程々にありふれた職業で世界最速(ガバがないとは言っていない) 作:神影 森羅
異世界転移(召喚)RTA
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はい、よーいスタート(棒読み)
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……ふむ。
何故かどこからか『またホモか』という思念が感じられるのだが、これは我々にとっての恒例行事というか定型文的なものでありけっして私がホモというわけではなくだな……。
…いや、やめよう。
過ぎた否定は肯定と同義だ。それにどうにも『ホモは嘘つき』という謎理論もあると聞く。正直その理論の根拠を小一時間ほど問い詰めたいものではあるが。
…ごほん。閑話休題。
さて、諸君。一人漫才は終わりにして本題に移ろう。
いきなりのことで驚いてるだろうが、少し時間をいただきたい。
RTA…リアルタイムアタック(Real Time Attack)、というものをご存知だろうか?
最短のためwikiで説明すると『ゲームスタートからクリアまでのプレイ時間はもちろん休憩や食事にかかった実時間(現実の所要時間)の短さを競う』というものである。
TAS、『Tool-Assisted Speedrun』( 場合により最後がSuperplay、Scoreattackとなることもある )がツールアシステッドの名の通りエミュレータなどのツールアシストを使用するのに対しRTAはあくまでも人間が実時間最速を目指すものなのだ。
かくいう私もまたRTAだったりする。まぁ、人力TASという名誉ある称号には手が届きそうもない趣味レベルのプレイヤーだが。いや、
む?なぜそんな話をするかって?
それに今回の人生とはどういうことか、だと?
ふむ、では少し話をしよう。
ひとつずついこうか。まず、今回の人生ということについてだ。
『私』という存在が『前世』という存在をはっきり自覚したのは三歳の誕生日の夜だった。
勿論私は困惑した。前世の細かな記憶は飛んでいたが私が一般的な社畜であり緩めのRTA走者だった事は覚えていた。
だからこそ、気がつけば三歳の見知らぬ(私が前世を思い出したとはいえそれまでの記憶が消えた訳ではないので語弊はあるかもしれないが)幼児になっていた、など夢か過労故の妄想か、と。
しかし一週間を浪費したところで事実は小説より奇なり、というし『私』という存在自体RTAの影響かある程度効率的に動きたいという心理もあるので一度思考を放棄しこの世界を楽しむ事にした。
この世界の私は
そしてこの世界、それからさらに五年ほどかけて調査した結果、ライトノベルの『ありふれた職業で世界最強』だと分かった。
とはいえまったくの原作通り、というわけではない。
私はこれが『ありふれた』だと分かってすぐに原作に関与することにした。
私のRTA魂が南雲ハジメの原作本編開始(異世界召喚)~原作本編終了(帰還)迄の記録を更新せよ、と騒ぐのだ。
まぁ思考放棄に思考放棄を重ねたが故の暴走説は大いにありうるが。
その証拠に白崎 香織、八重樫 雫、谷口 鈴、中村 恵里という原作での実力が高めの少女を原作知識フル活用で(恋愛的に)堕とす女性の敵としか言えないような行動をとったり、挙げ句のはてに何故か女だった南雲 ハジメも(これまた恋愛的に)堕とすという完全に刺されても文句が言えないような自分でも理解不能な行動をとっていた。
全く、自分の制御すら出来ないとなると先がおもいやられる。
ハルツィナ大迷宮や氷雪洞窟は精神的な耐性などを試す部分が多い。それまでに改善しなければ致命的なガバナンスが発生する可能性がかなりある。
で、そんな私だが。
なんとか生きて高校二年生、恐らく原作が開始する日を迎えた。
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「…登校時間は…ふむ…駄目だな。理論値に遠く及ばない。」
教室に入ると同時に視線が集まる。
予期せぬガバで遅刻ギリギリだったが故の怪訝な視線。だがそれもすぐに困惑を含むものへと変わる。
ちなみにフラグ的にはここで檜山達に絡まれるのだが…まぁ、かなり初期に『それがいかに無駄か』を計二時間ほど親切丁寧に解説したのが効いているらしい。
「新くん、おはよう!今日はギリギリだね。もっと早く来ようよ。…ところで、どうしたの?その傷。」
「おはよう、新。それ、どう考えても転んだとかそういう傷じゃないわよね?何があったのかしら?」
この学校の二大女神とも言われる二人のその言葉がクラスメイト全員の思いを代弁していた。
二人の言葉通り、今の私はなかなかにボロボロである。応急措置はしたがお世辞にも健康体とは言えないだろう。
…ちらほらと視線に嫉妬が含まれ始めた。目だけで百面相とは器用な。まぁ、視線だけなら特段ガバは発生しないからな。まぁいいだろう。
一応檜山に恨まれておけば、非戦闘天職及び低ステータスでも奈落に落ちる荒療治ができる。ほんとに危険だが。
「…おはよう。登校ルートを変更してみたら野良猫に絡まれてね。バリバリやられたよ。」
「ふーん、そうなんだ。」
「へぇ、そう。」
なぜだか目が笑っていないように見える。クラスメイトが何人か震えているぞ。
…野良猫に黙祷。動物愛護団体に〆られないようにしろよ?
…そういえばあの野良猫たち、何故か最後に私の後ろの電柱の方を向いて一瞬固まった後蜘蛛の子を散らすように逃げて行ったが、なにかよからぬものでも見たのだろうか?
いや、魔王の素質を持ったストーカーか。異世界の魔物が恐れる魔王の前身とあらばこのぐらいあり得るだろう。慣れすぎて一切意識してなかったが。
「エリリン、新くんに手を出した野良猫
「いや、鈴、さすがにそこまでは…。ふふ、まぁでも、
なにやら鈴と恵里がひそひそと話をしているようだ。
少々悪寒を感じるのは何故だろうか。ははは。
……現実逃避はやめよう。今更だが、うん。
ライトノベルの難聴が羨ましい。恵里がガチで病むのは回避できたがその代わり私の回りが程よく病んでいる。程よく。
「ふあぁぁぁ……。おはよう…。」
「おはよう、ハジメちゃん。」
「おはよう、ハジメ。また夜更かしかしら?」
「ハジメ、おはよう。」
そんなこんなしているうちにハジメが教室に入ってきた。
ちなみに毎日私の後をストーカーしながら登校するため自動的に私より遅い入室である。
渡してもいない合鍵で侵入し寝顔を堪能した(たまに撮影されて香織、雫、恵里、鈴の全員に配られる)後、幾つか私の私物を新品に替えてから一度家に戻り張り込むという感動的なまでの努力のストーカーだ。泣いていいだろうか。
ちなみに運動不足を匂わせて走ってみたところインドア派らしからぬ走力で付いてきていた。息は大きく乱れていたが。
「…あ、香織ちゃんに雫ちゃん。ちゃんと『然るべき処置』はしてきたよ。」
「そっか、分かったよ!」
「まぁ、詳しい話は後で聞くわ。」
「あ、ならエリリンと
「あはは、もちろん。ちゃんと
ハジメがもらした
知らない方がいいこともある、とはよく言ったものである。
嗚呼、鈍感が羨ましい。
私の私物が定期的に新品になる真相とか、
ん?
一応するぞ?
「相変わらず香織も雫も優しいな。新の世話をやいてやるなんて。でもいくら猫がいたとしても遅れたのは新の責任だ。構ってやる必要なんてないんだぞ。」
「二人も物好きだよな。よりにもよって根性もないこいつに関わろうとするなんて。」
「……おい、何故かナチュラルに私が罵倒されているのだが。」
残念ながらこいつの矯正は無理だった。ご都合主義過ぎて一切私の話をまともに理解しない。
なんというか、天は二物を与えずという諺に真っ向から喧嘩を売るような人間だが、その代償は相応に大きなものだったのだな、と思う。
「ハジメもだ。あまり香織と雫に迷惑をかけるんじゃない。」
「おい天之河。私を物凄くナチュラルに無視するんじゃない。」
ふむ…。
最近、私の存在感があの…………こう………………こう……………………あー、…………………………ここのクラスにいるはずの誰か並に薄れてきていると思うのだが。
時折私なんていないかのように話が進む。
果たしていつまで自動ドアは反応してくれるのだろうか……?
「え?私は別に迷惑なんて思ってないけど?」
「私も、ね。むしろハジメには
「なんだ?私はなにかやらかしたのか?」
「え?………ああ、うん、香織も雫も本当に優しいよな、うん。」
「………………………………グスッ……。」
ここのクラスにいるはずの誰かよ、今度見つけたら優しくしてやるよ…。
忘れてなければ。
◆◇─────◇◆
……昼飯の時間だ。
異世界召喚に備え某10秒でチャージなゼリーとカロリーの友達を食べておこう。
ところで、先程存在感が薄いと言ったな。
あれは現時点では結果論として嘘だ。
「…何故囲む?あれか?私は井戸か何かか?」
「誰が井戸端会議のおばさんよ。」
「まぁまぁシズシズ。だって新くん、ほっといたらそれだけでお昼ごはん済ませちゃうでしょ?」
…と、言われても。
このふたつで必要な栄養素は取れてるからな。
「そうそう。僕達がなにか言っても『…と、言われても。このふたつで必要な栄養素は取れてるからな。』とか言うでしょ?」
「……恵里、いつからエスパーになったんだ?お前は。」
一字一句違わないレベルの読みとは。
心理学を極めたって非常に難しいだろう。
「もう、ダメだよ!ちゃんと食べないと!どうせ朝も適当に済ませてるんでしょ?」
「む?まぁ、食パンを二枚ほど重ねて食べてるな。生で。」
「生で!?えっと、トーストにするとか、バターを塗るとか……。」
何をそんなに驚くのか……。香織も大袈裟な。
「ないな。確実に焼くのには数分かかるし、バターは溶けきらせるには室温や湿度などのかなり強めのランダム要素がある。下手すればここでまた数分とられる。」
「す、数分って…。」
「いや、数分というのもかなり重要だぞ?たかが数分、されど数分だ。たった数分によって運命が大きく変わる事がある。数分後には、今では想像もできないようなことがおこるかもしれないs」「えっと、ごめんね?ちょっとだけいい?新くん。」
「む?…ああ、すまない。少々熱中しすぎてしまった。何だ?」
悪い癖だ。熱中すると暴走気味になる。ハジメが話を遮ってくれなければ後一時間は話していただろう。
ああ、厭だ。
「えっと、ね?ボク、新くんにって、作ってきたんだけど…食べる?」
「ん?…おお!ホットドッグか!」
ホットドッグ。
何故か私を魅了してやまない魔法のような食べ物だ。個人的には。なんでも食べている姿が小動物みたいで癒される、と餌付けのようにだれかしらからもらうことが多い。
先程言ったように、必要な栄養素は取れてるのだが…まぁ、せっかく作ってもらったものを粗末にはできないからな。うん。けっして餌付けされてるわけではないが。餌付けされてるわけではないが!まぁ、ありがたく貰うとしようか。うん。
はむっ。
もっきゅ、もっきゅ、もっきゅ。
「うん。美味いな。」
「!よかったぁ…。」
ふむ。
そういえばあのご都合主義全開勇者が絡んで来ないな。
いやはや、正直有難い。
あいつが絡んでくるのは異世界転移の時間の感知ぐらいにしか使えない。
今のうちに、ホットドッグをもう一口…
「なんだこれは!?」
と思った矢先の魔方陣。
駄目みたいですね(諦め)
「みなさん!外に出てください!」
愛子先生のその言葉も間に合わず、教室は光に包まれた。
このあと世間を大いに賑わせる、集団失踪事件が発生した。
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───まだ、目をそらすのか?
───分かっているだろう?
───現実逃避故の暴走?笑わせるな。
───お前は、ただ。
───身勝手な──をしているだけだ。
───自分の知識のために。彼女らを───として。
───まぁいいさ。
───私は───だ。元より君に協力する筋合いは存在しない。
───忠告はきちんとしたからな?
───後は君の自由だ。どうとでもすればいい。
───いいかい?
───私は常にお前を見ている。
頑張る。
某変態黒竜、どうする?
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ケツパイルする(変態ルート)
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ケツパイルしない(真面目ルート)
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いいから続きはよ(作者過労ルート)