ちょっと冬眠してました。
追記。
オクトーの部分を恐らく半分以上オットーと表記していました。いやオットーってリゼロやないかーいッ!と突っ込んでくれた読者ニキには大変感謝です。
「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ〜♪」
僕達は今、空き箱を積んだ幌馬車の荷台で昼食を食べていた。
御者の男性が馬車を操縦しているので、僕達はやることがない。
「えへへ。移動しながらの食事になっちゃってすみません、馬車の手配に時間がかかってしまって……。バタバタと、出発するしかなかったんです」
スズメがぺこりと頭を下げた。
「近ごろ、このへんは物騒ですから。一時的に余所の町に疎開するひとがいたりとかで、なかなか馬車が調達できませんでした。駄目ですね〜段取りが悪くて……。お嬢さまにもいつも叱られるんです、『ちゃんと準備万端、整えてから動きなさい』って」
僕も学生の頃は、準備が悪いって母さんによく叱られたなぁ。
まあ、僕より弟の方がダメ人間だったけどね。
「ふむ……引っ越しをするということですし、馬車は必要です。わたくしたちは暇ですので、時間がかかってもさほど迷惑ではございませんし」
金は無いが暇は売るほどあるってやつだ。それに、可愛い女の子との旅って魅力的だよね。
「あはは。ご不便をかけるぶん、今回のお仕事が終わるまでの衣食住は保証しますので。たっぷり、召し上がってくださいね〜♪ さぁどうぞ、ご遠慮なく。早起きしてつくったんです、サンドイッチとか♪」
「恐縮です。すみません、ご相伴にあずかってしまって。わたくしたち、手持ちのルビが尽きかけておりまして……その日の食事にも、事欠く有様なのでございます」
「うんうん。だから、お仕事を探してたんですもんね? 駄目ですよ〜ユウキさん。お兄ちゃんなんですから、しっかりしないと。妹ちゃんにきちんと食べさせてあげるのは、お兄ちゃんの義務ですよ?」
スズメが若干責めるような口調で僕に言った。
ううっ、すまねぇコッコロちゃんっ! 僕のせいでっ!
「いえ、あの。ですから、わたくしは主さまの妹ではございません」
うんうん、ガイド役で娘で本妻だもんね。凄いラインナップだよ。
ふっ、そこにママを追加してもええんやで?(謎のドヤ顔)
「……む、むぐっ? このサンドイッチ、何やら独特な味わいですね?」
「あっ、すみません! 私ったらメイドなのに料理が得意じゃなくてっ、お口にあいませんでしたか?」
「いえ。わたくしが、この地方の味付けに慣れていないだけでしょう」
料理が得意じゃなくても大丈夫やで、スズメさん。僕なんか日頃の感謝を込めてコッコロちゃんに手料理を振る舞おうかと思ったけど、食材が未知すぎて断念した男だからね。蠢く魔物肉怖い。
「もぐもぐ♪ 主さまは、パクパク召し上がっておりますし」
違う、違うんだコッコロちゃん。僕はどんなにゲロマズで食用に適さない料理だろうと、出された物は必ず笑顔で完食することを徹底しているだけなんだ。だってわざと不味い料理を作る人なんて滅多にいないんだよ。つまり、食べる人を想ってつくった料理を残すなんて作った人にとても失礼なんだ。
……それがどんなにゲロマズであっても。
「お、おいしくなかったら無理して食べなくていいんですよ? ただ目的地のお屋敷までは半日ほどかかりますので、何か胃に詰めておいたほうがいいんですけどね?」
つまり無理してでも食べておけということですねわかります。
「あっ、そうです! 料理がおいしくなる、おまじないがあるんですよ〜♪」
スズメはニコニコ笑顔で広げられたサンドイッチに顔を向けた。
「両手で、ハートマークをつくって……えぇいっ、おいしくなぁれ☆」
「……それは、何かの魔法とかでございますか?」
コッコロちゃんが困惑した表情でスズメの奇行を見ていた。
「いえ、単なるおまじないです。気休め程度には、おいしくなるはずです♪」
「はぁ、気休め程度でございますか……」
コッコロちゃんはあまり納得していない様子だった。しょうがないから、今度の休みにおすすめのメイド喫茶にでも連れて行ってあげるとしよう。
「おや、わたくしの食べかけのサンドイッチがありませんね。主さま、食べちゃったんですか?」
「ユウキさん。たくさんサンドイッチはあるんですから、横取りしちゃ駄目ですよ?」
そんなの酷いっ、冤罪だ! あんまりだァ!
僕だってコッコロちゃんがいない間に彼女の下着をクンカクンカスーハースーハーすることはあっても絶対に盗みはしないんだ!
僕が使用した(意味深)コッコロちゃんの下着は、宿の裏にある井戸で水を汲んでちょっと高価な匂い付き石鹸で手洗いしてるから不快感は一切無いはずだヨ!
つまり僕はコッコロちゃんの食べかけサンドイッチを食べてない。
「何のことかわからない」
僕ははっきりとした口調で拒否した。
「あれっ、ユウキさんが食べたんじゃないんですか? ということは、私のおまじないに破壊光線っぽい威力があって、サンドイッチを消し飛ばしちゃったとか?」
何それ怖い! それを戦闘で使えるようになってよ! 家事で火事を起こすんじゃなくてさ(激寒ギャグ)。
「もぐっ、もぐっ」
「……んん? おやっ? 女の子がいますよ? 手を伸ばして、サンドイッチを掠め取ったっぽいですが……」
ほら、やっぱり僕じゃなかったやんけ! どう落とし前つけるんじゃい!
——可愛いから許す!
「あのう〜……? もしも〜し、どちらさまでしょう?」
「むぐっ⁉︎ ごほっ、げほごほっ!」
木箱の中からこっそりと僕達の昼食を盗んでいた少女がむせた。
「どうしました? 空き箱のなかに……密航者でも、いたのですか?」
「密航者というか、無賃乗車というか……う〜んと、困りましたね? どうしましょう……馬車を借りる際に交わした契約上、事前に申告した以上の人数を乗せたら駄目なんです。割増料金、取られちゃいます」
割増料金程度ならワイが払ったろやないかい。
お金を払うことによって可愛い女の子と話せる…………ここがキャバクラ?
「でも、ちっちゃい子みたいですし。お外に放り出すのも、可哀想ですよね。えぇっと、お嬢ちゃん? そこで、何してるんですか?」
「ち、ちっちゃくない! アタシは、ちっちゃくないぞ⁉︎」
「ちっちゃいですけど……えっと、無賃乗車はいけませんよ。悪いようにはしませんから、事情を話していただけます?」
スズメが優しく問いかけた。ちっちゃい少女はちっちゃいことを否定するように立ち上がってぶんぶんと腕を振っていた。
僕はうーんと首を傾げる。
「家出とかですかね、アヤネちゃんと同じような……こんな、ちっちゃい子が一人旅ってわけでもないでしょうし。う〜ん、どうしましょ?」
「だ、だから! ちっちゃいって言うなよ〜っ⁉︎ ……んんっ? あっ、オマエ! 知ってるぞ? 前に会ったことがある!」
「ふぇ、スズメとですか? えぇっと……【サレンディア救護院】の子供じゃないですよね、あなた? あのう、どなたかと間違えているのでは?」
「そう、スズメ! そんな名前だった! ここで会ったが、百年目……! おい! オマエは、アタシのことを覚えてるかっ⁉︎」
「え、えぇ〜っと……?」
全く記憶に無いのかスズメが頭を抱えた。それを見た少女はスズメの肩をガシッと掴んでぐわんぐわんと揺らす。
「ひゃわわっ、揺さぶらないでください! あんまり暴れちゃ駄目ですっ、馬車が横転しちゃいますよ⁉︎」
「んん? おい、おいおいおいっ?」
少女は揺さぶられて目を回したスズメを捨てて、今度は僕に近寄ってきた——って、顔が近いっ⁉︎ そんなに近づくと惚れるよ、僕が!
「嘘だろっ、オマエ! オマエだよ、何でこんなところにいるんだっ? ぜんぜん姿を見かけなかったから、心配したんだぞ〜っ⁉︎」
少女が笑顔でバシバシと僕の肩を叩く。ちなみに、僕は知り合いではないので、一応確認しておく。
「……『オマエ』って、僕のこと?」
「ふむ? 主さまとお知りあいなのですか、あなた? 主さまは、なぜか女の子のお知りあいがおおいようですね……?」
ち、違うよコッコロちゃん! 浮気じゃないんだ! より良い生活を享受する為に数多の女の子と仲良くしているだけで………………あれ、僕ってもしかしてクズ?
「どけっ、オマエは知らん! 邪魔だ!」
少女がコッコロちゃんを押し退けた。おまっ、コッコロちゃんになんてことを。許さんぞ!
——可愛いから許す(二度目)!
「それより、オマエだよ! どこで何してたんだ、これまで? 会いたかったぞ〜プリンセスナイト……!」
プリンセスナイト? 知らない子ですね……。
すまそん、前作未プレイ勢をイジメるのはやめちくり〜。ついでに、君がガチャでピックアップ来た時、過去に類を見ないレベルで大爆死したからまだゲットできてないんよ。だから、絆ランクもクソもない。
おうおう、無課金勢舐めんな! 運の悪さには定評のあるぽこちんハメ太郎さんやで!
「【プリンセスナイト】? あなた、【プリンセスナイト】の関係者なんですか? 私も【プリンセスナイト】の傘下ギルド、【サレンディア救護院】に所属しているんですけど……? えっと、それ関係でどこかでお会いしたとかですか?」
「違う! プリンセスナイトはギルド名じゃない! どっかで変なこじつけが行われたんだ! そうじゃない、プリンセスナイトっていうのは……」
少女があっと漏らし、周囲を警戒してまずいと呟く。ヤメロォ、スズメのサンドイッチの悪口はそこまでだ!(違う)
「この嫌な感じ……お前ら、今すぐこの馬車から飛び降りろ!」
「えぇっ?」
「死ぬぞ!」
「ふえぇぇっ⁉︎ な、なんなんですかぁ⁉︎ も、もうスズメには何がなんだか分かりませんよぉ!」
あっ、そういやこの後、僕たちの乗ってる馬車が石みたいな物体を踏んだら魔法が発動して盛大に爆破されるんだっけ…………いや、死ぬゥ!
暢気に走る馬車を止めるべく、御者のおじさんの肩を叩く。
「おじさん、馬車を止めて」
「こ、こんな場所でですかい……?」
「うん、こんな場所で」
「そりゃちょっと難しいでさあ————ヒィッ⁉︎」
「主さまっ⁉︎」
馬車を止めることに否定的なおじさんの首元へ腰に下げていた剣の刃を添える。
「これでも僕の言うこと聞いてくれない?」
「わ、分かりやした! 今すぐ止めます!」
間一髪、魔法が仕込まれた何かを踏む前に馬車を止めることができたので、僕は荷台から飛び降りて御者のおじさんに馬車を下がらせてから危険物の近くへ向かう。途中、コッコロちゃん達がついて来ようとしていたので荷台に留まるように言い聞かせておくのも忘れない。
原作ではオクトーがこの石っぽい何かに魔法を仕込んでいて、馬車が踏むと爆発する仕掛けになっていたと思う。そのシーンを観て最初に考えたのは「使う為に運んでいた空き箱がもれなく吹っ飛んどるやんけ」だったので、僕はそれを阻止する為に今回の行動に出たのだ。知ってるか? 空き箱だってただじゃねえんだぞ!
……あとオクトーが悔しがってる顔を見たかった。それだけである。イケメンは僕の前から失せろ!
僕は爆発物を眼下に見据え、右手に持っていた剣を勢いよく振り下ろす。直前に遠くの方から僕の名を叫ぶ少女の声が聴こえた気もする。
——衝撃とともに魔法が発動。オレンジ色の魔法陣が展開され、とてつもない破壊力を以て至近距離に居た僕を吹き飛ばした。
……もちろんノーダメージだ。爆発に紛れて超高速で移動し、崖の上でこちらを窺っていた二人の背後へ回り込んでみた。背後へ回り込んだはいいものの、まさか二人以外に【
「あれあれ〜、まさかムイミちゃんが無傷だなんて予想も出来なかったよ」
「なんで止めんだよッ、オクトー先輩‼︎」
「だって盗聴魔法で聞いてたかぎり、ムイミちゃんと知り合いっぽかったじゃん? 疑わしきは罰せよってよく言うでしょ〜?」
「うっせえ! あいつはッ、ユウキは絶対に無関係だッ! 先輩が止めさえしなけりゃ助けられたかもしれないってのに‼︎」
僕の死を悔やむマコトちゃん。うんうん、親しい人が死ぬって悲しいよね。君もそう思うでしょ? と、僕は近くのモブ少女へ問いかけた。
「わ、わたしに言ってるんですか? 確かに仲の良い人が死んじゃったら、わたしなら泣いちゃうと思います……。しかもわたしのせいだなんてなったら立ち直れる気がしません……」
「だよね、だから僕は死ねないんだよ」
「はい、わたしも——ふぇっ⁉︎ あ、あなたどうして生きてるんですかぁ⁉︎」
「言葉選びが酷すぎるゥ!」
モブ少女とコント紛いのやりとりをしていると、わなわなと震えるマコトちゃんと目が合った。
「ぉ、おいユウキ! 生きてたのか⁉︎」
「いやいや、どうやってあの爆発から逃げ果せたんだい?」
「早く動いて避けた」
「えぇ……そんなのあり? そんなことが出来たら本当に化け物だって〜。嘘はダメだよ、嘘は」
「嘘だとかどうでもいい! ユウキが生きてて良かった!」
そう言って笑顔で僕の背中をバシバシ叩いて喜ぶマコトちゃんをスルーして、目の前でこちらを観察しているオクトーに切っ先を向ける。
「そんな危ないモノを僕に向けないでよ〜。ボクはご覧のとおりの、頭脳労働専門で〜」
「ていっ」
「うぎゃあっ!」
「オクトー先輩ッ⁉︎」
オクトーの頭を剣の腹で軽く殴って黙らせ、マコトちゃんに押しつける。次は眼下に停車している馬車へ向かうために崖から飛び降りる。
最速で向かってみれば、すでに我が妹(血縁関係無し)と我が姉(血縁関係無し)属するギルド【ラビリンス】が少女——ノウェムちゃん達と戦闘を繰り広げていた。
ていうか、爆破を阻止したのに戦闘で馬車がボロボロやんけ! 馬も御者のおじさんも完全に怯えて今すぐには使い物にならんし!
原作と違って爆破によるダメージが無いノウェムちゃんは結構派手に抵抗しているようだ。
「主さまっ!」
コッコロたんが僕を見て叫ぶ。それに我が姉妹(血縁関係無し)が反応した。
「あっ、弟くーん‼︎ お姉ちゃんだよーっ!」
「お兄ちゃ〜ん‼︎」
我が姉は手を振りながらもノウェムちゃんの首に手刀を打ち込んで見事に気絶させ、それを援護していた我が妹も全身を使って喜びを表現していた。
「ノウェムちゃんを連れて早く行って」
「う〜ん、なんで弟くんがノウェムを引き渡してくれるのかは知らないけど、都合が良いから今は聞かないでおくね♪」
「さっすがはお兄ちゃん! 私たち秘密結社【ラビリンス】の目的を知っているだなんて天帝ですね!」
なんと僕は天帝だった……?
「リノちゃん、それを言うなら天才だよっ。あと、何度も言うけど、堂々と名乗るのも内緒にしとくべき目的を大きな声で喋っちゃうのも駄目だと思う……ぞっ☆」
「ひぎゃあ⁉︎ もう頭突きは勘弁してください! 頭が凹んじゃいますよぉ〜!」
ソニックブームが発生するような頭突きを食らってその程度で済むなんて頭おかしいよ……(褒めてない)。たぶん僕だってちょっと無視出来ないようなダメージ受けるからね⁉︎
「……あの方たちともお知り合いなのですね、主さま? 何というか、全世界の人類すべてと面識があるような勢いですね?」
コッコロたんが僕だけに聞こえるようにボソリと呟いた。
そんなジト目で見ないで! 興奮しちゃう! いや、やっぱりもっと見て!
「それじゃあ目的も達成したことだし、お姉ちゃんたちは撤退するね〜! リノちゃん援護して!」
「はいは〜い!」
僕の一撃で未だ気絶中のオクトーは論外として、マコトちゃんも我が姉妹を追っかけたい気持ちはあるようだがリノちゃんの放つ矢がウザくて追跡が困難らしく、舌打ちしながら遠のく二人の背中を睨んでいた。
というか僕が介入したせいでオブジェクトの変更が見られなかったんだが……? ま、ええけど。環境破壊しないのは良いことだよね、とすっとぼけてみる。
「ちっくしょ〜! 何者なんだよあいつら!」
イライラして地団駄を踏むマコトちゃんがめちゃくちゃ可愛い。常時イライラしてて欲しい(歪んだ性癖)。八つ当たりで殴ってくれるとなお良し。
「チッ、まあいい。オクトー先輩を適当に叩き起こしたらあたしらもギルドハウスに帰るぞ! ユウキたちもついて来てくれ。傷の手当てとかするからよ」
「わかった」
たぶん抵抗してたのってノウェムちゃんくらいだからみんな怪我という怪我もしてないと思うけど、マホ姫に会いたいんで返事しました。後悔はしてない。
——そんなわけで、【
いま僕の頭の中ではイェーイから始まるエンディングが流れております。コッコロたんも可愛いけど、このエンディングの見所はやっぱキャルちゃんの泣き顔なんすわ(愉悦)。ってか、なんでプリコネのキャラって一挙手一投足が例外なく可愛いの? 全員推す以外の選択肢がないじゃん。もうあれだよ、ヒトリダケナンテエラベナイヨー‼︎
こんなゴミクオリティなのにやる気の高低差で更にクオリティが落ちるとかマジつっかえ。辞めたら?(自虐)
——いやいや辞めませんがな!
このクソゴミクオリティでぐだぐだと延々に書き続けますし、読んでくれている読者諸兄には地獄の底までも同行願いますからね。僕たち私たちは一心同体、一蓮托生、運命共同体。同じ宇宙船地球号に乗るブラザーですから。