味方からも敵からもヤベー奴扱いされた指揮官達のいるドルフロ   作:ホワイトアクア

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予告した通り、サブストーリーでございます。今回はK5。前々から彼女にはこの手の話でちょっと出したかった方だったりします。本編とも言える内容は下の方を投稿しなきゃ意味無いんですが……。

サブストーリーではキャラの特徴とかをメインに何か書ければ良いなぁと思ってます。


本編終わってるかどうか知らんけど、サブストーリーはっじまるよ~♪
鷹山「勝利の女神?それなら俺の隣で寝てるけど」K5「やめて」 上


 突然だが、皆さんは運命は信じる方だろうか?

 人生何事においても運というのは最低限必要なステータスとも言える。賭け事においては「来い……!来い……!」と言っていそうなイメージがあったり、勝負事でも奇跡が起きたなんて事は有り得たりする。

 それは戦争も同じくそうだ。紛争状態で何時銃弾が四方八方から撃たれてもおかしくない状況から生還出来たり、死亡者が出るかもしれない不可能な任務を成功した挙げ句に死亡者すら出させなかったや、はたまた「もうここまでなのか……」と思った矢先で救助が来たりする等……そういう所でも幸運というのは付き物である。

 

 巷ではよく「幸運の女神」なんて呼ばれる言葉があるが、その言葉が元となった神は存在する。ローマ神話では運命の女神と呼ばれた「フォルトゥーナ(別名フォーチューナやフォルトゥナ或いはフォルトナ)」がその始まりとなっていて、タロットカードの運命の輪のモデルにもなった。

 運命の車輪を司り、人々の運命を決めると言われているが、基本的に誰かが幸せになるという認識が人々によって強い影響なのか、幸運の女神と呼ばれる様になった。しかし、必ずしも常に幸運を選んでくれる訳では無く、場合によっては不幸が選ばれてしまうリスクもあるのだ。故にそれが人々による認識の落とし穴とも言え、運命とは必ずしも絶対に幸運を選ぶとは限らないのだ。

 

 しかし、もしも常に幸運が続いている存在が居たならば。まるで誰かの運命を弄くれるかの様な存在が居たらどう思うだろうか。羨ましく思うか、妬ましいと思うか。それは誰にも分からない。だが―――

 

「鷹山さんの……バカァァァァァァァァァァッ!!!!」

「あべしっ!?」

 

 とある戦術人形によって叩かれた鷹山はそのどちらにも属する事も無く、ましてや悪用すらしなかった。

 ただ、彼女のポテンシャルと存在意義を全部奪ったのではないかと、叩かれた本人は罪悪感に溢れていた。その事情を知ってるAR小隊も「これは指揮官が悪い」「仕方無い」と複雑で何とも言えない気持ちになっていたという。

 

 一体何があったのか、それは少し遡る……。

 

 

 

 

 

 平和が続きそうなグリフィンにて、グレイ達は今日も今日で仕事をやっていた。彼等が前線で戦い、書類仕事を終わらせ、畑を耕し、民間人の住居を建築したりするなど……やってる事は相変わらずとも言えた。

 しかし、ヘリアンがそろそろ資材を使ってくれないとスペースの邪魔になると言われてしまい、グレイ達も本来戦術人形を多く確保する為の製造の存在を忘れていたのか、今更になって思い出したという。

 

「日頃から俺達前線で戦ってたからなぁ……忘れてもしゃーない」

「ただ、本当に使わなきゃ宝の持ち腐れだからな……」

 

 指揮官自体がとてつもなく強いという理由もあってか、あんまり戦術人形を増やしても仕方無いだろと思っていたのだが……今回の件で止むを得ず使わざるを得なかったという。

 とにかく、適当に使用する資材を使って製造完成まで待っていたのだが、そろそろ出来たとの報告を受けて指揮官直々に出迎える事にしたのだが……。

 

「お前等、情報入手早くね?」

「あら、404だとこの位は朝飯前でしょ?」

「新しい戦術人形が来るって言うんだ。歓迎してやらなきゃ失礼だろ」

「まあ……指揮官の行動に慣れてくれれば問題無いんですが……」

 

 何処から情報が伝わったのか、404とAR、カトレアとトンプソンが既に待ってくれていた。グレイのツッコミにHK416はドヤ顔を見せ、トンプソンとカトレアは新しく来る仲間を楽しみにしていたが、逆にM4は果たして大丈夫なのだろうか?と少し不安になっていた。

 すると、扉が開き、そこから戦術人形が現れた。薄い金髪に中々際どい服を着ている。彼女の手にはハンドガンが握られており、結果からして新しいハンドガンの子だろうとグレイ達は察した。

 

「貴方が新しい指揮官さん?」

「ああ。ただ、俺だけじゃなくコイツ等も指揮官だ。俺達は複数で指揮官やってるが、これでもそれなりに仕事をやって来た。君の信頼に応えられるかどうか……」

「へぇ……」

「な、何だ?」

 

 ハンドガンの子はじーっとグレイ達を見つめる。そんなにじっと見て、何か意味あるのか?と思いきや、次の瞬間には少し戸惑う言葉が飛び出る。

 

「数多くの兆しから見ると……指揮官さん、やはりこれは運命的な出会いです」

『………は?』

 

 これには全員がポカーン。開幕早々、一体この子は何を言ってるんだ?と言いたくなったが、言いたい意欲を我慢して何故そんな事を言ったのか聞くと……。

 

「だってそうでしょ?普段から漂う違った雰囲気にこれまで戦い続けたという兆候。何よりも貴方達が未来の勝利を導いてくれるのだと運命がそう言ったのよ!」

(『ああ……そういう性格か……』)

 

 察した。全てを察した。要するにこの子は占いとか運命とかを信じるタイプなのだと。さっきから兆しだの運命だの言っている辺りからもう彼女の性格が表れていた。

 

「安心して、指揮官。私が来たからには貴方達に幸運をもたらしてあげる。勝利の女神は間違いなく貴方達に微笑んで祝福してくれるわ!」

『………』

 

 一同沈黙。彼女は何も知らないのだ。そんな運命とかじゃなくても圧倒的な運を見せつけてくれる人物がたった一人しか居ないのだと。その人物が今目の前に居る事を知らずに。

 

(姉さん……これ、どうしましょうか……?)

(知らない方がアイツにとっても都合が良いしな……下手に刺激させるのは止めとけ)

(でも、何時かバレる時が来るんじゃない?その時、どうやって説明するのよ)

(問題はそこなんだよね~……)

(鷹山指揮官の存在そのものが幸運の塊とか歩く運命と言いますか……いや、予定調和?)

 

 AR小隊の全員がコソコソと話し合う。幸い、新しく来た子には聞かれていなかったが。

 

「つーか、名前聞いてないんだが」

「ああ、ごめんなさい。ハンドガン「K5」、只今もって着任します」

 

 これがK5との出会いである。グレイ達も当初は痛い子だなぁ……と引き気味だったものの、ここから更に異変が起きる。ある時、グレイが書類仕事をしていると……。

 

「グレイ指揮官、今日の会議は何をするか決めたの?」

「まあな。後はスケジュールを作れば無問題なんだが」

「うふふ、やっぱりそうだろうと思って必要な時間帯は全部書いといたわ」

「え……?」

 

 戸惑いながらもスケジュール表を見ると、何とそこに書いてあったのはグレイが頭の中で考えていた予定や時間帯とかがしっかりと表に書いてあったではないか。

 スケジュールの時間詳細についてはまだ誰にも言ってないし、口に溢してたりもしていなかった筈だ。それなのにK5だけが知っていた。

 

「ね、言った通りでしょ?」

「あ、ああ……」

 

 これにはグレイも固まった。また、ある時は外で戦っていたケンジに対しても……。

 

「待って、ケンジ指揮官。もう暫くしたらあの建物が爆発して瓦礫が飛び散るから、そこでじっと待っていて」

「え、何を―――」

 

 と言った直後、ケンジの近場で爆発が起きた。そして、K5の言った通りにケンジのギリギリの範囲までに瓦礫が飛び散ったが、幸い命に別状なし。K5ですら分かってたのか、見事に避けていた。

 

「危なかったわね。私が言わなきゃ大怪我していたわよ?」

「………」

 

 唖然となるケンジ。彼女がでっち上げで占いとか未来とかを言ってたのではなく、本気でそう言ってたのだと思うと震えが止まらなくなった。しかも、大体の戦術人形にも占いとかをやっているのだが、その占いすら見事に当たりを引き続けるのだ。

 ここまでドンピシャで当てると凄いを通り越して怖いと感じる様になってしまい、この事態にはグレイ達も色んな意味でマズいと感じ始めた。寧ろ、それ以降K5と親しくなりたいと思う人物も中には居るそうなので、尚更見過ごせない事態となった。

 

「別に未来予測とかしてくれる分大いに助かると言えば助かってるけどさぁ……こえーんだよ!あまりにも当て過ぎて怖いわ!死ぬ運命すらドンピシャで当てるのか!?」

「アイツは鷹山の妹か弟子か何かか?そっちだったら占いとか運命も凄く納得が行くんだが」

「生まれてからずっと妹とか弟子とか居ねーよ。居たら今頃お前等と一緒に前線で戦ってたり、旅したりしてるだろうが」

「あ、それもそうか。でも、下手したら弱味とか握られていそうで怖いな……」

「俺はこの子に逆らう事が出来ない。弱み(運命)を握られている……」

「それ一番駄目なパターンだぞ。人生終わるから」

 

 予想外な展開に頭を悩ますグレイ達。世の中知らなきゃ良かったと思う所があるかもしれないが、K5はその辺りを容赦無く伝える。ましてや、予測しながら行動を取るというのは鷹山の株が下がる様なものであった。

 

「占いも程々にしとけって言いたいんだけどね……」

「神経質な奴が居てもおかしくないからな。それに、人生必ずしもその運命を辿るのは絶対に無い。自分の運命も将来も、ましてや夢も自分で決めるものだ」

「あの子には悪いけど、一旦運命云々とか離れて貰わないと。でなきゃ、戦術人形全員が占いにハマったりしたらカルト宗教並みにヤバいぞ」

 

 出会った当初、新手の詐欺なんじゃないかとほんのちょこっと思った事があったが、K5の占いとかが影響して悪徳商法すら始める戦術人形とかが居たら大変な事になってしまう。

 故にその切っ掛けを作り兼ねないK5には一旦痛い目に合わせてやらねばいけなかった。

 

「けど、そんな都合の良い展開あるものかね……」

 

 問題はどうやってK5と絡む必要があるのかだが、現状では特にK5に話す話題も無ければ用も無く、グレイ達は半ば諦めた状態になっていた。

 しかし、数日後にある機転が訪れる。その日もまた執務室で仕事をやっていたのだが、扉をノックする音が聞こえる。

 

「失礼するぞ」

「ありゃ、ヘリアンさん?」

 

 入って来たのはヘリアンだった。仕事柄、彼女と会うのは何時もの事なのだが……。

 

「どうしたんですか、わざわざ執務室まで来るなんて珍しい。普段はこっちに来る様子なんて無かったのに」

「そうなんだがな……少々お前達にしか頼めない案件……いや、時と場合によっては申し訳無い案件でもあるのだが……」

「話の展開が見えないんですが……何があったんです?」

 

 どうも少し言い辛そうな口調になっていたヘリアン。ヘリアンは気まずくなりながらも、グレイ達にある事を伝えた。

 

「こんな事を頼むのは少し心苦しいかもしれないが、恥を承知で頼みたい。上層部のご機嫌取りを任せられないか?」

「うげっ……そういう事か……」

 

 その内そう来るだろうと思っていたが、今になって来たかと顔を少し強張るグレイ達。ヘリアンの言ったご機嫌取りというのは、グレイ達が入隊して以降グリフィンは完全に押し返しによるビッグウェーブに乗っていた。勝利を何度も勝ち取り、鉄血の勢いも弱まっている状況に喜び、何を血迷ったのか飲み会やらゴルフやら上層部のお偉い様を交えて色々しようと考えていたそうだ。

 当然ながら、ヘリアンやグレイ達にもその案内が行き届いていたのだが、飲み会はともかく、ゴルフとかはヘリアンからすれば無理だった。未だに戦争が続いてるのに娯楽に走るとは何事かと呆れる一方だが、参加しない訳には行かなかった。わざわざ相手が誘ってるのに、その誘いを断ったらどうなるか……幾ら何でもそれだけは避けたかった。

 そこで、白羽の矢が立ったのがグレイ達だった。人外染みた彼等ならば対処出来るのでは?とヘリアンは思い、こうしてグレイ達の元に来ては頭を下げてお願いしたという。

 

「自分で言うのも何だが、私も行き遅れの女だ。合コンならまだしも、私にゴルフとかを強要する馬鹿が居るか……!」

「そいつは心中お察ししますわ……んー、まあ、結論から言いますと可能ですね」

「本当か?済まない……こんな仕事はお前達にも押し付けられて欲しく無かっただろうに」

「謝り過ぎですよ、ヘリアンさん。ただ……上層部を相手にせにゃアカンのか……」

「この手のイベントに関して、絶対誰か一人は裏で賄賂とか横領とかの罪を作ってんだろうよ」

「どうせ戦術人形とパコッてんだろ。その上、油まみれなデブ上官……あるあるな展開だな」

 

 想像したら有り得そうだ……とヘリアンすら頭を抱えたくなった程。しかし、本当の問題はそこじゃない。

 

「ゴルフか……やる分なら問題無いな。だが、もしも相手が勧誘目的で俺達を連れて行く為にゲームを持ち掛けたり、グリフィンの戦術人形を目的に賭ける羽目になったらどうする?そっちの方が面倒だ」

「確かにな……グリフィンからすれば一人でも欠けたら戦力が大幅にダウンするし、そんな奴等の元に彼女達を行かせる訳にもいかねぇな」

「だったら勝てば良いじゃない!その為の勝利の女神なんだから!」

 

 バンッ!と勢い良く入って来たのは例の如くK5だった。K5も今が出番の時!と言わざる位に顔が輝いていて、表情からは「連れてけ連れてけ」と書いてあるのが丸分かりだった。まるで散歩を楽しみにしている犬みたいに。しかし……。

 

「それじゃ駄目だ」

「ええっ!?何でよ!?」

「確かに、全力を出して勝てるなら苦労はしないだろう。けど、本当に交渉紛いの事を言ってからこういう展開になった場合、全部勝利で納めるだけが良い事じゃない。相手は腐っても俺達より立場が上の奴だ。全力なんて出してみろ、相手から恨まれて逆に悪いアドバンテージ付けられるのがオチだ。かと言って、負けるなんてのは論外だ。実際にそれが起きるかどうかは分からんが……少なくとも、引き分けまで持ち込ませればいけない」

 

 要するに、上手く同点までに持ち越せという事なのだろう。これには流石のK5も全くの予想外という感じで顔に出ていた。

 

「でも、そんなのどうしたら……ああ、何とかその未来だけは避けなくては!」

「心配すんな。寧ろ、その未来は起こさせないし、絶対に起きない」

「何故そう言い切れんですか?」

「そりゃ簡単な話、俺がこうするべきという流れを既に予測していたからな。幸運とか関係無しで決められた実力でやってやるよ」

「んなぁ!?」

 

 これにはK5もカチンと来た。自分よりも鷹山の方が未来を見通していたというのは自分のプライドが許せなかった事や、何故鷹山が未来を予測出来るのかと色々と言いたい事があったが、とにかくその準備に移らねばならなかった。

 他の仕事とかをグレイ達に押し付ける形になったのが鷹山からすれば少々申し訳無い理由になってしまったが。

 

「悪いな、仕事を増やしちまったけど頼むわ」

「任せろ。こっちもなるべくはサポートしてやる」

 

 そして、ついに鷹山の本領が発揮すべく運命の日がやって来る……。




今回は早く書けた!前のに比べれば大きな成長とも言えるが、また同じ失敗繰り返しそうで怖い……。
後半の方がある意味本気というべきか、TASの本領発揮という事でお楽しみに。
え?嫌な予感しかしないって?今更何言ってんだ(諦め)

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