デート・ア・オルガ   作:宮本竹輪

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こんにちは、皆さんお久しぶりです。宮本竹輪です。今回は前回のあらすじはお休みです。
約1年と半年ぶりにデート・ア・オルガ更新です。更新に時間をかけてしまって申し訳ありません。去年は受験があったり、リアルの方の生活が忙しくなり、また創作活動へのモチベーションが上がらなかったことで、あまり真面目に執筆に取り組むことができませんでした。改めて更新に時間をかけてしまって申し訳ありませんでした。

今回から新章『狂三キラー』編ということで、いよいよ人気キャラのあの子が出てきます。ぜひ楽しんでいただけると幸いです。


狂三キラー
第二十一話 悪夢との邂逅


 

「わたくし、精霊ですのよ」

 

 

6月5日、月曜日。

 

黒板の前に立った転校生の言葉に、来禅高校2年4組の教室はシンと静まりかえった。

ただ、皆が皆、同じ顔をして黙りこくっていたわけではない。

 

最も多いのは彼女が放った言葉の意味を理解できず、「なんなのこの子。夢見がちなの?イタい子なの?」

それに次いで多いのが、彼女のぞっとするほどに美しい容貌に目を奪われ、そもそも言葉を聞き逃していた男子たちである。

 

だが五河御留我___もといオルガ・イツカは、そのどちらにも属していなかった。

 

眉間に深いシワを刻み込み、頬に汗をひとすじ垂らして、腕を組みながら、教卓の横に悠然と立った転校生を注視する。

 

黒髪を二つに結わえた少女である。肌は真珠のように白く滑らかで、襟元からのぞく首は、少し力を入れて握れば折れてしまうのではないかと思えるほど細かった。

 

もっとも特徴的なのは前髪である。恐ろしく端整な顔立ちをしているのだが、前髪が異様に長く、顔の左半分を覆い隠してしまっているのだ。

 

前髪に隠れていない右目___その視線に晒された瞬間、オルガはまるで悪魔に魅入られてしまったかのような陶酔感を覚えたのである。

もし両目で見つめられていたなら、オルガも他の男子の仲間入りをしていたかもしれない。

その点に関しては、素直に感謝せざるを得ない。

 

ちらと黒板の方に目をやると、そこには白のチョークで名前が記してある。

 

「時崎…………狂三」

 

オルガは誰にも聞こえないくらいの音量で、その名を呟いた。

 

『精霊』───その言葉の意味を知っている人間は少ない。

精霊がなぜこんな所にいるのか、そもそも本当に彼女は精霊なのか、考えれば考えるほど、疑問がさらに深まっていくばかりだ。

ふとオルガは前方に視線を戻した、その瞬間、

 

「…………っ!」

 

オルガは息を詰まらせ、肩を震わせた。

 

だがそれも仕方あるまい。時崎狂三が、長い睫毛に飾られた右目で、オルガの方を見つめてきたのだから。

 

「……っ、なっ!?」

 

オルガが身じろぎさえできないでいると、狂三は目と唇をにっ、と微笑の形にした。

 

「皆さん、どうか仲良くしてくださいまし」

 

言って、小さく頭を下げる。

 

 

____それが、時崎狂三とオルガ・イツカの二人の物語の始まりだった。

 

 

 

 

唇を舐めると、汗の味がした。

身体の周囲に展開された随意領域(テリトリー)は、重力を始めとして、温度や湿度も思いのままにコントロールすることができる。

故に、わずかとはいえ発汗が認められるということは、そんな外敵条件以外の原因が考えられるということだった。

例を挙げるとするならば、過度の運動か、重度の疾患か___それとも、異様な緊張か。

 

「…………」

 

鳶一折紙は呼吸を整えるように唾液を飲み込むと、手にした高出力レイザーブレイド〈ノーペイン〉の柄をぐっと握り直した。

 

今折紙野華奢な肢体を包むのは、着慣れた高校の制服ではなく、着用型接続装置(ワイヤリングスーツ)戦術顕現装置(リアライザ)搭載ユニットだった。

現代の魔術師(ウィザード)が魔性の技を振るうために纏う、機械の鎧である。

これを身に纏い、随意領域(テリトリー)を展開させた魔術師(ウィザード)は、まさに超人といってもいい。

 

しかし今。超人であるはずの折紙が追い詰められてしまっていた。

 

折紙は障害物に身を隠したまま、脳内に指令を発した。

瞬間、折紙の周囲に展開された随意領域(テリトリー)内部の光が屈折し、折紙の視界から見ることができないはずの景色が網膜に映り込んでくる。

 

廃墟を模した特別演習場、その中心に髪を一つに結った少女が悠然と佇んでいた。

 

「___さ、あと一人です。どこからでもかかって来やがってください」

 

少女は、足元に倒れたAST隊員を一瞥もせず、そう言ってきた。

 

___崇宮(たかみや)真那(まな)

 

折紙は少女の名を心中で反芻しながら、その姿を改めて見直した。

 

年の頃は十四、十五と言ったところか。左目下の泣きぼくろに飾られた貌は、まだどこかあどけなさが見て取れた。

 

だがその小さな体軀を包むのは、少女にまるで似つかわしくない機械の鎧___CR-ユニットだった。

 

折紙たちのそれとは少し型の異なるワイヤリングスーツに、両肩には盾のような兵装。折紙たちの装備よりも一世代新しい試作機という話である。

 

だがその結果は___見ての通りだった。

 

つい先程、折紙の耳にAST隊員の悲鳴が響いてきた。これで九人目だ。

ここからは見えないが、周囲に広がった障害物の陰には、無力化された八人のAST隊員が倒れているはずである。

九名が既に無力化され、折紙もまた、近接用レイザーブレイド以外の装備を失っていた。

反して真那は、未だ傷一つ負っていない。

 

「……さぁ、このままでは時間切れになってしまいやがりますよ?」

 

真那がふうと息を吐きながら、敬語になりきっていない敬語で言ってくる。

 

このまま隠れていても仕方がない。折紙は身体を浮遊させ、真那の前に姿を現した。

 

「___お。ようやく腹が決まりやがりましたか?」

 

「…………」

 

折紙は脳内に指令を発し、背中のスラスターを駆動させた。

もとより折紙の手に残った武器は〈ノーペイン〉一つのみである。接近戦を仕掛ける以外に道は残されていない。身体を前傾させ、凄まじいスピードで空を駆ける。

 

「潔し。嫌いじゃねーです、そういうの」

 

真那は唇の端を上げると、肩のユニットを可変させ、両の腕に装着した。

 

「〈ムラクモ〉___双刃形態(ソードスタイル)

 

すると次の瞬間、盾の先端部から巨大な光の刃が姿を現す。

しかし、折紙は止まらなかった。

〈ノーペイン〉を振りかぶり、さらにスピードを上げる。

だが、このまま吶喊しても返り討ちに遭うことはわかりきっていた。

 

「___今」

 

故に、自分と真那の随意領域(テリトリー)が触れた瞬間、随意領域(テリトリー)を急速に収縮させる。

瞬間、随意領域(テリトリー)外に顔を出してしまったスラスターの後部が、本来の重量を取り戻す。

折紙はそれに合わせてワイヤリングスーツとスラスターの接続を解除すると、光の刃を消した〈ノーペイン〉の柄を抱き込むようにして身体を丸め、真那の脇をすり抜けた。

 

「なっ……?」

 

流石にこの行動は予想外だったのだろう、真那が目を丸くする。

 

「っ!あめーです……っ!」

 

しかし真那はすぐ落ち着きを取り戻すと、光の刃でスラスターを縦に両断した。

 

だが___それこそが折紙の狙いだった。

 

「___っ!」

 

〈ノーペイン〉の刃を再度出現させ、真那の背中に切っ先を向ける。

真那がスラスターの迎撃を気に取られている一瞬の隙を衝いた、必中の一撃である。

 

___しかし折紙の攻撃が真那に届くことはなかった。

 

「な……っ」

 

レイザーブレイドの切っ先が真那の装備に届いた瞬間、全体の体表を手の平でくまなく撫で回されているかのような感覚が生まれ___折紙の動きが止められていたのである。

 

「___ふぅ、危ねーです」

 

真那が首を回し、折紙に視線を送ってくる。

 

もしかしたら真那の反応速度であれば、スラスターを迎撃した次の瞬間に、折紙の対応することもできることは予想していなかったわけではなかった。

 

だがその上で、三十センチにまで凝縮した折紙の随意領域(テリトリー)であれば、その中で活動することが不可能ではないかと想定していたのだが……どうやらその予想は甘かったようだ。

 

「残念、詰み(チェック)です」

 

真那が身体をゆっくりと回転させ、折紙の肩口に光の刃を触れさせる。

その瞬間、頭上からブザーが鳴り響き、次いで、ヘッドセットから音声が聞こえてきた。

 

演習終了(セット)。崇宮真那三尉の勝利です』

 

 

 

 

「それじゃいってきます」

 

「いってらっしゃ~い、あ、士道は少し残ってちょうだい」

 

「へ?俺か?」

 

士道、オルガ、三日月が登校しようと五河家の玄関で準備をしていた時だった。

玄関から出ようとしたところ、士道が琴里に呼び止められる。

いつの間にか琴里のリボンも黒くなっており、司令官モードになっていた。

明らかに不機嫌そうな態度になって、腰に手を当てながら仁王立ちしていた。

これから士道が苦労させられることがなんとなく予想がついた。

 

「ええ。少し話したいことがあるの」

 

「すまん、二人とも先に行っててくれないか?」

 

「おう、んじゃ先に行ってるからな」

 

オルガと三日月は士道の言葉に甘えて家を出る。

瞬間、オルガの網膜を眩しい日差しが襲った。思わず顔を覆ってしまう。

 

「ん……」

 

今日は6月5日。もう梅雨に入っているはずなのに、何故かここ最近は快晴続きだった。

例年なら雲に遮られているはずの日光が激しく地面に照りつけ、気温を上昇させている。

 

「今日も暑いね」

 

「だな、動いてないのに暑いぜ……」

 

流石に暑さに耐えかねて、今のオルガたちの制服も夏服に移行していた。

 

と、そこで。

 

「……ん?ねぇ、オルガ」

 

「あ?どうした?ありゃあ……」

 

陽光の中、五河家の真ん中に立っていた人影を目にして、思わず目を開く。

そこにいたのは琴里と同年齢くらいの女の子だった。

薄手のワンピースを纏い、目元を覆い隠すかのように目深に白の麦わら帽子を被っている。帽子のつばの下から青い髪とサファイアの瞳が覗いていた。

そして左手にはコミカルな意匠のウサギの人形(パペット)が装着されていた。

 

「おお、四糸乃じゃねぇか」

 

そんな個性的な風貌をした少女の名を忘れられるわけが無い。オルガは四糸乃の元に歩み寄った。

 

『やっはー、士道くん、三日月くん。ひっさしぶりだねー!』

 

と、四糸乃の左手のパペット──よしのんが口をパクパクさせてくる。

 

「よう。よしのんも久しぶりだな」

 

小さく頷いて、パペットの方に返す。

 

「今日はどうしたんだよ。もう検査は終わったのか?」

 

『んー、検査自体は結構前に終わってたんだけどねー。ちょーっと練習をしてたのさー』

 

「練習って?」

 

オルガが言うと、『よしのん』が四糸乃の帽子のつばをくっと上げた。

 

「……っ」

 

四糸乃が、怯えるようにビクッと肩を揺らす。そして、こくんと唾液を飲み込む仕草を見せたあと、震える唇を開いた。

 

「お……っ、おはよう、ございます、オルガさん……っ!」

 

先月よりも少しだけはっきりした声音で、四糸乃が言ってくる。

 

「おお!?」

 

オルガは目を見開いて感嘆の声を上げた。

 

恥ずかしがり屋で人見知りな四糸乃は、対外的な反応をほとんど『よしのん』に任せ、自分ではあまり喋りたがらないのである。少なくともオルガは、四糸乃のこんなに大きな声を聞いたのは初めてだった。

 

「すごいじゃねぇか、四糸乃!」

 

オルガがそう言うと、四糸乃は帽子のつばを下げ、しかし口元をごもごと嬉しそうに動かした。

 

「四糸乃、こんなに話せるようになったんだ」

 

オルガの後ろから三日月が顔を出す。すると、四糸乃は三日月を見ると、恥ずかしそうに帽子で顔を隠してしまった。

 

「ぁ……っ、み、かづき……さんっ……」

 

「あっ、なんかごめん」

 

どうやらまだ他の人と会話をするのは、まだ恥ずかしいようだ。

そういえば、今の四糸乃の格好は最後に会った時と少し違うところがあった。

 

「四糸乃、今日は麦わら帽子なんだな」

 

「……っ、……は、はいっ」

 

四糸乃が一瞬『よしのん』の陰に隠れようとして踏み留まり、小さく頷いてくる。

 

「今日は……暑いからって、その、令音さんが……それで……」

 

「ああ、なるほどな。よく似合ってるよ。可愛いぞ」

 

「…………っ!」

 

オルガが言うと四糸乃はボンむ!と赤くして俯いてしまった。照れ屋なところはまだ直っていないようで、苦笑してしまった。

 

「──さてと、俺たちもそろそろ行くか」

 

「そうだね。そういえば士道はどうする?」

 

「あいつなら……まぁ大丈夫だろ。先に行っててくれとか言ってたし」

 

オルガがそう言うのとほぼ同時に、四糸乃がぺこりと頭を下げた。

 

「きょ……今日は、これで……失礼、します。いってらっしゃい……オルガさん、三日月さん」

 

「おう、また来いよ」

 

「うん、またね」

 

オルガと三日月が軽く手を振る。四糸乃はもう一度深くお辞儀をすると、とてとてと道の向こうに走っていった。

 

「んじゃ……行くか、ミカ」

 

オルガと三日月は、日の光で熱せられたアスファルトの道を歩き出した。

 

 

「おぉ!お前らやっと来たか。今日は随分と遅かったな」

 

「いや……ちょっと道中色々あってな……」

 

五河家から歩いて三〇分程の場所に来禅高校がある。

いつもなら八時頃には着くのだが、結局士道が学校に着いたのは、朝のホームルームが始まる一〇分前だった。心なしか士道の様子が家を出た時よりもへとへとになっていた。

 

「ところで……なんだよ、アレ」

 

「あー……まぁ一種の悪ノリみたいなもんだろ」

 

士道が黒板の方に目を向けると、相合い傘の落書きが描かれていた。しかも傘の下には『五河』『夜刀神』の文字があった。

 

「あー?なんだよいつもより遅いと思ったら十香ちゃんと一緒かよ。うーわ、うーわ」

 

落書きの近くに立っているクラスメートの殿町宏人がからかってくる。

彼の手にはチョークが握られていたため、十中八九彼があの落書きを描いたのだろう。

 

「小学生かよ」

 

はは……と、乾いた笑いを浮かべる。

 

「もうすぐホームルーム始まるんだから、時間まで消しといてよー」

 

「へーい」

 

三日月が注意すると、殿町は特段悪びれる様子もなく落書きを消した。

 

「む……むう、一緒に学校に来るのは駄目だったのか……?知らなかったぞ……」

 

十香からのピュアな視線を向けられ、流石の殿町も少し焦ってあたふたと手を振る。

 

「い、いやー、んなこたぁないの十香ちゃん?これはリア充爆発しろ的なアレというかー」

 

「……ったく何やってんだよ、殿町。あんま2人を困らせてんじゃねえよ」

 

「そ、そんなオルガ!お前は俺の味方じゃないのか!?」

 

オルガからの指摘を受けて、殿町は困惑の声を発する。

 

「十香が本気にしちまうだろ?というか俺がいつお前の味方だって言ったよ」

 

「お前忘れたのか!俺たちは先月、非モテ男子高校生同盟を結んだばっかだろ!」

 

「勝手に俺を変な同盟に入れんじゃねえ!」

 

殿町の言葉に思わず声を上げる。

──と。そこで、スピーカーからチャイムが鳴り響いた。

 

「お、ホームルームが始まるぞ。十香、ちゃんと席に着け」

 

「うむ」

 

士道から言われ、十香は大人しく席に着いた。

周囲に散らばっていたクラスメートたちも、次々と着席していく。

 

ほどなくして、教室の扉が開き、岡峰珠恵教諭ことタマちゃんが入ってきた。

 

「はい、おはよぉございます」

 

なんて、いつもの如くほわほわした挨拶を済ませると、タマちゃん教諭は出席簿を開こうし──その手を止めた。

 

「あ、いけない。今日はみんなにお知らせがあるんでした。ふふ、なんとねえ、このクラスに、転校生が来るのです!」

 

ビシッとポーズをつけながらタマちゃんが叫ぶ。すると教室中から『うおおおおおおおお!?』と地鳴りのような声が響いた。まあ、転校生といえば、学校の中でも大イベントの1つだ。実際、十香が来た時も、皆浮かれていた。

 

「…………ん?」

 

だが、オルガは首を捻った。

 

「(転校生といえば、十香が2ヶ月前にこのクラスに転校してきたばっかだろ。別にうちのクラスが他のクラスより人数が少ないって訳でもないだろ……?)」

 

「さ、入ってきてー」

 

ゆっくりと扉が開き、転校生が教室に入ってくる。

その姿を見た途端、オルガの思考は中断した。否、中断させられた。

 

「───────」

 

姿を現したのは、少女だった。この暑い中、冬服のブレザーをきっちりと着込み、足には黒いタイツを穿いている。そして漆黒の前髪で顔の左半分を隠しており、右目しか見取ることができなかった。

 

だが、それでもその少女が精霊の十香勝るとも劣らない魅力を持っていることは想像できた。

 

「ぁ───────」

 

思わず惚けた声が漏れる。だがそんな自覚は今のオルガには無かった。

時間が引き延ばされたような感覚、彼の視線は彼女に釘付けだった。

それほどまでに彼女の持つ妖艶な雰囲気にオルガの心は掴まれてしまっていた。

 

「さ、じゃあ自己紹介をお願いしますね」

 

「ええ」

 

タマちゃんに促され、黒板に『時崎狂三』と名を記す。

 

「時崎狂三と申しますわ」

 

そして、そのよく響く声で、少女──狂三はこう続けた。

 

 

 

()()()()───()()()()()()

 

 

 

「…………ッ!?」

 

その言葉を耳にした途端、オルガは我に返った。

ざわめく生徒たちの中で、士道達もオルガと同様の反応を示している。

 

狂三はそれに気づいたのか、心なしかオルガの方を見て微笑んだような気がした。

 

「…………」

 

「え……ええと……はい!とっても個性的な自己紹介でしたね!」

 

狂三がもう言葉を継がないことを察してのことだろう、タマちゃんが手を叩いて話が終了したことを示す。

 

「それじゃあ時崎さん、空いてる席にすわってくれますか?」

 

「ええ。でも、その前に、1つお願いがあるのですけれど」

 

「ん?なんですか?」

 

「わたくし、転校してきたばかりでこの学校のことがよくわかりませんの。放課後にでも構いませんから、誰かに案内していただきたいのですけれど」

 

「あ、なるほど。そうですねえ……じゃあクラス委員の───」

 

だが狂三は、先生の言葉の途中で前方に歩き出すと、オルガの席の真ん前までやってきた。

 

「ねえ──お願いできませんこと?オルガさん」

 

「へ……?」

 

オルガは予想外の事態に、目を点にして呆然と声を発した。

 

「お、俺か……?というかアンタ、なんで俺の名前を──」

 

「駄目ですの……?」

 

狂三が、さも悲しそうな、断られたら泣いてしまいますわ、みたいな顔を作る。

 

「い、いや、別にそういうわけじゃ……」

 

「じゃあ決まりですわね。よろしくお願いしますわ、オルガさん」

 

狂三はニコリと微笑むとらポカンとしたクラスメートの視線の中、軽やかな足取りで指定された席に歩いていった。

 




2年近く投稿すっぽかしてる間にとうとう5期始まっちゃいましたね……。アニメのおかげで執筆のモチベが上がった単純な男です。なるべくモチベが高まってるこの調子で次の話も進めていきたいな……。
ただ新生活が始まったというのも相まって、まだ慣れてないので、次回の投稿が先になるかもしれませんが、そこはご了承ください……。


それではここまで読んでくださりありがとうございました!
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