味方からも敵からもヤベー奴扱いされた指揮官達のいるドルフロ 作:ホワイトアクア
「で、今に至る訳」
「へえ、そうだったの」
クラウスの暗く壮大な過去を聞いた二人は改めてクラウスの良さを再認識した様子だった。しかし、あんまり面と向かって話した経験は薄い為、中々彼の姿は想像し難い感じだ。
「あれ……?だとしたら、指揮官は何時からクラウスさんと会ったの?」
「別の世界も含めて、一人で転々と移動し続けた時、偶然にも立ち寄ったのが、あの蝶事件が起きた場所なんだ。歩いていたら、暴走状態となっていた鉄血兵から襲われてな。黒曜石で壁を作って囲んでは、穴を数メートル掘った後、背後から奇襲を仕掛けるのは正にプロだったわ……あの黒曜石、どういう原理になってるかは知らないけど、爆弾だろうと何だろうとちょっとやそこらの攻撃で崩れたりしないから最強だったわ。岩盤より劣るけどね」
「そんなに……?というか、岩盤より劣るって……」
その人も大概人間辞めてるなぁ、と実感すると同時にグレイ達と同じくヤベー指揮官と扱われてもおかしくない理由に納得がついた。
「道中、俺らも世界巡っていた様な状況だったからな。話してみると会話がまあ弾む弾む。そんで意気投合して、今もこうして同じメンバーに居るって事よ」
「そうだったんだ。あ、じゃあ、あたいからも質問。クラウスさんはともかく、例の託された子達のその後どうなったの?」
「あー……あの子達か?そうだな……あの事件が終わった後に家族にこれまでの経緯を説明したら安心して、お金の方も何とか無事に解決したらしい。後々にクラウスが元々あの家族の一人であった内容を手紙を通して驚いていたんだが、少しの間だけ娘達が世話になった事や助けてくれた事、何よりも狂った家族を止めるべく一人で立ち向かった事が一番影響していたのか、クラウスは無実だと訴えてくれたそうだ」
その後、都合の良いタイミングだったのか、マスコミからの裏情報も取れ、クラウスの罪は次第に無くなり、後は彼の帰りを待つだけだったのだが……。
「ただ……何時まで待っても帰って来なかったという理由もあり、何処かの地で彼が建物を建ててくれたり、食糧とかも与えてくれたという噂が耳に届いたのか、居ても経ってもいられず、ついには自ら約束を破っては探しに行ったんだ」
「えぇ……(困惑)」
「当時はそれぞれの親も反対していたんだが……娘の威圧にヤバかったのか、すんなり許可してしまったんだと」
彼女達はクラウスの言いつけ通りに成長はしていたものの、色んな意味で逞しくなってしまった。家族を支えると同時に彼を探すという行動は一番大変な事だっただろう。
「というか、それ以前にどうやって探そうとしたの?世界は広いから、決してそこに留まってるなんてケースも無いと言い切れないと思うし……」
「普通に考えたらな。だけど、1つだけ方法があった」
「方法?」
「これを両立出来る方法……それはグリフィンに入隊する事だ」
「入隊って……これまたぶっ飛んだ発想が来たもんだなぁ」
女の子が軍隊関係に就職するとは誰が予想出来たか。だが、これにはある理由があるとグレイは説明した。
「まあ、当然の反応だよな。でも、それの方が都合良かったんだ。彼女達が行動を起こしたのも蝶事件を境に思い付いたんだと。戦術人形が登場し、人手も足りない状況の今、グリフィンや正規軍からすれば一人でも多くの人手は欲しかったんだと思う」
「具体的にはどうやって?」
「聞けば、あの子達は軍の内部とかで働くよりかは前線で戦う事を望んだそうだ。言うならば、戦術人形のフリをした生身の人間……本来ならばこんな滅茶苦茶な要求は前代未聞だ。当初はグリフィンもそれは駄目だと断ったんだが……」
「……もしかしなくても、滅茶苦茶強くて優秀だったとか?」
「お察しの通りで助かるよ……」
原則として、E.L.I.D.や鉄血兵の他にテロリストとかも対応するのだが、基本は戦術人形で倒すというのが当たり前となっている。だが、この三人だけは違った。クラウスから受け継がれた力は戦術人形よりも遥か上の力を見せ付け、たった三人で鉄血の基地の1つを壊滅させたなんて噂も立っていたと聞かされている。
彼女達は軍に入る前は必死になって勉強し、家族を支えながらも強くなる方法を編み出し、ついにはクラウスと変わらない爆弾魔へと豹変。これまでクラウスが残したクラフトレシピを参考に、ペンシルロケットやロケットボム、例のグローブまで作れるモノは全部作ったとか……。
「ねえ、さっき術人形のフリをしたって言ってたけど、その戦術人形って誰?」
「M1911、GSh-18、G17の三人だ。そうだな……ちょっと待ってろ」
タブレットを動かし、ある写真を見せるグレイ。そこには嘗ての幼さの面影を残したクラウスとセラ達の写真が写し出されていた。
「これが例の三人と、その後の写真な。何となくだけど、それっぽい雰囲気残ってるだろ?」
「あ、ホントだ。この赤い髪飾りがG17?で、ちょっと丸っこいのがGSh-18?最後にM1911は……え!?変わり過ぎじゃないか!?髪の毛バッサリ切っちゃったのかい!?」
最後だけ凄いビフォーアフターに驚いたUMP40。そりゃそうだ。エリカがM1911となる前は確かにロングヘアーだったのだが、グリフィン入隊を機に彼女は髪の毛を切ってはショートヘアーにしてしまったのである。だが、前よりも更に可愛く、明るくなった気がしなくも無い。
「クラウスも名前とか兄として呼ばれるまでは気付かなかったらしいぞ?ちなみに、クラウスが最終的に再会したのはAR小隊の救出任務。この時は俺達が初めてグリフィンの任務を引き受けた時だな」
「懐かしいね。今でもあの光景は忘れられそうに無いかも」
「初見の人から見たら鉄血以上のヤバいモノを見たって嘆いていたからな。で、俺達が暴れている様子をモニターから見ていたんだと」
その時のセラ達は基地の中で命令が来るまで待機していたの事。ぶっちゃけ彼女達も最終兵器に近い位の強さを持っているので、いざという時に備えてタイミングを待っていたのだが、それも無駄に終わった。言うまでもなく、彼等が好き勝手に暴れた結果があのザマである。
そして、彼の姿を見てハッと気付いた彼女達は間違い無くクラウスだと感じたらしい。基本、爆弾で戦う人物など相当限られていたので、確信に至ったという。
「後は、まあ見た目は変わってたとしても、彼の纏う雰囲気ってヤツかな?それも理由になったとか。で、任務が終わった後は真っ先に駆けつけては泣きながら抱き着いてたね。けど、お仕置きされたがな」
「ああ、何年も放置したツケが回って来たのね」
「正解。ちなみにお仕置きってのが、結婚してくれなきゃ嫌だっていう人生の墓まで持って行くという……しかも、親公認」
「自分の娘を助けてくれたし、暴走した家族を止めたりしたし、ここまで性格の良い人が不幸せになるのはおかしいからね。ていうか、そろそろ幸せになって」
あまりにも人生が修羅場過ぎたので、クラウスは幸せになっても良いと思う気持ちは誰もが考えてはいた。が、肝心のクラウスに限っては「え、ちょ、待って……色々と段階とかすっ飛んで何が何やら……」と混乱していた。大方、自分を否定しながらその手の話はまだ早いと言っていたに違い無い。
だが、既に外堀から埋められてしまっている以上、クラウスは完全に諦めてしまい、「絶対に守らねば……(使命感)」と逆に自身を追い込むというアホな形になってしまったが。
「これからも頑張るんだから、サポートとかストッパーが増えたと思えば良いし。アイツの場合は戦闘もそうだが、人の役に立ちたい仕事の方に熱中し過ぎてぶっ倒れないか心配」
「うん、それは何となく分かるわ」
特に建築に限っては夜になっても建てて行くスタイルなので、本当に身体の方は平気なのか?と仲間が心配していた点もちょこっとあったらしい。だから、止める為にもセラ達を使った方が返って好都合だったりするのだ。
少し休んだ所でバチは当たらないのだが、そろそろ休む時はしっかり休んで貰いたい所だ。
「よし、これでOKっと……」
グレイ達がクラウスの過去話とかに浸っている間に、彼は彼でグリフィンの建築及び増築を行っていた。グリフィンの財政事情では、結構資金とかは貯まってはいるものの、せめて低コストで抑え、可能な限りは自分の手で解決するをモットーに活動している。
「この家具はどうするべきか……」
まだ一人で世界を渡り歩いていた際に立ち寄った場所では様々な家具が売られており、これをじーっと見ては完全再現させた実力まで成長していた。時々、タヌキインパクトによる悲惨な出来事を垣間見た時には「その気持ち、凄く分かる……」と納得していた。
ともあれ、こうして増築しては部屋を作ったりしてグリフィンの助けになっている。増築だけでも結構な金額を要するのだが、無限開放アイテムを存分に使った結果としてほぼゼロ円で済ませた。言うまでもなくMODの力である。
「流石です。ここまでグリフィンを大きくするなんて。他の皆さんが見たら驚きますね」
「とは言っても、大きくなり過ぎても問題なんだよな。資金とかもそこまで受け取っていなかったりするから、どうしてここまで大きくなったのか問い詰められる予感がする。多分、正規軍辺り黙っちゃいないだろ」
「そうですね……」
正規軍の話に関しては、まだ1つもマトモな内容を聞いた覚えは無い。噂だと何処かの組織に対抗すべき為に鉄血の力が必要だと唱えているとか。
暴走して頭が狂ったんじゃねぇの?と鼻で笑うが、仮に正規軍がグリフィンに来たとしたら……そう考えると本当に面倒になりそうだ。
何かあったとしても、情報など一切渡さない。仲間ですら引き抜くならば、こちらはお前達の心臓を引き抜いてやろうと脅す覚悟で行く。それが彼等の生き様だ。
「ついでに異世界は一切教えちゃいかんがな……間違い無く今後の計画に支障が出る」
クラウスはある計画を考えていた。今ここに居る世界では医者の数は圧倒的に少なく、住民も鉄血やE.L.I.D.に襲われないか恐怖の日々を過ごしているだろう。
どうするかと考えた結果、ある方法を思い付いたのである。それは、一時的だが住民を異世界の方へと避難させ、その間にクラウス達はコーラップスの処理及び復興作業という何ともスケールが大き過ぎるプランだった。
当然ながら、本当に大丈夫なのか?と心配する声があるかもしれない。しかし、それの方が返って好都合だ。異世界の方に連れて行けば、ある程度の住居や食糧とかも提供出来る他、お姉さんがクリエーターから院長へとジョブチェンジし、大勢の仲間達を率いて登場。ただし……。
「セカンドオピニオンでこの病院を選ぶとは良いセンスじゃ。じゃが、この病院を選んだが最後、もう二度と主治医が待つ病院へ戻る事は許されん。お姉さんや分かっておるな?」
「へへへ……勿論でさぁ……大きな治療費を払って頂ける大事な患者様だ。真心込めた最高のおもてなしで、この病院無しじゃ生きられない身体にして差し上げますよ」
「クックック……そうじゃ、それで良い……」
「あんたの主治医は最高のパートナーだったのかもしれねぇが、それはもう過去の話さ。俺のテクで前の奴の事なんて忘れさせてやるよ……」
「男性主治医と男性患者のカップリング……!
「血の汚れはプロの俺にお任せ下さい。痕跡が残らない様、綺麗に消しておきます……」
一癖も二癖もあるヤベー奴等が登場。念の為に行っておきますが、決してやらしい事や惨殺現場みたいな感じだったりしませんのでご安心を。
けど、クラウス達をドン引きさせるのは十分過ぎた。また、一時期ケンジもこちらに足を運んだ事もあり、エージェントも少しここで学びたいとそっちの方で世話にはなったらしいのだが……。
「毎回思うが……何故こんなにも多くの仕事やら何やらやって来たのにも関わらず、彼女の集まる人員は癖の強い奴等しか集まらないんだ……」
「私、元鉄血ですけど……何か実験とかされませんよね……?」
果たして、この計画に彼女達が参加して良かったのか……ただ、腕っぷしは間違い無く良いレベルなので若干悩ましい所でもあった。
お姉さんからすれば、これもこれで大助かりな案件でもあるのだが、やはり部屋が足りなくなったりするのがご愛敬。そこでクラウスのクラフト能力を用いてサポートしてあげるのが役目。
たまに家の方を頼まれたりもするのだが、ちょっとしたイタズラ心でヤバい物件を作ったりした。例えば……。
「1つだけ注意点がございまして……くれぐれも、壁の後ろは見ない様にお願いします」
「えっ……?」
「ちなみにですね、前のここにお住まわれた夫婦なんですが、確か……旦那さんが行方不明になってしまった様で。未だに、旦那さんの方は見つかっておらずでして。奥様の方は、その確か……病院の方に入院なされたとか。まあ、お客様には関係無い話ですかね!(笑顔)」
「怖いわよ!一体何が起きたって言うのよ!?」
あたかも事故物件に見立ててホラー演出を出すというエグいドッキリをした事があり、聞いた人物は気が気じゃないと思ってゾッとしたらしい。まあ、嘘なのだが。
ちなみに、最初に巻き込まれたのは言うまでもなくWA2000。彼女がホラーや幽霊苦手という情報を何処から聞いたのか、彼女から直接リフォームとかで頼まれた時には悪い笑みを浮かべていたという。尚、壁の後ろにはリアル過ぎる白骨死体のレプリカがあったという。
己の正義を貫いてる半面、人を驚かす知識は誰よりも強かった一面であった。
実際、マイクラ能力とか正規軍とかに見られてしまったら一番ヤバい気がするのは確か。あああいう奴等こそ一体何しでかすか分からないし怖い。
まあ、お帰り願うかハンマーとオリハルコン教団の一員になるか……他にも対策は考えてありますよぉ(ゲス顔)