えぇ、一つ年を重ねました。
そんなわけで、感想貰えると嬉しいです。一言でもいいのです。「そのっち」でも「サンチョ」でも「ムーチョ」でも。久しぶりに感想通知を見てみたい()
部活紹介は、五十音順で行われた。そのため、運動部や文化部が交互に紹介することになる。野球やサッカーのように人気のある運動部では熱い紹介が行われ、吹奏楽部のような文化部では実際に活動が披露された。吹奏楽部であれば演奏、美術部ではコンテスト入賞者の作品紹介といった具合だ。
その中でも異彩を放ったのは、凛が入ることになる新聞部だった。活動内容事態は、誰もが想像するようなシンプルなもの。時折地域の人と交流し、PRの手伝いをすることもあるという。そこは勇者部と重なっているように思えたが、PR関連のみ新聞部が行うということで分けられていると、入部後に説明された。
それでは新聞部の何が他の部と異なったのか。それは部長の存在だった。
「新聞部はカメラも扱う! 盗撮など犯罪まがいなものは断じて認めないが、写真を撮る際のノウハウを叩き込もう! そしてもちろんインタビューもする! 話ベタであっても問題ない。自分の話す力を伸ばすために入部した部員もいる。ちなみにこれはその部員がインタビューし、纏めた記事だ」
プロジェクターによって映し出された画像は、2枚の写真とインタビュー記事が書かれているものだった。写真のうち一枚はインタビューした相手。自然な笑顔を浮かべており、会話が円滑に、そして楽しく行われたことが分かる。記事の内容も、相手の心を開かせなければ聞き出せないようなものも含まれていた。これは相当な力がないと難しい。
こうして部活のメリットを紹介し、見事に関心を得ていたのだが、
「これができるようになればナンパもできる!」
この発言が全てを台無しにした。隣にいた3年生の男子が部長に腹パンを決め、蹲った部長を副部長の女生徒が舞台袖へと連行していく。
「大変失礼な発言が飛び出たことを、新聞部を代表してお詫び申し上げます。あの男は校内一の変わり者ですので、発言の半分は流していただいて構いません。主に、最後の発言以外は本当です。ちなみにこの記事は僕が書きました。そして入部して初めて書いた記事がこちらになります」
次に映し出された画像は、一枚目に比べると目も当てられない程に内容が乏しかった。写真が全ての記事と共に載せられるわけでもないようで、今映し出されているのは文字だけ。内容次第ではそれでも読み手を楽しませるのだが、この記事は内容が薄かった。先に成長したものを見た分、その落差で印象が悪くなるのもあるが、しかしそれ以上に寂しい内容だ。
あったことが書かれているだけ。新聞としてはそれでいいのかもしれないが、これは部活でもある。それを書くその人にしか書けない内容、つまりはその人の色を感じさせるものを書くべきなのだ。それがこの記事にはなかった。
「本当に同じ人が書いたのか、疑ってしまう人もいるでしょう。この赤丸の部分に注目してください。僕達は必ず日付と名前を書くようにしています」
二枚の記事が並べられ、赤丸で一部が強調される。そこにはたしかに日付が書かれており、一枚目が今年のもの、二枚目が二年前のものだと分かる。そしてそこに書かれている名前は、たしかに同じ人の名前だった。
それにより確かな成長があるのだと示すことができ、新入生たちの関心を高める。こうして関心を高める話の進め方ができるようになるのも、新聞部での活動が影響しているのだろうと凛は分析した。その後の話にも耳を傾け、部長という不安材料はあれど活動はしっかりしているのだと信じられた。
(なんで今話してる先輩が部長してないんだろ)
おそらくは誰しもが思った疑問。それを凛も抱く。その説明はもちろんなく、入部してから知ることになる。
新聞部の部活紹介が終わり、他の部活の紹介へと移っいていく。凛の目的である新聞部の説明は終わったわけだが、他の部活紹介も同様に話を聞いている。目的のものが終わったとはいえ、それで他の話を聞かないということはしないのだ。
そして、五十音順ということで予想できていたが、やはり最後の部活は勇者部だった。
「勇者部は人の為になることを勇んで実施する部活です──」
日頃、主に行っている部活内容が説明される。ボランティア活動の面が色濃く、それを部活として行っていること、笑顔でその事を話していることから、部活内容よりも部員への関心が高まったと凛は感じ取った。それは尊敬とも言えるもので、少し周りの顔を見てみても、その姿をどこか眩しそうに見ている印象がある。
「犬吠埼さんは、やはり勇者部に?」
教室へと戻り、席替えで隣になった樹に話しかける。凛は窓際最後列という良席を引き当て、他の男子から羨ましがられていたが、前と隣と斜め前が女子になった瞬間同情されていた。凛は周りがどうなろうと気にしないのだが、前に座る席の女子が、自分の前にいる女子とよく話すため、自ずと樹と話すことが増えた。
「うん。お姉ちゃんもいるし、先輩たちとは入学前から良くしてもらってるし」
「たしか結城先輩と東郷先輩でしたね」
「知ってたんだ」
「少し話題に上がりやすい二人ですから」
「あ〜」
東郷は足が不自由であり、車椅子生活を余儀なくされていた。それだけでも目立つのだが、容姿が整っているのもあってさらに男子の中で話題になりやすい。そんな彼女の近くにいるのが結城だ。分け隔てなく笑顔で接する優しさ、困っている人を見捨てない人の良さ、時々抜けているところがあるのが愛嬌。そんな彼女の存在も既に新入生に知られており、揃って勇者部に入っていることも知られている。
人気の高い勇者部だが、不思議とそこに入ろうとする男子はいない。勇者部の隠された役割を知っている凛は、そこを少し懸念していたのだが、それは杞憂に終わりそうだった。
「花園に害虫が入ってどうする」
それが男子たちの意見であり、これが見事に男子たちの間で浸透している意見らしい。ため息をつきたくなった凛だが、大半の男子は凛と同様に既に入りたい部活を決めているとのこと。
「下田くんは何部にするか決めてるの?」
「新聞部ですね」
「……渋いね」
「そうですか? 身になるものがある部活の一つですけど」
「部活ってそういう風に決めるんだっけ……。私も人のこと言えないけど」
話もそこそこに終わり、HRが終わると凛は入部届に名前を記入してから教室を出た。今日から1週間は仮入部期間なのだが、既に意思を固めている生徒たちは、凛と同様に入部届に記入している。
部活紹介の際に部室の場所も説明されており、それをしっかりメモを取っているため、凛は迷わずに部室にたどり着く。たいていの生徒なら緊張して部室に入るわけだが、凛は緊張することなくドアにノックする。
「はいはーい。入っていいよ〜」
「失礼します」
許可が出たところで部室に入る。部室にいたのは四人。部活紹介で壇上に立っていた三人と、凛にとって初見の一人。その初見の人物が弾むように椅子から飛び上がって凛に近づく。
「入部希望の子かな! ようこそ新聞部へ! あたしは二年生の遠藤結実。他の三人が三年生だね」
「結実、そんな捲し立てるように話すとその子が困るでしょ」
「下田凛です。よろしくお願いします」
「そうでもないみたいだぞー」
副部長が小言を覆すように凛が結実に自己紹介し、結実に応えて握手を交わす。部長が副部長を揶揄うようにツッコミつつ、入部希望の一年生が来たことに安堵する。
「ささっ、こっちに座って座って!」
「それでは失礼して」
新入生が来て浮かれている結実は、強引とも言える対応をしているのだが、硬い凛が相手であるためにそれがむしろ好転している。結実の隣に椅子を用意され、そこに腰掛ける。対面には三年生が三人だ。
「部活紹介で挨拶はしてるけど、個人では初めましてになるね」
眼鏡をかけ、落ち着いた様子で話すのが大田。部長の川崎と副部長の田上。それが新聞部の三年生だ。凛も改めて三人に自己紹介し、普段の活動内容を聞く。
「校内新聞を作るのは月に1回。毎月10日前後に張り出すようにしてて、月初から10日までの間にみんなで記事を纏める。だからネタ集めは、記事の完成後から月末まで」
「作ってる期間でも面白いのがあったら、メモとか取っといて、後日それについて調べるのもありだよ」
大田と田上の話を凛が手帳に纏め、それを横から結実が覗き込む。凛が異性とこれほど距離を縮めるのは、姉のかなたを除けば園子のみ。しかも園子に至っては数えられる程度の回数であり、なおかつ凛が心を落ち着かせてからだ。このような不意打ちは初めてであり、顔には出さなかったものの鼓動が激しくなる。
「勝手に覗いたら駄目だろ……」
「わぉ! 凛くんメモ上手ー! 整理しなくても分かりやすいや」
「先輩の話は無視ですか!?」
「威厳のない部長だよな」
「鼻で笑うなよ大田ー!」
肩を掴んで激しく揺さぶる部長の川崎。大田は眼鏡を押さえながら高笑いし、二人のその様子に田上がため息をつく。ここに来て数分だが、これが普段の様子なのだと凛はさっそく理解した。
視界の端で何かが動いたのを感じる。それは凛の視界の斜め下側。そちらに視界を向けると、それにタイミングを合わせた結実が顔を近づける。
「っ!?」
「あはは、やっとリアクション取った〜! 下田くんリアクション薄いだけで、ちゃんとそういうリアクションも取れるんだね」
ビックリして顔を引いた凛に気を良くしたようで、結実は笑いながら身を引いて椅子に座り直す。胸に手を当てながら深呼吸し、落ち着くことを優先した凛が視線を前に戻すと、三年生たちも楽しそうに笑っていた。
「……どうかされました?」
「いやいや、遠藤が相手だと誰でもすぐに距離を詰められるんだなーって」
「その口調は癖のようだけど、雰囲気は柔らかくなったね」
そんなはずはない、そう言いたかった凛だが、周りの視線がそうなのだと物語っている。否定したところで大した意味もない。何ともむず痒かったが、嫌な気はしない。いずれはここの空気に慣れるのだろう。
「ま、なんにせよ新入生確保! これで俺達が卒業しても遠藤が泣かずに済むな!」
「ちょっ! な、泣きませんよ! それに卒業だなんて……まだ……4月じゃないですか……」
「ふふっ、そうね。馬鹿言う部長は後で折檻しましょ」
「ひっ!! 田上のは二度とゴメンだ!!」
三年生男子二人もなかなかだが、副部長はストッパーでありつつ方向性がズレているらしい。良く言えば部に染まっているということか。
三年生たちが賑やかに騒いでいるのをよそに、凛は隣に座る結実に視線を向けた。てっきり他の二年生は休んでいるのかと思っていたが、どうやら二年生は彼女一人らしい。そして、未だに他の新入生が来ない辺り、一年生も凛だけになるのだろう。
「……なに?」
「いえ、遠藤先輩って意外と純粋な方なのだと思いまして」
「どういう意味!?」
〜〜〜〜〜
「ねぇ、あっきー?」
「どうされましたか? 園子様」
話を終えると、園子はすぐに暁葉を呼びかけた。口調は普段と同じなのだが、その声は常時と異なる。低く、力強い。園子がそうする理由が分からず、暁葉は頭を悩ませながら言葉を返した。
「犬吠埼さんと砕けた会話してたよね?」
「私は変わりませんが、犬吠埼さんが少し話しにくそうだったので。どうやら同年代や年下の人には口調が砕けるようですし、無理に私に合わせさせる必要もなかったので」
「私に合わせさせるのもおかしな話じゃない? あっきーは今、学校にいる時よりも硬いわけだよね?」
「仕事ですので」
「じゃあ…………ううん、何でもない」
「命令したら口調を変える?」という問いを、暁葉に投げかけることはしなかった。その答えは分かっているから。園子が命令すれば、暁葉がそうすると分かっていた。だが、そんな事をさせても虚しいだけ。そしてかなたの依頼にもそぐわない。だから園子は開いた口を一旦閉じ、再び開いた時にははぐらかしたのだ。
何よりも、それ以上に気になった箇所があったから。
「その遠藤って人と話してる時、すぐに素が出たよね? あっきーはそういうグイグイ来る人がタイプなの?」
「いえ……そういうわけでは……」
「じゃあなんで? 私の時は長い時間かかったよね? なのに何でその人の時はそんなに早いのかな?」
園子は笑顔で問い詰めてた。その笑顔が、視線が、声が、暁葉にチクチクと刺さる。針のむしろとなり、何故か暁葉は弁明しなくてはと考えていた。いったい何を弁明するのか。なぜその必要があるのか。それは一切分からなかったが、このままではよくないということだけは分かった。
そうして必死に考えて結果、一つの可能性が出てきた。その可能性が出たことが意外であり、何よりも自分で考えて
「おそらくは……園子様の影響かと」
「……私の? なんで?」
予想外の答えに、園子は目をぱちくりさせた。
「園子様と会話で、私が変わったのだと思います。自分で言うのも恥ずかしいのですが、心の壁が低くなったのかと。園子様と出会わなければ、中学生活もこのような滑り出しにはなってないです」
「……ふーん。そっか……。ごめんね、変に問い詰めちゃって」
「いえ。お気になさらず」
園子の雰囲気が和らぐどころか、周りに花が咲いているのではないかと疑うほど明るくなる。暁葉は仮面の下で目を閉じ、ほっと細長く息を吐く。それ故に見逃していた。園子が嬉しそうに微笑んでいたことに。
(あぁ、やっぱりあっきーがいると楽しいな〜)