【萌え声クソザコ装者の話 ・三次】   作:米ビーバー

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このお話は、

「なんかXDの方だと並行世界をつなげるアイテムがあるとか言うじゃないですか?」

という話題から、XDの設定とかそもそもよく知らないビーバーが脳内でコネった結果生まれたものです。

なので矛盾点とかそういうのは突っつかれると、こう、困る(予防線)


そしてご本家様より「投稿してええよ」と許可を戴いたので投稿してみることにしました(予防線2)


「 万華鏡の幻影(ゆめ):前編 」

『―――詩織君!聞こえるか詩織君!!』

「―――こちらフェニックスギア装者、加賀美詩織です。オーヴァ」

 

 けたたましく、『耳に轟く』といった表現が正しいと言える大声を受けて、詩織がたどたどしく返事を返すと、通信の向こう側でほっと胸をなでおろす様子が微かに聞き取れた。

 

 

 謎の勢力の台頭―――。

そんな情報を掴んだ結果出撃した響、クリス、翼との通信が途絶したのはほんの一時間ほど前。翼との通信が途絶した瞬間矢も楯もたまらず誰よりも早くフェニックスギアを起動させて飛び出してしまい、S.O.N.Gの面々にとんでもない迷惑を絶賛かけ続けているのが加賀美詩織という体たらくである。これは無事に帰った後が怖いと見た詩織は現実逃避中であった。

 

『―――色々と言いたいことはあるが、兎に角現状はどうなっている?こちらからは君の姿が視認できん』

「―――おかしいですね。こちらは霧のような、雲のような、そんな白い壁を抜けたらの何でもない普通の空模様ですが」

 

 応えて詩織は空を見上げてみるが、洋上ということを差し引いても青空が広がっている。特に何がというわけでもない。

 

「それよりも、翼さんたちが反応を途絶した場所はこの辺りで間違いありませんか?」

『あ、ああ―――違い―――こ―――は、慎―――作―――を―――』

「司令!?応答願います司令!?」

 

 不意に通信に強いノイズが混じり始め、音声が乱れて聞こえなくなり始めた。慌てて声を上げる詩織だったが時すでに遅し。司令の声は全く聞こえなくなり、詩織は独りでこの場に放り出されてしまった。

 

 一度引き返そうか―――などとは思わなかった。

 

 なぜならまだ風鳴翼が見つかっていないのだ。彼女が無事かどうかを確かめなければならない。『もしも翼が大変なことになっているとしたら、自分が何をどうしてでも助けなくてはならない―――!』そんな決意に後押しされるようにして、詩織はフェニックスギアの炎の翼を広げて空を舞う。

 通信途絶により周囲の索敵をしてくれる存在がいないため、バイザー越しに視認範囲を広げることしかできない詩織は、兎に角上空を目指して飛翔する。上方から見下ろした方がまだ見える範囲が広がるだろうという思考からである。

 

―――だが、それは他の“相手”も同じだったようだ。

 

 詩織は自分よりも高速で動く存在を視認する。炎を巻き上げる自分よりも疾く、大型のウィングを展開した「ナニカ」が空を切り裂く音を立てて上空に先に至った。一先ず敵対存在である懸念からホーミングのターゲットロックをONにする

 

『私は日本政府、特異災害対策機動部所属のシンフォギア装者!加賀美詩織です!貴女の所属と姓名、或いはコードネームをお願いします!』

 

 スピーカーをONにして上空の存在に届かせるため広域範囲に拡大して声を上げる詩織に、相手が困惑する様子が見て取れた。空中で姿勢を入れ替えた相手は、そのままスルリと滑らかな飛行で降下してくる。その姿に敵意がないことを確認してターゲットロックを外す詩織の前に降下してきたのは、詩織によく似た『灰色の』シンフォギアを身に纏った少女だった。

 戸惑う詩織の目の前で、目を覆うバイザーを持ち上げて、素顔を晒す。

 

 

「―――日本政府、特異災害対策機動部所属のシンフォギア『イカロス』の装者。加賀美詩織です」

「―――えぇぇ……?」

 

 

 二人の同じ顔をした少女がどうしたらいいのかわからないまま呆けているところに、さらに二つの影が現れた。

 

 

「何だありゃ……?新手のオートスコアラーか?」

『気をつけてください、クリスさん。対象のデータは未知数です』

 

「すいませーーーん!!貴女もシンフォギア装者ですかー?」

『響ちゃん!!慎重に!慎重に話しかけてって言ったでしょぉ!?』

 

 

 どちらも立花響、雪音クリスに『よく似ているけれど違うギア』を装着している。響の方は背のバーニアに炎の翼を噴き出す噴射孔と、両腕のガングニールのハンマー部分の後部に、ブーストアップ用途なのか同じような噴射孔がついている。

クリスの方は大型のウィングが4基になりそこにホーミングミサイルの弾倉らしき大型カートリッジと追尾式ビームを発射するであろう銃身が複数見受けられた。

 

 そしてどちらにも共通して『詩織の声』がユニゾンしていた。

 

「―――どうなってるんですか、これは……」

「と、とりあえずお二人様、所属をお願いします」

 

 頭がクラクラする光景を前に、それでも職務を優先する詩織に、新しく現れた二人は互いに顔を見合わせて、それぞれ順番に答える。

 

「S.O.N.G所属のシンフォギア「ガングニール」装者!立花響です!!」

『日本政府、特異災害対策機動部所属のシンフォギア装者、「ユナイトフェニックス」加賀美詩織です』

 

「特異災害対策機動部所属のシンフォギア「イチイバル・イカロス」装者、雪音クリス」

『ユナイトギア【イカロスの蝋】を総括しております。「シオリ」と言います』

 

 

 混迷する状況を打開する存在は、未だ盤面にいない。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

「―――つまり、そっちの詩織さんは神様になったことがあるんですね!?」

『嘘乙wwwww流石にそれはないわー^^』

 

素直に感心している響と、テンプレ煽りを加えつつ「ないわーマジないわー」を繰り返す“ユナイトフェニックスの方の詩織”に「正確には断片だけですし、同居とか居候みたいなものですけどね」と返して苦笑する詩織。

 

「―――なんつーか、そっちの詩織もとんでもねぇ人生送ってんだなぁ」

『そちらの“わたし”はテセウスのパラドクスを克服できたのですね。その辺りは多少羨ましいです』

 

 バリバリと髪をかきむしってそうコメントするクリスと、“ユナイトギアの中枢”と名乗った『シオリ』

 

「そっちの“わたし”は、私があの時取った選択と同じことをしたのですね」

『はい。後悔の無い人生の選択だった、と、“わたし”は思っています』

 

 お互いの素性というか、これまでの来歴を語り合ううちに、詩織は確信を持つようになった。これは『すべて並行世界に在りえた“加賀美詩織”という少女の可能性の存在』なのだということを。

 

 立花響と共にある『ユナイトフェニックス』の詩織は、かつて詩織が経験した【カルマノイズ】との戦いで『ユナイト』の可能性を見出した風鳴訃堂により『ユナイト』を基本とした戦力計上が為され、誰かとユナイトして出力を向上させて強敵を斃すワンマンスタイルの装者運用が提示された。勿論S.O.N.Gとしては難色を示したのだが、最終的に詩織が折れることで合意に至り、今や詩織は『ユナイト』ありきのシンフォギア装者なのだという。当然、心臓と融合したフェニックスの羽根は健在なのだろうと詩織は結論付けた。

 

 雪音クリスと共にある『ユナイトギア・イカロス』の中枢(アクシズ)と自身を呼称する『シオリ』は、かつて詩織も経験した『イカロスに自身の全てを置き換えた詩織』のまま戦いを続けた結果の姿なのだろう。肉体は喪われ、無数の蝋の塊になってもなお、人格をイカロスに転写して、「蝋」という群体の中で個を保ち「生きて」いる。また、クリスのこれまでも詩織の経験してきたこれまでとは違っていた。

 雪音クリスは詩織の知る世界線では、フィーネから切り捨てられ、風鳴弦十郎に救助されるはずだった。しかしクリスを救ったのは弦十郎ではなく、風鳴訃堂の手のものだった。風鳴家に秘密裏に匿われたクリスは、聖遺物「イチイバル」の装者として厚遇され、その代わりに政府機関所属のシンフォギア装者として配属された。「サキモルとかサヤバシルとかワケわかんねーことばっか言うジジイ」と称して毒を吐いてはいるが、自分を拾ってさしたる不自由もなく養ってくれている訃堂に対しての恩返しか、はたまた単純に「貸し借り」の問題なのか、唯々諾々と訃堂の命令に従って護国のために戦う決意をしたのだそうだ。

 『シオリ』との出会いは、訃堂が『研究用』と称してイカロスの蝋の一部を採取して持ち帰ってきた際に、蝋のネットワークを通じて『シオリ』がクリスを認識し、その後色々な事件を経て、パートナーとしてユナイトする関係になっているのだとか―――。

 

 

「いやぁ、私からしてみればどの「わたし」も数奇な運命辿り過ぎじゃないですかね?」

 

 

 自嘲気味な笑みとともにそう零すのは『イカロス』の詩織。この詩織は本当に稀有な詩織と言えた。

何しろこの詩織は『死んでいない』のだ。

 

 詩織を今の『加賀美詩織』たらしめている一番の根幹。「フィーネによる加賀美詩織の殺害」が起きていないのだ。そのため『イカロス』はただの聖遺物、ただのシンフォギアのまま。『灰色』の詩織はおそらくこの面子の中で群を抜いて弱いのだろう。当人も曰く「聖遺物適合者として各種テストのためにバイト感覚ですので」と苦笑している。その笑顔が、かつて失ってしまったものの残滓を思い出すのか、他の“詩織”達にとっては眩しすぎた。

 

 

「しかしこれは……やはり“聖遺物”が理由ですかね?」

 

 

 話題を変えるつもりで口にした“聖遺物”という言葉にその場の全員がそれぞれ異なった反応を見せた。響はやや気まずそうに、クリスは表情を硬く、「イカロス」の詩織は微妙そうな顔をした。

 

「―――“ソロモンの杖”や“ネフシュタン(の鎧)”のような聖遺物が、他にも起動しているってことですか?」

『あー……イカロスの蝋から出てきたフェニックスの羽根のように埋まってたモノが勝手に起動してそのまま放置されていたのがこの辺りの領域を切り取っている。とか?』

 

 響が想像したのはあまりいい思い出の無い完全聖遺物たちだったようで、それらと同じものが起動していたらと想像し、顔色を悪くしている。“ユナイトフェニックスの詩織”からは詩織の推測にさらに自身の推測を重ねたであろう答えが返って来た。

 

「―――ジジイが一枚噛んでんじゃねぇのか?あのジジイなら国を護るためならなんだってしそうだぜ……詩織を『増やそう』としてるしな」

“蝋”(わたし)を増殖させたところで中枢としてコントロール権を持っているのは私一人だけですので、並行分岐体の“わたし”を用意して全員『取り込む』ことでCPUの増設か、OSの並行起動(マルチタスク)のようなことを目指している可能性はゼロとは言えませんね』

 

 苦虫を噛み潰したような表情のクリスと、淡々と推測を並べていく『シオリ』。

とはいえ、情報の不足している現状では答えは出なかった。

 なお『イカロス』に関しては、そもそも聖遺物に対する情報開示がそれほど為されていないのか、周囲の意見に不思議そうな顔を見せつつ、微妙な表情で返している。其処に【壁】を感じる辺り、『イカロス』の詩織はかつての日陰の女王で、萌え声配信者だったころの詩織のままのメンタルを引きずっているのだろう。と結論付けて、それ以上の思考を裂くことを取りやめた。

 結局のところ現状は手詰まりでしかない。だがそうであったとしても詩織には皆に尋ねなければならないことがもう一つあった。むしろそれを一番に出さず今まで我慢していたのだ。

 

「―――ところで皆さん。“風鳴翼”さんの姿を見ていませんか?」

 

 響とクリスは並行世界の存在とはいえここにいる。けれど同じように反応を消失した翼の姿が何処にもない。或いは翼も他の『詩織』が傍にいる並行世界の翼が存在しているのかもしれない。

 

 

 

「―――敵陣で悠長に談話とは―――心得が成っていないな」

 

 

 

 4人の間を切り裂くように真紅の炎を纏った斬撃が形を成して駆け抜けた。

 

 殺気を感知して跳び退いた響と響の動きに反応して逆方向に跳び退るクリス。そしてその一撃から『イカロス』を庇う様に引き寄せて空中で反転軌道で回避運動をとった詩織。

 三者三様の動きで回避した面々と、ただ状況に流されて回避した形になった「イカロス」。4人が空を見上げる先に、

 

 

「―――つばさ、さん……?」

 

 

 詩織は驚愕に目を見開いたまま固まっていた。他の面々も、新たに現れた存在に目を奪われている。

 

 

 

―――詩織の視線の先には、その身に纏うシンフォギアの装甲を焔色に染めて、背に炎の翼を生やした風鳴翼の姿があった。

 

 

 




後編?そのうちな!(ダージリンファイルズを優先するCO)
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