味方からも敵からもヤベー奴扱いされた指揮官達のいるドルフロ   作:ホワイトアクア

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ついにネゲヴ小隊投入。
それ以前にパソコンがヤベーヤベー。ネットに繋いだらブルースクリーン連発だよ。何がどうしてこうなった……(白目)


「自由」の在り方 上

「ほいほいっと」

「どっせい!」

 

 静かな廃墟の街中。そこで銃が放たれる音と何かの叫び声の様な声が飛び交う。彼等が戦っていたのは当然の如くE.L.I.D.を相手にしており、今回は戦術人形達の実戦経験も兼ねての任務となっていた。

 

「うん、皆動きは良くなってきたな」

「指揮官達のお陰ね。ただ、訓練はものっそいハードコースだったけど……」

「何言ってんだ。実戦なんだぞ実戦。実戦って事は自分自身も狙われるって事だし、何時どのタイミングで狙って来たりするのか分からないしな。命の奪い合いの状況下で下手な指導なんてしたくないからな」

「それでも素早いから当てられないんだけど……」

 

 反射神経や技量など正確なスキルが要求されるが、彼等がグレイ達だと中々落ち着いて考えを纏めるのが難しくなる。何度かペイント弾を使った訓練で彼等を撃とうにも身体を仰け反って避けたり、弾を弾で相殺させて落としたりと何気に凄い事をサラッとやり遂げてしまうので訓練の意味が無くなりそうになったとか。

 なので、今は彼女達に合わせた鍛練方法で鍛えているが、成果は着実に現れているみたいだ。これ位で良いだろうとE.L.I.D.を片付けた後、M4が飲み物を持って鷹山に近付いて来た。

 

「お疲れ様です指揮官」

「うん、お疲れさん。にしても敵の数減らねえなぁ……鉄血はともかく、E.L.I.D.みたいな敵を頻繁に見ている様な気がしなくも無いが……」

「元々はコーラップス液の影響で世界にまで感染が広がったレベルだからな。明らかに終末世界並みのシナリオになっているというのに、まだ辛うじて生きているのは幸運なのか不幸なのか……」

「けど、一向に減らねぇ様子だよな。寧ろ増えてる?世界規模の感染だから減らしてもキリが無いって言い切るのが現状だけどな……」

「鉄血はそれなりに基地を壊したりして勢力を減らすには問題無いんだが……鉄血よりもE.L.I.D.の方が目立つか」

 

 これでもガーディアンとかを徘徊させながらも、敵勢力を発見した際には即座にレーザーを放って塵すら残さずにオーバーキルしており、比較的に安全にはなっていたのだが、内蔵された映像データを一通り確認した所、やはりE.L.I.D.の方がそれなりの頻度で出現していたのが判明した。

 これについてどう対策を取ろうか指揮官全員が頭を悩ませていたが、1つも案が思い付かない。具体的にはE.L.I.D.が千匹以上の群れで来た場合の対処法に絶対的な方法が欲しい所だった。

 

「うーん……今度新作の大量生産を図るのもアリかもな」

「人手がもうちょっと欲しい位だし」

「もう充分だと思うけどなぁ……」

 

 寧ろそんな事をしなくてもアンタ達が本気出せば充分でしょ、とUMP45が静かに突っ込む。本人がそうしたくないだけなのか、それともわざとなのか。どっちにしろ反応に困る言葉だ。

 

「そうは言うけど、俺達戦いだけが本業じゃないからな?耕したり、建設したり、大地や街とかを復興させたり……」

「いや、そんな事するの多分世界中廻ってもここしか無いよ?何で軍とか率いる指揮官が農業とかやってるの?おかしくない?」

 

 そう言われると反論し辛い。グリフィンに就職した際に真っ先に考えたのが食糧とかそういう方面の問題で、底を尽かない様に予め育てていた筈だった。しかし、気付けば方向性が妙に違う方向となったのだが、結果的にこちら側に問題無ければこのままで良いんじゃね?という流れとなった。

 

「てか、俺達の場合は強引にグリフィンに入れさせたって感じだけどな」

「蝶事件での出来事を見ちゃったから、急いで仲間として引き入れろとか必死になってたんじゃね?としか言えないし」

「いきなり罵倒されたのは覚えてるし」

「本当に済みませんでした……」

 

 代表としてM4が謝ったが別段彼女達が悪いって訳でも無いので気にはしなかった。まあ、俺達こんなだからと諦め掛けてはいるが。そんな風に話していたら、グレイが先程の話で何か思い出したかの様に呟く。

 

「人手と聞いて思い出したが、グリフィンで活躍したいって言う戦術人形が来るって話聞いたか?」

「ああ、覚えてる。事前連絡でそっちに来ると伝えられてはいたが、何時来るのか肝心の時間だけは伝え忘れていたよな……」

「新しく入る仲間も何だか可哀想ね。これから先有り得ないものを嫌とでも見せられてどんな反応するのかしら」

「ちょっと45~?それどういう意味?」

「自分の胸に手を当てて思い出しなさいよ」

 

 言われなくても自覚してるので、なるべく自重はしている方だと言ってるが、時々吹っ切れてしまっては好き勝手に大暴れする程のレベルなので、最終的にドン引きされる未来しか見えなかったが。精々良い関係を築けるする位に努力はするそうだ。

 

「ちなみにどんな奴が来るんだ?」

「4人だ。その上で小隊メンバーとしても成り立っている実力候補だ。名はネゲヴをリーダーに率いる「ネゲヴ小隊」。戦力としても問題は無さそうだ」

「ふーん……まあ、期待はしておくよ」

 

 と、話し込んでいると通信機が鳴り出した。画面を見るとカリーナの名前が表示されており、グレイは通話のボタンを押した。

 

「はい、こちらグレイ」

『グレイ指揮官、お疲れ様です。任務中申し訳ありませんが、至急グリフィンに戻って来てくれませんか?例のネゲヴ小隊がそろそろ到着するとの情報が入りまして……』

「ちょっと勘弁してよぉ!土壇場で連絡するか普通!?というか情報何してんだよ!」

『申し訳ありません……でも、いきなり今入って来たんです……何か向こう側で不具合でもあったんじゃないかと考えたのですが……とにかく、至急戻って下さると助かります……』

 

 しょうがないなと溜め息を吐いた後、急いでこの事を全員に伝えた。いきなりの招集に驚いたり呆れたりするなど言いたい事は山程あるが愚痴ってる時間すら惜しい。今はネゲヴ小隊を迎え入れる為に一旦グリフィンの方へ帰還するのだが……。

 

「というか、これ間に合う?」

「ヘリ呼んでも来るまで時間掛かるし、装甲車なんかで行っても時間ギリギリだからな……」

「しょーがねぇな。ちょっくら待ってろ。今、任意コードで入力してワープさせるから」

 

 鷹山のお陰で無事にグリフィンまで間に合ったものの、これもまた見慣れたと実感したらそれはそれで悲しくなりそうな戦術人形達であった。

 

 

 

 

 

「ネゲヴ小隊、只今到着致しました!」

「ん、わざわざ遠方からご足労お疲れ様。忙しい時に悪いね」

 

 到着して少しの間だけ身嗜みを整えた後、軽く書類を済ませている内にネゲヴ小隊が到着したとの情報が入った。代表としてグレイとUMP45が出迎えに行くと、入口に彼女達の姿が見え、彼女達もグレイの姿を見ると敬礼し始める。すると、向こう側のピンク色の髪に赤いリボンを結んだ戦術人形がグレイと45の前に出ては憧れの様な視線で話を続けた。

 

「いえ、こちらこそ願ったり叶ったりだわ。伝説の指揮官に会えるなんて嬉しい以外の何物でも無いわ。これは学び甲斐があるわね」

(アカン)

「で、伝説……?そんな大それた事じゃ無いと思うんだけど……ってか、本当に見習いたいの?」

「あれ?違うの?」

 

 予想とは斜め上の発言に、これにはグレイも45も引いた。ここにはボケしか集まらないのか!とある意味特大なブーメランが突き刺さる感じだったが、敢えてそこは言わなかった。こういう反応は割と始めてだったので、どう答えたら良いのか悩んでいると、杖を持った女性が前に出た。

 

「成程……確かに噂通りの人ですね。良い意味も悪い意味も」

「いきなり会話に混じって第一声がそれですか……失礼ですが貴女は?」

「申し遅れました。私はネゲヴ小隊の一人「ジェリコ」。この子達に戦術においての基礎訓練や実戦等を教えています」

「え?貴女がリーダーじゃないの?」

「ネゲヴは将来私よりも優れた指導者としての可能性があるので、実戦も兼ねて慣らしているのです」

 

 何だか意外な答えに面喰らったグレイと45。そんな単純な理由で良いのだろうかとモヤっとしながらも、ジェリコの発言について問い質した。

 

「さいですか……で、先程の発言については一体どういう理由で?」

「言葉通りの意味ですよ。指揮官でありながらも前線で戦い続ける……例え人並みに外れた才能を持ちながらも、何時死ぬのか分からない戦場の中で戦うのは大変名誉な事だと思います。ですが……」

「何です?」

「少々度が過ぎていますね。本来ならば指揮官というのは戦術人形に的確な指示を送り、戦況を確認しながら進むのが前提です。なのに、貴方達は自ら戦場に赴いては戦術人形を全く鍛えようとしない。しかも、勝手に私有地を使いながら農業を始め、建設までするとは何をしているのですか?挙げ句に鉄血兵を味方に引き入れるとかどういう神経をしているのですか?」

「は、反論の余地もございません……」

 

 ジェリコの怒濤の正論が炸裂。今まで誰もがグレイ達の行動に諦めては突っ込む事を止めてしまったのだが、ジェリコだけは違った。グレイもまさかここまで突っ掛かるとは考えていなかったので、余りの勢いに押し黙りそうになってしまう。

 

「貴方がここの指揮官である以上、もっと指揮官としての威厳をを見せて下さい。見た目も行動も全く似つかわない行動は一切要りません。指揮官の肩書きを甘く見ないで」

「ちょっと、さっきから言いたい放題―――」

 

 45が突っ掛かろうとするが、その前にグレイが腕の伸ばして45を抑える様にして塞ぎ、ジェリコにこれまで言いたかった事を伝えた。

 

「……確かにアンタが言う様に、俺達は指揮官としては似つかわない全く駄目な人間だろうよ。元々俺達は軍事経験した事が無いド素人の集団だ。アンタが怒っても仕方が無い」

「自覚はあるんですね。でしたら―――」

「でもな、流れに任されて巻き込まれたとはいえ、責任を放り投げるなんて真似はしない。この戦争だって人間様の身勝手な都合で引き起こした様なモノだ。その責任を俺達人間が片付けないでどうするよ?アンタの言う様に甘いかもしれないけど、俺達は平和だの正義だの、そんな小さい理由なんて掲げない。とりあえず延々とこの戦いを続けても面倒なだから終わらせたいだけ」

 

 身も蓋もない言葉にジェリコは面喰らった表情をした。自由奔放という言葉が似合う位に彼等らしい台詞とも捉えるべきか。そんな彼等の生き様にジェリコは少し考えた後、「うん」と頷いた。

 

「良いでしょう。考え方は甘いままですが、最後まで貫く姿勢は評価しましょう。貴方のその目を見れば分かります」

「そりゃどうも。「ですが……」ん?」

「それを修正するのも私の役目です。今後、実践訓練や全ての管理スケジュールは私が纏めてやる事にしますので、明日から覚悟して下さい」

「嘘だろオイ……」

 

 丸く収まる―――と思っていた筈なのに、絶望一直線の一声が投げ掛けられた。反論したいが、幾ら反論しようとも無駄だろうし、ジェリコの性格を考えたら真っ当な理由じゃない限り彼女が変えようとするのは到底無理なのかもしれない。

 そんな様子を物陰からコーヒー缶を飲んでいた鷹山と残りの404小隊、そしてAR小隊がじーっと見つめていた。

 

「面倒な事になったわね……」

「あのグレイが押されるなんて珍しいな。にしても、ネゲヴ小隊ねぇ……随分と自信満々な言い草らしいけど、本当なのかね?」

 

 実際に会ったばかりなのでまだ何とも言えないが、あの口ぶりからしてありとあらゆる経験を積み重ねて来たのだろう。ネゲヴ自身が戦闘のスペシャリストだと自信満々に言ってはいるものの、本当にそう言い切れるかどうかも微妙な所である。

 しかしながら、一番の問題はやはりジェリコの方だろう。最後に彼女が本当にそう言ったのであれば、今後農業とか建築とかの時間も削れてしまう恐れがある。それだけは個人的に勘弁願いたかった。そう考えていると、HK416がどうもさっきから沈みっぱなしの表情をしていたのをUMP9が気付き、そっと声を掛けた。

 

「何か表情が暗いよ416。あのジェリコって人と知り合い?」

「知り合いも何も、あの人は私が404小隊に入る前、私に戦闘や銃の扱いとかも教えてくれた教官なのよ……」

「うっそぉ!?」

 

 まさかの事実に驚く全員。そうなるとHK416の上官たるジェリコが直々にここへ来たという事となり、ネゲヴ達も彼女の元で鍛えられた……そうなるとネゲヴ自身があそこまで言い切れるのも納得だろう。

 

「だから、いずれここの方針と教官との方針はぶつかり合うんじゃないかって危機感を感じていたの……そしたら、案の定……」

「こうなる事を見越していたって訳か……」

 

 もっとも、見た目も言動も軍人よりに近い雰囲気を漂わせており、迂闊に余計な事は絶対に言えないだろう。こればかりはグレイ達ですら苦手意識を持ってしまう位だった。

 果たして穏便に済ませて貰えるのかどうか……地獄の日々がついに始まった。




ジェリコさん綺麗なんだけどな……お堅い故に近寄り難いイメージが……。
ネゲヴも公式で欠陥があったとはいえ、あんな風にドヤ顔とまでは行かんが自信満々に言ってくると、こっちとしては「お、おう……」みたいな反応になるから困る。

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