ほら、おまいら喜べ。プリコネの二次小説だぞ   作:憩 恋子

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第1章 謎の少女と記憶の鍵
第1話 ドジっ子メイドからの依頼


 僕達がランドソルで生活を始めてから、一ヶ月ほどが経過した。

 そんな、ある日のことである。

 原作ならそろそろコッコロちゃんが路銀が尽きたので働きに出たいと言い出す頃、僕に許可を求めてくる場面に入るだろう。

 そんなことを考えていると、コッコロちゃんがトコトコと僕に近づいてきた。その足取りは普段より僅かに鈍い。

 

「主さま、たいへん申し上げにくいのですが……もう、お金がございません」

 

 ほらきた。

 コッコロちゃんの眉が申し訳なさそうに下がる。

 

「故郷を出立する際に、長老より路銀を頂戴したのですが。さすがに、底をついてしまいました。ランドソルは都会でございますしね、物価が高いのです。それでも何とかやりくりして、安宿を探したり、自前で食材を調達したり……。がんばって、節約しておりましたけれど。もうお財布が空っぽでございます」

 

 くくっ、ありがとう村長。あなたがくれたお金のおかげで、無事幼女と一ヶ月間同じ部屋で寝ることが出来ました(ゲス顔)。

 それはそれとして、僕の財布は潤いに潤っている。しかし、それをコッコロちゃんは知らない。

 それはなぜか。もちろん僕がコッコロちゃんに内緒で様々なバイトをしていたからだ。

 僕だってこの一ヶ月間、漫然と過ごしていたわけじゃない。

 知り合いの網を全力で広げたり、報酬は良いが少し危険なバイトをしたり。

 特に頑張ったのは、僕自身を鍛えることだった。

 この世界は凄い。鍛えた分だけ強くなるんだ。努力が必ず身を結ぶ素晴らしい世界だ。それを知ってしまうと、つい限界を超えた努力ってしてみたくなっちゃうよね?

 などと自問していると、コッコロちゃんがずいっと顔を寄せてきた。

 はわわっ、近いのです!

 

「なので、主さま……わたくし、働きに出ても宜しいでしょうか?」

 

 お父さんはそんなこと許さないぞ! いや、でも原作準拠じゃないと僕が対応(ry

 

「なるべく、主さまのもとを離れて行動したくはございませんが。わたくし、お仕事を探して……賃金を頂戴し、生活費にあてたいと考えているのです。主さまはごゆるりと……お心のままに、そのへんで遊ぶなり、美味しいものを食べるなりしてくださいまし」

 

 それ完全にヒモじゃん! なにそれやったぜ。

 そんでもってコッコロちゃんの言葉に若干の棘がある気がするのは気のせいだよね?

 そのへんで遊ぶなり、美味しいものを食べるなりって言葉が僕の胸を刺すんだ。……はっ、これが幼女に養ってもらうという罪悪感か⁉︎

 僕が心を蝕む罪悪感と葛藤(興奮?)していると、コッコロちゃんが僕の手を握って何かを渡してくれた。

 

「これは、本日のお小遣いでございます。どうぞ♪」

 

 ……ハハッ、やったぜ。

 やっぱりまだ罪悪感では興奮出来そうにないや。

 

「それでは、失礼いたします。夕刻には、宿に戻りますので」

 

 ……行っちゃ、ダメだ。僕は幼女に養われたいと常日頃から考えていたが、それはあくまでも裕福な幼女にのみ限る。

 僕は金が無いからと幼女を働かせるほど、まだ落ちぶれちゃいない。

 

「……如何いたしました、主さま? 顔色が、優れないようでございますね。慣れない環境でしょうし、体調を崩されたのでしょうか。心配です……それとも、お小遣いが足りませんでしたか?」

 

 違う。違うんだ。

 別にお小遣いなんて必要ないんだよ。僕の貯金を切り崩せば、もう一、二ヶ月は遊んで暮らせるだろう。

 僕は君に養ってもらいたいが、苦労してほしいわけじゃない。

 ダメな僕を、しょうがないなぁって目線で甘やかしてほしいだけなんだ。

 そんな心の叫びなどコッコロちゃんには届かず、終いにはまた眉を下げてしまった。

 

「すみません。先ほど渡したのが、残りの手持ちのお金のすべてなのです。う〜む……仕方ありません。わたくしの装飾品などを売って、お金に換えてきますね?」

 

 待ってッ!

 ——瞬間、僕は馬鹿みたいに上げてしまった身体能力を駆使して、風のような速さで抱き寄せた。

 小さくて柔らかい身体を力いっぱい、とまではいかないけど少々力を込めて抱き締める。

 たぶん僕が本気で抱き締めたら、コッコロの内臓やら骨やらが、それはもうぐちゃぐちゃになりかねないからね。

 

「……うにゅっ⁉︎」

 

 コッコロちゃんが腕の中で変な声をあげた。

 

「主さま。急に抱き寄せられては困ります、公衆の面前でございますから。如何しましたか、わたくしが傍にいないと心細いのでしょうか?」

 

 そんなん当たり前やろ!

 コッコロちゃんに内緒でバイトに行く時なんか、傍らにコッコロちゃんがいないと実感しただけで過呼吸になりかけたわ!

 

「ふむ……主さまも働きたい、と?」

 

 僕は一度、首を縦に振った。

 

「労働などの苦役はすべて、わたくしが担いたいのですけれど。ひとに働かせて自分だけ遊ぶのも、罪悪感がございますか?」

 

 僕はもう一度、力強く首を振った。……もちろん縦だからね? このシリアスなシーンでバカ真面目(褒め言葉)なコッコロちゃんに冗談かますとか、僕のガラスハートにガラス以上の強度を求められても無理だお。

 

「それが主さまのお気持ちでしたら、わたくしは尊重いたします。ふふ、主さまはお優しいかた……♪」

 

 ぐふぅっ! 僕は優しくないんだよぉ! 金を持ってるのに自分のためにコッコロちゃんには言い出せないクソ野郎なんだ! もう罵ってくれた方がマシだぁ! むしろ早く罵って! 再起不能になるくらい扱き下ろしてぇ!

 

「ふたりで稼いだほうが、効率的でございますしね。では、そうしましょうか」

 

 コッコロちゃんは周りを見渡し、

 

「えぇっと……この広場に、求人情報などが貼りだされた掲示板があるはずでございます。その掲示板にて、わたくし良い感じのお仕事を探そうかと考えております。そんな方向で、主さまも構いませんでしょうか?」

 

 もうなんでもええで。あの掲示板、広場にあるだけあって仕事関係で犯罪に巻き込まれることは少ないから信用できるんだよね(経験者談)。

 

「では、早速……あぁ、あれです。あちらが、件の掲示板でございますね」

 

 コッコロちゃんのお尻を眺めながら、掲示板まで歩いていく。

 今日もまた、掲示板の前は大勢の求職者で賑わっていた。

 若いエルフの兄ちゃんや杖を持った獣人族の少女……あっ、この人知ってるぞ!

 確か名前は……なんだっけ?

 ア、ア、ア…………アユナ? アサミ? サユリ?

 すまん、絆ランク上げたのに忘れたわ。ホントすんまそん。

 心の中でアユミに恒例のアレをやっていた時、無意識に、本当に意図せず掲示板の前で顔を上げると、脚立に上って作業をするメイドのスカートの中がバッチリ見えた。

 

 

「ぃよっ、おぉっと」

 

 見るからに危なっかしい。そもそも脚立の上で爪先立ち&両手が塞がってるとか頭が狂ってるとしか言いようがない。この人、実は少しの恐怖も感じないやべーやつなのかも知れない。

 

「うわっ、ひえぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」

 

 ——遥か太古、地上に君臨していた王者の恐竜達は、宇宙より飛来した隕石で絶滅したという説がある。

 そして今、時代は変わり、人間が地球に君臨していると言っても過言ではない今日。

 僕という存在は、滅びを向かえるようだ。

 つまり何が言いたいかと申しますと——メイドさんの尻という名の隕石が僕の顔に降ってきた。

 これに対して僕は、クンカクンカも辞さない構えである。

 ゴスっと鈍い音が響いた。僕が広場の石畳に後頭部を強打した音だ。

 もちろんこれくらいじゃ痛くも痒くもない。それにこの程度なら、魔物の角が腹に刺さった時の方がよっぽど痛かった。

 もちろん服と腹に穴が空いてたから、コッコロちゃんにバレないようにするのが大変だったけども。

 

「いっ、痛てて……」

「だ、大丈夫でございますか……? かなり派手に、転倒したようですが……?」

 

 くっ、なんていい匂いなんだ! なんか、こう、女性特有の匂いが、しかもフニフニと柔らかくて、あああ(童貞の雄叫び)。

 

「あ痛たた……わっ、ごめんなさい! 大丈夫です、ご心配なくっ♪ えへへ……張り紙をしようとして踏み台の上で背伸びしてたら、うっかりバランスを崩しちゃいました! 駄目ですね〜スズメったらドジで♪」

 

 と、彼女——スズメは僕の顔から胸辺りに少し移動した。

 

「……すずめ?」

「あやっ? これはこれは、ユウキさん! ご無沙汰しております! 何だが、恥ずかしいところを見られちゃいましたね?」

 

 大丈夫だよ、スズメ。恥ずかしいところは見たんじゃなくて、触覚嗅覚味覚で堪能したから。

 ——僕とスズメは、知り合いである。もちろんそれは、僕が狙って交友を持ち、弛まぬ努力をしたからだ。

 可愛い女の子と仲良くなるの最高なんだが。

 

「……主さま。お知りあいのかたでございますか?」

「あっ、はい! ユウキさんには、以前ちょっぴり親切にしていただいたんですよ♪ こちらの子は……えぇっと、ユウキさんの妹さんでしょうか?」

 

 僕の娘兼本妻ですが、何か? とは口に出さない。

 

「やだ〜かわいいですね♪ お嬢ちゃん、おいくつ? 今日は、お兄ちゃんとデートですか?」

 

 もちろん求職という名のデートです。

 

「えぇっと、妹ではございません……主さまにお仕えしている、コッコロと申します」

 

 ……デートは否定しないんですね。つまり、ラブ的な意味で両想いな可能性が微レ存……?

 

「そうですか! では、私と同じような感じなんですねっ?」

 

 ドジっ子メイドなスズメと一緒にするな。うちのコッコロちゃんはな、1日に二桁枚数の皿を割ったりしないんだぞ!

 

「同じ、というと? えぇっとスズメさまも、主さまにお仕えを……?」

 

 は? キレそう。何それ最高じゃん。僕が知らない間にスズメは僕に仕えてたの? 

 

「いやあの、ちがうんです! ごめんなさい、説明が下手で! えっと、私はご覧のとおりのしがないメイドなんですけどね? とある高貴なかたに、お仕えしてるんです♪」

 

 コッコロちゃんその高貴な方な、ワイの知り合いやでと無言でドヤ顔をしてみるが、こちらに見向きもしなかった。無言なんだから、そりゃそうだ。

 

「今もお嬢さま……そのかたのお遣いで、お仕事を手伝ってくれるひとを探してたんですよ。見てくださいこれ、がんばってつくった求人の張り紙っ♪」

 

 スズメが広げた大きな紙を見ると、確かに手抜きは認められなかった。僕なら絶対手抜きで何回もやり直しさせられちゃうね。

 僕は張り紙の出来栄えしか見ていなかったが、コッコロちゃんは内容を吟味していたようだ。

 

「ふむ……引っ越しのお手伝い、ですか。荷物の梱包と、できればそれを運搬する馬車の護衛も? 簡単なお仕事ですけれど、かなり破格の報酬でございますね?」

 

 コッコロが訊ねると、スズメは「えへん」と胸を張った。

 

「うちのお嬢さまは基本的にドケチ……いえ倹約家なんですが、お金を使うべきときには大盤振る舞いしがちなんです♪」

 

 まぁ、お金を払って大切なものが護れるなら、僕だって喜んで払うと思う。

 

「ユウキさんたち、この掲示板に用があったんですよね。職探しをしているなら……よろしければ、このお仕事を請けていただけませんか? ご都合があえばって感じですけど。ぜんぜん知らないひとよりは、面識のあるひとに頼んだほうが安心ですから♪」

 

「ふ〜む……渡りに船ではありますし、かなり条件もいいのでお引き受けしても宜しいのですけれど。わたくしの一存では決められません。どうしますか、主さま?」

 

 うーむ、ここは確かどいて的なニュアンスの言葉を発するはずなんだが……スズメの柔らかいお尻を上半身で堪能していたい。

 僕は泣く泣くどいてと言った。

 それを聞いたコッコロちゃんは首を傾げた。

 

「え? どういうことでしょう? あぁ……先ほどスズメさまが転んだ拍子に、主さまに馬乗りになってらっしゃいますね?」

「ひあっ? ごごご、ごめんなさいごめんなさい! 私ったら、ほんとにうっかりばっかりで! ユウキさんに跨ったまま、呑気に世間話なんかしちゃってましたね! ししし、失礼しました〜! すぐにどきます……あわわっ、んひゃあうん⁉︎」

 

 スズメがまた、ボスンと僕のほうへ倒れてきた。

 

「おぉ、慌てたせいでバランスを崩してまた転びましたね。もはや馬乗りどころか、主さまと絡みあって寝そべっている感じに」

 

 実況のコッコロさん、浮気じゃないんですけどスズメさんを抱きしめてもよかですか?

 

「えぇ〜っと……ほ、ほんとうにドジなかたなのですね。これでは荷運びなどには苦労するでしょうし、たしかにお手伝いが必要かもしれません」

 

 ……そもそも生きるのに苦労するレベルだよね、これ?

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