この視点主の肉づけをしすぎたので、後にまわした形になります。
モブ設定
両親他界、叔父に預けられるが、折り合いが悪く一人暮らし。
遺産は相続したが、管理は叔父の為、基本的には学費と月々の生活費しか自由に使えない。
基本ぼっち。でもやるときはやる。
ここまで考えたところで、モブにここまでの設定はいらねぇと気づきましたが、もうこれで書いてたので、諦めました。
俺の友達はよくからかわれる。
それは多分、妬みや羨ましさからくるというのは概ね理解しているけど、俺はその行為があんまり好きじゃない。
「お、鹿尾野、おはよう」
「ああ、おはよ」
「……いや、むしろ葉、おはようの方がダジャレっぽくてよかったか? ようおはよう」
「……ふふ、ちょっとやめてよ」
「YOYO! ようおはよう! ようよう白く鳴りゆく山際♪」
「ぶふふっ!! なんでラップなんで枕草子……! あはは……!」
勝った。
この個人的にはちょっと外したかな? みたいなノリでも大爆笑しているのが、件のよくからかわれる俺の友達、鹿尾野葉。
で、からかわれる理由になってるのが。
「葉、邪魔」
この幼めの容姿の美少女、佐備夏蓮さん。
「ふふ……ご、ごめん夏蓮」
鹿尾野の幼馴染で、何でも小学校から今に至るまでクラスが分かれた事のない腐れ縁らしい。
だからという訳ではないだろうが、傍から見てもいつも仲が良く、基本的にはいつも一緒に行動している。
「あーあー、またバカップルがイチャイチャしてやがるぜ」
……それ故に、こういった発言がよく聞こえる。
見ているこっちがみっともないほどと思ってしまうほどの僻み。
多分言った本人も自分でわかってるだろうけど、思わず言ってしまうんだろうな。
と、言われた鹿尾野は、先程までの笑いも収まり、今まで通り言った本人に近づく。
「あのさ、だから付き合ってる訳じゃないって何度も言ってるでしょ」
性格に似合わず体は大柄な鹿尾野は、よく運動系部活の助っ人を頼まれる。
クラスの奴もそれは知っているので、その鹿尾野が近寄ってくると、基本的には黙ってしまう。
ビビるなら言わなきゃいいのに。
……まあ、鹿尾野自身は怒っているとかではなく、ただ反応に困ると頬を掻いていただけだけど。
鹿尾野と佐備さん、仲はほんとにいいし、多分お互いにお互いを思ってる。
それがどういう感情かまでは、ただの友達の一人である俺には分からない。
そして佐備さんは、この話題には無関心を貫いている。
まあ恐らく、佐備さんも困ってるだけなんだろう。
昼休みになり、お弁当を広げる。
ぼっち飯だ。
俺は基本的にいつも一人で食べているのだが、鹿尾野はそんな俺を時より誘ってくれる。
「……相変わらず鹿尾野の弁当は美味そうだな」
「あはは、ありがとう。あ、はい夏蓮、お弁当」
「ん」
鹿尾野とご飯を食べる時、大体いつも佐備さんも一緒にいる。
なのでいつもは佐備さんの友達女子メンバーの中に鹿尾野が紛れてご飯を食べているのだが、今日は基本ぼっち飯の俺に気を使ったのか、佐備さんの友達女子は違うところで食べるらしい。
――ちなみに、鹿尾野がその中に紛れて女子トークしてても、何の違和感もないのが少し面白い。
『いただきます』
「……葉、今日は中華の気分って言った」
「朝から中華は無理だって!」
「葉ならいける」
「いやいやいや無理だってば。ほら、トマト料理大目に入れてきたんだから、それで許してって」
「む……許す」
「……なあ鹿尾野、いつも気になってたんだけど、その弁当って鹿尾野が作ってるのか?」
今の会話と、自分の冷凍食品だらけの弁当と、明らかな手作り弁当を見比べて、思わず尋ねる。
「え? ああ」
「そう。基本的に葉が朝早く起きて作ってる。いつもはリクエストを聞いてくれるけれど、今日は却下された」
「さっき許してくれなかったっけ!?」
鹿尾野に尋ねた質問が佐備さんから返ってきたことにちょっと驚きつつも、改めて鹿尾野の女子力の高さに感嘆する。
高校から一人暮らしを始めて、少しは自炊しているけど、ここまでのことは出来ない。
「すげぇな……俺も弁当は自分で用意してるけど、朝は冷凍食品詰め込むだけで精いっぱいだ」
「僕は好きでやってるだけだし、結構作り溜めもしてるよ……と言うか、お弁当を用意しよううとするだけ十分すごいよ。……ほら、夏蓮も少しは見習ったら?」
「む。今自分で好きでやってるって言った」
そう言って佐備さんは鹿尾野にゴスゴスと肩パンを繰り出す。
「あいたぁっ! ちょ、ごめんて」
流れるように始まった二人の漫才みたいなやりとりにケラケラと笑いつつ、俺は弁当を食べ進める。
「葉」
「あ、ソースね、はい」
「ん」
「うん、お茶ありがと」
「………………」
わざわざやれカップルだ夫婦だだの揶揄するのは好きではないけど、こういうして言葉を介さないやりとりを見てると、やっぱりちょっと熟年夫婦みたいだなと思わなくもない。
……いや、なんか熟年夫婦も違う気がする。
何がしっくりくるだろう。
「というかさっきから全然しゃべらないけど……やっぱり誘ったの迷惑だった?」
おっと、黙って観察しすぎて鹿尾野に気をつかわせてしまった。
「ん? まさか。元々飯時は無口なだけ。……それと、何か羨ましいなって思って」
「え…………」
「……何が?」
ん……? なんか空気少し変わった? ……あ。
「……や、警戒しなくてもからかうとかじゃないから。男女関係なしに、単純にこう、相手の事をすぐに理解できる間柄って羨ましいなって。……こう、相棒とかパートナーみたいな」
最近二人ともからかわれることが増えてきて、なんだかんだちょっと嫌だったのだろうか……。
――しかしそれはそれとして……今自分でしっくりくるワードが出た気がする。
相棒、パートナー。
こっちの方がしっくりくるぞ。
と、勝手に
「……え、なに?」
「あーいや、ごめん。
「あなたは分かってる」
「え? あ、ありがとう……?」
よくわからんけど、好感度が上がったらしい。
……こっちってなんだ?
放課後。
「鹿尾野、今日は助っ人なしの日だろ? 一緒に帰ろう」
「あ、うん。いいけど」
「ああ、もちろん佐備さんが良ければだけど」
「私は構わない」
「いやそうじゃなくて、今日は買い物して帰るけど」
「へぇ……じゃあそれも付いて行ってもいいか? 今日の弁当見てちょっと手作りに興味沸いた」
というか冷凍食品飽きた。
「それはもちろん! ……あ、夏蓮、量増えたら帰り荷物持ってよ?」
「……葉はその図体をしてながら、か弱い女子に重い荷物を持たせる鬼畜」
「割と普通の事言ったつもりだったけど!?」
「見た? 葉にイジメられた」
「鹿尾野ってばひどーい」
「あれ!? 夏蓮の味方!?」
学校を出て、鹿尾野についていくまま歩いて行くと、向かった先は商店街だった。
「……商店街は久々に来た」
いつもは大体大型スーパーで済ませてしまう。
「ああ、確かに冷凍食品買うならそっちの方だもんね」
「葉、疲れた」
「ちょ、学校から商店街に来ただけでしょ? ほら歩いて歩いて」
「今日は体育があったから疲れた。葉、背負って」
「背負わないよ!? 今から買い物しようっていうのに何言ってるのさ……ほら、行くよ」
「むぅ……」
そう言って鹿尾野は自然に佐備さんの手を引いていた。
佐備さんは佐備さんで割と体重預けてるのか引っ張られるように歩いていて、改めて二人の仲の良さを感じさせられた。
手つなぎのシチュエーション……なんか、恋人同士にも親子にも見えて、妙にほっこりする。
「? どうかした?」
「ああいや? なんかこう、家族って感じ」
言った後、これもからかいに入ってしまうんじゃないかと一瞬焦ってしまったが、向こうも俺に家族がいないことを知っているので、逆に少し気をつかわせてしまった。
「あー……まああながち間違いでもない感じがあるかなぁ」
「ん……私達を家族とするなら葉が弟で私がお姉さん。何故なら誕生日は私の方が早いから」
「一日ね」
「一日でも立派な先人。敬うべき」
そんな会話をしつつ、買い物をしていると、どうも鹿尾野はこの辺りでは有名なんだと気付き始めた。
「お! 鹿尾野の坊主! 今日はいい肉入ってんぜ! 見て行け!」
「うーん、確かにいいお肉みたいですけど、ちょっと高い気も……保留で!」
「あら葉ちゃん、今日はネギが安いわよ」
「あ、ほんとだ安い! しかも結構大きい! もらいます!」
「葉、見ろ。この秋刀魚の鮮度を!!」
「うわ! これは美味しそうですね……! いいですね……買います!」
と、商店街の人たちに声をかけてもらうことがほとんどで、鹿尾野も仲よさげに話しながら買い物をしていた。
時に値切ってみたり、普通におまけしてもらったり……こんなマンガみたいな商店街だったんだな、ここって……。
鹿尾野の恩恵を得て、俺もちょこちょこおまけしてもらいながら、買い物を続けた。
今度からここで買うのもありかも。
「見て夏蓮! いい秋刀魚があったから買っちゃったよ! 今日の晩御飯は秋刀魚だよ!」
「秋刀魚かぁ」
嬉しそうな鹿尾野と、何かを考えている感じの佐備さん。
確かにあんまり詳しくない俺でもわかるくらい新鮮で旨そうな秋刀魚だから、どう料理してもらうか考えてるのか?
そんなことを思っていたが、それはどうやら違ったらしい。
「あはは、そんな面倒くさそうな顔しなくても、ちゃんと炊き込みご飯とかにするって。材料はあるしね」
……え、そんな感じ?
「そう」
え、合ってるの?
鹿尾野の言葉に短く返事をした佐備さんは、そのまま考えるのをやめていた。
俺は全然わからなかったが、どうやら先ほどの佐備さんは秋刀魚を食べるのが面倒、と考えていた……みたい。
そこまで考えがわかるって、もはやエスパーだ。
一通り買い物も終わり、別れ道まで来た。
「じゃあ俺こっち」
「うん、また明日ね」
「また」
「うん……あ、ちょっと待って」
今日一日、一緒に行動して、二人の仲の良さを再確認して、単純に疑問に思ってしまった。
と言うか確認してみたいことが出来てしまった。
もし俺の想像通りなら、たとえ自分が嫌われたとしても、これは聞いておくべきだろうと思い、引き留めてしまった。
「うん?」
「?」
「これはさ、からかいとかではなく単純な疑問。もし俺の言葉で嫌な気持ちになったりしたら、もう話さなくてもいいから、教えてほしい」
「え」
「…………」
「鹿尾野と佐備さんは、お互いをどう思ってるの? 好き……なのか?」
「「…………………………」」
「ごめん、急にこんなこと聞いて」
「構わない。あなたはそういう事をフザケ半分で言ってくる人じゃないのは私達も知ってる」
「え、あ……うん、そう。別に気にしないで。ちょっと驚いただけだから……君はそう言う事は気にしないと思ってたから…………え、っと……それで、その、す、好きかどうか……だよね」
鹿尾野が照れつつ再確認していると、先に佐備さんが口を開いた。
「好き。私は葉の事が好き」
佐備さんは真剣に答えてくれた。
そして鹿尾野も顔を真っ赤にさせながら答えてくれる。
「そ、その……僕も、夏蓮の事、好き……だよ…………………………も、ももも、もちろん、僕も家族として! 家族としてね!!」
「……………………………………」
「――――……あー………………そっか。答えてくれてありがとう。じゃあ、今度こそまた明日」
「え、あ、うん……」
「………………」
俺の言葉を聞いた後、佐備さんは無言で歩いて行ってしまった。
「え、ちょ! 夏蓮!? あ、ごめん、多分夏蓮も怒ってる訳じゃないと思うから! じゃあ!」
そう言って、鹿尾野は佐備さんを追いかけていく。
「………………鹿尾野は、今の見てなかったのか?」
鹿尾野が「好き」と言った瞬間、普段あまり表情を変えない佐備さんが、口元を緩めていたのを。
その後に「家族として」と付け足したとき、付き合いの短い俺でもはっきりわかるほど、ムッとした顔をしていたのを。
今無言で帰って行ったのだって、俺が失礼な質問したからじゃなくて、鹿尾野の返答が気に入らなかっただけだろう……。
「あー……そういう」
今日一緒に行動して、正直な所、二人とも長い事距離が近すぎて、互いを恋愛対象として全然意識していないのだと思ってた。
ただ家族として好きで、一緒にいるのが当たり前で、恋愛感情は薄いのだと。
だからからかわれたとき、鹿尾野も「付き合ってない」と説明するんだと思っていた。
だから俺が「好き」かどうかを聞くことで、もしかしたら二人が互いに意識してくれるんじゃないかと思って、質問した。
そう、さっきのは俺の勝手なおせっかいだ。
だが結果はどうだ。
鹿尾野も佐備さんもバッチリ互いを意識していた。
佐備さんに至っては、しっかり向き合ってはっきり答えてくれた。
要するにあの二人が付き合ってないのは、鹿尾野が奥手すぎるってだけか……。
「……ていうか佐備さん、さっき鹿尾野に好きって言われたときのあの嬉しそうな顔…………普段態度に出さないだけで、鹿尾野のこと大好きじゃん…………え、尊……」
これヤバいな……今まで基本的に我関せずで通してたけど、ちょっと応援したくなってくる……。
そういえば佐備さんの友達たちもやたらと鹿尾野たちの事微笑ましげに見てたな……てことは、佐備さんの友達たちも気づいてる……?
「よし、ちょっとそのあたりと協力して、今の妬み全開でからかっている奴らを止めさせよう。二人もちょっと嫌がってたし。……うん、見守って応援する方向にシフトさせる……あんな尊いもの見せられて、黙ってられるものか」
私の中のルスモルなんですが、今の状況をズルズル続けて、同棲はするけど就職まで結婚してない感じ。
そんな感じのおまけ↓。
就職してしばらく、同僚から言われた。
「え! 佐備さん、結婚してなかったんですか!? 一緒に暮らしている人いるみたいだったし、ずっと結婚してると思ってました!!」
「…………………………」
色々寄り道して帰宅。
「ただいま葉」
「お帰り、夏蓮。今ご飯作ってるから」
「ん……それはそうと、これ書いて出しといて」
「んー? どれー? ……え!? これ婚姻届……えと、うん。書いて出しとくね」
「……うん」
ちらりと葉をみると、ものすごく笑顔だった。
「…………」
「……ねえ夏蓮。今度の休みさ、一緒に指輪見にいかない?」
「…………デザインは葉に任せる」
「えー? 一緒に選ぼうよー」
みたいな感じで結婚するのが私の中のルスモル。