デート・ア・オルガ   作:宮本竹輪

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前回のあらすじはお休みです。最初書いたけど、なんか納得いかんかった。


第十三話 ハーミット

士道たちが〈フラクシナス〉へと移動する数分前______。

 

「........ッ!?」

 

施設内にけたたましい警報音が鳴り響く。

 

ここは天宮市内に存在する〈ラタトスク〉の保有する施設。

ここには非常時に備えて、CRユニットやモビルスーツが格納されている。

 

そこのとある一室にてラタトスクのデータに目を通していた男が小さく呟く。

 

「.......来るか」

 

すらっとした長身に軍服を身に纏い、顔立ちの整った金髪の青年である。マクギリス・ファリド。それが彼の名だ。

 

鉄華団と手を組み、ギャラルホルンの象徴であった『ガンダムバエル』を手にして世界に革命を起こそうとし、自ら裏切った友に撃たれた男。すると______

 

「失礼します。准将」

 

という声が聞こえ、彼の部屋に一人の男が入ってくる。マクギリスと同じく軍服を纏っている、堅実そうな男だ。

 

「_______石動」

 

そう。マクギリスの副官である石動・カミーチェである。

 

「どうした?」

 

「我々のモビルスーツがこちらに届きました」

 

「そうか。どうやら我々の仕事の時間のようだな。行くぞ、石動」

 

「はっ」

 

石動が首肯するとマクギリスが立ち上がり、石動の横を通り過ぎてゆく。

それからしばらくすると、前方を歩くマクギリスが口を開いた。

 

「機体の整備は完了しているのか」

 

「はい、整備長からは特に異常は無かったと」

 

「そうか、しかし驚いたな」

 

「何がでしょうか」

 

「いや、彼らとまた出会えるということに驚きを隠せないな」

 

「その割にはあまり驚かれていないようですが」

 

「村雨解析官や五河指令から話は聞いていたからな。彼らのことは一度聞いていたさ」

 

短く答えて、歩みを進める。重苦しそうな扉が目の前に現れる。扉の横に設置された電子パネルを操作すると、パネルからピッと小さな音が鳴り、巨大な見た目とは裏腹に滑らかに開く。

マクギリスと石動は部屋の中に入っていく。

 

部屋の中は巨大なドーム型の建物となっていた。辺りを見回すと壁にはラタトスクのマークが描かれており、周囲には水が張られていた。

そして中央には何かが立っている。

 

そこにいたのは、白銀に輝く巨人だった。

 

その姿を目にした瞬間、不思議と何ともいえない高揚感がマクギリスを支配する。思わず唇の端を上げてしまう。

 

「久しぶりだな。アグニカ・カイエル、今一度目覚めの時だ........!」

 

笑みを浮かべながら、マクギリスは颯爽と()()()()()()()()

 

 

 

 

「______ああ、全員来たわね。もうすぐ精霊が出現するわ。令音は用意をお願い」

 

士道たちはフラクシナスの艦橋に着くなり、艦長席に着いている琴里から、そんな言葉が飛んできた。

令音は小さく頷くと、艦橋下段にあるコンソールの前に座り込む。

 

「______さて」

 

と、士道が無言でいると、琴里が首を傾げるようにしながら問うてきた。

 

「あまり時間をあげられなくて悪いのだけれど。腹は決まったのかしら、士道」

 

「.......っ」

 

息を詰まらせる。が、そこで突然、艦橋内にけたたましいサイレンが鳴り響いた。

 

「ど......どうした?」

 

「非常に強い霊波反応を確認!来ます!」

 

士道とオルガが狼狽に目を丸くすると同時、艦橋下段から男性クルーの叫び声が発せられる。

 

「オーケイ。メインモニタを、出現予測地点の映像に切り替えてちょうだい」

 

琴里が指示を発すると、メインモニタに、街の映像が俯瞰で映し出された。

いくつもの店が建ち並ぶ大通りである。しかし当然の如く人の姿はなく、ゴーストタウンのようになっている。

 

そんな映像の中央が、ぐわんっ、と(たわ)む。

 

「「え.......?」」

 

一瞬、画面に異常があるのではないかと思ったが_______違う。

 

空間に。何も無いはずの空間に、水面に石を投げ入れたときのような波紋ができていた。

 

「な、なんだこりゃ......」

 

「どうなってんだ.......」

 

「あら?士道とオルガは見るの初めてだっけ?」

 

琴里がそう言うのと、ほぼ同時に、空間の歪みが大きくなり______

 

画面に小さな光が生まれたかと思った瞬間、爆音とともに画面が真っ白な光に包まれる。

 

画面内の出来事だと分かっているが、思わず二人は腕で顔を覆ってしまう。

そして数秒後、恐る恐る目を開けると、画面には、今までとは全く違う風景が映し出されてた。

 

街に、穴が開いている。

 

そのようにしか、表現しようがない。

先程まで建ち並んでいた幾つもの建物が、ごっそりと削り取られていた。

そこにあったはずの店や街灯や電柱、舗装された道路まで、無くなっていた。

そのせいか、周囲も余波によって悲惨な有様となってしまっていた。

 

その様は、およそ一ヶ月前、十香に初めて会った場所に酷似していた。

 

つまり、今のが_______

 

「空間震.......っ」

 

「今のが、かよ.......」

 

士道とオルガは震える声で言う。

 

廃墟や破壊跡を見たことは、何度もあったが、爆発が起こる瞬間を目撃したのは初めてだった。

 

頭では、分かっていたはずの事象が、ようやく、理解できた気がした。

 

街が、人々が生活している空間が、一瞬で全て壊れてしまう。その、恐ろしさが。

 

「ま、でも今回の爆発は小規模ね」

 

「そのようですね。僥倖______と言いたいところですが、〈ハーミット〉ならばこんなものでしょう」

 

「まあ、そうね。精霊の中でも気性の大人しいタイプだし」

 

オルガは困惑しながら、喉を震わせる。

 

「_______これで小規模かよ......」

 

一瞬、何を言ってるのか分からなかった、すぐに思い直す。今の規模が数十メートルはあるだろう。しかし琴里たちにとっては比較的軽微なものなのだろう。

 

「.......ってか〈ハーミット〉って何だよ?」

 

「ああ、今現れた精霊のコードネームよ。ちょっと待ってて。______画面拡大できる?」

 

琴里が指示すると、すぐに、映像がズームして、街中にできたクレーターに寄っていく。

と、それに合わせて、画面内に変化が訪れる。

 

「.......雨?」

 

「.......さっきまで降ってたか?」

 

ふっと画面が暗くなったと思うと、ぽつ、ぽつと雨が降り始めたのである。

 

だが、そんな変化は、すぐに気にしていられなくなった。

 

クレーターとなった地面の中心に、小さな少女が確認できたからだ。

 

「...........っ!?」

 

拡大された画面の中心に佇む、その少女の姿に士道は見覚えが会ったのである。

 

「あれは.......」

 

ウサギ耳の飾りが付いた、青い髪の少女。

歳は十三、四程、大きめのコートに、不思議な材質のインナーを着ている。そして左手には特徴的なウサギの人形(パペット)を装着していた。

士道に何かしらの異常が無ければ、間違いない。

 

あれは_____士道が昨日学校から帰る途中に遭遇した女の子だった。

 

「.......?どうしたの、士道」

 

士道の様子を見て、三日月が怪訝そうに聞いてくる。

 

「俺_____あの子に、会ったことが、ある.......」

 

「なんですって?一体いつの話よ」

 

「つい昨日だ......、学校から帰る途中、急に雨が降ってきて_______」

 

記憶を探りながら、昨日の出来事を簡潔に話した。

 

すると士道の話を聞いた神無月が手にした端末に視線を落とす。

 

「当該時刻に主だった霊波数値の乱れは認められません」

 

「.......十香のケースと同じか。........士道、なんで昨日の言わなかったの?」

 

「む、無茶言うなよ。会ったときは精霊だなんて思わなかったんだ.......」

 

と、士道が叫ぶのとほぼ同時に、フラクシナス艦橋に設えられていたスピーカーから、けたたましい音が轟いてきた。

 

「.......!?どうした!?」

 

「______オルガ、精霊が現れたってことは、動くのは俺たちだけじゃない」

 

三日月の言葉に、オルガは眉を潜める。

 

「ASTか......」

 

「ええ」

 

画面に目をやると、今し方少女_______〈ハーミット〉と呼ばれる精霊がいた場所に煙が渦巻いていた。恐らく、ミサイルか何かを撃ち込まれたのだろう。

 

その周囲には、物々しい機械の鎧を着込んだ人間とモノアイの巨人・グレイズ____対精霊部隊(アンチ・スピリット・チーム)のASTだった。

その時、煙の中から〈ハーミット〉が飛び出す。

ASTがそれに反応すると一斉に〈ハーミット〉を追跡する。そして身体中に装着していた部装から、夥しい量の弾薬を発射する。

 

「待ってくれッ!あいつらあんな小っさい奴に......!」

 

「........今頃何言ってんの、オルガ」

 

三日月がそう言うと、琴里が半眼を作る。

 

「十香の時に学習しなかったの?ASTにとって精霊がどんな姿形をしているかなんて関係ない。彼らにあるのは世界を守る使命感と、人類にとって危険である存在を排斥しようという、生物としての至極まっとうな生存本能だけ」

 

「だ、だけどよ.......っ」

 

オルガが口を開いた途端、煙の中から再び少女が空に躍る。

だが、〈ハーミット〉は反撃しようとせず、ただ逃げ回るだけだった。

 

「あの子.......反撃しないのか?」

 

「ええ。いつものことよ、〈ハーミット〉は精霊の中でも極めて大人しいタイプだし」

 

「......っ、なら______」

 

「ASTに情けを求めるなら、無駄よ。______彼女が、精霊である限り」

 

にべもない答えに、士道は唇を噛んだ。

言葉を重ねるまでもなく、自分でも分かっていたはずだった。

彼女の気性や、性格だなんて、ASTには関係無い。

彼らにとっては、この世に害なす敵を討っているだけなのだから。

だが_______それを覆す方法だなんて、一つしかない。

 

「.......琴里」

 

「何よ」

 

「.......精霊の力さえなくなれば、あの子がASTに狙われることはなくなるんだな.......?」

 

士道が言うと、琴里は眉をぴくりと動かして、士道の方に目を向けてきた。

 

「ええ。______その通りよ。」

 

「空間震は........起きなくなるんだな?」

 

「ええ」

 

士道は、一拍置くと、次の言葉を発した。

 

「______俺とオルガには、それができるんだな.......?」

 

「十香の現状を見て信じられないのであれば、疑ってくれて構わないわ」

 

「..........」

 

一度押し黙り、オルガへと目を向ける。

 

「_______オルガ」

 

「わーってるよ、俺だってあいつを助けてやりてぇんだ。こんくれぇなんてことはねぇさ」

 

士道は、伏せた目をゆっくりと上げ、決意する。

 

「手伝ってくれ、琴里、二人とも。.......俺はあの子を、助けたい」

 

「いいよ」

 

「______ふふ」

 

三日月は、首を縦に振り、琴里は、どこか嬉しそうに、キャンディの棒をピンと立てた。

 

「それでこそ私のおにーちゃんたちよ。総員、第一級攻略準備!」

 

『はッ!』

 

琴里の言葉と共にクルーたちがコンソールを操作する。

 

すると琴里が小さく「あ」と、小さく呟く。

 

「どうした?」

 

「そうそう。今回、三日月を護衛につけないわ」

 

「え?大丈夫なのか?」

 

琴里の言葉に士道は、問いかける。

士道の心配をあまり気にしない様子で、琴里は口を開く。

 

「大丈夫よ。彼ならASTを抑えられる」




第十三話の話の前に話があります。

今日三月十九日は、大切なことが二つありました。

まず、一つ目が本日は我らが団長『オルガ・イツカ』の三周忌でした。オルガのあの名言が出てから、もう三年も経ってたんですね。
そういえば、この小説を書いて半年ぐらい経ちましたけど、まだ十四話ってどうなってんだ.......(驚愕)。

そして二つ目は今日デアラの最終巻が発売日でした。因みに中の人は22巻をゲットできました。
「終わらないで......」という気持ちの中で、アニメの四期が決定してハイテンションになったりと、めっちゃ複雑な気持ちになりました.......。

さて、今回の話ですが、結論から言うと、マクギリスが脱ぎました。なので、次回はハイテンションアグニカおじさんの登場予定です。

というか、この後書き書いていて気づいたんですけど、ノルマ達成できてねぇや.......。まぁでも今日はそこら中で止まんない人がいると思うので、許して下さい!

ということで次回もお楽しみに。
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