デート・ア・オルガ   作:宮本竹輪

16 / 21
どうも、『デート・ア・オルガ』の方では本当にお久しぶりです。宮本竹輪です。
今回は前回のあらすじはお休みです。その理由についてはあとがきで。


第十五話 白き翼の悪魔

「フッ......ククッ......はははははっ・・・!はははははっ.......!!」

 

士道たちのいるデパート付近にて、金髪の男──マクギリス・ファリドは上空から武装した人間たちとモビルスーツを哄笑を上げながら愉しげに見下ろ(みおろ)していた。

 

ただし、見下ろすと言っても、彼自身が飛んでいるわけではなく、マクギリスはとある物に乗り込んでいた。そのコックピットからASTを見下ろしていた。

彼の乗り込む機体は、人型のシルエットに白と青のカラーに羽根のように広がった二対のスラスター、そして赤く輝く双眼。

何も知らぬものが見たら、それはアニメに出てくるような巨大ロボットの姿を真っ先に思い浮かべるだろう。

 

それはかつて権力の象徴だったものであり『錦の御旗』。

 

笑いを止めASTへと向き直る。翼状のスラスターを広げ、マクギリスはその名を高らかに叫んだ。

 

「───今、マクギリス・ファリドの下にバエルは再び蘇ったッ!」

 

当たり前の話だが、その通信はASTには届いていない。しかし今の彼にとってそんなことはどうでもいいことだった。

 

自分が望んだ玉座に着く。それだけでもマクギリスにとっては輝かしいことだった。

と、通信が入ってくる。通信を繋ぐと、可愛らしい声が聞こえてくる。

 

『────あー、お取り込み中のところ悪いんだけど、あなた仕事忘れてないわよね』

 

「ああ、もちろん覚えているさ──五河司令」

 

件の五河士道とオルガ・イツカの妹にして、今のマクギリスにとって上司である五河琴里の声だった。今のマクギリスはとある理由で彼女の下についていた。

 

『あんたには士道とオルガが精霊と対話している間、ASTの横やりが入らないようにするのが仕事なんだから。少しは真面目にやりなさいよ』

 

そう。マクギリスの仕事というのは、ASTの注意を自分へ引き付け、ASTを精霊と士道たちからできるだけ引き離すことだった。要するに囮である。

 

「了解」

 

琴里の言葉に小さく答えると、操縦桿を強く握りしめた。

 

白い翼のガンダム────バエルはスラスターから火を噴き、腰部に携えた金色に煌めく二本のブレードを引き抜くとASTに斬りかかった。

 

『くっ........』

 

折紙は脳内でスラスターユニットに指示を出し、バエルの攻撃を避ける。バエルに向けて追尾式のミサイルが放たれる。だが──相手はただのモビルスーツではない。

 

スラスターを駆動させながら、放たれたミサイルを猛スピードで切り刻み、羽の電磁砲で破壊していく。

 

一瞬にして撃ち込まれたミサイルがたった一機の機体によって爆散させられた。

これがガンダム・フレームの力───精霊ほどではないが、危険視されている力だ。

 

ASTが対精霊用ガトリング〈オールディスト〉、グレイズはライフルとバズーカを一斉にバエルに向けて放つ。弾薬の雨が放たれるが、これを身を躱して避ける。

 

「少し大人しくしてもらおう」

 

マクギリスが言うと、一機のグレイズの目の前に降下する。するとグレイズは腰部のバトルアックスを引き抜く。

 

「────遅いっ!」

 

ガギィンッ!

 

と、グレイズの右腕部が宙を舞った。バエルの一閃でフレームごと斬り裂いたのである。

圧倒的な力を手にし、マクギリスは再び笑みを浮かべる。

 

「───これがガンダムフレーム、これがバエル。私が求め続けたものだ......!」

 

またも弾薬の雨が降り注ぐ。が、バエルはスラスターを駆動させながら、後方に下がり、そして上昇する。

 

『おおおぉぉおっ!』

 

パイロットの裂帛とともに別のグレイズがバトルアックスを振りかぶりながら、襲い掛かる。バエルはこれを回避すると、グレイズの背中に蹴りを入れた。蹴られたグレイズは地面に叩きつけられ、再起不能になる。

 

残ったモビルスーツはバズーカを構えたグレイズだけとなる。

スラスターウィングを広げて急降下し、肉薄する。グレイズはバズーカを放ち、応戦するが、バエルはそれを回避した。しかし、それがまずかった。

 

「........まずいっ!」

 

今飛んでいった砲撃の方向には、士道たちのいるビルがあったのだ。

機体の向きを変えるが、ASTの砲撃によって思うように向かうことができない。無理矢理振り払いビルに向かう。だが─────

 

ドゴォォォオオオン────!

 

轟音が鳴り響き、士道たちのいるビルに直撃した。

 

 

 

 

「───なぁ琴里」

 

『───何よ』

 

「外から銃撃が聞こえるんだけど、本当に大丈夫なのか?」

 

『問題ないわ』

 

士道たちのいるビルに砲撃が直撃する数分前。

士道とオルガ、そして『よしのん』は、デパートの中を歩き回っていたのだが、時折銃声や破壊音が聞こえてきていた。先程から士道とオルガは琴里に聞いていたが、琴里からはあまり『よしのん』を不安にさせないように気にするなと釘をうたれていたのだが─────

 

「ったく、本当に大丈夫なのか?」

 

オルガが不安そうな声を漏らす。

それもそうだろう。気にするなとは言われていても、時折銃声が聞こえてくるともあれば精霊が恐怖心を覚えて精神状態が不安定になったりしてしまうかもしれない。

その証拠に遠くから響いてきた轟音に『よしのん』がその身を小さく震わせていたりした。

 

「琴里が言ってたそいつが本当に安心できるかは分かんねぇんだろ?実際そいつが何者なのか分かんねぇ以上信用はできねぇよ」

 

「あぁ、そうだな」

 

オルガの言葉に士道は小さく頷いていると。

 

 

『────士道ッ!オルガッ!今すぐそこから離れなさいッ!』

 

 

琴里の声が聞こえてきた。

 

「どうした?何かあったのか?」

 

『ASTの砲撃がそっちに向かっていったわ!そこに居たら、爆発に巻き込まれるわよ!』

 

「っ!なんだとっ!?士道!よしのんと一緒にここから離れるぞ!」

 

オルガは叫んだ。が、遅かった。

 

 

ドゴォォォォォオオオン───────!!

 

 

「うわっ......!」「っ.......!」

 

けたたましい爆発音とともにオルガたちの目の前にあった外壁が爆発した。

恐ろしい爆風によって後方に吹き飛ばされてしまう。なんとか少女を抱えて倒れ込む。

 

「......いってて.......、オルガ大丈夫か」

 

「.........ケホッ、コホッ!こっちは大丈夫だ。ほら、大丈夫かよしのん.............ん?どうかしたか?」

 

「.........!.....................!」

 

オルガは手を伸ばそうとしたが、少女の表情を見て怪訝そうな顔をつくる。

顔色は真っ青になり、なにかに怯えているかのように声にならない悲鳴を上げていた。

するとオルガはとある違和感に気づく。

 

「........パペットが無い?」

 

そう、先程まで少女のつけていたパペットが少女の腕から消えていたのだ。

 

「どこに行ったんだ───」

 

オルガが小さく呟いた次の瞬間。『よしのん』が小さく叫び声を上げた。

 

 

 

「─────〈氷結傀儡(ザドキエル)〉...........っ!」

 

 

 

デパートの床を砕き、下から現れたのは巨大な人形だった。

 

「────なっ.......!?」

 

「────これは........!?」

 

全長三メートルはあろうかという、ずんぐりむっくりのぬいぐるみのフォルムのような人形である。体表は金属のように滑らかで、所々に白い文様が刻まれていた。そして、その頭部と思しき箇所には、長いウサギのような耳が見受けられる。

 

『よしのん』は、顕現させた人形の背中に張りついたその時───人形の目が赤く輝き、その鈍重そうな体躯を震わせ、グゥォォオオオオォォォオオオ────と、低い咆哮を上げながら、人形から白い煙のようなものが吐き出される。

 

「冷た.........ッ!?」

 

あまりの寒さに思わず足を引っ込める。それもそのはずその煙は、まるで液体窒素から発せられているもののように、非常に低温だったのだ。

 

『────このタイミングで天使を顕現........!?二人とも、逃げなさい!』

 

「はぁ!?天使って何だよ!?」

 

突然の琴里の叫び声にオルガは大声を上げた。

 

『目の前に現れたでしょう!精霊を護る絶対の盾・霊装と対を成す最強の矛!精霊を精霊たらしめる「形をもった奇跡」よ!十香の鏖殺公(サンダルフォン)を忘れたの!?』

 

「んじゃあ、あのデッケぇウサギは十香のと同じものってことか!?」

 

『よしのん』が小さく手を引いたかと思うと、氷結傀儡(ザドキエル)が低い咆哮とともに身を反らした。

 

次の瞬間、デパート側面部窓ガラスが次々と割れ、フロア内部に凄まじい勢いの雨が入ってくる。

しかし、それは窓が割れて入ってきたというよりも雨粒が窓ガラスを叩き割ったかのような感じだった。

 

「いぃ.......っ!?」

 

「待ってくれっ........!?ヴゥ!ヴゥ!」

 

士道は床に倒れ込んで、続けてオルガも倒れ込もうとするが────間に合わず、オルガの体に固まった雨粒が突き刺さり、そして希望の花が咲いた。

 

「だからよ.........止まるんじゃねぇぞ........」

 

オルガを穿った雨粒は、透明な液体となって床に流れていった。

 

と、そこで、『よしのん』の駆る氷結傀儡(ザドキエル)が動き出した。

氷結傀儡(ザドキエル)はその鈍重なシルエットに似合わぬ俊敏な機動で地を蹴ると、そのまま割れた窓から飛び出していってしまった。

 

「た、助かったのか........?」

 

「........どうやら、そうみてぇだな........」

 

ふらつきながら、立ち上がったオルガが言う。オルガの体には先程の雨粒に貫かれた跡は制服に残っていたが、体のほうの傷はなさそうだった。

 

『ええ。反応は完全に離脱したわ』

 

琴里の言葉を聞いて、二人はその場にへたり込み、深くため息を吐いた。

 

『二人ともお疲れ様。フラクシナスで回収するわ。バエルの方にも帰投しておくようにいっておくわ』

 

「え........?」

 

「は.......!?ちょっと待て、琴里!今なんていった!?」

 

『何っていきなり何よ。あんたたちのことを回収するって.......』

 

「そうじゃねぇ。その後だよ!誰を帰投させるって言ったんだ!」

 

突然の大声にインカムの向こうで琴里は動揺する。

 

『な、何よ........まあいいか。丁度いいし、あんたたちにも話しておくわ』

 

オルガの言葉に懐疑的な反応を示すが、改まったように言う。

 

『〈フラクシナス〉の新たな戦力────ガンダムバエルよ』




どうも宮本竹輪でございます(二回目)。
さて今回も中途半端に終わってしまいました。
いやー書いているときは「ここら辺できったほうがいいな」なんて考えているんですが、考えるのをやめて書~。
こうして見直すと中々切り換えるの下手だなと思い知らされます.........。

さて話は変わりましてここからが本題です。
今回前回のあらすじを休んだのは、あらすじがいるかどうか迷っていたからです。
私が前回のあらすじを書き始めたのって、私が読んでいる他の人の小説であらすじを書いていらっしゃる人が多かったからであって。

でもここ最近は納得のいくあらすじが書けていなくて.......。そこで前回のあらすじが必要かアンケートをとりたいと思います。締め切りについては、7月15日(水)の午後10時までです。沢山の投票お待ちしています!

それでは、(できれば)また近いうちに!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。