンよりも強いホーネットガンと呼ばれるモノ。これもまたゼロ距離で迫っては撃つの繰り返し。銃とは思えない爆発音が轟き、たった数発でスケアクロウの体力を9割減らし、後は軽く殴って終わらせた。

 

「鷹山さん、だいしょーり!!」

「もう……いっそ殺して……」

 

 良い笑顔を浮かべる鷹山だったが、敵からすれば恐怖の対象としか見られなかった。暫くして、捕まえた鉄血達を連れて帰った鷹山だったが、その際に見掛けたM4が持っていた書類をバサリと落とし、信じられないものを見た目をしていたのは言うまでも無かった。

 特に鷹山がレイレジェンドの装甲を装着していた為か、「M16姉さん!鷹山指揮官がロボットになってます!!」と大騒ぎし、どういう事だと見たM16ですら飲んでいたジャックダニエルを吹き出す位に形が違うと言い切った程だったとか。

 

 また、捕まった鉄血達は「地獄を見た」とか「アイツ怖いアイツ怖い」と完全にトラウマ植え付けられた感じになっていた。




TASさんに連射は厳禁。言うまでもなく分かり切った結果になるし……。

・俺が戦術人形だ
某機動戦士ダブルオーの方で一時期ネタになった箱ガンダムみたいなものだったりとか。アレもまたピンと思い付く切っ掛けになりました。

・ラグナロク3rd/スタンガン/ホーネットガン/ライフル/ナックルガン
出所は全部カスタムロボBRから。このカスタムロボでさえTASが出ていた位。詳しくは「TASさんの休日 カスタムロボBR アーケードモード ハードをプレイ」を見て頂ければ分かるだろう。エアライドで虐殺してたのに、まだ足りなかったのか(白目)
最早動きはドラゴンボールかANUBISを見ているみたいな感じで、ナックルガンとスタンガンの鬼畜性を垣間見るだろう。オロチガンはそこまで目立つ要素が無かったので、書きませんでした。ドラム?何時書こうかそれ……。

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