味方からも敵からもヤベー奴扱いされた指揮官達のいるドルフロ   作:ホワイトアクア

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ウェルロッドちゃんを書こう!

詳しく調べたら、英国出身で紅茶が好き。

英国……紅茶……。

パ ン ジ ャ ン ド ラ ム

どうしてこうなった……まあ、英国キチのアカネチャン思い付いてしまったので、もう書くしか無いと思った。


ウェルロッドMkII「パンジャンドラムはヨコハマタイヤではありません」

 グリフィン開発室にて、グレイ達が何か考え事をしながら話し合いと作業を続けていた。時たまに工具とか材料とかを取っては組み立てている様子が窺える。以前に同じ様な光景が思い出されるが、今回は違う。

 

「この前ロボット作ったばかりなのに、今度は何を作るんだ?」

「戦車を作ろうと思ってな。ただ、完全に作れた経験は無かったし、ある意味これが初の試みになる。基本中の基本として、まずは土台からだ」

「お、おう……良く分からないが……最終的に動かせれば良いって事か?」

「まあな」

 

 全く作る物が想像出来ないグレイ達。唯一ぶっ通しで思い付きながらも作業の手を休めないザックの顔付きは真剣そのものだった。そうしている間に扉を開く音が聞こえ、一人の戦術人形が入って来る。

 

「指揮官、紅茶を淹れて来ました。一休みにどうぞ」

「おう、済まないなウェルロッド」

「いえ、これも仕事ですから」

 

 ウェルロッドと呼ばれた彼女は相変わらず表情を崩さずに真顔のままで紅茶を運んで来た。彼女はハンドガンの「ウェルロッドMkII」という名前で、自らを闇に生きる者と言っていた。

 最初に出会った際には中二病か何かだろうかと不安になっていたものの、後々になって確認したら情報機関や特殊部隊を対象に作られた武器らしく、言ってしまえばエージェントやスパイが使っていた武器として扱われていたそうだ。

 

「ウェルロッドMkII着任します。歓迎会は遠慮します。闇に身を置く私にとって祝いの花など必要無いですから……」

 

 その為、出会って早々にこの台詞を言ったものだから、余計コミュニケーションがやり難い相手と思われた。しかし、彼女は紅茶好きらしく、グレイが作った菓子パンと一緒に紅茶があったのを見たらしく、所々で彼女が紅茶を飲んでいた光景にはそんな可愛らしい所もあるんだなと思っていた。

 

「うん?紅茶……?」

「どうかしましたか、ザック指揮官?」

「もしかして……君って英国出身の銃?」

「はい、そうですが。それがどうかしましたか?」

 

 丁度ある日、ザックが少し歩いていた時に紅茶を飲んでいたウェルロッドを見掛けたそうだ。この時のザックは新しい兵器開発に何かアイデアが無いか模索していたのだが、偶然ウェルロッドと話した時、彼の頭に電流が走る―――

 

「よっしゃあコレだァァァァァァァァァァ!!!!」

「!?」

 

 唐突に叫んではダダダダダッと開発室へと走って行くザック。お前等も手伝え!と半ば強引に参加させられたグレイ達も渋々手伝ったのだが、やる時には真面目な顔付きになっていたという。

 ウェルロッドも一体何をするつもりだったのか気になっていたらしく、紅茶を持って来るのも兼ねて視察しようとしていたが……。

 

「うっし!完成した!」

 

 作り上げた物を見たウェルロッドは思わず唖然となってしまう。それもそうだ、何故ならそれは英国出身ならば知っているだろうあの兵器を見たのだから……。

 

「お前、これ……パンジャンドラムじゃねーか!!」

「だから、思い付いたのがコレなんだよ!コレを大量に作れば負担は軽く減らせるし、ラジコンみたいに操作出来れば問題無い筈だ!」

「問題しかねーよ!元々コイツ実用性が悪くて失敗作だったじゃねーか!しかも、自爆タイプだろ!?特に車輪部分はどうするんだよ!安定するの!?」

「大丈夫。車輪を少しだけ太くして、側面にはヨコハマタイヤの顔にしたから。ついでに真正面と後ろからの攻撃で壊れない様に盾を作ったし、その盾にもヨコハマタイヤの顔を描いてあるし、後は方向転換出来る様にミニサイズの車輪も付けた。オマケとして錆び付いた顔の方にメイクアップもしておいた」

「こえーよ!あんなのを何十何百に追われるとかどんなホラーだ!」

 

 まさかの作り上げた兵器がパンジャンドラム。しかも別の悪い意味で改造されていた。酷いゲテモノを作り上げてしまった事にグレイのつっこみが炸裂。ウェルロッドもまさかパンジャンドラムを目にするとは思っていなかったが、ヨコハマタイヤみたいに改造されていたのは流石に顔が引き攣ったらしい。

 

「誰だコイツにパンジャンドラムなんて案を出したの!」

「誰でもねーよ。ただ、ウェルロッドが紅茶飲んでたから、それを連想してパンジャンドラムが思い付いただけだ」

「頭茜ちゃんじゃねぇか!ついにお前も英国のダークサイドに堕ちたか!」

「何を言ってるのか分かりませんが……指揮官、これ以上祖国を馬鹿にするのなら私でも容赦しませんよ」

「じゃあ、お前あの馬鹿の暴走止められるのかよ!本来のパンジャンドラムよりも色んな意味で凶悪に作り上げたんだぞ!そういうお前がコイツを止めてみろよ!」

「………」

「ウェルロッド、目を逸らすな」

 

 ウェルロッドですら無理だと察したのだろう。彼女の顔に若干冷や汗が流れていたのが見えた。

 想像してみて欲しい。大量のヨコハマタイヤが追って来る光景を。機銃を放ち、自爆して大打撃を与える動く爆弾には恐怖と絶望しか無い。迫り来る錆び付いた笑顔は見た本人の心を震えさせるには充分過ぎる精神的なダメージを与える筈だ。

 

「つーか、ちゃんと機能するの?さっき方向転換出来るって言ってたけど……」

「それをちょっと試す感じ。悪いけど、外まで運んでくれ」

 

 実物大に作ったので、わっせわっせと手押しで押すグレイ達。数分後に広い場所で試運転を行うのだが……。

 

「十字キーで自由に動かせるんだ。で、こっちのボタンが機銃。こっちのボタンが自爆用のボタン。操作は簡単だろ?」

「パンジャンドラムの動かし方が完全にラジコンだった件について」

 

 まあ、勝手に別方向に曲がったりしない分よりマシだろう。それでも、顔の部分だけがどうしてもホラーチックになるのだが。とりあえず、スイッチを入れてから動かすと……。

 

「お……?動いた動いた動いた!」

「意外と速くて草。しかも安定した動きだし」

 

 フラフラした様子も無く、綺麗に動く魔改造パンジャンドラム。更にスピードを上げると、人間が全力出しても追い付かれる速さまで到達していた。機銃の方も順調に作動していて、恐らく自爆の方も起動するだろう。だが、ここは敢えてやらない事にした。寧ろ、ここで爆発させるのはマズい。グリフィンの本部にとばっちりが喰らう。

 

「よし、上手く動かせたから大量生産に入るぞ」

「嘘だろお前……」

 

 まだまだザックの暴走は止まらない。それからパンジャンドラムを大量に作って1週間。グリフィンには数千台のパンジャンドラムが大量に作られていた。もう良いんじゃね?と全員に止められたし、ヘリアンから作り過ぎだとこっぴどく怒られたらしい。

 動けたのは分かったので、今度は実戦も含めて動かした。今回のターゲットはテロリストを殲滅とした目的だが、果たして魔改造パンジャンドラムは何処まで通用するのか。

 

「ちなみに、作戦名はトライピオで行きたいと思います」

「その作戦名止めろ。フラグとしか言い様がねぇ」

「じゃ、行くぞ~」

 

 実験開始。とは言ってもパンジャンドラムがオート操縦するのはまだ先の話なので、同じくコントローラーを持ったグレイ達や他の戦術人形が操縦するという至ってシュールな光景が広がった。目となる部分はパンジャンドラムに取り付けられたカメラのみ。それを頼りに敵を探るしか方法はこれ以降は何一つ出なかったという。

 

「ちょ……!動かし辛い……!」

「あっ!ちょっと誰よ!私の機体にぶつけた奴!」

「あ、横転しちゃった。あー……あー……」

 

 車輪を太くした分、スムーズには進んでいた。しかし、ちょっとの段差だったり、横幅の感覚やカメラの見え難さもあってか、中々進めずに倒れてしまうのもチラホラとあった。これはこれでまた改良の余地がありそうだな、と納得するザック。すると……。

 

『ひぃっ!?な、何だ!?』

 

 画面に映っているテロリストがパンジャンドラムの顔に驚いては後退りしていた。そりゃ、直接目の前に現れてたりなんかしたら恐怖の一言に過ぎないだろう。だが、恐怖よりも更なる事態に。

 

「ほい、スイッチオン 」

 

 機銃のボタンを押すと、一部から機銃が放たれる。上手い具合に方向転換で向きをコントロールし、一人ずつ確実に仕留めて逝く。死んだのを確認すると、そこから離れてはまだ潜んでいるテロリストの元へと移動する。

 

『な、何だあの顔みたいなモノは!?』

『ば、バケモノなのか!?E.L.I.D.の仲間なんじゃ……!』

『分からねえ!けど、こっちに迫って来てるぞ!襲うつもりなら早めに倒せりゃ問題ねぇ!撃て!』

 

 丁度その先には結構な数で集まっているテロリスト達が。テロリスト達がパンジャンドラムに銃を撃ち続けるが、硬い防御に守られたパンジャンドラムは傷1つ付かず、止まる事なく物凄い速さで駆け抜ける。

 

「鷹山、ケンジ、ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!」

「「了解!」」

 

 タイミングを見極め、中心地点にまで動いた所で自爆のボタンを押す。その威力は半径50m以内の敵を一撃で葬れる。錆び付いた笑顔からの爆発四散は敵からすれば何とも恐ろしい光景だろう。その考える余地すら与えずにパンジャンドラムは次々と敵を倒しては自爆で周囲を巻き込んだ。

 

「………」

 

 ウェルロッドはただただ茫然として見ていた。確かに世間では失敗作として伝えられたパンジャンドラムだったが、今になってこんな風に使われるとは考えていなかっただろう。元だけでも変態兵器の部類に入るのに、更なる改良とも言えない改造で恐るべき兵器と化したパンジャンドラムにはウェルロッドも正直認めたくないという気持ちがいっぱいだった。

 ともあれ、試運転としては上出来とも言えるレベルだったので、何時しかまた使う機会が来るのでは無いかと、とりあえずは残しておこうと最終的に決定された。

 

 

 

 

 

 だが、それも束の間。パンジャンドラムの悪い点を見直したザックは何かもう1つ代わりとなる物が作れないか模索していた。パンジャンドラムの問題点として、段差で倒れたり、距離間隔を掴めずにぶつかってしまう問題をどうにか出来ないか悩ませていた。

 

「車輪はスピードは速いが、悪路走行にはまだ向いていない……安定した動きとなると、ロボットみたいに足を付けた方が安定するかもしれないな……いや、待てよ……?2脚だからこその芸当があれば……」

 

 更なるアイデアを考察し、また作り上げる作業を続けた。たった数分で完成したが、その結果……。

 

「出来た……!」

「いやさ……お前、ホントに何作ってるの……?パンジャンドラム何処行ったの……?」

 

 ザックの報告を受けて来たグレイ達だったのだが……完成したのは車輪ではなく2脚が付いた変態兵器だった。最早、パンジャンドラムの形ですらない別物と化していた。何気に足の部分が妙に生々しいデザインになっている。

 

「これ、メタルギア月光やん……どうしてこうなったし……」

「パンジャンドラム要素何処よ?」

「そりゃ、あの機銃が付いてる頭部だよ。車輪だとどうしても安定性がちょっと欠けるから、もう少し安定性を上げたらどうなるか考えたらこうなった」

「ただ交換しただけじゃねーか!というか、まだヨコハマタイヤの顔付けてるの!?」

 

 要するに、パンジャンドラムの車輪だけを外し、月光の足を取り付けただけの完成品だった。生足みたいなパーツの影響で更なるキモさが浮き出ている。が、車輪には出来ないジャンプや簡単に横転しないケースを考えれば妥当な方ではあるのだが……。

 

「車輪から2脚に取っ替えただけで、武装とか変わってないだろ。ホントに大丈夫かそれ?」

「平気だろ。それに、機銃だけじゃなくてロケランとか積めるからこれでも改善されてるぜ?まあ、悪かったら足を替えれば良いだけの話だし」

『違う、そうじゃない』

 

 全員の思考が「とりあえず、その頭部を外せ」と一致しているのだが、意地でもその頭部にしたいのか、中々言い出せない状況。再び外で軽い試運転とテストを行ったが……。

 

「パッと見……普通だな」

「普通だね」

「結局オリジナルの月光と変わらない戦闘パターンだな」

 

 跳躍して銃を撃ち、動物の鳴き声とかで鳴いては時折自爆もする月光。たったそれだけが故か代わり映えしない結果となってしまった。ちゃんと銃が撃ててる分には問題無かったのだが。

 

「クソッ!何がいけなかったんだ!!」

「いや、もう全部だろ。何で惜しい所まで作るんだよお前は」

「単純にパンジャンドラムとメタルギア月光を合体させただけやん」

「そう言うだろうと思って、もう真っ先に作ってあったりしたんだよ畜生ッ!!」

「うわ、キモッ!ヨコハマタイヤの顔だけでもヤバいのに、組合わさったら尚更キモくなりやがった!」

「何か、どっかのゆるキャラにこんなの居たよな……」

「デルタルーンにも出ていた気がするぞ」

 

 開発の末にもう1体別の奴を作っていたらしいのだが、今度はパンジャンドラムそのものを頭部として扱い、車輪の下から足が出ている異様さが漂っていた。彼等が言ってた通り、デザインは何処か見覚えのある姿だった。

 

「完全に合体事故だな」

「パンジャンドラムとメタルギア月光を合体させてコレとか嫌がらせにも程があるわ。笑顔だけでもホラーなのに」

「二つだけでも変態兵器なんだから、何体合体しようが無駄に終わるだけだけどな。これ以上やったって姿や形が変わる訳じゃ無さそうだし」

「何体も合体だと……?」

 

 あっ、と気付いた時には既に遅かった。ザックの頭にイメージが沸き上がり、それを実行しようと悪魔の儀式が始まる……。

 

「では、ここに最速で作った2脚パンジャンドラムを8体用意します!」

「え?何?更に合体させる気なの?」

「4体配合じゃなくて8体……?」

「そして、これら全ての2脚パンジャンドラムを純血合体!!」

「あっ……(察し)」

「光差す道となれ!シンクロ召喚!」

「いや、どっちだよ」

 

 2脚パンジャンドラムが1つの光となって集まる。強い光を放った後、ゆっくりと光が収まってはその全貌が窺える。

 

「現れよ、ダンロップタイヤ!!」

 

 ヨコハマタイヤよりも更に不気味な顔で現れ、予想外な事に腕まで生えていた。そして、開幕の一言が―――

 

「オレサマ オマエ マルカジリ」

 

 絶対殺すだろうと思い、今年一番の絶叫が響いたのは言うまでも無かった。




ちなみに、英国キチアカネチャンの存在を知ったのは、某ホビーの動画を投稿しているためにならない人。あれからです。

・パンジャンドラム
イギリスの変態兵器。これが無ければ多分色んな意味で応用とか無かったかもしれない。大体はお察しの通り、制御が効かずに失敗に終わったが、近年では改良した結果普通に動かせていた。何故動けた。そして、何故昔の英国はもうちょっと考える余地が無かったのか。

・ヨコハマタイヤ
ご存じ、かつて昔の看板ではこれが主流となった不気味なロゴ。錆び付いた笑顔は正にホラーと言えるレベル。

・頭茜ちゃん
パンジャンドラムを愛し続けたヤベー人。これまでヤバいパンジャンドラムを作っては動画投稿してて、「パンジャンドラムは子宮にいるころから知ってました。前世はネビル・シュートです」等というパワーワードを残した。

・トライピオ
ベイブレードのコマの1つなのだが、コイツは見た目通り普通のベイより横幅が2倍デカく、元々はプロペラみたいに飛ばすのがメインだが、防御力は完全に弱い。どうしてこんなのを作った……。

・ジェットストリームアタック
初代ガンダムのドム3体がやってたアレ。今回はヨコハマタイヤだったが、あんなのに3体追われるとか恐怖。

・メタルギア月光
メタルギア4に出て来た敵の1つ。性能は今回書いた通りの内容で、それなりの頻度で出て来る。

・4体配合/純血合体
4体配合はドラゴンクエストモンスターズで、純血合体は女神転生デビルチルドレンとかで出る。両方とも同じモンスター同士で合体すると違うモンスターとなって生まれる事がある。

・どっかのゆるキャラ
国分寺のマスコットキャラクターにしこくんの事。デルタルーンでもそれっぽい敵がいた。

・ダンロップタイヤ
大正時代、ダンロップタイヤもヨコハマタイヤ並みのキモいデザインだったらしい。途中まではヨコハマタイヤと同じだが、ダンロップタイヤは手足も生えていて、自転車に乗ってる姿が。怖いわ。

・オレサマ オマエ マルカジリ
女神転生でケモノ系の悪魔を作った際に言われる挨拶。でも、かわいい。

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