ラーメンの話を書きたかったのです。
「腹減ったな……」
休みの日、気まぐれに少し遠くのゲームショップに向かった。
たまに香ばしい感じのゲームがワゴンに入ってたりするので、気が向いたときは足を運んでいたショップだ。
とはいえ、今回は外れで、持ってるゲームばかりだったが。
まあ、そんなもんだろうと帰る途中な訳だが。
「あー……ラーメンでいいか」
昼飯時を少し過ぎた時間、割と空いてるラーメン屋に入ることにした。
「えーっと、このあっさり魚介ラーメンで」
「あいよぉ! 魚介いちぃ!」
注文をして席に座った……んだが、何やら横の席の人があからさまに俺から顔を逸らしている気がする。
というか、店に入った瞬間から慌てて顔を背けてた気がしたんだが……。
あまりじろじろ見るのもアレだが、少し気になるので横目で流し見る。
…………………………んん?
「んん?」
「……っ!!」
あれ、この感じどこかで……というか、よく知ってるやつな気が……。
「……永遠?」
「っ……!! ………………違います」
ああ、声で正解と分かった。
「いや、無理があんだろ」
「違います」
「え、なんかあんの?」
「……くっ…………なんで、このタイミングで……!!」
「やっぱりと「クオンで」……ああはい、クオン」
人数の少ないうえに、割と小声で話してるのに、相変わらず危機回避能力の高いこって。
「……てか何でわかった訳、楽郎君」
「いやまあ、なんとなくではあるんだけどよ。知り合いっぽい雰囲気だったけど、妙に別人です感だしてくるから、これはもしやと思ってな。お前もラーメンか? 何か珍しい感じするな」
「……まあ、実際滅多に来ないからね…………………………んー、楽郎君に会えるのはいいんだけど、よりにもよって今日じゃなくてもいいのに…………!」
「ん?」
「楽郎君の間が悪いって話!」
「んな無茶苦茶な」
とりあえずせっかくなので相席するか。
「……くっ、やっぱりそうなるよね」
「ん、やめといたほうがいいか?」
「………………いや、いいんだけど……その……」
「? 何か今日はいつもと違うな、どうかしたのか?」
いつもの永遠に比べると妙に歯切れが悪いと言うか、明らかに自分の思い描いた通りにいってない感じがある。
調子でも悪いのだろうか……いや、だったらラーメンにはこねぇか。
「……まあ、なんかあるなら言ってくれれば――――」
「へいぃ! ニンニクマシマシ豚骨チャーシューメンお持ちしましたぁ!!」
「………………………………」
香ばしい匂いを漂わせたラーメンは永遠の前に置かれる。
…………とりあえず何で歯切れが悪いのかは察せられた。
不意に目と目が合う。
「……………………」
「……………………」
「……あー……まあ、たまに食いたくなるよな、そういうの」
「なんでこういう時急に気をつかってくるのかなぁ!? 煽るなら煽ればいいじゃん! いつもなら煽るでしょ!? 弱み握ったと言わんばかりにニヤニヤしながら!」
「いやー……そのなんだ、別にそれぐらい煽るもんでもないし、さ」
「ぐぅ……ほんとなんでこのタイミングで遭遇しちゃうかなぁ……っ!」
「……なんか悪かったな」
「謝らないで」
永遠はもう知ったことかと言わんばかりにラーメンを食べ始めた。
そんな自棄になるようなことでもないだろうに。
「というかほんとに珍しいな。そういうの好きだったのか?」
「………………………………嫌いじゃない。でも天音永遠からニンニクの匂いがすることは許されないの。だから天音永遠としては絶対ニンニクは食べたくない。でも今は天音永遠とは全く関係ない、一個人としての私の、月一くらいで定期的にやる秘密の宴。ちゃんとオフの日を選んで、ブレスケアも沢山持ってきてるから。その辺は完璧だからね」
「何のアピールだよ。別にそんな事気にしてないわ」
まあ、必死で隠そうとした理由はわかった。
要するにアイドルは〇〇〇をしない的な、昔ながらのイメージ作りか。
やっぱ結構気を使ってんだな……。
と、そこに店員がやってきた。
俺の分も来たらしい。
「へい! あっさり魚介ラーメンお持ちしました!」
「どうもー」
「……………………」
俺も食い始めようとしたが、何やら視線を感じる。
「……なんだよ」
「随分とさっぱりしたメニューだねぇ、楽郎君は」
「ああ、まあ……親の教育の賜物か、妙に魚介だしのが好きでな」
「男子高校生ならガッツリ行くべきなんじゃない? 今から追加で頼まない?」
「頼むかよ…つかなんだよ急に」
「何と言うか、私ががっつりニンニクラーメン食べてて、相席の楽郎君があっさりした魚介ラーメン食べてるのってさぁ」
「誰も気にしてねぇって」
「私が気にしてるんですぅ…………楽郎君が前にいるし……」
「あー…………」
俺と永遠が付き合い始めて数週間。
まあ付き合いたてなら普通は気にするか。
ほんと気にすることでもないんだけどな。
とりあえずラーメン自体の匂いがあるとはいえ、気をつかわせないように、互いに黙って食べ進めた。
店を出て、明らかに必要以上にブレスケアを口に含む永遠に尋ねる。
「でどうする? オフなんだろ? 俺は暇だが」
「わかってて言ってるでしょ!? 流石にブレスケアしたとはいえ気になるから帰るよ!!」
「おーそりゃ気付かなかったーすまーん」
「…………くぅぅ、天音永遠一生の不覚……! 楽郎君に弱み握られるなんて……!!」
「そこまで言う?」
ニンニクラーメン食ってた弱みとは。
「覚悟しといてね楽郎君。次のオフでは今回の失態を忘れる位、年上のお姉さんらしく素晴らしいデートにしてあげるんだから!」
「別に今回デートでもなんでもないけどな」
偶然会っただけだし。
「それでも! いいから覚えておくことだね!」
「へいへい」
そして永遠は踵を返していった。
しっかし、ほんとにあいつが受け身に回る事なんて珍しすぎて、こっちが戸惑ってしまった。
「……でもまあ、たまにはこんなのもいいんじゃね?」
何とも言えないような悔しそうな永遠の顔を思い出し、クツクツと笑いながら帰る。
そのうちあいつが提示してくるであろうプランが楽しみになってきた。
1度も有利を取れない鉛筆を書きたかったのと、気を使うという新手の煽りをするサンラクを書きたかっただけのお話でした。
デートプランはやんわりしか考えてないから続き未定。