味方からも敵からもヤベー奴扱いされた指揮官達のいるドルフロ   作:ホワイトアクア

50 / 60
少し引き延ばした結果で1万文字ちょいとか何してんの俺……(白目)
挙句に戦闘シーンとか色々頑張ってたら前半と後半に分けざるを得なかった……描写下手だから許して。
書いてる合間にネタもポンポン浮くから困ったもんだわ……。


「自由」の在り方 下(VS TAR-21/ガリル)

 ネゲヴ小隊との対決を引き受けてしまったHK416。静かな闘志を燃やした後、ジェリコは「明日の模擬戦、待っているぞ」と言い残して去った。その間に取り残されたネゲヴ達もハッと現実の方へと戻って来る。

 

「あ、貴女達が戦闘のスペシャリストの私達に勝てるとか認めないんだから!覚悟しなさい!逃げたりなんかしたら承知しないわよ!」

「あ~……何か分からへんけど、やるからには全力でやらせて貰うで。こっちもそう簡単に負けたくないんや」

「では、失礼致しますわ」

 

 それぞれがそう言い残し、ジェリコの後を追い駆けて行った。残った全員はやっちまったな、という様な雰囲気になっていて、HK416も早まったかしら……?と内心焦っていた。

 

「ちょっとちょっと、どうしたの?」

「あ、指揮官」

 

 すると、丁度グレイ達がこちらの方に歩いて来た。どうやら彼等はジェリコに激しくしごかれているんじゃないかと少しだけ心配になり、こうして見に来ていた訳なのだが、先程の雰囲気からして何かあったんじゃないかと察したらしい。合流した所で416がこれまでの出来事を全部話した。

 

「さっきから何だか喧しいと思ったら、なんて事を引き受けちゃったのさ、このおバカ」

「ご、ごめんなさい……」

「でも、面白そうだから許す!」

「早ッ!幾ら何でも変わるの早過ぎだよ指揮官!」

 

 怒られるかと思ったが、軽く済まされてしまった。そこは指揮官としてどうなのか問いたくなるが、グレイ達もジェリコの指導には不都合が色々と起きてしまっていた。

 何とかなったものの、これから先であまりにも厳し過ぎて皆からの反感を買ってしまったら、もうどうこう抑えられる状況とは言えなくなる。

 

「しょうがないだろ。こっちもジェリコに行動制限されてから中々動けない始末だったんだ。それこそ、丁度良い機会だ。アイツ等に俺達の実力ってものを見せ付けてやれば良いのさ。ついでに俺達のやっている行動を認めてくれるまで」

「認めるって……何?指揮官自ら出るの?」

「いや、流石に今回の場合は俺達は出ない方が良いんじゃないかと。戦術人形同士の模擬戦に人間様が水を差すってのもどうかと。それに、俺とか出たら終わるし」

『ですよね~……』

 

 良くも悪くもグレイ達の方が戦いのスペシャリストなんじゃないかと、ここに居る全員が恐らく同じ意見を示すだろう。

 仮に戦っても空中からの奇襲を仕掛けたり、有り得ない方向や場所からの攻撃に翻弄される未来しか見えないのだ。そうなってしまっては勝負にならない為、ここは敢えて自重していた。

 

「ま、出なくとも最低限のアドバイス位はくれてやっても良いさ。けど、ネゲヴ小隊は初めてだからな……何か癖とか特徴とかあれば良いんだが」

「残念だけど、それは不可能に近いわ。彼女が言ってた通り、ネゲヴ小隊は戦闘のスペシャリストよ。教官の元で指導を受けていたという理由もあるけど、最大の特徴となると……「完璧」の一言になるわ。真正面から行っても返り討ちに遭うし、団体同士で攻めたとしてもチームワークやカバーは相手が上。後ろに攻め込もうにも素早く勘付けられるから一瞬の隙すら生じないわ。罠を仕掛けようにも警戒が高いから即座にバレるでしょうし……」

「それはHK416自身の体験談?」

「そうね……何度か手合わせでやったけど、どんなに挑んでも無理だったわ。その時はまだネゲヴと残り二人は居なかったと思うけど、教官相手でコレよ。だから、一度も勝てた覚えは無いわ」

 

 そう聞いて深く考えるグレイ。だが、その数秒後に何か閃いた様子だった。

 

「うん、大丈夫。これ勝てるわ」

「ちょ、聞いてたの!?相手は完璧過ぎて戦うのは難しいって!」

「聞いてたよ。だからこそ突破口を思い付いたんだよ。聞く限りだと、どんな方面でも対処出来ると言ってたな?だけど、それはあくまでも想定して当たり前の範囲までのヤツだ。ならば、想定外からの攻撃ならばどうなるか?直前の攻撃ならば攻撃が来たとしても、その対応が遅れては逃げ出す事も防ぐ事も出来ない。その習性を使えば良いのさ。加えて、向こう側は慎重になり過ぎるってのもあるから、案外常識破りな方法や間抜けなやり方でも行けそうだったりするかもな」

 

 そう言い切るグレイだが、416達は何が何だか分からないという表情をしていた。もう少しヒントを与えてあげようとグレイは爆弾を取り出した。

 

「仮に俺が戦う事になったら爆弾だな。けど、一括りに爆弾ってのはちょっと違うか。地雷とかダイナマイトとか、無傷なタイプだとスタングレネード、スモークグレネード、チャフグレネードとかもある。で、話を戻すが……精々使うとしたらC4爆弾みたいな設置式とか、起爆式のスイッチタイプあれば理想的だ。地雷はコンクリートだと無理があるかもしれないが、使う価値はある。後は俺の代表として爆弾矢」

「結構使うのね……けど、これだけ使ってどうにかなるの?」

「上手く使いこなせば3人までダウンさせる事は可能だ。大事なのは常識的に使うんじゃなく、爆弾自身の慣性の法則を利用するんだ。爆弾は敵が引っ掛かるまで待ったり、投げたり撃ち込んだりする以外にも有効な手段はあるぞ」

 

 ならばその方法とは何か。416はこれまでの方法を思い返してみたが、基本的な爆発物の扱いだけしか無かった。

 それ以外で大体思い浮かぶのはグレイ達の洒落にならないデタラメな動き。これを真似しろと言われたら、416も首を振って無理と言い切るだろう。

 

「もうちょっとヒントは無いかしら?爆発物でどう応用するのか微妙に分からないの」

「じゃあ、もうちょいヒント。爆弾によって発生する爆風とか威力ってのは凄まじいだろ?これで何か吹き飛ばす、或いは押し出すと言ったらもう分かるよな?ついでに地雷もわざわざ足で起爆させる必要も無い。大事なのは物理的な衝撃を与えれば何時だって起動出来る。ここまで言えば後は分かるんじゃないか?」

 

 その一言だけで大体のイメージが浮かぶ。どうやらグレイが暈しながらも示した戦法は416に伝わったみたいだった。

 

「……ええ、想像出来たわ。貴方らしいというか、寧ろクラウス指揮官と付き添いの子達が考えそうな発想ね。物騒だけど」

「後はそうだな……戦いは戦いでも、銃を持つ者同士が撃ち合うだけが戦いじゃない。戦略の意味合いとして使えるものは何だって使えば良い。生き残る為ならば、ルールとかも関係無いだろ?」

「そうね。馬鹿正直に従う分だけ命取りってヤツね」

 

 手元に銃が無かったらどうするか。答えは簡単。身近にあるものを使うしか無い。例え銃だけで勝利しなければならない訳じゃないし、時には別の手段として使わなければならないのもあるのだ。

 

「ありがとう、お陰で突破口が掴めるわ。それと、出来れば当日に貴方の武器を幾つか拝借しても良いかしら?」

「ん?良いけど……どうするの?ってか、416がそれ以外の武器なんて使った事無いでしょ?珍しいというか……大丈夫?」

「あら、完璧な私に不可能は無いわ。せめて使い方だけを教えてくれれば後は何回か使って馴染ませたりするだけで充分よ」

「んー……そう言うなら」

「ついでに何人か借りるわ。理想としては貴方が言った爆弾関係に強い子とトラップとかに一番詳しい奴を。それと頼もしい子を一人ね」

 

 その上で自らリーダーとして出る416。一体どうやって攻めるつもりなのかは当日に見るとして、416は早速指定した戦術人形を呼び出し、作戦の伝えた。そして、いよいよ当日……。

 

「ついに始まるな……」

「ネゲヴ小隊 VS 416の率いる4人メンバー……どっちが勝つんだろうな」

「相手は随分と戦闘に慣れているそうだが、こっちとしても負けてはいられない。相手には無い実力を見せ付けてやりゃ良いんだよ。お、来た来た」

 

 グレイ達や見に来た戦術人形達が見守る中、両方の小隊が入って来た。ネゲヴ達は何時も通りネゲヴを隊長にして構成されたメンバーであったが、対するHK416達はというと……。

 

「なっ……!?ハンドガン二人と鉄血が一人!?」

 

 ネゲヴ達は彼女が連れて来た人選を見て驚いていた。HK416が連れて来たのはM1911、K5、そしてまさかのアルケミストだった。その異様な構成には周りですら唖然となる程だった。

 

「ふざけているのあの子は……!?」

「明らかに戦力はこちらの方が上……こちらはアサルトライフルで二人、マシンガンで一人、そしてハンドガンで一人だと言うのに……それで挑むなんて正気なんですの?」

「いや、分からへんで。あのアルケミストを投入しておるんや。弱そうと見せ掛けて、実はそいつが色々と何か仕掛けるんとちゃうんか?」

「舐めているのか、それとも余程の自信があるのか……どちらにせよ、試させて貰うぞ」

 

 そして、指定されたポイントに動く両チーム。今回の模擬戦は廃墟の街を利用し、且つ街での戦闘を想定とした戦いとなっている。戦闘においてはスタンダードな場所ではあるものの、障害物も多く、咄嗟の判断力が勝負の分かれ目となる。

 

「良い?昨日言った通りの作戦で行くわよ。最低限先行するのはM1911、アルケミスト、それと私。K5はなるべくここで待機してなさい。良くても周りから狙われない様に隠れる事。貴女がやられたら状況は一気に苦しくなるわ」

「そう言われるとプレッシャーが……でも、運命に誓って絶対に勝利を導いてあげるから」

「私も頑張ります!何気に模擬戦やるのは初めてなのですが、遠慮無しでやれと言われたら私も本気出せますし!」

「頼もしいわね。その辺りは期待してるわ」

 

 そう意気込む二人だったが、アルケミストだけはどうも乗る気分じゃなかった。彼女は何でこうなった、と未だに困惑した様子でいて、今回も誘った張本人を見て何とも言えない気持ちが溢れていた。

 

「こんな事を言うのも何だが、元鉄血に模擬戦の仲間として普通加えるかね?何を思って私を参加させようとしたんだ?」

「別にそこまで深い理由は無いわ。強いてあるならば、罠とかに強い貴女だからこそ誘ったのよ。ぶっちゃけM1911だけでも良かったんだけど、それはそれで勝負にならないだろうし。精々裏をかくなら予想外なメンバーを入れておけばどうにかなるわ」

「それはそれでどうかと思うがね」

 

 やれやれと呆れながらも模擬戦がスタートした両者とも動き始め、何処から攻めて来るのか警戒しながらも走り続けた。その内、見つからない様に近くの障害物に隠れたK5は目を閉じながら通信機で情報を伝えた。

 

「ネゲヴ小隊分散。M1911の近くにはガリル、TAR-21が接近。ネゲヴはアルケミスト。ジェリコはHK416の方に向かってる」

『一番早いのは?』

「M1911の方。二人掛かりで仕留める方向かな?エンカウント推定時間およそ2分!」

『了解!』

 

 全員に伝えた後、K5は一旦通信を切り、その場で待機した。大雑把に伝えた彼女であったが、実はこれが目的でもあり、作戦の1つであったのだ。

 

 416が彼女を選んだ理由は彼女が持っている未来予知の力だ。これは以前に彼女が初めてグリフィンに訪れた後、ズバズバと運命を言い当てたのだが、416はその実力を戦闘の方へと利用したのだ。彼女の力があれば敵がどの様に動くか、何処に現れるかどうかも判断出来るので、言い換えるならば戦術人形版の鷹山と言った所か。

 ただし、これには欠点がある。それは鷹山みたいに先の未来や時間関係無しに見透せる程の力は持っておらず、良くてもこれから起きる出来事程度しか予測出来ないのだ。故に長時間の使用は不可能で、相手がどう動くか確認するには5分以内の未来しか見れない。日常生活程度の未来ならば制限なしで見れるが、戦いとなると殆どが動き回る為、正確に状況を伝えるにはかなりの集中力が必須となる。それ故に見透す力は短時間しか使えないのだ。逆に使用した際の時間が短ければ短い程、再発動する際の負担も減るので、予想外な動きでない限りは無駄に使用せず隠れて身を潜むのがベストだろう。

 

「あ、ちょっと待って。ガリルとTAR-21が分散。一番早くて近いのはM1911。相手はTAR-21。エンカウント10秒前!」

『受けて立ちましょう!』

 

 通信を切り、そのまま走るM1911。銃を構えながら走るとK5が言ってた通り10秒後に曲がり角で潜んでいるTAR-21を発見する。また、相手もこちらの様子に気付いたのか攻撃を仕掛けて足止めをする。

 

「アサルトライフルのわたくしにハンドガンで挑みのは無謀ではなくて?その火力ではわたくしを倒せるなんて笑止ですわ!」

「言ってくれるじゃないですか。でも、私の本業はそっちでも無いんですけどね!」

 

 意を決してM1911は走り出す。戦術人形ではなく生身の人間というアドバンテージがある部分では、一瞬でも油断したら大怪我。下手したら死ぬ事も有り得る。そんな恐ろしい状況下でも彼女は恐れずに進んだ。TAR-21の攻撃を避け、障害物でやり過ごしながらも反撃。それでも、スペシャリストの名は伊達ではないのか、軽々とM1911の攻撃を避ける。

 

「まだまだ動きが甘くてよ!ほら、わたくしに当ててみなさい!それとも貴女の言った本業というのはその程度なんですの?それとも見せずに終わりになります?さあ、隠れてないで出て来なさいな!」

(くぅぅ……!ムカつきますけど、確かに実力はあるのは見て分かりますね……残弾もそこまで多くないので心許ないのが苦しいですが……)

 

 互いに攻め、隠れては攻撃を防ぎ、膠着状態が数分間持てる弾倉も残り僅かとなっていた。ひたすら撃ち続けようにも、相手の方が判断力が上なのか後1歩という所で届かない。加えて、マシンガンの連射力はハンドガン2丁でも軽く凌駕されているので、迂闊に出たら蜂の巣コースまっしぐらだ。それだけは何としても避けたい。

 

(一か八か……やってみるしかありません!)

 

 ついにM1911の最終兵器が解禁される。彼女は銃をホルスターに仕舞い込み、代わりにある物を手に持った。角度と腕の投げる力を調整しながらスッと投げ込む。直後、大きな爆発音と爆風が周囲を巻き込んだ。

 

「爆発!?一体何事なんですの!?」

 

 煙によって周囲が見えなくなり、TAR-21はこの煙に乗じて襲って来る事を想定しながら銃を構えた。数秒後に煙が晴れると、そこには本気を出した彼女の姿が現れた。

 

「だ、ダイナマイト!?」

 

 TAR-21は戸惑った。それもそうだろう。何せ彼女の手には無数のダイナマイトを指で挟みながらも持っていて、しかも既に点火済み。この時、TAR-21は漸く彼女の本業というのを理解した。彼女の本業はハンドガンではなく、爆発物による過激なゴリ押し。1本ならまだしも、数本持ちながら絶え間無く無限に投げ出し続ける……ある意味一番恐ろしい相手である。

 

「爆ぜろ!」

 

 大量のダイナマイトが投げ出される。命の危機を感じたTAR-21は即座に逃げるが、後ろから爆発した衝撃で少し足をよろめかせてしまう。

 

「な、何てデタラメな…………ッ!?」

 

 しかし、悪夢はこれで終わりじゃない。爆破によって生じた煙からロケットみたいにダイナマイトが4個分飛び出して来たのだ。これにはヤバいと感じたのか持っていたマシンガンで3発は落としたが、ロケットの如く素早く来たので、撃てそうになかったTAR-21は身体を伏せて1発だけギリキリ避けて直撃を回避し、ダイナマイトは後ろを通り過ぎて行った。

 

「こんなの聞いていませんわよ……!」

「ちゃんと言いましたよ、本業はそっちでも無いって。なのに、まんまと油断してるからこうなるんですよ」

 

 顔を上げると、何時の間にか目の前にM1911の姿が。直前まで近付かれていたのを今更になって気付いたのか焦りを見せては咄嗟に銃で彼女を撃とうとした。が、バシン!と持っていたマシンガンを弾かれてしまった。良く見ると、M1911の手には例のグローブが装着されていた。恐らく、グローブの中に仕込まれている小型の爆弾の推進力によって全速力を出した車並みの威力と速さで軽くビンタしたのだろう。

 

「そ、そんな馬鹿な……!?」

「このまま腹パンしても良かったんですが、流石にこれだとオーバーキルしそうですし、手元に銃が無いんじゃ戦いようがありませんからね。まあ、貴女の負けという事で。私としてはこんな所で悠長に留まってはいられないですし、貴女もここから離れた方が良いですよ」

 

 そう言ってM1911は歩きながら去って行く。これでも何度か実戦経験はしていた筈なのに、それがあっさりとやられてしまったのだ。これで悔しくない訳が無い。

 

「教官の元で鍛えられたわたくしが、こんなデタラメな相手に負けるだなんて……何故ダイナマイトを……!」

「勝つ為ならばどんな方法でも構わないだろうし、いちいち常識に囚われる考え方だと結構疲れると思いますよ。それこそハンドガンの私自身火力が小さいのは百も承知ですし、それを補う為に使ったんですよ」

 

 まあ、全てはクラウスのお陰でもあるのだが、受け継がれるモノが単純に恐ろしかっただけなのである。

 しかし、そう話しているだけでも時間稼ぎになったのか立ち上がる体力を回復出来たTAR-21は懐からナイフを取り出し、背後からCQCを仕掛けようと忍び寄ろうとするが……。

 

「あ、最後に一言。後ろには気を付けた方が良いよ。さっき貴女が避けた1発だけど、あれって実は2回曲がれるんだよね」

「え……?」

 

 背後を振り返ると、1個だけ飛んでいるダイナマイトが彼女目掛けて飛んでいるのが見えた。しまった、と気付いた時には遅く、ダイナマイトは導火線の時間が切れたのか爆破。巻き込まれたTAR-21は吹き飛ばされて転がり、打ち所が悪かったのか強く当り、バタッと気絶した。幸いにも命に別状は無かった為、とりあえずケンジとエージェントを呼んで彼女を治療してあげて欲しいと伝えた後、再び市街地を走り出した。

 

 

 

 

 

「な、何や……何が起こっとるん……?」

 

 TAR-21がM1911と遭遇している時、ガリルもまた敵を見付けるべく走り回っていた。道中、M1911が放ったダイナマイトが何度も起きていては爆発音が轟き、その異様さをガリルは怪しんでいた。

 

「さっきから爆発音ばっか響いとる……何や、引火して爆発するモノでも転がっておるんか?それとも、敵側が爆発物を大量に持っておるんか?前者だったら最悪やけど、利用して使えそうや……後者だったら悪夢やな」

 

 良くも悪くも、多分近々遭遇するんじゃないかと不安が募る。もしかしたら今走っているこの道の先にも爆弾が仕掛けられているんじゃないかと先読みをしそうになったが―――

 

「ん……?おわっ!?案の定あったわ!」

 

 地面を見ながら走っていたら、大きめの金属の箱にC4の様な爆弾が何個か取り付いていたのが見えた。しかも、僅かながらにセンサーで反応するタイプだったのだが、こうもあっさり見付かってしまってはセンサーの必要性が無くなった。

 

「ふぅ……危ない危ない。にしても、こんなバレやすい所に設置するなんてアホちゃうか?あんなんが起きたばかりやし、全部疑って当然なんやけどな。まあ、これで仕掛けてあると分かったならそれを避けて通れば良いだけの話やね」

 

 爆弾から離れながらガリルは周囲を確認する。大方、爆破して傷付いた所を狙おうとする魂胆なのだろうと推測していた。極めつけはこの爆発だ。他の皆もきっとそれに気付く筈だろうし、互いの実力も信頼してるのできっと引っ掛からないと確信していた。だが、その行動が裏目に出た。

 

「さあ、何処におるんや?こっちは何時でも行けるで!それとも勝てないと思ってビビっておるんか?」

 

 あからさまな挑発。こんなのを言われたらムカついて飛び出るか、我慢して出るのを待機するかのどちらかなるだろう。しかも、彼女もまたジェリコの元で鍛えられた戦術人形の一人だ。無闇に攻めたら返り討ちに遭うのは確実に見えていた。

 だが、今が勝機と確信した人物は物陰に潜みながら卑しい笑みを浮かべた。そして、手に持っていたスイッチを押すと、何処からか強力な爆発音が。

 

「奇襲!?方向は―――!?」

 

 周りを確認しようとグルッと一回りした瞬間、ガリルは目を見開いた。後ろまで振り向いたガリルの目の前にはさっき警戒した筈であろう金属の箱が爆発から生じた風圧により、一瞬にして飛ぶのが見えたからだ。

 箱はガリルに向けて飛び、ガリルもヤバいと本能で悟った時には遅かった。勢い良く飛んだ箱はガリルに思いっ切り当たり、ガリルも受けた衝撃によって少しだけ遠くへ吹き飛ばされてしまった。

 

「あぐっ……!」

 

 ゴロゴロと転がって行く彼女。彼女が丁度マンホールの所に来た所で、潜んでいた人物は第2のトラップを起動させる。スイッチを入れるとマンホールの真下から爆発が起き、マンホールごと上空へとガリルが飛ばされる。

 

「なっ……!?」

 

 まさか自分が宙に浮いてるだなんて思わなかっただろう。瞬時、ガリルはこの後に起きる出来事を予測してしまった。

 宙に浮いている自分が取れる行動なんてほぼ無く、そのまま地面に向かって落ちるだけ。そして、地面に叩き付けられて打撲、骨折、部分損傷。打ち所が悪ければ最悪死に至る恐れもある。それは人間も戦術人形も同じ……正に最悪で絶対絶命の状況だった。幾ら戦術人形が硬くても、高所からのダメージは避けられないのだ。

 だが、せめてダメージだけは最小限にしようと頭を両腕で抱えたまま丸まり、足を少しだけ曲げたままで着地直後に地面を蹴っては前転して衝撃を上手く逃がしたが……。

 

「ぐはぁっ……!」

 

 逃がしても肉体によるダメージは防げそうになかった。起き上がろうにも力が全く入らず、身体の自由が上手く行かない。そんな彼女の元に仕掛けた張本人がゆっくりと近付いて来ては嘲笑うかの様にガリルを見ながら銃口を向けた。

 

「まさか本当に成功するとはな……あの隊長さんも中々えげつない発想を思い浮かべるものだ」

「あ、アルケミスト……!」

 

 そう、ここ周辺に罠を仕掛けたのはアルケミストだったのだ。彼女は開始前、HK416から爆発物を使ったトラップをある手順で仕掛けて欲しいと頼んだのだ。その方法が……。

 

「金属の箱の側面とマンホールの中に爆弾を仕掛け、油断した所で金属の方を爆破。爆風で瓦礫や破片とかが飛ぶ習性を利用して、爆破時に起きる慣性と風圧が推進力となり、金属の箱がロケットの如く直撃。で、それを逃がさず追加で仕掛けたマンホールまで転がった後に爆破させて大ダメージ……一気に大怪我を負わせるピタゴラスイッチの完成って訳だ」

「な、何ちゅうえげつない発想や……」

 

 簡単に言うならば、爆発を利用した簡易的なコンボという所か。元々これを考案したHK416はグレイの話を聞いてある事を思い出したのである。

 蝶事件でもそうだったが、グレイがビタロックで時間を止めては物に衝撃を与え、時間が切れたら衝撃が加わって吹き飛ぶという方法をグレイが出した爆弾というヒントを用いては再現出来ないだろうか?と考えたのである。爆発の威力とかも調整しながら計算し、どうすれば引っ掛かるかの条件と場所を選んでは短時間でピッタリな場所を見つけ出したのである。しかし、ここである疑問が……。

 

「だったら……何であんな分かり易い所に設置したんや……明らかに罠だと分かってたのに……暫くしてから爆発したってどうなっておるんや……踏んでもない……センサーにも引っ掛かってない状態でどうやって起爆したんや……?」

「あれはフェイクだ。まあ、もう少し言えばお前が見たとされる爆弾は踏もうがセンサーに反応しようが一切何も起きないし起爆もしない偽物の爆弾。本命はお前が真正面から見た方向から逆……つまりは真後ろに仕掛けてあったんだよ。そんでもって、マンホール共々タイミング良く起爆出来るリモコン型のスイッチを押してドカン。後は今の通りって訳」

「んな、アホな……」

「正直バレるかどうか冷や汗ものだったが……疑いながらも初心者だとか弱いだとか、分かり易い罠が何故こうも設置してあったのか追究しなかった事、周りを確認せず味方の能力を信頼し過ぎていたのが仇となったな」

 

 アルケミストが言い終えると、ガリルは目を閉じてバタリと倒れた。幸いにも気絶しているだけだったので、アルケミストはM1911と同じく救護班を呼んで彼女をその場から離れさせた。

 

(動きも行動も全く予想が付かず、型の囚われない戦い方か……こうして考えてみると、鉄血がいかに翻弄され続けて壊滅続きだったのか良く分かるな)

 

 あの指揮官にして、このグリフィンにあり―――

 そう考えると鉄血はもう早い段階で降参した方が良いんじゃね?と悟ってしまうアルケミストだった。




なお、戦闘で一番参考にならないのは1位で鷹山(バグとか使う為)、2位でグレイ(やり方が尋常じゃない為)、3位でフラン(半ば人外染みた身体能力持っている為)だと個人的に思ってる。それ以外はまあ……頑張れば行けるんじゃね?程度だと。真似しても駄目だが(白目)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。