五七の艦隊   作:タクネモ・シグレ

3 / 4
第二話『南洋上の予備部品』

炎。

それは、時に美しく、時に残酷だ。

あの日。炎が落ち、海が裂けた。

いや、正確には“海と陸が引き裂かれた”。

土、鉄、木、動物、人、ヒト。

全て焼かれ、果てた。

分かってる。“彼” はもう居ない。

でも、今でも“この人”に“彼”を重ねている自分がいる。

僕は、僕が嫌いだ。

 

『五七の艦隊』。今、世界中が大注目の部隊。今まで負けっぱなしの人類の、希望の光だ。

「艦娘」と、それを支援する「人」で構成された部隊。規模を分かりやすく言うと、大日本帝国海軍をそのまま。そういう部隊だ。

「・・・ぐれ・・・時雨!」

「うわ!ご、ごめん!」

「お前が居眠りとは珍しいな。今日は休んだ方が良いな。明日、作戦案を説明しなおしてやるよ。」

やってしまった・・・

「いや、今で良いよ。」

「何言ってんだ。寝不足は体に毒だぞ。急ぎじゃ無いし、休んだ方が良い。」

「そう・・・だね。そうする。」

正論を言われちゃあ、反論出来ないや。

今日は、もう寝よう。

疲れているようだから。

昔の事を思い出してしまう程に。

 

「『神々の黄昏』。まるでどこかのSFアニメに出てきたような作戦名ね。」

何でそんなの知ってるんだよ。コイツの知識幅はここまで広いのか?

「言うな。まるで俺が痛いヤツみたいじゃないか。」

「あら、そんなことは一言も言ってないけど?」

目を細めて、笑いながらからかってくる。全く、敵わないな。

「・・・いずれにせよ、ここで一気に進める。奴らにひと泡吹かせないと、人類が先に諦めちまう。」

「私には、そこまで急ぐ理由が分からないなぁ。」

ごもっとも。俺だってもっと慎重に進めたかった。だが・・・

「だが、どうしようもない。“政治の問題”だからな。」

「“過去の栄光”にすがろうとしている“ろくでなし”どもの都合でしょ?蹴っちゃえば良いのに。」

また、そういうことをサラッと言う。

「・・・言うな。どこで聞かれてるか分からない。」

「はいはい。まったく、味方のはずなのに・・・」

「あぁ・・・」

そう、味方のはずなのに。

 

2月18日に起きた『四国沖海戦』で『五七の艦隊』はその実力を世界に示した。『五七の艦隊』は、ほぼ同規模の深海棲艦に対して一方的な完勝を納めたのだ。この鮮烈なデビューは、味方の人類側だけで無く、敵深海棲艦を狼狽えさせる結果となり、『五七の艦隊』司令長官の日向 蒼矢はこの機を逃さぬ為、前もって練られていた作戦を軍令部に提案した。

『神々の黄昏』作戦。『五七の艦隊』が考案した対深海棲艦戦における、人類史上初の大規模反攻作戦である。目的は前線基地、及びそこまでの補給線の確保。詳細は、①南太平洋では、『五七の艦隊』で編成された部隊でフィリピン近海の制海権を確保し、タウイタウイ泊地を基地として確立させる。②北太平洋では、ロシア陸軍所属の部隊を中心にアッツ島まで侵攻。『五七の艦隊』の一部がこれを海上より援護。③中部太平洋では、『五七の艦隊』潜水艦部隊による大規模な群狼作戦を行い、敵対フィリピン用補給船団を捕捉・攻撃を敢行。作戦中の敵補給線を断つ。この3つである。

この作戦の為に『五七の艦隊』は各部隊の大規模な再編を実施。南太平洋の部隊を『甲部隊』、北太平洋の部隊を『乙部隊』、中部太平洋の部隊を『丙部隊』と呼称し、作戦にあたった。『甲部隊』は4つの艦隊によって編成された対フィリピン侵攻部隊で、各艦隊の指揮官の名前を取って名付けられた艦隊で編成される。シブヤン海、及びサマール島沖の制圧を担当する『栗田艦隊』、フィリピン北方より接近し敵機動部隊を北部に誘引・殲滅を担当する『小沢艦隊』、フィリピンの西を大きく回り込み、スリガオ海峡とレイテ湾の制圧を担当する『西村艦隊』、『西村艦隊』の後備えとして続く『志摩艦隊』の4艦隊。更に、その支援として潜水艦「伊400」「伊401」「伊402」も投入し、戦闘に挑む。

『乙部隊』はその任務の性質上、航空戦と対地砲撃の両方に対応している方が良いと判断され、戦艦「比叡」「霧島」を中心とした『近藤艦隊』と、第一航空戦隊、及び第二航空戦隊を中心とした『南雲艦隊』の2艦隊で挑む。

最後の『丙部隊』は、潜水艦「伊400」「伊401」「伊402」の3隻を除くほぼ全ての伊号潜水艦で編成。4隻ずつの部隊に分け、群狼作戦を敢行する。

人類にとっても、そして『五七の艦隊』にとっても、過去最大規模の動員兵力数であり、この戦いへの意気込みが感じられた。

そして、2月28日。遂に『神々の黄昏』発動が宣言されたのである。

 

【2024年2月29日・自由の国の土地】

「と、こんな感じです。指揮官、どう見ますか?」

彼女が問いかけてくる。

「そうだな。確かに、“見た目は”勇ましく、誰が見ても負けなさそうだ。」

正直に言ってやろう。ここは俺の執務室で、自由の国の土地。彼女は何を言われても狼狽えないだろうし。

「だが、ここまでやる必要は無いな。少なくとも、彼等ならもっと少なくてもやれると思う。」

過去の戦闘記録や、彼等の司令長官の経歴を思い出しながら予想する。

「と言うことは、やはり政治絡みでしょうか?」

再び、問い。

「だろうな。ウチも一枚噛んでいそうだが・・・」

再び、正直な答え。

「ですよね・・・そう、ですよね・・・」

こいつがここまで食い付くとは珍しい。余程彼等の事が気になるのか。

まあ、無理もない。何せ“同族”だ。気にならない方がおかしい。

「だが、俺達の出番は今回も無しだ。今はゆっくりしていよう、ヨークタウン。」

そう言う自分も、早く全線に出たくてウズウズしている。

心を落ち着かせねば。そう思い、煙草に手を伸ばした。

 

【同年3月5日・フィリピン・スリガオ海峡入口付近】

「『栗田艦隊』より報告!『我、敵偵察機ノ接触ヲ受ク。』!」

「「利根」偵察3号機から入電!『我、敵攻撃隊ヲ発見。『栗田艦隊』ニ向イツツアリ。』!」

「『小沢艦隊』より入電!『我、未ダ敵ヲ捕捉セズ。』!」

ひっきり無しに入ってくる報告。

あぁ、これだ。これでこそ、戦場。

多分俺は、この独特の雰囲気に魅せられたのだろう。

「艦隊各艦へ。『栗田艦隊』の突入に合せ我が隊も突入する。各艦、奮闘を期待する。」

「了解!連絡しときます!」

うんうん。良い雰囲気。

このままなら・・・

「『小沢艦隊』より報告!『我、敵機動部隊ヲ捕捉、此ノ誘致ニ成功セリ。』!」

・・・あっちが先かぁ。

 

【同時刻・フィリピン・エンガノ岬沖】

《総員へ通達。敵機動部隊の誘致に成功。繰り返す。敵機動部隊の誘致に成功。》

今、俺が居るのは『甲部隊』の『小沢艦隊』・・・空母「瑞鶴」「瑞鳳」「千歳」「千代田」の4隻を基軸に編成された“中規模な”機動部隊である。

そう、外見上は。

《偵察機より、敵攻撃隊発見の報。各戦闘機隊、直ちに発艦・迎撃せよ。》

「お呼びがかかったし、行くか。」

回りの連中にも声をかける。

「迎撃戦かぁ。迎撃戦はつまらないんだよなぁ。」

「でも、一番重要よ?しっかりやらなきゃ。」

「ケイトの言う通りだ。しっかりやらねぇと帰る場所が無くなる。お前、空戦の後に水泳をしたいか?」

「それは勘弁。」

いつもと変わらぬ馬鹿話。しかし、話しているコイツらの目は戦意旺盛。流石『五七の艦隊』が誇るエース達。いや、ウォーモンガー達?

・・・気にしたら負けか。

飛行甲板に上がると、もう俺達の機体の準備が終わっていた。九七式戦闘機乙型、一式戦闘機Ⅲ型甲「隼」、五式戦闘機乙型と僚機達を横目に見つつ、自らの乗機へと向かう。液冷エンジン搭載機特有の尖った機首。機体上面を茶色に塗られ、下面は銀色のまま。そして、垂直尾翼に描かれた『三本線』・・・三式戦闘機Ⅱ型改「飛燕」。俺の乗機にして、愛機。隣には、ケイトの乗る2番機、四式戦闘機甲型「疾風」がエンジン音を轟々と轟かせている。

機体に乗り込んだら早速、各部のチェック。液冷機な分、ここは他の機体より念入りに。そしたら次は、部隊長としての仕事だ。

「各機、状況を報告せよ。」

あいつらに呼び掛ける。

《スペア2、ケイト。異状無し。》

《スペア3、ヴァル。異状無し。》

《スペア4、ダリア。異状無し。》

《スペア5、ガーベラ。異状無し。》

問題無し、と。

「こちらスペア1、ゼロ。『スペア隊』各機、異状無し。いつでも行けるぞ。」

上への報告も忘れずに。

《了解、スペア1。甲板要員の指示に従い、直ちに発艦せよ。その後の指示は追って行う。》

「了解。」

上がるまでは言われた通り。甲板要員の指示に従い、機体を移動させる。その後は、最終準備を整えるばかり。その時、威勢の良い瑞鳳の声が、外のスピーカーから聞こえてきた。

《これより“欺瞞迎撃”を開始する!『スペア隊』から発進させて!》

 

【10分後】

『小沢艦隊』上空に深海棲艦攻撃隊が現れた。約200機にも及ぶ戦爆雷連合編成。ここまでの大規模攻撃隊は、そう送り出せるものでも無い。

そんなレアな攻撃隊の直上から、5機の戦闘機が襲いかかった。この数の差では与えられる被害も少なかっただろう。しかし、この時に迎撃に上がっていたのは『五七の艦隊』が誇るエース部隊たる『スペア隊』。一瞬で複数の爆撃機、攻撃機を喰っていく。直掩の戦闘機達が気付いた時には下方に離脱し、その速度を落とさぬまま急上昇、さらに複数の機体を食う。もはやそれに追い付ける機体は無く、あとは食らい尽くすばかり。

艦隊からも対空砲撃がなされていた。航空戦艦「伊勢」「日向」から放たれる三式弾、各艦から打ち上げられる高角砲弾、更には無数の機銃弾、噴進砲弾・・・それらが一体となって、艦隊上空に黒い雲を広げていく。高空から中隊毎に接近してくる艦爆編隊に高角砲弾が撃ち込まれ、低空から接近してくる艦攻に対しては、機銃と噴進砲が火を吹く。攻撃位置に着ける機体の方が少なく、殆どは道半ばで黒煙を吹き、墜ちていく。そんな濃密な対空砲火の中、『スペア隊』が更なる追撃を加える。通常、艦隊が対空射撃を始めた時点で防空戦闘機は離脱するものだが、『スペア隊』の面々は臆する事無く、その中でも空戦を展開する。まるで、恐れを知らぬかのように。

30分後、生き残った攻撃隊機が撤退する。その数は、何とも心許ないものとなっていた。

 

「スペア1より空中管制機『番犬』。敵攻撃隊第一波、迎撃完了。次の指示を。」

《『番犬』よりスペア1、あとどれくらい飛行出来る?》

「あと2時間ってとこだな。」

《了解・・・スペア1、高度7000mまで上昇、待機せよ。》

「ラジャー。」

一先ず終わったようだ。隊内も束の間の安堵に包まれる。

《終わったか・・・味方に被害は無いよな?》

ヴァルが少し不安げに聞いてくる。

「安心しろ。被害は無い。」

《良かった。本当に泳ぐなんて御免だからな。》

「あぁ。」

ごもっとも。俺だって泳ぎたくはない。

だが・・・

《こちら空中管制機『番犬』!敵攻撃隊第二波接近中!約100機の戦爆雷連合と思われる!》

はい、休み時間終了。

「はぁ・・・了解、『番犬』。残業代、準備しておいてくれ。」

本当に・・・

《残念ながら俺には準備出来そうにないな。敵にでも払って貰え。》

本当に・・・

「分かったよ。全機、迎撃するぞ!俺に続け!」

《了解!》

クソッタレだな。

 

【40分後・スリガオ海峡入口付近】

「『小沢艦隊』より報告。『迎撃戦終了。敵機多数ヲ撃墜。我ガ方ノ損害無シ。準備ガ出来次第、敵艦隊ヘノ攻撃ヲ開始ス。』とのこと。」

「やりましたね。」

迎撃戦で損害無し。しかも、向かってきた敵に大損害を与える大金星。 だが・・・

「いや、まだだ。『小沢艦隊』は本来の目的の半分しか達成して無いし、何より、俺達が任務を完了していない。」

そう、今回の作戦の主目標はあくまでフィリピンとその周辺の奪還。

「それもそうでしたね。」

山城も分かってくれた様子。

「それにしても、深海棲艦の航空機はやけに弱いようですね。聞いていた話とは少し違うような・・・」

「本当は強いんだがな。恐らく奴ら、俺達の使っている兵器が第二次大戦時のオリジナルスペックのままだと思っているんだろう。」

「成る程。それで、ですか。」

この予想は当たっているだろう。実際、奴らの回避は対オリジナル用らしいし。

「だが、それはつまり、奴らもこれから手強くなってくるって事だ。油断するなよ?」

恐らく、いや確実に、奴らは手強くなってくるだろう。奴らが学習しないという保証はどこにも無いのだ。

そうこうしていると・・・

「『栗田艦隊』より報告!『迎撃戦終了。敵機多数ヲ撃墜。我ガ方ノ被害ハ「愛宕」大破、「島風」中破、「大和」「長門」「能代」小破。「愛宕」ト「島風」ヲ撤退サセタ後、サマール島ニ突入ス。』!」

来た。

「・・・皆、お喋りはここまで。仕事の時間だ。」

「了解!」

俺の声で、『西村艦隊』内が一斉に騒がしくなる。

さぁ、いよいよだ。

事前偵察によれば、海峡内には戦艦8隻を基軸とした深海棲艦砲戦艦隊が待ち構えているとのこと。もし、そいつらと当たれば、太平洋戦争時のスリガオ海峡海戦以来の、戦艦同士の砲撃戦となるだろう。腕の見せ所だ。

「艦隊全艦へ告ぐ!これより我が艦隊はスリガオ海峡へ突入、海峡内に潜む敵砲戦艦隊を破りレイテ湾を目指す!全艦、前進せよ!」

 

【同時刻・この世のどこか】

「・・・これは?」

巨大な機体だ。

「UAV/M-01「アークバード」。昨年から試作していたUAV/C-01「コメート」の母機さ。」

あと、形が異様。

「・・・まるで翼だけみたいな飛行機だな。」

「全翼機さ。カッコイイだろ?」

うーん、何と言うか・・・

「微妙だ。」

「えぇ、好きじゃ無いの?」

寂しそうな顔をする。

「まぁ、性能が良ければそれで良い。」

励ましとかないと、コイツは後が面倒だ。

「期待しているぞ、レ級第2793号艦。」




ドーモ、皆=サン。ネモタク・シグレです。()
第二話の投稿が完了しました。色々パロディーしまくってますが、趣味なのでご勘弁を。
さて、話は少しズレまして。YouTubeに上げようか問題。別に上げても良いんですけど、①動画冒頭タイトル画面②BGM③背景、が全く決まってない。これが決まれば即効で出せますよ。なので募集します。TwitterでDMくれると助かる。向こうでの名前は『タクまんじゅう』です。協力してください。お願いします。何でも島風。
・・・それではサヨナラー。()
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。