ファイアーエムブレム風花雪月 ~紅き大君主~ ※お試し版 作:ロンギヌス
原作:ファイアーエムブレム風花雪月
タグ:R-15 残酷な描写 転生 クロスオーバー ファイアーエムブレム 風花雪月 仮面ライダー鎧武 仮面ライダーバロン 駆紋戒斗 ベレス エーデルガルト ディミトリ クロード 連載するかどうかは不明
1人は戦いに勝利し、1人は戦いに敗北した。
敗者は勝者を認め、この世を去った。
そして彼は、ある世界へと導かれる事となる……。
※1話限りの短編です。ゲーム実況者の動画を見ている内に興味が湧き、この話を執筆してみました。
現在連載中の『リリカル龍騎ライダーズinミッドチルダ』の執筆が思うように行かず、気分転換も兼ねてゲーム実況者の動画を視聴していたところ、ファイアーエムブレム風花雪月のストーリーに強い興味を抱き、気付いたらこんな短編を書き上げちゃってました。
作品のタグを見ればわかる通り、主人公はあの男です。
それではどうぞ。
戦闘BGM:始動 鎧武
2人の戦士が、戦いを繰り広げた。
『何故だ……葛葉……ッ』
2人の戦士が、決着をつけた。
『何がお前を……ッ……そこまで、強くした……?』
“深紅の魔王”は、戦いに敗北した。
『守りたいという願い……見捨てないという誓い……』
“白銀の武者”は、戦いに勝利した。
『それが俺の全てだ……ッ』
『……何故泣く……?』
『ッ……泣いて良いんだ……』
『それが俺の、弱さだとしても……拒まない……!』
『俺は、泣きながら進む……!!』
白銀の武者が、深紅の魔王に示してみせた強さ。
認めるしかなかった。
自分にはない強さを持っている彼を。
『お前は……本当に強い……!』
道こそ違えたが、抱える想いは同じだった。
負けはしたが、最期まで全力で戦い抜いた。
ならばもう悔いはない。
深紅の魔王が突きつけた拳は、静かに落ちた。
白銀の武者の腕の中で、深紅の魔王は静かにその目を閉ざした。
“男爵”からのし上がり、“大君主”となった深紅の魔王は、そこで命を落としたのだった。
そう、落としたはずだったのだが……
「―――何?」
次に目覚めたその青年が見た物……それは薄暗い青色が広がる空だった。
「……ここは、どこだ?」
あの時、俺は葛葉に敗れて死んだはず。
それなのに、どうして俺は今も生きているのか?
まさか、ここは天国か地獄とでも言うのか?
青年は何もわからないまま、倒れていた状態からスクリと立ち上がる。立ち上がった彼の髪に、どこか優しげな風が吹きかかる。満月の光が、彼の姿を明るく照らす。
(何故俺はこんな所に……)
辺り一面、緑の木々が生い茂る森だった。風に揺れた木の葉が枝から離れ、ゆらりゆらりとゆっくり落下して行きながら、青年が着ている赤と黒のロングコートの右肩に静かに乗った。そんな事などいちいち気にしていられなかった青年は、まずはここが一体どこなのかを把握するべく、その場から移動しようと考えたのだが……少し歩こうとした途端、青年の腹部に突然痛みが襲い掛かる。
「ッ……!」
ズキリと痛む腹部を押さえ、その場に蹲りそうになる青年だったが、前に出した右足に力を入れ、踏ん張る事で彼はそれを防いだ。その表情はとても苦しそうだが、その場で倒れたり、膝を突くような真似をする事は、青年の中で何かが許せなかったようだ。
(とにかく、まずはここがどこなのか……あれから世界はどうなったのか……それを確かめなければ)
痛む腹部を押さえながら、青年は近くの木々に手を置く事で体のバランスを支え、1歩ずつだが着実に前へと進んで行く。そんな時だった。
「……?」
森を進んだ先に、木でできた柵で囲まれた小さな村を見つけた青年。ちょうど良い。まずはここがどこなのか、情報を得る必要がある。そう考えた青年だったのだが、村の入り口付近まで来たところで、その表情には別の疑問が生まれ始めた。
(何だ……?)
金属と金属がぶつかり合う音。人が叫んでいる声。村の様子が明らかにおかしい事は、青年もすぐに気付いた。
「まさか……襲われているのか……?」
「ぐぎゃあっ!?」
青年が訪れようとしているその村では現在、ある戦いが繰り広げられていた。
ある人物達を追いかけ、村をも巻き込む形で襲い掛かって来た盗賊達。
その盗賊達に後を追われていた、ある大修道院の3人の学生達。
そしてその3人の学生達に助けを乞われ、村を巻き添えにはできまいと盗賊退治に乗り出した傭兵団。既に村人達を安全な場所に避難させた一同は、盗賊団の討伐に打って出る事にしたのだった。
「はぁ、全く。何でこんな事になっちまったかねぇ……」
その傭兵団のリーダーである、顎鬚が特徴的な金髪の男性―――“ジェラルト=アイスナー”は馬に乗り込んだまま、襲い掛かって来た盗賊を難なく斬り伏せ、疲れた様子で溜め息をついていた。彼のすぐ近くでは、暗い青緑のセミロングと碧眼が特徴的な愛娘―――“ベレス=アイスナー”が他の盗賊を剣で一突きにしていた。
「ベレス、そっちはどうだ?」
「……大丈夫」
倒れた盗賊から剣を抜き取り、血を払ったベレスは無表情で淡々と告げる。感情の起伏が乏しい愛娘の反応は既に見慣れたものだからか、ジェラルトは「そうか」と一言だけ告げ、それ以上何も言わなかった。そんな2人の元へ駆け寄って来た人物が3人。
「ガキ共も無事だな?」
「はい、大丈夫です……!」
「危ないところを助けて頂き、感謝します」
「いやぁ、本当に助かりましたよ~」
制服の左肩に赤いマントを携え、グレーがかった白い長髪を特徴とした、アドラステア帝国の第4皇女にして次期皇帝である女性―――“エーデルガルト=フォン=フレスベルグ”。
制服の左肩に青いマントを携え、金髪碧眼の騎士然とした風貌を特徴とした、ファーガス神聖王国の第1王子である青年―――“ディミトリ=アレクサンドル=ブレーダッド”。
制服の左肩に黄色のマントを携え、黒髪や褐色肌、そして左耳のピアスを特徴とした、レスター諸侯同盟の盟主・リーガン公爵家の嫡男である青年―――“クロード=フォン=リーガン”。
とある士官学校の生徒である3人の学生達は、野営中に襲って来た盗賊団に追われ、ジェラルト率いる傭兵団に助けを求め、彼等と協力して盗賊団と相対していた。まだ士官学校の生徒の身であるが故か、盗賊団との戦いを経て学生達はいくらか息が荒くなっているのに対し、ジェラルトやベレスは呼吸1つ乱れていない。
「あんた等のおかげで、俺達も命拾いできそうだ。こんな辺鄙な村に腕利きの傭兵とは……まさに天の配剤、日頃の行いが良いおかげだな!」
「クロード、恩人に対して無礼が過ぎるぞ。少しくらい態度を改めたらどうだ」
「そこまでにしておきなさい、2人共。今はお喋りをしてる場合じゃないわ」
「……こんな状況だってのに、随分呑気なガキ共だな」
盗賊団に追われている身にも関わらず、どこか余裕そうな表情かつ気軽な態度でベレスと接するクロード。そんなクロードの軽い態度を咎めようとするディミトリと、その2人を諫めつつも周囲への警戒を怠らないエーデルガルト。そんな学生達の様子にジェラルトは呆れたように呟くも、すぐに表情を切り替えて目の前の敵に集中する。
「まぁ良い。連中の数もそう多くない。さっさと畳みかけるぞ」
「「はい!」」
「はーい」
ジェラルトの呼びかけに、ディミトリとエーデルガルトは礼儀正しく、クロードは気の抜けた態度で返事を返す。先程からほとんど喋っていないベレスもまた、無言ではあるがコクリと頷き、剣を構えて前方にいる盗賊団を見据えた。
「くそ、何でこんな所に傭兵がいやがる……!?」
盗賊団のリーダーと思われる凶暴な目付きの男性―――“コスタス”は、自分達が相対している傭兵団を見て厄介そうに舌打ちしていた。
(
コスタス率いる盗賊団は、ある目的の為に野営中だった学生達を襲撃し、彼等を小さな村まで追い込んだ。そこまでは良かったのだが、その学生達が逃げ込んだ先の村に傭兵団が滞在していたのは想定外だった。計画が狂ってしまった事に苛立ちながらも、コスタスは手下の盗賊達に向かって大声を上げる。
「こうなったらしょうがねぇ……全員まとめてぶちのめすぞぉ!!!」
コスタス達盗賊団が一斉に駆け出し、ジェラルト率いる傭兵団もそれを見て一斉に構え、盗賊団を迎え撃つ。2つの集団が戦いを繰り広げるその一方……その戦いの様子を、離れた場所から見ている人物がいた。
(何だ、アイツ等は……?)
森の中を歩き続け、何とか村まで辿り着いた赤と黒のロングコートの青年。彼は家屋の物陰から、傭兵団と盗賊団の戦いを密かに眺めていた。
(奴等の容姿、服装……明らかに日本人ではない、か……)
盗賊団も、傭兵団も、その傭兵団と共にいる学生達も、その外見や雰囲気などは明らかに青年が知っている日本人の物ではない。それに彼等の戦いの様子はどちらかと言うと、青年がかつて迷い込んだ事がある
「まさか、また違う世界だとでも言うのか……?」
情報が少な過ぎる為、今の段階では判断のしようがない。青年はもう少しだけ様子を見てみる事にした。彼が眺めているその先では、既に戦いの決着が付こうとしていた。
「ごはぁっ!?」
薙ぎ倒されたコスタスが、地面に勢い良く倒れ込んだ。周りではジェラルト達にやられた手下の盗賊達も同じように倒れており、コスタスを薙ぎ倒した張本人であるベレスは剣を降ろさず、警戒を解かずにいる。
「ッ……くっそぉ……!!」
このままでは自分達は敗北し、傭兵団に縛り上げられる羽目になるだろう。そんな事になってたまるかと、傷が浅いコスタスはすぐにムクッと立ち上がり、目の前のベレスを睨みつける。一方で睨まれたベレスもまた、その鋭い目付きに一切怯む事なく、再び剣を構えて迎撃の体勢に入る。
このまま再び戦闘が再開されるかと思われたが……事態は急展開を迎える事となった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「「「「「……ッ!?」」」」」
突然大きな悲鳴が上がり、その場にいる全員が一斉に振り向く。一同が振り向いた先では、右肩から血を流している1人の盗賊が、フラフラな状態でコスタスに助けを求めようとしていた。
「おい、どうした!?」
「お、お頭、助け……」
『グギャアァウッ!!』
「ひぎゃっ!?」
助けを求めようとした盗賊が、背後から何かに襲われ地に伏した。一同の前に現れた
「な、こんな所に魔獣だと!?」
「しかもアレは、最近出没し始めたという新種の……!?」
「こいつはヤバそうだぜ……奴さん、1匹だけじゃないらしい……!!」
魔獣と呼ばれた
『『『グギャアァァァ……!!』』』
「ひぃ!? く、来るな、来るなぁぁぁぁぁぁっ!?」
「コ、コスタスさん、助けてく……ぐへぇ!?」
「ち、畜生、何でこんなのまで現れやがんだ……おい、逃げるぞ!!」
逃げ遅れた盗賊の数名が魔獣に襲われる中、コスタスは軽傷だった一部の盗賊を連れて村から撤退していく。その様子を物陰から見ていた青年は、その魔獣達を見て驚愕の目を浮かべていた。
「インベスだと……!? 何故こんな所にまで……」
青年が“インベス”と呼んだ魔獣達は、逃げ遅れた盗賊達を持ち前の腕力で叩き伏せた後、今度は傭兵団や学生達の方へと視線を向ける。今度は自分達が狙われていると察したジェラルトは、部下の傭兵に指示を下す。
「ジェラルトさん、俺達はどうすれば……!?」
「ッ……全員後ろに下がらせろ!! 奴等は俺が相手をする!! ベレス、お前はガキ共を守れ!!」
「……!!」
ジェラルトはそれぞれに指示を下し、自身は馬に乗って駆けながら複数の“初級インベス”に挑みかかる。彼は擦れ違い様に1体の初級インベスを槍で突き、突かれた初級インベスが仰向けに倒れ込むも、大したダメージにはなっていないようですぐに立ち上がって来た。
「チッ……噂には聞いてたが、本当に奇妙な魔獣だな……!!」
『『『グギャルルルル……!!』』』
この怪物達がどこから現れたのかはわからない。しかしこの村に住む村人達や、自分達を頼って来た学生達を襲わせる訳にはいかないと、ジェラルトは馬の手綱を引いて初級インベス達と向き直り、再び槍を構えて攻撃を仕掛けに行こうとした。しかし……
「ッ!? 危ない、上です!!」
「何……うぉっ!?」
『ギシャアァァァッ!!』
突如、上空からまた別の怪物が襲い掛かって来た。赤黒いボディに羽根を生やしたその怪物―――“コウモリインベス”はジェラルトに向かって体当たりを仕掛け、思わぬ不意打ちを受けたジェラルトが馬から落下してしまう。
「!? 父さん……!!」
「来るなベレス!! 俺は大丈夫だ!!」
ジェラルトが攻撃されたのを見て、すぐに助太刀に入ろうとしたベレスだが、その前にジェラルトが大声を上げて制止する。立ち上がったジェラルトの前方ではコウモリインベスが地面に着地し、初級インベス達を率いるようにジェラルトと対峙する。
『シャアァァァァァ……!!』
「また1匹増えやがって……良いぜ、纏めて相手してやるよ……!!」
余計な被害を出さない為にも、相手の注意を自分に引きつける必要がある。そう考えたジェラルトがわざとらしく指で挑発し、それが通用したのか否か、コウモリインベス達はジェラルトの方へとジリジリと迫り来ようとした……その時。
「はぁ!!」
『ギシャッ!?』
「……!?」
ジェラルトに飛び掛かろうとしたコウモリインベスに、横から突然飛び蹴りを喰らわせる人物がいた。それに驚いたジェラルトや初級インベス達の動きが止まる中、飛び蹴りを決めて着地したのは、赤と黒のロングコートの青年だった。
「全く……どの世界でも面倒な奴等だな」
「お前は……!?」
『シャアァァァァァ……!!』
青年は鋭い目付きでインベス達を見据え、起き上がったコウモリインベスも青年に向かって威嚇を返す。その威嚇を物ともしない青年は、スッと上げた右手をインベス達に向けてかざし、何かを念じるようにインベス達を強く睨みつけたが……
(ッ……言う事を聞かない……!?)
何故だ、何故言う事を聞かない。今の自分が
『シャアッ!!』
「チッ……!!」
残念ながら、理由を考えている暇はない。青年はすぐに思考を切り替え、コウモリインベスが振り上げて来た羽根をかわした後、爪で切りかかって来た初級インベスを蹴りつけ、他の初級インベスにぶつけ転倒させる。
「面倒だが仕方ないか……」
言う事を聞かせられない。ならばもうやる事は1つだけだ。青年は自身の懐に右手を入れ、そこから黄色いナイフ状の装飾が付いた黒いベルトを取り出す。その際、青年は一瞬だけチラリと黒いベルトを見つめる。黒いベルトの左側に取り付けられているプレート部分には、
(戦極ドライバー……これがここにあるという事は、恐らく……)
青年は黒いベルト―――“
「やめろ、そいつ等は危険だ!! お前も早く下がれ!!」
「俺に命令するな。黙って見ていろ」
事情を知らないジェラルトは青年に避難するよう告げるが、青年はその警告を無視し、ロングコートのポケットからある物を取り出す。それは「LS.08」と描かれ、黄色いバナナが象られた錠前のような小道具だった。青年はそれを右手に構えてから、静かな声で、かつ力強く言い放つ。
「変身……!」
≪バナナ!≫
バナナが象られた錠前―――“バナナロックシード”を開錠し、音声が鳴り響く。すると青年の頭上の空間にファスナーのような物が出現し、開いたファスナーの中からは、バナナのような形状をした大きな金属の塊のような物が降下して来た。
「アレは何だ……?」
「ん~、果物か何かか……?」
ディミトリやクロードが不思議そうにその光景を見ている中、青年は開錠したバナナロックシードを指先でクルリと回転させた後、それを戦極ドライバーの中央部の窪み部分に嵌め込み装填する。
≪ロックオン!≫
すると今度は周囲にファンファーレのような音楽が鳴り響く。何が起こっているのかわからない傭兵団や学生達は困惑の表情しか示せない。
「一体、何をする気なの……?」
エーデルガルトがそう呟く中、青年は変わらずインベス達を睨みつけながら、戦極ドライバーに付いている黄色のナイフ状の装飾を右手で倒し、まるで実際に果物を切るかのようにバナナロックシードを開く。そして……
≪Come on! バナナアームズ!≫
頭上のバナナのような金属の塊―――“バナナアームズ”がゆっくり降下し、青年の頭に覆い被さった。それは青年の全身を赤と銀色のスーツへと変化させた後、頭に被さった状態からゆっくり展開されていき、左右非対称の鎧として形成された。
≪Knight of Spear!≫
「フン……!」
バナナアームズを鎧として纏ったその青年は、頭部も仮面で覆われていた。スリットの入った鉄仮面と、その左右から角のように生えたバナナの装飾。その右手には、皮を剥いたバナナを模したような長い槍が逆手で握られている。
「姿が変わった、だと……!?」
この一連の光景を見ていた周りの者達は、ただひたすらに驚く事しかできない。そんな周囲の反応を他所に、騎士の姿となった青年はその手に構えた槍型の武器―――“バナスピアー”を逆手から順手に持ち替え、それと共にバナスピアーの先端が伸びてリーチが長くなる。
「アーマードライダー、バロン……」
青年が姿を変えた騎士のようなその戦士―――“アーマードライダーバロン”はバナスピアーを構えながら、インベス達に向かって言い放つ。
「俺のやるべき事は変わらない……倒すべき物は倒す、それだけだ!!」
『『『『シャアァァァァァッ!!』』』』
そう言い切ると同時に、バロンはその場から駆け出し、インベス達に向かって攻撃を繰り出した。バロンが振るったバナスピアーの一撃がコウモリインベスに命中し、次に初級インベス達をバナスピアーで薙ぎ払うように攻撃していく。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
『ギュアァ!?』
右腕を振り上げて来た初級インベスの攻撃は、バナスピアーの柄部分で防御し、弾き返してからバナスピアーの穂先を叩きつける。後ろから襲い掛かろうものなら、瞬時に逆手に持ち替えたバナスピアーで前方を向いたまま一突きにする。バロンが見せるその鮮やかな動きは、見ている者達を瞬く間に魅了してみせた。
「凄い……あの魔物達が、まるで赤子のように……!」
「あの動き、素人の動きじゃねぇな……戦い慣れてやがる……!」
ディミトリやジェラルトの口からそんな感想が漏れる中、初級インベスの攻撃をバナスピアーで難なく受け流したバロンは、バナスピアーを一旦左手に持ってから、右手で戦極ドライバーのナイフ状の装飾―――“カッティングブレード”を倒した。
≪Come on! バナナスカッシュ!≫
「はぁっ!!」
『『『グギャ……!?』』』
すぐさま右手で持ち替え、バナスピアーの穂先から巨大なバナナ状のエネルギーを放出したバロンは、そのまま初級インベス達を纏めて一突きにして貫いた。彼はその状態からバナスピアーを大きく振り上げ、初級インベス達を地面に力強く叩きつけた。
「せえぇいっ!!!」
『『『グギャアァァァァァァァァッ!?』』』
必殺技―――“スピアビクトリー”によって叩きつけられた初級インベス達は呆気なく爆散し、その爆発に驚いた者達が思わず両腕で顔を守る。爆炎が収まっていく中、残るはコウモリインベスただ1匹となった。
『ッ……ギシャアァ!!』
「!? 何……ッ!!」
するとコウモリインベスはその場で羽ばたき、空中に飛んでバロンを素通りしてしまった。バナスピアーの攻撃が外れたバロンが驚く一方、コウモリインベスは別の人物に狙いを定める。コウモリインベスが飛来する前方に立っていたのは、エーデルガルトだ。
「ッ!? しまった、エーデルガルト!!」
「くっ……!?」
ディミトリが叫び、エーデルガルトは手持ちの斧では防御が間に合わないと悟り、短剣を手に取って構える。コウモリインベスはそのままエーデルガルトに向かって体当たりしようとしたが……
「え……きゃっ!?」
「ッ……!!」
「チィ……!!」
直前でベレスが割って入り、エーデルガルトを庇うように抱き締めてから、その背中でコウモリインベスの攻撃を受け止めようとする。それを見たバロンはすぐに駈け出そうとしたが、距離が離れていて間に合わない。
万事休すかと思われた、その時―――
『痴れ者め……自分の身くらい大事にせんか!!』
―――全ての時間が、その場で停止する。
そして時間はあっという間に巻き戻されていき……バロンが必殺技を発動する時点まで遡る。
≪Come on! バナナスカッシュ!≫
「せえぇいっ!!!」
『『『グギャアァァァァァァァァッ!?』』』
叩きつけられた初級インベス達は呆気なく爆散し、その爆発に驚いた者達が思わず両腕で顔を守る。爆炎が収まっていく中、残るはコウモリインベスただ1匹となった。
(! 何だ、今の感じは……?)
その時、バロンは何か違和感のような物を感じ取った。その違和感の正体が、時間が巻き戻された影響による物だとは、この時のバロンは知る由もなかった。
『ッ……ギシャアァ!!』
「!? 何……ッ!!」
するとコウモリインベスはその場で羽ばたき、すぐにハッと意識を切り替えたバロンはバナスピアーを振るう。しかしバナスピアーの一撃は飛行し始めたコウモリインベスには当たらず、コウモリインベスは別の人物に狙いを定める。コウモリインベスが飛来する前方に立っていたのは、エーデルガルトだ。
「ッ!? しまった、エーデルガルト!!」
「くっ……!?」
ディミトリが叫び、エーデルガルトは手持ちの斧では防御が間に合わないと悟り、短剣を手に取って構える。コウモリインベスはそのままエーデルガルトに向かって体当たりしようとしたが……
「え……きゃっ!?」
「ッ……はあぁっ!!」
『シャアッ!?』
直前でベレスが割って入り、エーデルガルトを庇うように彼女の前に立ち、その手に構えた剣で突っ込んで来たコウモリインベスの胴体を力強く斬りつけた。思わぬ攻撃を受けたコウモリインベスは空中でバランスを崩しかけるも、近くの大木の枝に降りる事で体勢を立て直す。
「おいおい、大丈夫かよ2人共!」
「え、えぇ、大丈夫よ……!」
『シャアァァァァァ……シャアッ!!』
「ッ……また来るぞ!!」
コウモリインベスはすぐに飛び立ち、再びベレス達に攻撃を仕掛けようとする。ベレス達の傍まで駆け寄って来たクロードは弓から矢を放つも、コウモリインベスはそれをヒラリとかわし、ディミトリは突っ込んで来る敵を迎撃するべく構えた槍を強く握り締める。
しかし、コウモリインベスはミスを犯していた。
「貴様……俺を無視するとは良い度胸だ……ッ!!」
それはこの男……バロンから注意を逸らしてしまった事だ。
≪Come on! バナナオーレ!≫
バロンは戦極ドライバーのカッティングブレードに手をかけ、先程と違い今回は2回連続で倒す。するとバナスピアーの穂先から再び巨大なバナナ状のエネルギーが放出され始め、バロンはそれを飛んでいるコウモリインベス目掛けて勢い良く投擲した。
「はぁっ!!」
『!? ギシャ、ガァ……ッ!!』
「「「「……ッ!?」」」」
ベレス達に意識を向けていたせいか、投擲されて来たバナスピアーに気付けなかったコウモリインベスは成す術なく刺し貫かれる。しかも、それだけでは終わらなかった。
「トドメを刺してやる……!!」
≪Come on! バナナスパーキング!≫
今度はカッティングブレードを3回連続で倒し、バロンがその場から高く跳躍。バナスピアーで刺し貫かれたコウモリインベスよりも高い位置まで跳んだ後、バロンとコウモリインベスの間に巨大なバナナ状のエネルギーが出現し、バロンはそのバナナの軌道を描くように飛び蹴りを繰り出した。
「はぁぁぁぁぁぁぁ……せぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!!」
『シャアァァァァァァァァッ!?』
バロンの繰り出した必殺の飛び蹴り―――“キャバリエンド”の一撃がコウモリインベスに炸裂し、元々突き刺さっていたバナスピアーがコウモリインベスの胴体に押し込まれるように深く刺さり、コウモリインベスは地上へと落下した直後、大爆発を引き起こした。
「ッ……強い……!!」
「凄い、あんなにあっさりと……!!」
「おいおい……本当に何なんだよ、あの兄さん……!!」
エーデルガルト、ディミトリ、クロードが思わず見惚れてしまったかのようにその爆発を眺める。そして爆炎が少しずつ収まっていくと共に、その爆炎の先で着地していたバロンの姿が映り込み、バロンは何も言わないまま静かに立ち上がる。
「ッ……お前、一体何者なんだ……?」
突然現れたかと思えば、その圧倒的な戦闘力であっという間に魔獣達を倒してしまった謎の騎士。それがジェラルト達から見たバロンの姿だった。それ故、ジェラルトやベレスはバロンに対しても警戒を怠らず、恐る恐る彼にその素性を問いかける。
「……フン」
その問いかけを聞き入れたのか、バロンはバナナロックシードの蓋を閉じ、その姿を元の青年の物へと戻す。そして彼は赤と黒のロングコートを華麗に靡かせながら、ジェラルト達の方へと振り向いて告げるのだった。
「俺の名は
ここは女神を信奉する地―――“フォドラ”。
今このフォドラの大地に、1人の
それは後々、この地に生きる多くの人々の運命を変える事となる。
人々がそれを知る事になるのは、今はまだ先のお話……
To be continued……?
ぶっちゃけ、連載するかどうかは作者も知りません(ォィ
ネタ自体はある日急に思いつきました。あの駆紋戒斗が風花雪月の世界にやって来たら、どんな道を辿って行く事になるのか……その結果、戒斗と主人公達の出会いはこんな感じになりました。
FE側の主人公は女性にしました。何故かと言うと、単純にベレス先生が美人でめっちゃ可愛いからです。可愛いは正義、異論は認めない←
今回は戒斗がどの学級と関わりを持つのかは書きませんでしたが、作者の中では彼が進む事になるルートはもう既に決まっています。
まぁ、戒斗の性格を考慮すれば、自ずと道は1本に定まって来る事でしょう。
ではでは。