ヒロインちゃんにうちのユニバースではよく登場するサポートキャラを……。
岩巻さんだけでは足りないでしょう!
……思えば私岩巻さん書いたことないや。
学校からの帰り道、楽郎君に会えるかもしれないと、ロックロールに向かう途中、女性の嫌がる声が聞こえた。
「はなして!」
「うーわ、嫌そうな顔も超かわいい。マジタイプだわ。俺ロリコンの気があったのかぁ」
チンピラのような男に腕を掴まれてる中学生の女の子。
どこからどう見てもただの犯罪者。
私は躊躇う余地なく止めに入った。
「やめなさい」
「は? ……ふぅ! 超ラッキー! もう一人可愛いのきた! ついてるわぁ」
止めに入った私を舐めるように見てくる男はそのままもう片方の手で私の腕をつかもうとする。
「ためらう理由なんてないですね」
「は? うごぉるぶぁ!? いでっいででで! ……う、うで、折れ……いだっ!!」
「……どうして皆さん折れたなどと大げさなことを言うんですかね。関節を外しただけですよ。……それで、その子の腕も離さないつもりなら、そちらも」
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!」
男は一目散に逃げ出していった。
あんまり乱暴に扱うと外した関節がおかしくなると言うのに。
「あ、あの……!」
「ああ、大丈夫でしたか?」
「はい……! ありがとうございました!!」
中学生の女の子は心底安心したような顔をしていた。
……? なんでしょう……どこかで……。
「ええと、このあと一人で大丈夫ですか?」
助けることは出来たとはいえ、襲われた直後に一人になるのは怖いとおもい、問いかける。
「あ、えっと、一応兄と待ち合わせしていたんですけど。私早く着きすぎちゃって……もうすぐ約束の時間なので多分大丈夫かと……」
「お、いた……おーい瑠美」
「あ……噂をすれば」
女の子がそう呟いたので、待ち合わせしていたお兄さんが来たのだろうと、そちらを向くと。
「待たせたか? ……と、玲さん?」
「らっ! ………………らくろう、君?」
「え? え?」
まさかの想い人が現れました。
「私を助けてくれた綺麗なお姉さんが、まさかお兄ちゃんと同じ学年で、しかも知り合いだったなんて! あ、改めて助けてくれてありがとうございます玲さん!」
「いえ、無事で良かったです瑠美さん」
「マジでそんなこともあるんだな。つか、ほんとにありがとう玲さん」
「ひゃい! いいえ!」
どうしよう、偶然助けたのが楽郎君の妹さんだったなんて。
とりあえず瑠美さんに引かれてはいないみたいだけど……。
「凄かったんだよお兄ちゃん! 私を襲ってきた変態の腕がプランプランって!」
「ああ…………それ俺も見たことあるかも」
ああ! まさか骨抜を使ったところ見られたのがどっちも陽務の方なんて!
「とにかく玲さんにはお礼しないとな……」
「ふぇっ……そ、そんな、お、お、お礼なんて気を遣わなくても………………と、当然のことをしたまでですので」
「いやいや、そういうわけにはいかないって」
「しょ、そんな……………………」
「? あれぇ? 玲さん、最初にあった時と様子が………………もしかして……」
「ん? どうした瑠美」
「ううん? ……ねえ玲さん!」
「え、あはい……何でしょう……?」
「私兄の交友関係まではよく知らなかったんですけど、名前で呼び合うなんてとても仲がいいんですね!」
ぇあ!? 仲がいい!? 嬉しい!!
じゃなくて、何も考えずに名前で呼んでしまっていた……!
あ、えと、どう答えましょう……!?
「……………………は、はひ、とても仲良くさせてもらってまふ」
「これは……やっぱり……」
「……?」
「あ、いえ! ………………私、昔からお姉ちゃんが欲しかったんです! だから玲さんみたいな綺麗でかっこいい人が兄の友達で嬉しいなって思って! ……その、玲姉さんって呼んでもいいですか……?」
「ね……………………ッ!?」
「お前急に何言ってんだよ……」
「お兄ちゃんは黙ってて。ダメ、ですか……?」
「もひ、もちろんでひゅ!」
楽郎君のい、妹さんから姉呼び……!
これはもう実質、結こ……ケッコ!
「あんまり玲さんを困らせるなよ……」
「黙ってて! あの、玲姉さん! 今回助けてくれたお礼はお兄ちゃんを通して改めてでいいですか?」
「は? なんで……」
「今できるお礼なんて限られてるでしょ! 玲姉さん大丈夫ですか……?」
「い、いえ! お礼なんて…………!」
「そう言うわけにはいきません! えと、改めて連絡します! ……兄が!!」
「え、あ、は、はい!」
「何だかんだ全部俺にぶん投げてない?」
私が返事すると同時に瑠美さんは楽郎君を連れて去っていきました。
「び、びっくりした……で、でも……姉呼びってなんか新鮮だった……」
そのまま遠ざかっていく二人を少し眺めてしまった。
「おい引っ張るなよ。つーか強引すぎだろ」
「さっきのままだったら堂々巡りになっちゃうでしょ! いいから!」
帰宅後、宿題をしつつ、今日は結局ロックロールには寄らなかったなと思っていると、突然電話が鳴り響く。
「? ――マっ!?」
――陽務楽郎――
「ひゃひ! 元気です!! もしもし!!」
『あはい……元気で何よりです……玲さん今大丈夫?』
「何も問題皆無です!」
『そ、そっか。ごめんね? 突然通話で。なんかメッセージで送ろうとしたら瑠美が頑なに通話にしろって』
「い、いいえ!」
『ええと、え? 代われ? ちょ、おい! ――玲姉さん! 瑠美です!』
「ど、どうも」
『その突然すみません、先程のお礼の事で……』
「あ、あの……本当に気にしなくても」
『いいえ先ほども言いましたが、ぜひ受け取ってほしいんです! それでその、お渡ししたいので、今度お時間があるときに、家に遊びに来てもらえませんか……? 場所は兄に案内させます!』
あ、いえ、楽郎君のお家はもう知ってて……じゃなくて!!
「へぇぇっ!? 楽っ、陽務さんのお家にですか!?」
『はい! お礼をする立場でご足労願うのも失礼かなって思いましたけど、玲姉さんにはぜひ家に来ていただきたいと思ったので!』
「そ、それは、その……………………では、はい」
『よかった! 楽しみにしてますね!』
その後電話が楽郎君に代わり、何とか無事に電話を終えた。
「…………………これは、夢……?」
あれよあれよという間に、私が楽郎君のお家にお邪魔させて頂くことになってしまっていた。
「なんというか……勢いに流されてしまった感じが…………え。あ、れ……?」
私が、楽郎君の、お家に……?
「ッ……ッ!?」
あ、な、なにを着て、あ、新しく買って……よ、洋服? ……和服?
ど、どうしたら……あ、ああ、い、いわまきさんにでんわしないと。
ここから四時間半岩巻さんと対策を練ることになりました。
そして当日。
「いやほんと申し訳ない、あいつのわがままに付き合わせて。お礼するのに迷惑かけるっておかしいだろって」
「いいいえ! その……迷惑だなんてこれ微塵も思っておりません!!」
「そ、そっか。じゃその……どうぞ」
「お、おおおおおじゃみゃしみゃしゅ!!」
はいってしまった……とうとう楽郎君のお家に……!
……あ!
「あ、そ、ら、楽郎君! そのご、ご両親にご挨拶を……!」
「へ? ああ、いや大丈夫。今日はどっちも家にいないわ。多分どっちも趣味だ」
「そ……そう、ですか」
ああ! ホッとした気持ちとちょっと残念な気持ちが……!
「あそっか、そう言えばうちの父親と玲さんのお爺さんはどういう訳か知り合いだったっけ……ほんとマジどんな付き合いしてるんだか……」
「そ、そうですね……ま、まさかそんなところでも楽郎君と繋がりがあるなんて思ってみなくて……」
そんなことを話していると、瑠美さんが元気に出迎えてくれた。
「玲姉さんいらっしゃいませ! どうぞ上がってください!」
「あ、はい……お、お邪魔します……!」
「実は前に永遠様と撮影でご一緒した時に、有名ジェラート店の新作ジェラートを送っていただけるって言われてて、それが昨日届いたので、お礼も兼ねて玲姉さんとご一緒したくて!」
「は? 大丈夫か? 毒とか入ってないだろうな」
「入ってるわけないじゃん。永遠様をなんだと思ってるの」
「少なくとも人とは思ってないが……」
聞き覚えのある名前に、楽郎君のチラリと見ると、その視線に気づいたのか楽郎君もこっそり説明してくれる。
「……お察しの通り、例の天音永遠、ペンシルゴン。瑠美は読モやってて、あいつの熱心なフォロワー……もとい信者だ……最近は一緒の仕事も増えたらしいが……何か恐ろしいものを感じる」
そう憎々しげに言う楽郎君に思わずクスリと笑ってしまったと同時に、やっぱりあの人は強敵だと認識せざるを得なかった。
「とにかく! すぐ持ってきますから、ちょっと待っててくださいね!」
「あ、はい……えっと」
楽郎君について行けばいいのだろうか……。
どこで待っていればいいのかと少し考えていると。
「何してるのお兄ちゃん……早く玲姉さんをお兄ちゃんの部屋に案内してあげなってば」
「らく!? おへや!?」
「え、俺の部屋?」
「こんな雑然としたリビングじゃ駄目だよ! いいから早く!」
「えぇ……いいけど……今日どうしてそんな圧が凄いんだ……」
「あ、その前に玲姉さん、いいですか?」
「? はい?」
楽郎君に案内される前、瑠美さんは私の耳元でひっそり囁きます。
「実はジェラートはおまけで、これが私からの本当のお礼です……! 兄との事、応援しますね!」
「!?!? なッ!」
瑠美さんは悪戯が成功したかのように楽しそうな笑顔を――楽郎君を思い出させるような笑顔をした後、口パクでがんばってくださいと言ってその場から離れて行った。
思わず呆然としてしまった。
バ、バレてた……!?
「何だったんだ瑠美の奴……って、あれ? 玲さん?」
「だ、だだだだだだいじょうぶです! 無事です!!」
「無事で何よりです。じゃあ俺の部屋こっちだから」
「ひゃい!!」
「ん……まあそんなにきれいな部屋でもないけど座ってて? 飲み物取ってくる」
「はひ! あと、きれいだとおもいます!!」
「はは、ありがと」
案内された部屋でとりあえず正座して楽郎君を待つ。
ここが楽郎君のお部屋……。
あまり良くないと思いつつも、部屋を眺めてしまう。
……このVR機器、プロ仕様……? 書かれてるキャラは、確か……。
あ、棚に楽郎君がやったゲーム……私がほとんど断念したのばかり……。
「そんな見ても面白い物ないでしょ?」
「みゃっ!? ご、ごめんなさいジロジロ見たりして!」
「いや別にいいけど……なんで正座? どこに座ってもいいのに」
「え? えと……」
どこに座ってもいいと言われて、思わず目線をベッドに向けてしまう。
ちが、今一番座るに適したのがベッドであって、他意があるわけでないです。机の椅子には鞄がのってますし!
そう自分に言い訳しつつ、ベッドに座らせてもらう。
「ッ………………」
「え!? な、何かまずかったでしょうか……!」
「あーいや、玲さんにどこに座ってもいいって言っといてあれだけど…………こう、なんか思ったより照れるなと」
「ぁ……ご、ごめんなさい……」
「いや! 玲さんが謝る事では全くなくて!! そう、来客の事をまるで考えてなかった俺のミスであって! なんか家に人を招くことはあんまりなかったから、完全に失念してた!」
「そ、そうなんですか……?」
「そうそう! 男友達だってほとんど家にいれないし、ましてや女子を自分の部屋に案内するなんて完全に初めてで…………あっ」
「ぁ………………」
「…………………………」
「…………………………」
「そ、その! そのVR、描かれてるキャラクターって!」
「え!? ああ! そうそう! 例の
「そ、そうだったんですね……! 私も
「あ、ありがとう…………」
「…………………………」
「…………………………」
「あ、あー! そういや瑠美遅いな!」
「そ、そうですね! 大丈夫でしょうか」
「あ、もういい感じ?」
「「!?」」
「お部屋の中が熱くてジェラートが溶けちゃうかと思ったので入れなかったぁ」
「おま、いつから待機してた……!」
「照れてるところ」
「お前な!」
今のやりとりをずっと瑠美さんに聞かれていたと思うと、思わず顔が赤くなる。
そんなに恥ずかしいことを話していたわけじゃないけれど、なんとなく照れくさくなるようなことばかりだったから……。
この後は、瑠美さんが間に入ってくれたことで、スムーズに会話も進み、楽郎君の事をもっと知ることが出来ました。
「ここでお兄ちゃんのアルバムをお持ちしました!」
「なんでだよ!!」
「み、みたいです……!」
楽郎君のアルバムまで見せていただきました。
小さい頃の楽郎君がとても、とてもとてもかわいかった。
「きょ、今日はその、お招きいただきありがとうございました!」
「いやいやいや、そもそも妹を助けてくれたお礼で招いたんだから、お礼とかはいいって」
「そうですよ玲姉さん! でも今度はお礼とか関係なく遊びに来てほしいです!」
嬉しいけれど、流石に楽郎君の迷惑になるかもと考えたところで、すぐに楽郎君が口を開いた。
「あー、玲さんが良ければ、ではあるけど、ぜひ」
「あ……は、はぃ……」
思わず顔が赤くなる。
今日ずっと楽郎君が近くにいたけれど、やっぱりすぐに照れてしまう。
そのたびに私は楽郎君がすきなんだなぁと実感する。
「もうすぐ暗くなるし、近くまで送ろうか?」
「あ……ありがとうございます。でも、迎えの車が近くまで来ているようですので……」
「そっか。いや、でもほんと申し訳ない。今日はお礼と言いながらほとんど瑠美に振り回されてばかりだったし、お礼になってない気も……」
「いえ、そんなことは…………それに、私は楽郎君と一緒にいれるだけで嬉しいので……」
「……………………」
「それじゃあ楽郎君、また学校で」
「……………………」
「? 楽郎君……?」
「え!? あ! あー! ま、また学校で!」
「はい。それでは」
こうして私は瑠美さんのお蔭で幸せな気分で帰宅することになった。
それにしても、最後の挨拶の時、楽郎君少し変だったような……?
「……ッ!? あ、ああ!! 私ッ! ああ!」
家に帰って一人で勉強しているときに気付きました。
楽郎君が変だったのではなく、私が自爆したのだと。
おまけ
「…………………………」
「どしたのお兄ちゃん」
「……いや、大丈夫だ。他意はないはず、変に意識するな……」
「お兄ちゃんてそんな自己評価低かったっけ……別に意識してもいいと思うけど」
「お前、簡単に言うなぁ。言っとくが玲さんは学校内でも相当な高根の花だぞ? 少し一緒にいるだけでクラスメートに尋問されるくらいだからな」
「……それって、逆に言えばお兄ちゃんだったら、玲姉さんとそういう関係になってもおかしくないって周りに思われてるってことじゃないの? 釣り合わないと周りから思われてれば、そんなに問い詰められることもないし」
「……は?」
「もうちょっとちゃんと考えてみたら? 多分話はもっと単純だと思うけど」
「……………………」
こんな感じで……意外と難産でした。
やはり楽玲はガチ勢の方々にお任せすべきか……?