『ギャルゲやります』
「は?」「まただよ(定期」「なんで?(困惑」「今日もおりんはかわいいなぁ(白目」「ク ソ ザ コ 再 び」「税 金 泥 棒 w」コメントが困惑に満ちる。
もう見慣れたものであり、このコメントたちの歯に衣着せない言い草が今の私にとっては精神的に都合がよかった。
ちなみに今回の配信は「おりん」ではなく「加賀美詩織」の方で配信されている。理由は簡単、これが【上】の主導で行われているからだ。
『えー…勘違いが無いように言っておきますが、これ実は『上』からの指示です』
「?」「???」「嘘乙」「国民の血税でギャルゲするように指示される女」「嘘だろ承太郎」 困惑のコメントが噴出していく。うん。嘘だと思うよね、私もそう思った。
『以前適合率の関係でギャルゲ配信したことがあったと思いますが(萌え声クソザコ装者の話『闇を纏いて、運命に抗う』参照)、あの後『上』で色々紛糾した結果「このゲームを配信しろ」的なお達しがあったとかで』
「あっ(察し」「大人の事情(闇」「忖度()」「おりんも有名になったもんだ(感慨」「萌え声実況者にギャルゲ実況を忖度する政府()」 こう、色々察したコメントが多いこと多いこと―――
まぁ、国民の血税云々はともかく、実況配信用にと渡されたゲームなので、露骨にアレな描写やソレな展開はないものなのだろう。最悪はクソゲーの実況でゲームの評価をちょっとでも上方修正したいとかそういう忖度なのかもしれない。
―――何故ギャルゲ配信する前からこんなに真面目にギャルゲの裏側ことを考えなければならないのか……あぁ、何か微妙に鬱くなってきた。
『はいそれじゃあね、始めて行きたいと思います』
「おりんやる気ないな」「大丈夫おりん?メンタル弱ってない?」「仕事でやる以上しゃっきりやれ」「国家公務でギャルゲをやらされる生配信者がいるらしい」
ええい好き勝手言ってくれますね本当に
『今回やるゲームは……「君の胸の響き」……?この間の「二枚目のジョーカー」と同じ系列の会社の作品ですか。ちょっと期待してもいいのかもしれません』
「あっ()」「あぁ……()」「ああうん、良い作品だよ」 なんだか露骨に塩反応になりましたね……地雷でしょうか?
それはそれとしてワイプを隅っこに寄せて
『では、ゲームスタートです』
―――「君の胸の響き」は選択分岐少な目のほぼ一本道のシナリオのゲームだ。
主人公は何の力も持たない一般人で、自分を見つめ直すためという若干中二病を拗らせた様な理由でやってきた屋久島で、不思議な雰囲気を持つ大人「ひびき」に出会う。屋久島で出会った謎の怪物「魔化魍」に襲われ絶体絶命のピンチを救った「ひびき」に感銘を受け、何かと接点を作って会いに行くようになる。
「ひびき」の他にも、明るく面倒見の良い「いぶき」、そのいぶきの弟子である「アキラ」など、少ないながらも印象に残るキャラクターが多い。
ただ―――
『あの。OPムービーでミュージカルが始まったんですけど』
「歌は気にするな」「歌は気にするな」「歌は気にするな」 何ですかこのコメントの雨!?流行ってるんですか!?
ま、まぁ、気を取り直して―――
『それにしてもアレですね……「清めの旋律(おと)」で浄化しないと倒せない魔化魍って、まるでノイズみたいですね』
「せやな()」「おっそうだな()」「やっぱりおりんもそう思うのか」 共感している人ばかりですね。やっぱりそういう意識で作られてるんでしょうかね、このゲームは。
『あの……トドロキさんモザイク処理しないと危なすぎません?これちゃんとテクスチャに処理入れてます?』
「大丈夫、入ってるよ」「まるでエロゲだな()」「これを女にプレイすることを強要する政府があるらしい」「ONIになるには一回全裸になる必要があるから」 コメントを見る限り大丈夫だと思いますけど、これ動画規約的に大丈夫なんでしょうね?本当に……
―――「ひびき」と接していくたびに、少年の胸の内で大きくなる憧れ。
ひびきたち「ONI」を支援する「衛士」という名の組織。
「清めの音」を「重ねる」ことで強力な魔化魍を倒す展開。
そして、「ONI」に変身する能力を失った先達が使用する禁断の力「鬼の鎧」
―――どうしようもない違和感を感じる。既視感と言ってもいい。
シナリオを追いかける間の実況にどうにも身が入らない。ただ、シナリオと、それに関連する戦闘シーンの迫力はとても骨太で面白いものだった。
『夏限定で真っ赤なフォームチェンジですか……』
「どうしたおりん?」「おりんの様子がおかしい」「ルート分岐ミスった?」「いや、合ってる。ノーマルエンド方向」など、心配から推測が飛び交っている。とりあえず笑顔を取り繕い、喋りを続ける
『ああすいません。ちょっと適合率がね……』
「ああ、そういう」「低いと反動がやべーって前言ってたな」「それ今言っちゃって大丈夫なやつ?」「大丈夫かおりん、調子悪いなら中止してもいいんだぞ?」 心配をしてくれるコメントが心にしみる……
そうこうしているうちにEP1は終了。再び訪れた屋久島で、巨大な蜘蛛の化け物と対峙して、ひびきのために時間稼ぎをたった一人で行った少年は、「しょーねん」ではなく「明日夢」と名前で呼ばれることになった。
『いやぁ……プレイしてみれば割といい話でしたね。これはEp2が楽しみです』
「おっそうだな()」「期待するのは自由だな」「大体2が出たら駄作」 やる前からテンションを下げるようなコメント辞めて欲しいんですけどね……まぁこちらもお仕事なのでやるやらないではなくやらなければならない なのですが。
『では本日の配信はここまでにしたいと思います。次回はEP2からやっていきましょうか』
「おつおりん」「ギャルゲ配信する政府広報」「次は国主導でBLゲーか?」流石に国の主導でBLやれとは言わないと思う。きっと。
配信を切って、PCの電源を落とし―――電話を掛ける。
「―――ああもしもし、緒川さん?風鳴指令はそこに居ますか?まぁ緒川さん相手に言ってもしょうがないかと思いますけど。
―――政府主導でギャルゲーでプロパガンダって何考えてるんですか?」
思わず緒川さんに愚痴っていた。
「君の胸の響き」これはシンフォギア装者各々の胸にある歌のこと。
「ONI」と「魔化魍」はそれぞれ装者とノイズ。
ONIを支援する「衛士」とは衛士=防人をイメージしたもの。
一号である「ひびき」は第3号聖遺物ガングニールで響さん
二号「いぶき」は第2号聖遺物イチイバルのクリスさん
詰まるところ三号、弦(剣)のONI「トドロキ」は、翼さんで、
―――徐々にONIの力を失い弱っていく師匠の「ザンキ」さんは、或いは奏さんをイメージしているのかもしれない。
装備者の身体を蝕む「鬼の鎧」とは完全聖遺物「ネフシュタンの鎧」のこと
レーザーを放つ魔化魍に襲われて変身が解けて全裸で地面に転がるトドロキさんの師匠、ザンキさんのシーンは……神獣鏡の光で強制的にシンフォギアが脱がされたあの時のことを指している。他にも色々、
すなわち、「清めの旋律(オト)」で敵を倒すONIをシンフォギア装者に見立てた半分ドキュメンタリーと言っていい話だ。
―――つまるところこのゲームを政府主導で私にプレイさせたのは、私というシンフォギア広告塔を利用して、サブリミナルにシンフォギア装者とノイズについての情報を視聴者に刷り込ませる狙いがあったと見て良い。
『ああ、うん。その一件はね……風鳴家が一枚噛んでいてね』
緒川さんの歯切れの悪い声に納得がいきました。あの糞爺が一枚噛んでやがりましたか。
『まぁ、ひとつこの話にはオチがあってね……』
「オチ?」
緒川さんからの話を要約すると、風鳴家がスポンサーとなってゲーム制作させ、ゲームを通じてシンフォギアのことを認知させようとした計画は、「シナリオにあまりにも口を出し過ぎたために制作側がブチギレし、その結果、スポンサー契約が破談になりスポンサーのイエスマンだった監督が更迭、新監督が代わりに据えられた」、EP1はそのまま発売したが、EP2からは脚本家が自由に書いたもので、どうにか収集をつけようと頑張ったらしい。
『余談だけど、魔化魍の親玉は「オロチ」だったらしいよ』
「ああ……」
最終的に「アメノハバキリ」が重要になる相手がラスボスとか忖度過ぎて萎えますね。展開的にもメインヒロインより3号の「トドロキ」さんが活躍する話になりそうですし。
―――ともあれ……
「やっぱりゲーム実況は個人で、優雅に、孤独に行うものですね。国の主導で監視が付いたままとか息が詰まります」
電話を切って布団に寝転がる。驚くほどすんなりと、眠りに落ちた。
思ったより親和性が高くて、書いてる最中にも「あれ?シンフォギアとかぶる部分多くね?」と思った中の人がいるらしい()