朽ちぬ花   作:粗茶Returnees

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 ギリギリセーフ!!
 友人と飲んでました。楽しかったです。



13話

 

 週末になれば園子の下に行く。それは暁葉の習慣なのだが、文化祭が近づいてきたことによって、それも一時的に中断された。作業は平日に行われるため、週末は関係ないのだと暁葉は言ったのだが、必要に応じて休みの日でも作業に取り組むこともあるだろうと園子が言い伏せたのだ。

 園子としても、暁葉と話せる時間が好きなのだが、暁葉が頼みごとを断らない性格であることも知っているつもりだ。日にちが近づくにつれて、暁葉の負担が増えることも想像できる。疲労が溜まってしまうかもしれない。そうなってほしくないのだ。

 

「週末に何も予定がないと落ち着かないな」

 

 リビングでニュース番組を見ながら呟く。テレビでは最近の災害について語られているが、どれもバーテックスの襲撃があった時に生じた被害だ。

 

『こうして災害が続くのは2年ぶりのことなんですよ──』

 

 2年前……園子が親友二人と力を合わせて戦っていた時だ。バーテックスと戦う際には樹海化が起きる。樹海化した世界にとって、バーテックスそのものが毒だ。樹海がダメージを負い、それが災害という形で元の世界に現れる。

 世間では原因不明とされ、学者たちの頭を悩ませ続けている。真実を知っている暁葉は、その報道を見て世間と自分の認識の差異を埋めていく。ボロを出さないようにするためには、こうして世間を学ぶ必要があるのだ。一応、クラスメイトとの話題を共有できるようにという狙いもあるのだが、それならバラエティ番組を見たほうがいいということを、暁葉はまだ気づいていない。

 

『2年前と言えば大橋の崩壊が──』

「大橋……」

 

 先日園子に連れられて友奈と美森と対面した。あの日は仮面をつけ、一切発言していないため、二人には気づかれていない。

 あの日連れられていった場所は、一般的に立ち入りができない場所だ。大赦の一員である暁葉であっても、先日初めて訪れた場所だ。上里家の力を考えれば簡単に行けるのだが、自分を小さく考える暁葉はそれができる立場じゃないと考えている。

 大橋はたしかに壊れていた。空に向かうように大きく反り返るように。園子が大橋で戦っていたと聞いている。その大橋が壊れたのだ。そうなった戦いが、決戦の時だったのだろう。

 勝ったのか負けたのか。そんな簡単な表現で片付けられるのか。暁葉は無理だと思った。人類が存続してるから勝ちではある。しかし失った代償は大きい。

 

(痛み分け……なんて言い方はしたくないけど……)

 

 それ以外の言葉は見つからなかった。そして、どんな形であれ自分には判断できるものでもないと思った。戦いの辛さを知らない。当時の痛みも苦しみも喜びも。間接的にすら関わっていなかったのだから。

 気分転換のためにテレビの電源を落とし、ピアノが置いてある部屋に移動する。なんだかんだであまり触れていないピアノ。こういう時に弾かなくては、ピアノに申し訳ない気がする。

 

「音は大丈夫なのかな?」

 

 何音か鳴らして確かめる。気になる異変はなかった。調律まではできないから、もし音がズレていたら調律依頼から始まる。それはそれで時間を潰せたのだろうが、ピアノを弾きたい気分の時にそうなっては熱が冷めてしまう。

 何を弾こうか悩んだ。合唱コンクールではピアノを弾くことがすでに決まっているのだが、課題曲が何かはまだ知らされていない。一曲は課題曲。もう一曲は選択曲なのだが、選択曲は候補すら知らない。課題曲は何曲か予想はつく。

 

(何曲か弾いてみるかな)

 

 課題曲の候補は全て音楽の教科書に載っている曲だ。教科書を持ってきて、前のページから順に弾いていくことにする。本の性質上、教科書が閉じようとするのが困りものだが、クリップで止めていくとなんとかなりそうだ。

 ピアノに没頭するのはいつぶりなのだろう。興味本位で始めさせてもらったピアノ。使用人の中に元ピアニストがいたおかげで、専属教員になってもらえた。母からの指示もあり、ピアノのレッスンは本格的だった。何度も間違いを咎められたが、弾けることの喜びが勝った。

 そんな当時のことを思い出しながら、久しく弾いていなかったピアノを楽しむ。それなりに日が空いていたこともあって、難しい譜面は詰まってしまう。それすら楽しかった。昔は詰まることの方が多かった。そして弾けた時の喜びも大きかった。

 

「あ、そういえば」 

 

 一通り課題曲を弾き終わり、休憩している時にふと思い出した。以前樹に頼みごとをされたことを。それは一学期の間にされた頼みごと。その時は何も気にせずに教えた。秘密のお願いということもあって、暁葉もすぐに忘れるようにした。現に今になって思い出している。

 

「あの曲も弾いてみるかな」

 

 引っ込み思案な樹だが、その実芯は強い人物だった。強い人というのは、彼女のような人物ではないかと思うほどに。実際、樹は強い人なのだろう。勇者として戦い、満開までして人類を守っている。

 それでも彼女は、まだまだ自分を前へ前へと進ませる。誰の指示でもなく、自分の思いと決断で。その姿が大きく見えた。同時に誇らしかった。友人にそんな人物がいることが。反対に苦しくもあった。歩む強さを見せられることが。

 

「……ふぅー。演奏に集中しよう」

 

 後ろ暗い気持ちではこの曲は弾けない。そんな気持ちで弾いていい曲じゃない。

 『祈りの歌』──温かな歌詞、全ての日々に感謝した歌。

 それを弾き終わり、暁葉は静かに部屋を後にした。リビングにあるソファに身を沈める。窓から空を見上げる。広大な空……神樹が作り出す結界内にいることで、それを見ることができる。

 人類が生息できる最後の地。神樹の結界内にのみ生存することを赦された。あまりにもスケールの大きな話だ。空を見ればそれを思い出し、自分の小ささが浮き彫りにされる。同じ人間であっても、器の大きな人間はいる。それを自覚させられる。

 

(そうだ。挨拶に行こう)

 

 讃州中学の近くにある神社。文化祭以降、そこの神主に取材することになっている。取材に行く前に一言挨拶をしておくべきだろう。そんなわけで暁葉は支度をし、戸締まりを確認してから家を出た。

 休みの日ということもあって、家族で出かけている人も多いようだ。マンションにある駐車場の車の数が減っている。

 自転車で行ったほうが楽に早く着くのだが、時間は余っている。徒歩で行きたい気分でもあったため、徒歩で行くことにした。困っている人を見かけては声をかけて補助する。お礼を言ってもらえると心地よく、先程までのモヤっとした気分も晴れていった。

 

「わざわざ挨拶に来るとは、讃州中学は良い子が多いね〜」

「ありがとうございます」

 

 神主と言葉を交わしていると、暁葉のお腹が鳴った。そういえばお昼を食べていなかったと思い出す。

 

「お昼を食べていくかい?」

「え、さすがにそれは申し訳ないのですが」

「遠慮はいらんさ。私もこれから昼食だしね。そうだな、家で退屈してる婆さんの話し相手にでもなってくれたらいい」

「……それでは、お言葉に甘えさせていただきます」

 

 神主が笑顔で頷き、何やら巫女と話をしてから暁葉を手招きした。どうやら神主の家まで車で送ってくれるらしい。至り尽くせりな対応にただただ頭が下がる。

 神主の家は神社から車で10分圏内。あっという間に家に到着し、玄関まで出招いてくれたお婆さんに挨拶する。突然の来訪だったが、お婆さんは嫌な顔をするどころか暁葉を歓迎した。すぐさま暁葉の分を追加で料理し、暁葉の前に差し出す。

 

「すみません。お手伝いもしていないのに」

「客人は座して待つものじゃけぇ。気にせんでええ」

「ありがとうございます」

「それじゃあ、いただこうかね」

 

 会話を交えながら昼食を取り、食後に一休みしてから神主は神社へと戻っていった。暁葉はせめて皿洗いをしようと思ったのだが、それもさせてもらえず椅子に座ってお婆さんを見守る。それが終わったところで、お婆さんに椅子に座ってもらい、肩のマッサージを始める。

 

「気持ちえぇね〜。上手上手」

「それは良かったです」

 

 20分ほどマッサージを続け、お婆さんの向かいに座った。淹れてもらったお茶をいただく。こうして落ち着いた時間を誰かと過ごすのはいいものだ。お婆さんの話し相手というのも楽しいもので、暁葉にはない知識が次々と飛び出る。

 お婆さんも暁葉と話すのは楽しかったようで、外を見たときには日が傾いていた。空も青から紅に。

 

「あらいけない。長く付き合わせてしまったわね」

「いえいえ。楽しかったですよ」

 

 お婆さんと手を振って別れ、食材を買いに行こうと足をスーパーに向ける。しばらく歩いていると、端末にメールが届いた。アプリによるチャットではなくメール。その送り元には一つしか心当たりがない。

 端末を確認すると、そこには暁葉の予想通り大赦からメールが届いていた。どんな連絡なのだろう、などと呑気にすることはできなかった。件名が異常性を物語っている。

 

[緊急事件発生]

 

(園子様の身に何かあったのか。それともかなた姉さんに何か……!)

 

 焦ってそのメールを開くと、予想が外れていたものの衝撃的な内容が記されていた。曰く、風が勇者へと変身し大赦に迫っているとのこと。そして、この件に対する暁葉への指示は……

 

[大赦に迫り来る犬吠埼風を鎮めよ]

 

 いったいどうしろと言うのか。思わず頭を抱える。風が暴走したのは事実なのだろう。大赦がこんな嘘をつくはずもない。事態は一刻も争う。だが一般人の暁葉には手段などないのだ。

 焦る思考を遮るように、暁葉の端末に電話がかかる。画面を見ても相手が誰か分らない。見たこともない番号だ。しかし無視することもできない。今このタイミングでかかってきたのだ。無関係とも思えない。

 

「もしもし」

『あ、あっきー?』

「園子様? どうされましたか?」

『えっと、今起きてることは知ってる?』

「はい。つい先程メールが届きましたので」

 

 電話で話しながら足を動かす。とりあえずは駅の方へ。電車にしろタクシーにしろ、足を確保するには駅に向かうしかない。

 

『あのね……このままだと私が動くことになるんよ』

「……そう、なりますね」

 

 大赦にいる勇者は園子ただ一人。そして最強の勇者である園子なら、難なく風を抑え込めるだろう。本人にその気があるかは別として。

 

『それで──』

「大丈夫ですよ園子様。分かっていますから(・・・・・・・・・)。足も確保できそうなので、これで失礼しますね』

『ごめん……お願いね』

「はい」

 

 電話を切り、露骨に秋葉の前で路上駐車した車に近づく。暁葉が近寄ると後部座席が自動で開き、暁葉は躊躇うことなく車に乗り込んだ。車はすぐに発進し、ナビに従って進んでいく。普通のナビではない。目的地が移動している。おそらくは風の端末が目的地に設定されているのだろう。

 それは暁葉の端末にも搭載されている機能だ。相手のプライベートを考慮し、一度も使ったことがなかったが、今回はそうするわけにもいかない。端末を操作し、アプリを起動して設定を打ち込んでいく。暁葉の端末も車のナビ同様、風の端末の位置が分かるようになった。

 車の中は暁葉と運転手の二人だけ。暁葉はその人物を知らない。上里家の人間ではない、ということしか分からない。運転手はさすがに大赦の仮面をつけない。事故になるから。

 

「制服を着られることをおすすめします」

「そうでした」

 

 後部座席に置かれていた制服。それは暁葉のサイズに合わせてあるものだった。服の上からそれを羽織り、フードはまだ被らない。仮面もまだ付けない。いつものことだ。車から降りる時に仮面をつける。

 高速道路を利用し、他の車が避けるほど速いスピードを出していく。高速道路とはいえ制限速度は存在するのだが、緊急事案ということもあり運転手は急いだ。あくまで安全運転……ということらしい。警察には大赦から説明を入れるつもりなのだろう。発言力の強さを最大限に活かす作戦だ。褒められたものではないが。

 風の端末が大橋の近くで止まる。タイミングが噛み合い、最寄りの出口が最短ルートとなる。ここまで計算していたら恐ろしいのだが、急にハンドルを切ったあたり偶然だと断言できる。安全運転とは名ばかりだが。

 

「それでは行ってきます」

 

 大橋近くの駐車場。そこで降ろしてもらった暁葉は運転手にお礼を言ってから駆け出す。風と共に移動していたのは夏凜だ。走りながら端末を確認する限り、夏凜も風を止めているのだろう。そこに今友奈が加わった。

 自分の出番はきっとない。それは分かっているのだが、念の為そこに向かっておく必要がある。勇者たちにバレないようにこっそりと。できればすぐに飛び出せるくらいに近いといいのだが、夏凜は鋭そうだ。

 

「──ッ!!」

 

 咄嗟に横飛びする。勇者たちがいる場に、階段から回り込む形で行こうとしたのだが、それはもういいらしい。自分がいた場所を見たらそこに凶器が転がっている。

 

「良い動き」

「これでも一応は鍛えておりますので」

 

 声がした方に振り返ると、そこには年齢の近そうな体格の人物がいた。声からして男性、つまりは少年か。同じように大赦の格好をしている。その人物が暁葉の方に歩んでくる。暁葉は嫌な汗を流しながらジリジリと後ろに下がる。

 

「初めまして。ですが、さようなら」

「一般的な意味であれば穏やかでしたね」

 

 不気味なほどに滑らかに加速した少年から、暁葉は全力で逃げる。戦って勝てるだなんて微塵も思っていない。暁葉は鍛えているとは言っても、たいていのスポーツなら困らない程度の鍛え方だ。戦闘用に鍛えている人物には歯が立たない。

 余所見をしてはまた凶器を投げられる。今度は確実に当てられる。だから後ろを気にしながら走ることになるのだが、それは逃げることに適していない。

 見る見るうちに追いつかれた。突き出される右手。その手にはナイフが握られている。

 膝を曲げ、姿勢を下げることで避ける。本命の左手は、膝と足に力を入れていたことでジャンプして避けることができた。なんとか逃げ続け、勇者に気づいてもらえれば暁葉の勝ちである。

 

「──火色舞うよ」

「っ……!」

 

 だが相手の方が上手だった。少年は左手を突き出した際に、反動をつけるために右手を引いていた。今度は左手を引き、それに合わせて右腕を振るう。ナイフを投げるために。

 

「がっ……! ぁぁあっ……!!」

 

 そのナイフは暁葉の腹に突き刺さった。不幸中の幸いか、ナイフはあまり深く刺さっていない。だが、それだけで十分なのだ。怪我ならまだしも、ナイフを刺された経験など暁葉にあるはずがない。その痛みはそのまま恐怖となる。怯んでいる間にもう一本ナイフが投げられ、暁葉の右太腿に刺さる。これで機動力が奪われた。

 

「悪いが仕事だ」

「ぁ……はっぁ……でしょう、ね……」

「クライアントにとって、お前は邪魔らしい」

「そう、なんでしょうね……。あの家と……関係のある人ですね」

「……分かっていたのか(・・・・・・・・)?」

はい(・・)

 

 海に落ちないように設けられた手すり。暁葉はもたれかかるようにそこに背を預けた。立つことはできそうにない。投げ出された足に視線を落とし、腹よりも深く刺さっている右太腿のナイフを眺めた。

 嵌められたことなど、電話の時点で(・・・・・・)気づいている。そもそもこの讃州市に送り込まれたのも、今日この日のためなのだ。上里暁葉ではなく、下田凛が死ぬ。便宜上、上里家の人間を手にかけたことにはならない。

 

「園子様が……あのような事を言うわけがないので。そして、あの方はそもそも電話をかけてきません。いつも……直接話すことを、楽しみにされてますから」

 

 提案したことがあった。学校終わりに電話して、その日あったことを話すのはどうだろうかと。速攻で断られた。直接話を聞きたいのだと。だから暁葉は、ほぼ毎週園子の下に行くのだ。一週間分の話のネタを持って。 

 それが緊急案件だろうと、急に電話をしてくるわけがない。園子は端末を取り上げられている。そして体を動かせない。スピーカーに設定すれば電話はできただろう。しかしあの電話はスピーカーではなかった。つまり偽物だ。変声機があることも知っている。それに園子の声を登録させたんだ。

 分析するだけでも腹立たしい。嵌められたことではなく、園子を利用されたことが。怒りで体が震える。しかしそれは出血を増やすだけだった。なんとか自分を抑え込もう。

 

「あなたは……赤嶺家の人……、ではない(・・・・)ですね」

「半分正解。そして時間切れだ」

「そのような生き方は、人生を損しています」

「よく言われるが、気にしていない」

「だから、友達になりましょう」

 

 呼吸が荒くなってきた。仮面が鬱陶しい。

 暁葉は仮面を外した。髪を撫でる風が心地よい。視界が広がる。嫌に視界がクリアだ。死に近づいていたら、靄がかかって狭まるものではないのか。創作物で得た知識はどこまで信用できるのだろう。

 それは違う。

 暁葉は自分が死ぬとは考えていない。死に近づいているとは一片も思っていない。樹のタロット占いを信じている。これが困難であり、自分の意志で活路が拓けるのだと。

 

「ぐっ、うぅぅっ……っつぁ!」

 

 腹部と太腿に刺さっていたナイフを抜く。止血をしないといけないのだが、今の手持ちには何もない。大赦の制服を切れば、包帯代わりにはできるだろうか。すぐに切った。傷口を抑えるように巻き、それが終われば体を動かす。

 汗を滝のように流しながら体を起こし、一歩進んでみる。すぐに体が崩れて地面に倒れ込んだ。今のが傷口にも響き、血が溢れていく。それでも暁葉は手も使い、前へと進もうとする。

 

「何がしたいんだ?」

「簡単なこと……だよ……。僕は(・・)死にたくない……!」

「……」

 

 約束があるんだ。破るわけにはいかない大切な約束が。

 そうだ。文化祭の前に一度は顔を出そう。準備がどうだった、とか話してみたい。本番に向けてのクラスの意気込みがどうとかも話してみたい。

 勇者部は劇をやると聞いた。誰がどんな役なのか。そもそもどんな話になるのか。園子と二人で予想してみるのも楽しそうだ。なんなら園子に即興で物語を作ってもらおう。

 

「悪いな」

 

 少年が手品のようにナイフを取り出す。服の中に隠すのは、ちょっとした憧れと利便性を交えたもの。

 匍匐前進ですらない暁葉の進み。数歩足を動かすだけで追いつく。少年は暁葉を見下ろし、暁葉は少年を見上げた。

 視線が交わった。そんな気がした。

 暁葉が笑みを浮かべ、少年は手に持つそれを振り下ろした。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 何かの異変を感じた。樹海化とは違う。親友が壁を壊したようだが、なぜかそれとも違うと分かった。

 もっと冷たいものだ。

 こんな時に思い当たりたくない人のことが思い当たる。当たってほしくない予想が生まれ、消し去りたいのに頭から消えてくれない。

 

「あっきー……?」

 

 

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