最後はヒロインちゃん。
岩巻さんからたまにはイベントや偶然を装った登下校以外で、一緒に出掛ける機会でも作るよう指令を受けてから早二週間。
最近岩巻さんの視線が痛い。
「そろそろ本当に勇気を出さないと……」
今日は午前授業だし、放課後の予定を聞いて、もし空いてるならと。
で、でもやはり私からお誘いするのは難易度が高く……。
「あ、いたいた玲さん」
「みゃいっ! あ、ら、楽……陽務君」
「ん? ああ、いや周り人いなかったしいいかなって思ったけど、やっぱり学校では斉賀さんの方がいい?」
「へぇぃゃっ!? あ、あああの………………その、ふ、二人の時なら!!」
「じゃあそれで。……なんか秘密の関係みたいだね」
「ふぁ…………………………たいはありまひぇん!!」
「わかってるって。それより聞きたいことがあるんだけど……玲さん、今日この後時間ある?」
「ふぇ?」
「実はさ――――」
「い、いいいきます!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜
家に着くなり、準備のために部屋へ急ぐ。
と、そこに後ろから声をかけられた。
「おかえりなさい玲、早かったですね。お昼ご飯はもう少しかかるので、少々待ってる必要があります」
「あ……仙姉さん……えっと、先ほど使用人の方にもお伝えしましたが、今日はその、そ、外に食べに行く予定ですので…………」
「まあ。外食ですか……………………なるほど、わかりました」
「な、何がですか」
「安心なさい、玲。一泊ぐらいなら母達を説き伏せます。あなたはしっかり意中の――」
「ち、違います! ただ食事に……ラーメンに行くだけです!」
そう、学校で楽郎君が誘ってくれたのは、お昼ご飯にラーメンに行かないかということだった。
というかどうして仙姉さんは一緒に行くのが楽郎君だとわかったのだろう。
「ラーメンですか……いえ、それは今いいでしょう。それよりも食事の後そのまま既成事実を作るところまで持ち込めることだって」
「失礼します」
「待ちなさい玲、待つのです玲」
……仙姉さん……アレ以外は私の理想なのに……。
と、またも後ろから声をかけられる。
「玲」
「……百姉さん、今日は休みだったんですね」
「ああ。それより、少し話が聞こえたのだが、ラーメンに行くのか?」
「はい」
「そうか…………食べに行く前に覚えてほしいことがあるのだが、店のラーメンは確かにおいしい。だが、それに匹敵するほど昨今のカップラーメンは進化を遂げている。そしてもっと言うと、店ラーメンではできない、カップ麺だからこそできる奇策邪道ともいえる――」
「失礼します」
「待て玲、待つんだ玲」
百姉さんは一体どこに向かっているのだろう。
~~~~~~~~
「いや、助かったよ玲さん。ペア限定のラーメン無料券、使用期限今日までだったのすっかり忘れててさ。他の奴は軒並み予定入ってて……付き合ってもらってごめんね」
「つきあっ…………っ!! ……あ、いいえ! 無問題です!」
「そっか。店は選べるんだけど、玲さん何味好き?」
「え? あ……えっと、私、実はラーメンを食べたことがなくて……」
「え、そうなの!?」
「はい、おうどんとかは、よく行くんですけど……」
「なるほど……じゃあ、うまいとこに連れてくから楽しみにしててよ」
「は、はい!」
案内されるまま楽郎君についていくと、話によく聞くラーメン屋とは違ってとてもきれいなお店でした。
少し前、京極ちゃんに聞いたときは、中はかなり雑然としていると言っていた気がしたけれど、お店によって違うのかもしれない。
と、すぐにお店の人が。
「こちらお冷とお絞りです。お決まりになりましたらお呼びください」
「はーい……さて、どうしようか」
「その……ら、楽郎君は何を頼むんです、か?」
「俺は魚介味噌ラーメンかな。この店は味噌ラーメンがうまいんだ」
「では、私も同じので……」
「それがいいかもね。すみませーん!」
楽郎君は慣れた様子で注文をし、しばらくすると物が運ばれてきた。
「うし、いただきます」
「いただきます」
ラーメンを食べるのは初めてだけど、百姉さんも仕事の終わりでたまに行くらしいし、最近京極ちゃんがハマっていると言っていたので、少しだけ興味はあった。
私はゆっくり口に含む。
「……あ、おいしい」
「そりゃよかった」
楽郎君は少しだけホっとした顔を見せ、自分の分を食べ始めた。
こうして向かい合って食事するのは二回目だ。
……こういうことがもっと増えればいいのに……。
「? 玲さん食べないの」
「!? みゃひゃい!! た、たべまふ!」
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「あー食った。玲さんどうだった?」
「あ、はい……えと、私も満腹です」
「じゃなくてこの店」
「えっと、京極ちゃんに聞いてたラーメン屋さんとは全然違いました。とてもきれいなお店でしたし……」
「ん? ああ! いやいや、流石に玲さんをごちゃっとしたところに案内する気はないって。たまに行く店の中でもきれいなところ選んだつもり」
「あ……その、ありがとうございます」
「いやいや、こっちこそ無理言ってついて来てもらって申し訳なかった」
「いえ、あの、とてもおいしかったです。ご、ごちそうさまでした」」
「そりゃよかった。まあ無料券だったけどさ……んじゃ、帰ろっか」
「あ……………………はい」
そしてそのまま帰る流れに。
一応途中まで帰り道をご一緒させてもらえたけれど、今のところ他愛のない話しか出来てない。
……ここで何も言わなければまた岩巻さんに呆れられる……。
勇気、ちょっとの勇気を。
「あ、あの、りゃくろうくん!」
「ん? どうかした?」
「あ……えっと……そ、の……ラーメン! ラーメンおいしかったので、またいずれ行きたいなと、思ったりしたんですけど、その……今のところ、ひ、一人では……家族もそれほどそういった外食はしないので……」
「あー……そっか玲さん、今日ラーメン初って言ってたね」
「なので、その…………ら、ら、楽郎君さえ、よければ……また、誘ってもらえ、ますか……?」
「え? あ、えっと……それはかまわないけど、玲さんの友達と行くとかじゃなくていいの?」
「あ、それは、その………………」
「……まあ、確かに女子同士でラーメン行ったって話は周りでは聞かないし、なかなか難しいか。俺でよけりゃまた誘うよ」
「あ……! は、はい!!」
よかった。
勇気を出せてよかった。
そして私たちはそのまま並んで帰る。
「……………………」
仙姉さんはせっつくだろうし、岩巻さんは呆れるかもしれないけれど、私はゆっくりでもいい。
ゆっくりでもいいから、私は楽郎君の隣に、長くいたい。
「それにしても、また二人の秘密が増えたね」
「くきゅっ……! そ、そでしゅね!」
とうとう百さんも出しちゃった
とりあえずゲロ貰ってから書いたやつ全部放出。
ヒロインちゃんは、たぶん……味噌とか好きだったので、食べた事ない設定で。
ラーメン食べたくなってきた……。
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