味方からも敵からもヤベー奴扱いされた指揮官達のいるドルフロ   作:ホワイトアクア

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今こうして書いている私自身も、アンチとかヘイトを書くのもある意味考えものだなと衝撃を受けましたね。
今回書いてる途中、ツイッターの方でまだ若い女子プロレスラーが亡くなったという情報を何度も目にしたのですが……言って良い言葉なのかどうかは本当に考えた方が良いですね。だからと言って何も出来なかった自分が偉そうに語るなと言われてしまいそうですが……要するに、他人事じゃないんですよね。

今回MDRを出した後で偶然だったのかどうか分からないですが……まさかそんな出来事が起きていたなんて想像していませんでしたからね。ネットマナーというのは本当に見直した方が良いです。いや、本当に。


ゲーマー人形n番勝負 中

 予想外な展開にまずは一点分先取した鷹山。これにはMDRも怒りしか湧いて来なかった。

 普通のゲームだと思っていたものが実は変なギミックが搭載された嫌なゲームをさせられたのだから、これで怒らない方がおかしい。

 

「何だよこのクソゲー!!こんなのクリア出来ないじゃん!あんな滅茶苦茶なシステム入ってるとか聞いてないし!どう見てもコレこっち側が不利になる仕様としか考えられねぇじゃん!ズルい手を使いやがって!」

「まあ、騙しの形になってしまったのは謝る。この先も少しだけおかしなゲームが混じってると言っておくが。ただ、勘違いしちゃ悪いけど、俺とてこのゲームは初見だ。さっきみたいにデカい原が落ちて来たり、上みたいに割と邪魔なヤツを対処するにはどうするべきか考える必要もあるから、正直難しい。ついでにランダム要素が強いから、結局運任せになるのが痛い所だけど」

 

 そう言われてMDRは冷静さを取り戻した。確かに落ちて来るミノが必ずしも同じタイミングで降って来る訳では無いので、もしかしたら早い段階で落ちて来たり、最悪の場合は原が2回降って来るなんて可能性もある。それを考えたらまだこちら側は逆転出来る余裕があるとMDRは心の中で悪い笑みを浮かべた。

 しかし、彼女は勘違いしていた。鷹山の言いくるめによってまだ勝てると勝利を確信していたが、その概念すら無意味。既に勝利する為のルートは確定し、後は乱数調整をするだけ。勝ったと思った時にはもう遅かった。

 

「んじゃ、始めますか」

 

 少し呟いた後、コントローラーを動かす鷹山。動作には一切の躊躇いも迷いも無く、スムーズに下へ下へとテトリミノを高速で落とす。その動きに思わずその場に居た全員が驚いていた。

 

「は、早ぇ……!あいつ、最速で終わらせようとしてんのか!?けど、肝心の上と原のブロックにはそう易々と対処なんて―――」

「おーっと、ここで鷹山選手上ブロックを綺麗な形で納めた!続けて積み重なる!消える!そして再び現れた上ブロックを着実に一段ずつ消して行く!あーっと!ここでまさかのテトリスが決まったァ!残りのラインも半分切って後僅かとなりました!」

「何ィ!?」

 

 自分がさっきまで慌てていたプレイとは真逆で、圧倒的な速さでミノを消して行く鷹山。こっちは5分位は掛かったというのに、鷹山は1分か2分程度で終わらせようとしている。

 このままではマズい、さっさと原が降ってくれと願ったMDR。すると、その祈りが通じたのか原ブロックが落下して来る。

 

(よし!勝ったッ!)

「来たぞ来たぞ!最大の敵ともなる原ブロック!この原ブロックを鷹山はどう乗り越える!?」

 

 これならば安易に消す事は出来ないと思ったMDR。だが、それもTASの前ではそれも無駄だった。焦る表情すら見せず、冷静なままで一段ずつ消して行き、気付けば残りのラインも一桁台に突入し、ついには―――

 

「おーし、ゲームクリア」

「嘘ぉ!?」

 

 まるでウォーミングアップに過ぎないかの如く、あっさりと彼はゲームをクリアしてしまった。あまりの展開に「こんなのズルい!チーターだ!」とか言いそうになったが、果たしてテトリスでチートをした所で何になるんだろうかと頭の中では鷹山がズルをした訳じゃないと分かっていた。

 それこそテトリスでのチート行為などある意味分かり易く、見ている全員が見ているのだから即座に分かる筈だ。手の動きやずっと画面を見続けては邪な動きは一切無かった所を見ると、真剣にやっていた様子でやっていたのは確かだ。故に―――

 

(高速演算でもしてんのかコイツ……!?)

 

 当たらずと雖も遠からず、とは正にこの事だろう。リアルであってもゲームであっても、彼の強みは予測しながらのルート選択。どんなに強かろうが何だろうが、彼のポテンシャルの前では勝つのはほぼ無理だろう。

 それでもMDRは諦め切れなかった。絶対にコイツに勝ちたいという気持ちが膨れ上がる。コイツに負けるだなんて一体何時決めた?まだ勝負は終わってはいないと。

 

「まだよ……まだ終わってないッ!」

「あっさりと終わったのに、まだやるの?」

「煩いわ!あれを見せられて納得なんて出来ないわよ!そもそもマトモなゲームですらなかったんだから、次こそ真っ当なゲームをさせなさいよ!」

「はいよ、じゃあ次はちゃんとしたテトリスにするから」

「いや、最初から出しておけよそこは!!またパチモンやるとかなったらホントにぶち殺すからね!?」

 

 半ば脅されみたいな形となっているが、こればかりは自業自得なので反論はしない鷹山。次は至って普通なテトリスで勝負する事になったが、ここで鷹山はある事を言った。

 

「このまま俺が勝ち続けるのもなんだから、ハンデ与えてやるよ。そうだな……Tミノ浮かせた状態でテトリスやってやるよ」

「はぁ?」

「ミノを浮かせる?え、そんなプレイ出来るの?」

 

 彼のおかしな条件に何を言ってるのか理解出来なかった全員。もしかしたら罠か何かなのか疑ったのだが、その理由はすぐに分かる事となる……。

 次のテトリス勝負では一般参加も受け付けており、二人を含めて99人で対戦する形となった。その中にはアーキテクトやデストロイヤーは勿論、RFBやKSG、更にはグレイ達や他の戦術人形、カリーナやヘリアンにペルシカまでもが何故か参加していた。多分、面白そうだからとか何かだろう。

 全員分の通信が繋がり、準備が終わると一斉に全員がカチカチと動かしながらプレイし始めた。

 

「ふふん!ゲーマーたる私の実力、見せてあげるわ!」

「共闘とは言え、個人戦では負けたくありませんね。本気出させて貰います」

 

 RFBやKSGも本気で動かしていた。やはりゲーマーというだけであってか、慣れた手つきで素早く動かし、ブロックを消しては他プレイヤーに妨害ブロックを下からズイズイと上げて行く。集中的に狙われて落ちた者や、咄嗟の出来事に対応出来ずに脱落した者など、数分後には何人かが勝負に負けた。一方で鷹山はノロノロと何か考えながら動かしていた。

 

「さて、どうしようか……」

 

 少しだけ考えた後、遅れながらも積み上げ始めた。しかし、彼の行動を良く見ると……何やらおかしな事をし始めたではないか。囲みみたいなのを作ると、その中にTテトリミノを入れ、更にそこから一工夫を入れると……。

 

「ちょ、鷹山だけなんか異様なんだけど!?」

「お前、ホントに何してんの……?」

 

 グレイの声に反応して全員が振り向く。そこには鷹山が言った通りにTテトリミノを空中に浮かべたままプレイを続行している光景があるではないか。しかも、この囲いを崩さない様に縛られた段数で逆転を狙おうと動かしまくっている。これにはゲーマー達もその発想は無かった、と困惑。

 つまり、鷹山が言ったハンデというのはちょっとしたアートを作り、アートした際に何段か使ってしまったのにも関わらず続行し、更には作ったアートの段だけは消さずに持続させるという……あまりにも有り得ない縛り方だった。

 

(マジかよ……けど、言い換えれば何段か攻撃の範囲が狭まっただけだし、何よりも狭い分だけミノを動かす処理能力にも限度がある!少しずつ積み上げれば、迂闊にTスピンとかも出来やしまい!)

 

 この勝負、貰った!とニヤけるMDR。しかし、直後にガラッと空気が変わる。いや、空気だけじゃなく流れも完全に変わった。その正体にハッと気付いたMDRが鷹山の方を見ると……。

 

―――パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン(ry

 

「んなぁっ!?」

 

 画面を見て唖然とするMDR。それもそうだ。さっきまでノロノロと動かしていた彼がいきなりフルスロットルで動かしているのだ。1秒に3つか4つは積み上げ、Tスピンすら回している様子が見えないのに成功している文字が表示されてる。手の動きも最早尋常では無く、一人、また一人と、凄まじい猛攻に次々と脱落する者が。そして、ついにはグレイ達やMDR達も巻き込み―――

 

「え、ちょ、うわぁぁぁぁぁ!!」

「こ、攻撃が早くて対処出来ねぇ……!」

 

 仲間だろうが何だろうが無慈悲に攻撃を続ける鷹山。何とか上位までキープしていた一部も、RFBやKSGも鷹山の動きに追い付かず……。

 

「オラァ!単独トップだ!」

 

 たった数分で残りの生存者も脱落。正に圧倒的とも言える業物。しかも、自分が設けたルール守ってまでやり遂げてしまったのだ。これでもかと見せられた一同はただただ驚いたまま固まり、MDRに至ってはこんなのを相手にしていたのかと絶望していた。

 

「く、くそぉ……!」

「勝負にならんだろコレ……このままじゃ可哀想だし、誰かと交代するか?」

「だな。じゃあ、せめて次は……ケンジ、お前がやってやれ」

「え、俺?」

 

 これ以上鷹山と戦っては彼女達との勝負も目に見えてしまっているので、次は一般人と戦えば良いんじゃね?とグレイは判断した。その際、何故か自分に振られたケンジは戸惑っていたが、状況が状況なので断れずにはいられなかった。これを聞いたMDRは希望が見えてきたかの様に目を見開いた。

 

(確かに……鷹山指揮官を相手にするのは無茶があった……けど、ケンジ指揮官ならば逆転の可能性はある!こんな所で無様な姿を晒して堪るかっての!)

 

 華麗だの勝つだの散々言ってた彼女だが、ボロ負けの連続でいよいよメンタルも危なくなって来た。掲示板の方でも彼女を罵る様な言葉が多くあり、彼女が泣く姿を見てみたいと望む声がチラホラ上がっている。

 で、代理としてケンジが参戦。とりあえず、まだ妥当なゲームとして次に戦うソフトは「ドクターマリオ」。ウイルスを色の付いたカプセルでぷよぷよみたいに4つ並べて消すという至ってシンプルな内容だ。これならばまだ出来るだろう。しかし……。

 

「ここでの勝負は得点ではなく、最速タイムでのクリアとして扱う。追加でカプセルの落下速度をハイ、レベルは20からのスタートで始める。異論は無いな?」

 

 と、グレイが勝利条件を付け加える。この状態のままで勝負するには流石に苦戦を強いられるが、いざプレイしてみると冷静さを保ったまま真顔でコントローラーを動かしていたMDR。危なっかしい部分もあったが、根気強く頑張った結果……。

 

「タイムは……4分だな」

「よっしゃぁっ!!」

 

 これなら勝てる!と勝ち誇ったMDR。この勝負に勝つにはMDRの記録を上回るタイムを出さなければいけない。また、配置の関係でのランダム要素も強く、本当に運頼みの状況に果てしなく近かった。

 いよいよケンジの番が来て、スタートさせたケンジは黙ったまま画面を見続けた。そして、何かを見つけたのかカチカチと高速で動かしたケンジはMDRみたいなやり方とは別に、何故かカプセルを積み上げる作業をしていた。

 

「カプセルだけの積み重ね……あっ(察し)」

「おい、知ってるのか鷹山?」

「まあ、知っていると言えば知ってるな……これ、俺じゃなくてもフツーに人力で行けるタイプの技。仕組みとかを極めれば最速タイム出る」

 

 勘付いた鷹山が答えた瞬間、ケンジの方で変化が起き始める。画面を見ると、コンボが始まって次々とウイルスとカプセルが消えて行くが、コンボを繋げ過ぎた影響なのか分からないが、まだ控えているウイルスも含めてゴッソリと全部消えてしまった。

 突然の出来事にビックリして目を疑うも、普通にゲームが進んでいた。ちなみに肝心のタイムは……。

 

「あ、1分近く切ってやがる……」

「はぁぁぁぁぁ!?ちょ、何で!?というか今の何!?」

「今のか?今のはSFC版にしか無いバグ技でな。これをする事によって大幅にウイルスを消去出来るんでな。まだ俺が小さい頃は辛うじて生きていた実機でコレを極めていたんだよ」

「極めてた!?」

 

 そう言えば、そんな事をしていたな……とエルは昔を懐かしみ、カトレアも「あの時のケンジさんに限っては医療とは別で楽しんでいたのは珍しかったです」と発言していた辺り本当だったのだろう。

 衝撃の事実と有り得ない最速タイム。バグ技使うのはアリなのか!?と言いたくなるが、ここはあくまでも「最速タイム」を競うだけ。しかも、バグ技を使ってはいけないなんて事は一言も言っていない。だからこそ抜け道を使わざるを得なかったのだろう。

 

「気付かぬ内に言葉という言葉で言い包められていたわね」

「間抜け過ぎて笑いが止まらないわね。で、まだやるつもりなの?」

「くっそぉ……!ま、まだまだァ!」

 

 散々鷹山にボコられて、その後はバグ技使っただけでもボコられるのも癇に障ったのか、MDRはキレながらも続行した。

 ぷよぷよやってもガチで攻められ、鷹山にはぷよを回転させない縛りを設けたのにも関わらずボコボコに反撃される。テトリス武闘外伝ではグレイやエルが選ばれてはどう操作するか迷ったものの、数分後には「あ、大分コツが分かって来たかも」と呟いた後に必殺技で上手い具合に「ブロック?消させねーよ!」という勢いで妨害した。ちなみにアラジンとニンジャの使用率が高かったとの事。

 ボンバーマンなんかではクラウスがお馴染みの「([∩∩])<死にたいらしいな」という言葉と同時に容赦の無い攻撃を叩き込まれ、フランがパネルでポンを選んだ時には10秒前後でほぼ確実に終わっていて不憫な目に遭い、誰を選んでも1勝すら奪えなかった。

 

「ねえ、しきかーん……」

「どした、45」

「ちょーっとやり過ぎたんじゃない?」

 

 UMP45に声を掛けられるまで何時間か経った頃、もうMDRのメンタルはボロボロだった。人を馬鹿にしたり、からかったりしたらどうなるのかってのをこれでもかと散々教え込まれたのだろう。既に彼女の目に涙が流れていた。自業自得だが。これを見たRFBとKSBも、勝てるのかどうか不安になって来たそうだ。

 

「………あれ?ってか、何時の間にグレイ指揮官達も参戦していたんだっけ?鷹山指揮官だけじゃなかったの?」

「そういうのは気にしたら負けだよ」

 

 途中で気付いたアーキテクトとデストロイヤーだったが、面白そうだったし最後まで見てみようの一点張りだった。




・Tミノ浮かせた状態でテトリスやってやるよ
テトリス99で奇抜なアートを作り出すガチ勢「コブレッティ」さんの事。あの人、クリーパー作ったり、ブロックを使ったアートとか作るんだもん……凄いわ。

・1秒に3つか4つは積み上げ
もしかしたら4つ以上だったかもしれない……ちなみに元ネタは「テトリスDS」。あれのTASを見る限り、凄いスピードで積み重ねている……。

・SFC版にしか無いバグ技
今回使ったのはバグ連鎖というテクニックで、ドクターマリオ医学会において最速・低手数においては必須のスキルとも言える。ちなみに頑張ればTASじゃなくても出来ちゃう。

・ぷよを回転させない縛り
元ネタは「[TASさんと休日] ぷよぷよフィーバー 俺 vs TASさん」から。TAS相手に真っ向から挑んでも負けるのは目に見えていたので、ぷよを回転させるのだけを禁止(ただし、十字キーでの移動及び高速落下は許可)にしたのだが、それでも負けた。オーバーキル付きで。ムチャシヤガッテ……。

・テトリス武闘外伝
従来のテトリスでの対戦に必殺技が付いた様なゲーム。対戦でやると絶対に喧嘩になる率が高い友情崩壊ゲーム。wikiにもその詳細が書かれているが、「【TASさんの休日】テトリス武闘外伝 アラジン vs ニンジャ 【TAP】」を見て頂ければその酷さというのが一目瞭然で分かると思う(白目)

・パネルでポン
任天堂が出しちゃいました、ロリっ子なフレンズが登場するパズルゲーム。TASでやると10秒前後で相手が死ぬ為、「パネェポン」と呼ばれるのも当たり前となっていた。

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