程々にありふれた職業で世界最速(ガバがないとは言っていない)   作:神影 森羅

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ノリと勢いで進む小説。だからあれほどヤンデレに力を持たせるなと…
前回の最後、気がついた人はどれくらいいるのか…。


ヤンヤン魔王様、力を得る。

◆◇──────◇◆

 

 

(先ずはなにか食糧を確保しないと)

 

ハジメは新の方をちらっと見て、出口へと歩きだす。

 

「これ…使えるかな?」

 

その途中ハジメが見つけたのは、新が使っている鎌だった。

必死に新を背負って逃げてきたが、無意識のうちに一緒に持ってきていたようだ。

 

「あれ、意外と軽い…」

 

ハジメは割と楽に持てたことに驚く。

確かに新は軽々持っていたが、元のスペックも違うし、てっきりハジメではまともに持てもしない物かと思っていたのだ。

 

そのままぶんぶんと振り回してみるハジメ。しかし

 

「あっ!?」

 

すぽんっと手から抜けて奇跡的に回転でちょうど刃がハジメの首に当たるような軌道になっている。

 

「っ!?」

 

思わず反射的にぐっと目を閉じてしまうハジメ。

ハジメもしっかりと見ていた。ベヒモスの角すらこの鎌が豆腐でも切るように断ち切った所を。

 

あぁ、こんな情けない最期になるのか…と諦めの境地に入ったハジメを襲ったのは…

 

「いったあ!?」

 

鈍痛。

切り裂かれる痛みではなく、なにかで殴られたような痛み。

恐る恐る目を開け、首に手を当てるハジメ。すると…

 

「あれ…切り傷一つ無い……これも、あの水の効果なの…?」

 

きちんと首はついているし、そもそも当たってないというわけでも無さそうだ。

地面の鎌に目を向けてみても刃こぼれ一つ無い。

 

もちろん、ハジメのステータスがおかしなことになっている訳でもない。

 

「……?」

 

ハジメは疑問を抱えながらも、無いよりはましかと鎌を持って外にでる。

もっとも、外とは言っても洞窟内ではあるのだが。

 

しかし、外にでるとはつまり、敵がいる場所に行くということだ。

当然、襲いかかるものもいる。

 

「グルァッ!!」

「ん?」

 

すでに噛みつこうとしている二尾狼と振り返っただけのハジメ。

 

「なっ…!?」

 

そんな状況でギミックのボタンを押せたハジメの反射神経は十分に凄いといえる。

しかし先程はハジメに傷一つつけられなかった鎌。ハジメは次の一手を考え始める。

 

しかし、それは結果として無駄であった。

スパッっと抵抗すら感じさせず鎌が二尾狼の首をはねたからだ。

 

「あ、あれぇー?」

 

こんな感じで、割と締まりの無い始まり方をした魔王ハジメであった。

 

 

◆◇──────◇◆

 

 

「さて、これが食糧になればいいんだけど。」

 

神水で食事が不要になるとは思っていないハジメにとっては、二尾狼が食べられるかどうかは死活問題だった。

 

おそるおそる二尾狼の肉を口にするハジメ。

 

「うわっ、まずっ!?」

 

酷い匂いと味に涙目になりながらも、ハジメは空腹感が癒されていく感覚に陶然とする。

 

神水を飲料代わりにするという聖教教会の関係者が知ったら卒倒するような贅沢をしながらなにか美味しく食べられる方法は無いかと悩み始めて少ししたころ、ハジメの体に異変が起こり始めた。

 

「ん……?──ッ!?うぐぅ!?」

 

突如全身を激しい痛みが襲った。まるで体の内側から何かに侵食されているようなおぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。

 

「ぐぅあああっ。な、何がっ──ぐぅううっ!」

 

耐え難い痛み。自分を侵食していく何か。ハジメは地面をのたうち回る。

 

ハジメは震える手で懐から石製の試験管型容器を取り出すと、端を噛み砕き中身を飲み干す。直ちに神水が効果を発揮し痛みが引いていくが、しばらくすると再び激痛が襲う。

 

「ひぃぐがぁぁ!! なんで……なおらなぁ、あがぁぁ!」

 

ハジメの体が痛みに合わせて脈動を始めた。ドクンッ、ドクンッと体全体が脈打つ。至る所からミシッ、メキッという音さえ聞こえてきた。

 

しかし次の瞬間には、体内の神水が効果をあらわし体の異常を修復していく。修復が終わると再び激痛。そして修復。

 

神水の効果で気絶もできない。絶大な治癒能力がアダとなった形だ。

 

ハジメは絶叫を上げ地面をのたうち回り、頭を何度も壁に打ち付けながら終わりの見えない地獄を味わい続けた。いっそ殺してくれと誰ともなしに願ったが当然叶えられるわけもなくひたすら耐えるしかない。

 

すると、ハジメの体に変化が現れ始めた。

 

まず髪から色が抜け落ちてゆく。許容量を超えた痛みのせいか、それとも別の原因か、日本人特有の黒髪がどんどん白くなってゆく。

 

次に、体つきは華奢なままだが、少し背が伸びる。胸囲は残念ながら成長しなかったが。

 

超回復という現象がある。筋トレなどにより断裂した筋肉が修復されるとき僅かに肥大して治るという現象だ。骨なども同じく折れたりすると修復時に強度を増すらしい。今、ハジメの体に起こっている異常事態も同じである。

 

魔物の肉は人間にとって猛毒だ。魔石という特殊な体内器官を持ち、魔力を直接体に巡らせ驚異的な身体能力を発揮する魔物。体内を巡り変質した魔力は肉や骨にも浸透して頑丈にする。

 

この変質した魔力が詠唱も魔法陣も必要としない固有魔法を生み出しているとも考えられているが詳しくは分かっていない。

 

とにかく、この変質した魔力が人間にとって致命的なのだ。人間の体内を侵食し、内側から細胞を破壊していくのである。

 

過去、魔物の肉を喰った者は例外なく体をボロボロに砕けさせて死亡したとのことだ。実は、ハジメもこの知識はあったのだが、新を助けるという強い思考がすっかりその知識を脳の奥に押し込めてしまっていた。

 

ハジメもただ魔物の肉を喰っただけなら体が崩壊して死ぬだけだっただろう。

 

しかし、それを許さない秘薬があった。神水だ。

 

壊れた端からすぐに修復していく。その結果、肉体が凄まじい速度で強靭になっていく。

 

壊して、治して、壊して、治す。

 

脈打ちながら肉体が変化していく。

 

その様は、あたかも転生のよう。脆弱な人の身を捨て化生へと生まれ変わる生誕の儀式。ハジメの絶叫は産声だ。

 

やがて、脈動が収まりハジメはぐったりと倒れ込んだ。その頭髪は真っ白に染まっている。

 

こうして、ハジメは『世界最強』への1歩を踏み出したのであった。




アズレンイベント、ポラリス。













控えめに言って最高。

伏線的なアンケその2

  • 友情の試練
  • 不屈の試練
  • 勇気の試練
  • 殺戮の試練
  • 作者過労の試練その2
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