‐side 士道
いつも通りの日常を過ぎて、もう既に時刻は午後の八時。俺は食器を洗っていた。リビングには妹の琴里がソファに座ってバラエティー番組を見ていた。
「ねぇ士道」
「なんだ? 琴里」
「ひま!」
「そう言われましても」
黒いリボンの時の琴里は少し扱い辛い。所謂ツンデレというやつなんだが、ツンが長いこと長いこと。
と、その時。
「!?」
けたたましいサイレンが街中に鳴り響く。空間震警報だ。
精霊が現界する際に発生する空間震という名の通り空間の地震だ。これが鳴ったということは・・・
「仕事よ。士道」
「あぁ、わかってる」
俺たち<ラタトクス>の仕事、精霊をデレさせて助けるという仕事が始まったということだ。
現場は歩いた方が早いということで急ぎ足で指定された場所まで向かう。
そこには抉れた地面が広がっていた。精霊が現界した際に見るのだから、自然と俺はその光景をよく見ることになったが、これだけはどれだけ見ても慣れそうにない。
スプーンでアイスを掬ったかのようになった地面の中央にそれはいた。
深海のような青色の長い髪が闇の中でもよく見える。背丈は俺と同じくらいだろうか。
と、冷静に状況を判断していたら、ギラリと闇夜に刃が光った。それも目の前で。
数瞬の後、それが俺の首筋に突きつけられた刀だということが分かった。先ほどまで目下にいた少女が一瞬にして抜刀をし、俺の元まで移動してきていた。
「何者だ・・・?」
「お、落ち着いてくれ。俺は敵じゃない。俺は五河士道。お前の仲間だ」
「仲間? そんなものは要らない」
少女が納刀をし、目線を上空へやる。
近くで見てようやっと分かったが、彼女は侍のような黒い袴を着こんでおり、闇夜によく紛れている。
「貴様に構ってやる時間もなさそうだ。」
彼女の目線に促されて上空を見やる。するとそこには、ASTがこちらへ向けて銃口を構えていた。
「撃て!」
「どいてろ」
暗がりで俺のことが見えていないのか、それとももう既にお構いなしなのか、ASTは躊躇いなく引き金を引いた。
ドスの利いた精霊の声に気圧され、数歩退く。
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キラリと一瞬何かが光った。途端、パラパラと地面に弾丸が散乱、落下した。その一つを拾ってみると、真っ二つに綺麗に両断されていた。
アニメでよく見る斬撃を飛ばしたのだろうか。そうでなければ説明がつかない。
途端、精霊の持っていた刀が白い羽に覆われる。
「<
白い羽が地に落ちた後に姿を現したのは刀ではなく槍。それを持って宙へと舞う。
少しすると、上空からASTらしき人物が力なく落ちてきた。
暫くして、少女が空からふわりと降りてきた。
「何だ。まだいたのか?」
「あ、あぁ。お前のことを知りたくてな」
「…なんだ?口説いているのか?」
「そ、そうなるな」
俺は少し恐怖していた。果たしてこの少女は救えるのか?と。救うべきなのか、と。
槍の刃が赤く染まっていたのだ。現状を見るに人の血で間違いないだろう。躊躇いなく人を殺さんとする人間は果たして…。
「貴様はよく分からんな」
「は、ははは…」
『士道。相手がどれだけ怖くても面に出しちゃダメよ。それに、どんな精霊でも救うって決めたはずでしょ』
俺と同じ事を考えていたのだろうか。琴里からお叱りを受けてしまった。
「貴様。私を人殺しと同等だと思ってないか?」
「え? あ、いや…」
「一応致命傷は避けてやっている。失礼な勘違いはされたくないのでな」
「そうか。やさし…」
「優しいとは思うなよ」
「え、ダメなのか?」
「駄目だ。優しいはよく分からんが…少なくとも私に向けられるべき言葉じゃない」
少女が槍を手放す。それはすぐさま羽根の塊となって散った。
「じゃぁな。貴様とはどこかでまた会いそうだ。私としては無いことを望むがな」
「待ってくれ!」
言うよりも早く、少女は羽根となって消えてしまった。
「…大失敗、だな」
『士道が気圧されてたせいでしょ…でもまぁ、少なくとも敵対はされなくなったみたいね』
「だといいな」
どうもお久しぶりです事の葉です。
いやー、久しぶりでなかなか筆が進まないこと進まないこと。語彙力って劣るものなんですね。
というのも、病気を発症したりなんだりと色々ありまして、書く余裕が無かった訳です。言い訳になるようで申し訳ありませんが、これからゆっくりと復帰していこうと思いますので、気長にお待ちいただけると幸いです。