空飛ぶ にわとり -The Flying Chicken-   作:甘味RX

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Act23.4 - いってきます答えを探しに

 

 ガイの様子を見るために宿へ向かう道すがら、大佐の少し後ろを歩きながら、俺は熱に浮いた頭で前を行くルークの背中を眺めていた。

 カースロットは殺意がなければ云々という話についても言及しなければいけないせいか、歩く姿は普段よりぎこちない。

 

 だけどこっちは正直その件についてさほど心配をしていなかった。

 ここまでの行動を見てる限り、今のガイがルークを殺そうとすることはない気がするのだ。

 

 どんなに演技が上手い人間だって、嫌いな人間に対するときは仕草やら雰囲気やら、どこかに違和感は現れる。

 俺はビビリだから、人が怒ってる気配なんかに気付くのはわりと得意だけど、ガイにはそういう兆候は全くなかった。ていうか、どちらかといえばアッシュといたときのほうが怖かったなぁ。

 

 ガイの絶対零度を思い出して軽く身震いをしてから、意識を元々考えていた事柄へと引き戻す。

 

 そうだ。ルーク。

 さっき宮殿でルークが。

 

 『 俺たち ―― 』

 

 思い出すだけで顔が熱くなる。

 

 き、聞き間違いじゃないよな。

 または俺の向こうにブウサギがいたとかってオチでもないよな。

 

「……ともだち」

 

 ちいさくちいさく口に出してみると、それはすごく胸が躍る言葉だった。

 

 何度かそれを口に中で繰り返して、ふひ、と締まりのない顔で笑った俺の後頭部を、いつのまにか横にいたジェイドさんが軽くひっぱたいた。

 

 はっとして口元を手で押さえるも、すぐ緩んでいく。

 

 友達。

 俺とルークは、ともだちなんだ。

 

 やはり今にも舞い踊らんばかりの俺に、ジェイドさんはもう呆れたように笑って肩をすくめただけだった。

 

 

 

 だが、宿ではそんなお花畑気分を吹き飛ばす衝撃の新事実が俺を待っていた。

 

「あなたが公爵家に入り込んだのは復讐のためですか? ガルディオス伯爵家、ガイラルディア・ガラン」

 

 淡々と告げられた大佐の言葉に、ご存知だったって訳か、と静かに返事をするガイ。

 すっかり固まっていた俺は、それを聞いて弾かれたようにガイが座るベッドの端にへばりついた。

 

「伯爵さまっ!」

 

「……は?」

 

「今まで! 数々の無礼を! お許しくださいぃいい!!」

 

「い、いいよ! いいから! 気持ち悪いし!!」

 

 青い顔で首を横に振るガイ。

 そしてばっと寝台から離れて土下座しようとした俺の襟首を大佐がすばやく掴んで止めた。

 

「私、なんだか既視感を覚えるんだけど……」

 

「……あー」

 

 微妙に動揺した声でぽそりと呟いたティアさんの言葉に、顔を赤くしたルークが、ばつが悪そうに頬をかいたのが視界の端に見えた。

 

 ところで今ので首が痛いです大佐。

 

 

 

 

 ガイの話を聞いて俺は、ほらね、と言う代わりにルークをみて微笑んだ。

 

 

 結局イオンさま共々みんなでセントビナーに向かう事になった俺達は、ついさっきグランコクマを出た。

 懐かしい町を再び離れることに寂しさもあるけれど、また帰ってくるんだからと自らを奮い立たせる。

 

 いま前のほうでガイと何か話しているルークの顔にはまだ若干の不安が滲んでいたが、さっきよりはずっと和やかだ。

 それに、信じているからこそ心配になることもある。ルークはもう大丈夫だろう。

 

 ひとつのことに安心すると同時に、浮かぶのは別の苦さ。

 僅かに眉尻を下げて、ルークとの会話を終えたばかりのガイの腕を後ろから引いた。

 

「リック? どうした?」

 

「いや、あの、ガイ……あのさ」

 

 歯切れの悪い俺を見てなにやら察してくれたのか、自然な動きで列の後ろに下がってくれたガイは本当に良いやつだと思う。

 

 そして俺たちが最後尾。

 先をゆくみんなと少し離れたところで、あらためて「どうした?」と聞きなおしてくれた。

 

「き、聞きたい事があるんだけど」

 

「ああ、なんだ?」

 

 浮かべられたさわやかな笑顔に一瞬ひるむも、意を決して口を開く。

 

「やっぱり家族を奪われたら、許せないか?」

 

 すると向こうが意表をつかれたように真顔になったのを見て、やっぱり聞くんじゃなかったと後悔した反面、ちゃんと聞けと僅かな理性が俺を責める。大きく息をのんだ。

 

「奪った相手は一生憎いか? 許せないのか? ……ああいや違う、許せない……もの、なんだよな」

 

 混乱気味に言葉を吐き出す。

 アッシュに被験者の気持ちを聞いたときから進歩がないのが丸分かりだ。

 

 こんなこと、聞かれた相手はさぞ困っているだろうと恐る恐る顔を上げる。

 

「そりゃ……」

 

 だが何やら言いかけたガイは、ふとその口をつぐんだ。

 

 そして。

 

 ぽん、と俺の頭頂部を過ぎた暖かな重み。驚いて見上げると、彼は静かに笑っていた。

 

「いくぞ、リック」

 

 微笑みながら俺の肩を軽くたたいて、先を歩き出す。

 俺は叩かれたところにそっと手を当て、前をゆく背中を見つめた。

 

 我知らず瞳がきらきらと輝く。

 

 

 ジェイドさん、俺、おかあさんと呼べる人をみつけました。

 

 

 




偽スキット『ガイラルディア・ガラン・ガルディオス』
リック「ガイの本名すごいなぁ、えぇと、ガイラルd 」
がちっ
ガイ「……噛むの早いなぁ」
リック「だって長いんだよ! ガイラルディ…なんだって?」

ガイ「ガイラルディア・ガラン・ガルディオス」
リック「ガリラルリ、ガラ……」
ガイ「いや言えてないから」

リック「もう一回言ってくれ」
ガイ「ガイラルディア・ガラン・ガルディオス」
リック「ガリラレデ…」

ガイ「いやだから、ガイラルディア・ガラン・ガるッ、 」

噛んだ。


《b》偽スキット『ガイラルディア・ガラン……』《/bb》
リック「ホド出身 元マルクト貴族 現在 公爵子息護衛剣士ガイ・セシルことガリラルデ……ルデウス華麗に勝利! ……でどうだ?」
ガイ「やっぱ言えてないぞ」

もう元がなんだったのかすらよく分からん。(By.ガイ)

オラクル騎士団 導師守護役 所属アニス・タトリン奏長 勝~利。
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