ひぐらしのなく頃に 決 【影差し編】   作:二流侍

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4月28日~29日の出来事

10時~ o(○`・д・´○)ノバイトェ……
20時~ |*・д・)ノ  ただいま~♪
21時~ φ(・_・”)
00時~ _(:3」∠)_ スヤァ……
03時~ ( p_・)~゚
05時~ ( ゚Д゚)アライヤダ



■影差し編【Ⅳ-Ⅶ】

「――――こうして3人のKは出会った。運命の巡りあわせなのか、それとも既に神様から決められていたのか。それは神のみぞ知る世界なのだが、ここでは感謝すべき出来事であるのは間違いない。……あの後の俺は憑き物が落ちたようだった。今までの辛さが嘘のように消え、球筋にも迷いがなくなっていたことが分かるんだ。投げた瞬間分かったんだ。俺は変わった、と」

「そうだぜ。お前は変わることが出来たんだ」

「それを試したくて何度も投げたかった俺はフォアボールを選択した。どうせ相手は自分の球に一振りでもさせることは出来ない。だから安心し、自分の力を試しつつ満塁にした。そして気づく。やはり手に握るボールに力が入っていたのを。これならプロに行ける、そしてまだ足りないことがあると」

「あぁ。そしてお前は気づいたんだ」

「それは、全力だ。俺は小中相手に手加減をしていた。相手チームを格下だと舐めて己の限界さえも超えることを忘れていた。日々進化、その過程をしなくなっていた俺はようやく気付いた。それもこれもDKのおかげだ。ありがとう」

「ヘッ、俺たちは既に仲間だろ?」

「Kぇ……」

「……。ねぇ、いい加減パフェ食べない?」

 

 目の前に置かれたパフェをスプーンで撫でている亀田さんにそう尋ねた。うっとりとさせていた彼はそれを言われて口を尖らせている。先ほどまで見せていた威勢と自信はどこへやら、このエンジェルモートにたどり着いてからそれらは失われつつある。

 隣に座る前原君もテーブルに案内されてから女の子のメイド服に注目して、その人の魅力についての考察をしてくれたし。本当になんだろう、肩身の狭いというか、何と言うか……。

 

「Kさん! そんな冷たい言葉を掛けるなんてひどいっす!」

「じゃあ話を続けたいの?」

 

 当たり前じゃないですか、そう言いたげなウルッとさせた瞳にとりあえず先を進めるようにどうぞと手を差し出す。

 

「そして最後は全力を使った。そう、見せる一級は至高の球であれ。だからこそ、俺は甲子園優勝を目指す球を投げて」

「……で、キャッチャーが捕れなくてサヨナラ暴投負けになったんだよねぇ」

 

 彼が話しているのは自分の活躍のように思われるが、ただの試合の内容である。

 結果として言えば彼が暴投を起こして終わったという何とも歯がゆいものであった。彼が放ったボールはバットも当たらず、キャッチャーをのけ反らせる球であった。

 転々とするボールを眺めている相手チームメイトに、感動を噛み締めるかのように天を仰ぐ亀田さん。そして”何故か”塁にいた自分のチームメイト全員が走っていたことが大きな原因だった。ホームベースを2人目が踏んだ時に、審判がサヨナラ勝利を告げて終わった。

 これがあのDK事件からの事のてん末である。スカウトも見ていたということもあって、やる気のない、舐めたプレイが出来ない。だからと言って勝ってしまうと前原君との約束を果たすことが出来ない。そんな彼に出来た行動は、自分の後輩キャッチャーを使ったものであった。捕れない剛速球を投げれば、それは相手キャッチャーも責任を問われてしまうこととなる。つまり彼1人の責任になりにくく、仲間のチームメイトも最後くらい全力を使いたかったと言われたら、簡単に騙すことが出来る。

 更にギャラリーの目からは「あれだけの余力を残せたのか」と思わせることが出来る。

 自分の地位を落とすことだってしない。そして何より……パフェが待っている。

 彼は迷わなかったようだ。因みにアイデアを出したのは他でもない北条さんでーす。

 こういう内容……ばれないように上手くやるスタイルが何とも彼女らしい。

 

「どうですか、K! これが俺の考えた伝記っす!」

 

 Kと呼ばれた前原君はうんうんと頷いている。何か納得ように見えるのだが、それがどうしても師弟関係のそれにしか見えないのだ。年齢的に師弟は逆でありそうなのに。

 そして自分はKさんと呼ばれている。「同じKならあなたは先生のような存在っす!」なんて言われて許容しましたよ、はい。で、前原君のことは師匠のような存在らしい。

 師匠は亀田さんの言葉を飲み込んだように頷いて、そしてはっきりと告げた。

 

「甘いな」

「な!? あれだけの言葉を用いても、まだ俺たちの凄さを伝えられていないのですか!?」

 

 意外でしかないようで、机に手を付けてこちらに顔を寄せる亀田さん。前原君はその頬を平手打つ。

 

「Kぇ……」

「馬鹿か貴様は! 何で俺たちが凄いなんて言うんだよ!」

「だって、俺は1人でも多く、DKの素晴らしさを伝えたくて……!!」

 

 そこが違うんだぜ。前原君はそう言って亀田さんのどこが間違っているかを指摘する。

 

「俺たちは認めてもらうんじゃない。認めてもらってこその俺たちだ」

「……ッ!!」

「分かるか! 人は己を評価は出来ないんだ。出来るのはいつも他人だ、世界だ! だからこそ認めてもらうために努力をする。自分の欲求のためではないんだ!」

「俺は……! いつの間にか自分の保身のために動いていたのかぁ……!」

 

 悔やんで何度も机に叩きつける。がたがたと揺れてパフェが危ないと感じたのだけれど、それは前原君が腕を抑えることで何とかなった。

 前原君は亀田さんの目をジッと見つめて言う。

 

「気付いたならそれでいい。肝心なのは、今なんだぜ……?」

「Kぇ……」

 

 もう何度目だろう、このKという言葉。

 

「お前はこれから変わればいいんだ。とりあえず、今からゆっくりパフェを味わおうぜ。伝記については追ってみっちりしごいてやる!」

「はい!」

 

 ……という訳でようやくここに来た意味のあることを考えてくれた。とりあえず注文したパフェは既に手渡されているし、早く食べないと上に乗っかっているアイスやらが溶けてしまう。

 亀田さんのようにスプーンを撫でることはしないので、普通に食べながら店内を見渡していった。初めて来た場所ということもあって、中々お目にかかれない場所であることは間違いなかったから。

 一見すれば洋風を模したレストランや喫茶店のような雰囲気を醸し出しているこのエンジェルモート。店員がメイドであることから多少の違和感があるかもしれないが、立地された場所も街中にあるような場所なので、合法的な場所であることは確かである。

 しかし、お客さんの方が合法的かどうか怪しかったりする。今見ただけでも盗撮が2回行われていたし、メニューを何度も頼んでは店員にデートの約束をしたりと、モラルに反した行為があった。

 店側も困っている事だろう。今日は確かプレミアムイベントであるはずなのに客層がそういう下心が見える人なんだから。

 と、そこで気になった点があった。

 

「そういえばさ、前原君はどうしてそのチケットを3つ持ってたの?」

 

 隣でイチゴをコロコロとスプーンの上で弄んでいた前原君は、さも当たり前かのように答えた。

 

「そりゃあ魅音の力だぜ。ここはあいつの親族が経営している店の1つだからな」

「マジですか」

「嘘付く必要ねぇだろ? じゃないと取れないからな」

「K……! まさか、この店の店主と知り合いなんすか!?」

「ん? まぁ友達の知り合いってことならそうだぜ?」

 

 その瞬間、またもや亀田さんの目つきが変わる。助けを乞うような瞳で彼は見つめていた。

 

「その……非常に言いづらいんですが、お願いがありまして……」

「何だよ? 堅苦しくしなくても俺たちは仲間だ。何でも言ってこいよ」

 

 そう言われてホッとしたのか、亀田さんは安堵の表情で相談する。

 

「その……実は俺、エンジェルモートでのブラックリストポイントが溜まってまして……」

「何それ? そのブラックリストポイントって?」

 

 名前を聞く限り良い意味ではないことぐらいは判断出来るのだけど。

 そんな単純そうな質問に対して、答えたのは亀田さんではなく、Kでも無かった。

 

「当店に来ていただく際には、盗撮、痴漢、わいせつな行為などが禁止されています。でも中々ちゃんと守って下さる人がいないんですよねぇ。だから当店で悪い事を行った際にはポイントを加算しているんですよ」

 

 その人は僕が質問してくれた内容に過不足ない答えをしてくれた。

 

「魅音……!?」

 

 前原君の言うとおり、目の前に見えるその人は緑の髪を束ね動きやすくし、そして何よりメイド服を着ている園崎さんであった。

 そして彼女は前原君をジッと見つめて数秒、考えるような間が存在していた。

 

「……。ハロー圭ちゃん、まさか私の叔父が経営している場所でアルバイトしているなんて思わなかったでしょ?」

「いや、何でお前がここにいるんだろうなぁっとばかりに」

「用はそちらの方なので、ね? 亀田さーん」

「うぐッ」

「当店から追い出されるのはもう少し加算されないといけないですけど、消すことは根本的に不可能なのでご注意をー」

「そ、そこを何とか!?」

 

 一体何をしたのか。彼のことだからパフェに関係することなのだろうけど、プライバシーの関係からか、具体的な話までにはならなかった。

 

「あっはっは! 亀田さんにはもう少し常識を身に着けていただかないとねぇ」

「そんなぁ!」

「……」

 

 ここで確信に変わった。彼女はやはり園崎さんであっても、魅音さんではない。

 

「詩音さん、演技するのはもういいんじゃないですか?」

「え?」「あれま」

 

 2人がそれぞれ意外そうな発言をしつつも違った表情をしていた。1人は何言っているのかこいつはという驚いた表情。そしてもう1人は困ったように少しだけ笑った表情であった。

 

「ありゃりゃ…………どこかでお姉と間違えたところがありましたか?」

 

 詩音さんは途端に口調や声色を変える。いきなりお嬢様のような品のある言葉遣いに前原君は目を点にしていたのを気にせず、僕が会話を繋げることにする。

 

「亀田さんに諦めてもらう時、常識なんて言葉を使うのは魅音さんらしくないと思いました」

 

 それに彼女は「えぇ? どうしようかなぁ?」なんて言って変にごねたり、代わりに条件を要求するのが魅音さんである。きっぱりと諦めろ、そんな少し冷たい感じは出会った当初の詩音さんの雰囲気であった。

 それを伝えると、何度も頷いて納得してくれたように見える。

 

「まぁ、孝介さんがいるからあまり騙す理由もないかなぁ。なんて思ってはいました」

「じゃあ何で咄嗟に嘘付いたの?」

「そりゃあもちろん。村で色々と有名な圭一さんの驚く姿を拝見したかったので」

「村で、かぁ……」

 

 単純明快な理由で、彼女は咄嗟に芝居をしたということらしい。そういう意味では前原君はしてやられたであろう。今も僕と園崎さんを何度も見ている。

 

「マジかよ……魅音に姉がいたなんてな……」

「いや、妹だけど?」

「妹だとぉ!?」

 

 まるで何故こんなにも妹の方が出来ているのか、そんなことを言いたげな驚き様である。

 

「園崎詩音です。いつも姉がお世話になっています」

「出来た妹だ……女の子成分は全部こっちに移っていたとでも言うのか!?」

「それ魅音さんに滅茶苦茶失礼じゃない?」

 

 確かに丁寧な口調や対応は女の子の考える清楚さや気品を感じさせはするけど……。別に魅音さんにそれが欠如しているとは思わない。

 いきなり手をパンと叩いた園崎さんは話の矛先を亀田さんの方へと移す。

 

「一応ですが……亀田さんに聞きます。あなたこのブラックリストの話をどこで聞きましたか?」

「え?」

「これは店内での秘密にされた制度なのですが?」

 

 言われて目線を逸らしている。何かの日記とばかりに目にしたのがそのポイント帳でした。なんて話なのかもしれない。

 亀田さんは疑いを掛けられる前に真実を話す。

 

「仲間に聞いたんだ。そういう噂というか、話があるんだって。……Kも知っていたでしょ!?」

「いや、さっぱりだ」

 

 ここでまさかのさっぱり知らない宣言。これで逆に秘密裏に情報を仕入れていることが増してしまった。

 

「この件も踏まえ、楽しみにしてくださいね」

「ぐぅ!」

「別に何もしなければ大丈夫です。ただ”普通”にしてくださいね」

「……ねぇ詩音さん。そのブラックリストポイント、溜まると実際にどんなことが起こるの?」

「うーん。ここだけだから言いますが、その後のエンジェルモートへの入店を一切禁止します」

「あはは……そりゃあ亀田さんにはきつい話だね……」

 

 こんなに楽しそうにしている人が入店さえ禁止。そんなことなれば亀田さんにとって悶絶ものなのだろう。

 亀田さんの方をちらりと見つつ、とりあえず相談をしてみた。

 

「詩音さん。無理を承知でお願いしたいんだけど、亀田さんのポイント、少しだけ減らすことは出来ないかな?」

「え?」

「Kさん!」

 

 詩音さんは不思議そうに僕を見つめてくる。やはり理由なしにお願いするのも無礼なのかもしれない。そう思って取り繕う形となるが述べることにした。

 

「ほら、こうポイントが溜まってしまうとどうしても恐れて普段通り……は駄目なんだけど、楽しむことが出来ないじゃない? それは改心しようとしている人には可哀想かなぁって」

「そうです! 俺はこれから変わるつもりなんすよ!」

「えーっと。亀田さんは黙ってて」

「ふぁい!!」

「で、どうかな? 強制は出来ないし、ただの相談なんだけど……」

「ふーん……そうですねぇ」

 

 吟味でもするかのような園崎さんの目つき。何か心の内を探るような気がする。

 だが、2度ほど瞬きをしたその目に、先ほどの目つきは消えていた。

 そして園崎さんはこう提案する。

 

「なら、少しだけ付き合ってくれませんか?」

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