程々にありふれた職業で世界最速(ガバがないとは言っていない) 作:神影 森羅
次回は香織サイドだと言ったな、あれは嘘だ。
完全にこの話のこと忘れてた…
──不意に、幸せだった記憶を思い出すことがある。
──不意に、不幸だった記憶が蘇ってしまうことがある。
──人の心は、思っているより遥かに脆い。家族、友人、恋人など、大切な存在を失ったとき、壊れて、狂ってしまいそうになる。
──人の心は、思っているより遥かに強い。自分にどんなことが起きようと、壊れて、狂ってしまうことすら許されない。
──独りは嫌いだ。まるで自分が誰にも必要とされていないような気すらしてしまう。
──集団でいることは嫌いだ。集団は1人の例外、つまるところいじめの対象をつくりたがる。そして、いつだってそうなるのは私だ
──すっきりと晴れた青空が好きだ。青空の下、笑いあっていると、自分の心も透き通ってすっきりとしていく。
──月の無い夜空が好きだ。月という大きな光のないなかで星が思い思いに瞬く。その光景は、私から全てを忘れさせてくれる。
──春が好きだ。暖かく、多くの命が産まれる。花、樹木、動物も含めば、いったいどれ程の数になることか。…そうなると、関門となるのは暑さの厳しい夏と寒さの厳しい冬、だろうか。実のところ僕も暑さにも寒さにも弱いタイプなもので、共感が持てる部分がある。
──冬が好きだ。まぁ、冬ほどではないが夏も。自身の生存に深く関わるこれらの季節は自分というオブジェクトがいったいどのくらいの負荷に耐えられるかを試すのに丁度いい。良薬は口に苦しというがそれと似たようなもので、自分を強くするのは大抵自分の嫌いなことであるものだ。
──最近、どうもおかしな夢を見る。僕が知らない人間になって、神様のように崇められて、そして、すごくすごく長い時間を生きていく夢。長い時間を生きていくのは人類の夢とも言えることだが…あの夢は、とても怖かった。今と違って、救いが無い。
──何故だか最近不可思議な夢を見る。自分が知らない人間の姿で、何人かの女性から好意を向けられながら生きていく夢。…だが、所詮は夢だ。現実に、救いなんてあるものか。
──ふと、思い返してみる。もしも僕が母さんと父さんと出会えなければどうなっていただろうか、と。…想像もしたくない。もしそうなれば、そこにいるのは人間ではなく、全ての他を排除する狂った機械だったのかもしれない。
──ふと、思考する。仮定、ifとして私が一般的に愛情を受けて育ったとするならば…その先に完成したのは、私のようなバグだらけの人間ではなかったのだろうか?…想像もできない。特に、欠陥だらけの私には。しかし…こんな存在より、遥かに正しい者が形成された筈だ。
──最近、前とは違った夢を見た。見覚えのある景色、見覚えのある人、見覚えのある自分の姿。…でも、何となく違う。あれはきっと…救われなかった僕自身だ。
──また、不可思議な夢を見た。幾度となく私を否定した人間が、社会が、世界が、自分を認め、愛する夢。そこで鏡に写った自分はどうしようもないくらい眩しく…妬ましかった。
──救いたい。見覚えがあり、見覚えのないあの自分を。僕が助かったのは本当にただの偶然。あの失望と不信が貼り付いた顔は…一歩、いや、半歩間違えれば、あるいはそんな間違いすらなくとも…自分がそうだったかも知れない未来。だから、救われてほしい。救いたい。自己中心的かもしれないけど。
──壊したい。あの世界を。あの世界の自分を。解っている。あの世界の自分の幸福は、とても正統的な報酬だ。それでも自分と比べて、眩しすぎるほどのあの世界は…妬ましくて、壊したくて、消したくて………羨ましい。
──救いたい。そう決意したまではよかった。でも、どうしたらいいかが分からない。ここにはもう僕がいる。僕が居れば、あの自分は居ない。…どうすればいいのか、解決策は見当たらない。
──壊したい。どうしようもないくらいに壊したい。でも、あの世界には救いがあって、自分も確かに幸せで。本当に壊れるべきなのは、私とこの世界ではないか?救いのない、理不尽なこの世界。嗚呼、分からない、解らない。もう、なにも。自分が何がしたくて、何をしていて、なんのために生きているのか。
──無力だ。どれだけ強い願いがあったって、そこに力が伴わないのなら、それはただの我が儘で。少し前に見た、神様のようになった自分なら、なにかしらの手段があったのか?
──壊したいと願う私に心底呆れた。ただただ気がついていなかっただけで、自分なんてとっくに壊れているというのに。羨んで、妬む感情は、全く壊れていない。もしも、あの自分を愛してくれる少女がいたあの世界。あそこにいる私であれば…私のifである彼を、心の底から祝福してくれただろうか。
──最近、ライトノベルにはまった。こんな力があればと思う度、あの自分が浮かび上がって、自分がそれをその力で救いだす。…素晴らしいハッピーエンドだ。人はただの現実逃避って言うだろうけど。
──最近、ゲームにはまった自分がいる。なるべく早く、効率的に。それは純粋な破壊願望を拗らせて狂っていた私にとって、唯一その事を忘れさせてくれる希望の光。…こんな世界にだって、弱々しくとも希望の欠片は存在していたのだ。たかがゲームごときで、と人は言うかも知れないが。
──事実は小説よりも奇なり。僕はどうやら異世界に来てしまったようで。…え?本当にあの異世界転…移?生?だよね?
──理解ができない。いや、本当に。なんだここは。いや、地球と言う場所なのは確かだが、いろいろ違いすぎる。…しかし、これはこれで悪くないのではないか?
──よし、ここで、一からやっていこうじゃないか。
──面白い。なら、この地でゼロにリセットして作り直そう。
次回こそ香織サイド。
ああ、この話に深い意味はないですよ?ええ。本当に。