程々にありふれた職業で世界最速(ガバがないとは言っていない) 作:神影 森羅
◆◇──────◇◆
…………?
まただ。
また、どこか目覚めが悪い。
…そういえば、昨日は香織が来ることはなかったな。
…いや、来たか?
記憶が曖昧だ。
今日は私の部屋には誰もいない。恐らく協定の集会をやった後そのまま自室で寝たのだろう。
さて、準備は整った。
いざ、大迷宮へ。
time 355:32:18:954
◆◇──────◇◆
現在、我々は【オルクス大迷宮】の正面入口がある広場に集まっていた。
ふむ、原作でも言われていた通り、なんとも文明的だな。
さて、メルド団長について、迷宮の中に入る。
縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発光しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多数埋まっているらしく、【オルクス大迷宮】は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘って出来ているらしい。
いかにもダンジョンって感じだ。
しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートル位ありそうだ。
そして初エンカウント。物珍しげに辺りを見渡している一行の前に、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。
「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」
……ラットマン、本当に見た目気持ち悪いな。
飛びかかってきたため間合いに入ったラットマンを光輝、雫、龍太郎の三人で迎撃する。その間に、香織と恵里、鈴が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入る。訓練通りの堅実なフォーメーションだ。
光輝は純白に輝くバスタードソードを視認も難しい程の速度で振るって数体をまとめて葬っている。アーティファクト説明中にスキルが不調を起こしたか、もしくは滑舌が悪かったのかマスタードソードと空耳してこっそり笑いをこらえていたのは内緒だ。
…さて、
「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ──〝螺炎〟。」」」
殲滅完了だろう。
ふむ。
見切った。
「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」
「…団長、次は私に任せてもらえないでしょうか?」
「ん?焦らなくても、お前達のパーティーの番はすぐに…」
「いえ、私単体で、です。」
「な!?一人で、とは……確かに、ここは第一層でそうそう死ぬことはないし、万一の時は騎士団でサポートに入るが……」
「なら、大丈夫です。試したい物があるもので。」
「……いいだろう。だが、危険だと感じたらすぐに下がらせる。いいな?」
「ええ。ありがとうございます。」
するとさっそく、ラットマンが現れた。
取り出すのは支給された大鎌の武器。
ただし、歯車を利用してアレンジを加えてある。
元々は『ザ・死神の鎌』的なモノだった(過去形)のだが、そこまですごい武器ではないので改造許可は楽にもらえた。
さて、現在は鎌の刃の部分がほぼ垂直からほぼ平行になり、薙刀のようなフォルムになっている。
ちなみに刃の部分は歯車で持ち手の青スイッチを押しながらだと回るようになるため元のように戻すことも可能だ。
「…どうもご丁寧に一匹ずつ来てくれるとはな。」
まずはそのまま、薙刀のように振って斬る。
横一列でも同じ。少々大振りにするだけだ。
それだけでスパスパと頭と胴体が永遠のお別れをするラットマン。
アーティファクトが強いのかラットマンが弱いのか。
次、縦一列。
ほんとにチュートリアル並に易しい行動パターンである。
「…3。」
さぁ、キルゾーンへのカウントダウンだ。
「…2。」
カウントダウンなんて気にせず突撃するラットマンの集団。
「…1。」
とびっきりの殺意を込めてのラストカウント。
クラスメイト達もかなりビビっている。
が、ラットマンはそれでも止まらない。少々スピードは緩んだが。
さて、赤いスイッチを押す。
「…チェックメイト、だ。」
黄色のスイッチで素早く元に戻す。
殲滅完了だ。
「…こんなものだろう。…メルド団長、どうですか?」
「…ああ。見事だ。…確かにアーティファクトの改造は許可したが、まさかここまでとはなぁ。」
「それはよかったです。」
…後にこのときの私は返り血まみれでにやっと笑うというかなりホラーな感じだったと聞いた。
time 365:00:49:291
◆◇──────◇◆
そこからはもう、時折前線に出てはスパスパスパスパ。
残念ながら大鎌の状態でも十二分に強く(それはもうこれであまり強くない方とか何言ってんだってレベルで)ギミックの出番は無かったが。
メルド団長は「こんなに切れ味良かったか?」と、15層の敵をスパッと殺った時に呟いていたが。
さて、20層だ。
ところで、トラップ対策として〝フェアスコープ〟というものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できる。ただし、索敵範囲がかなり狭いのでスムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要、というアーティファクトだ。
しかしこのまますべてのトラップを解除されると奈落行きが出来ない。
その為に必要なのが⑨の暴走だ。軽めの。
だからこそ…
「団長、少し後退します。鎌が血と内臓で切れ味が悪くなってしまったので、戦闘スタイル的な不安があるんです。」
「む?そうか。わかったぞ。お前がやると魔石がほぼ必ず回収出来るからもう少し前線にいてほしい気はあるがな。ハッハッハ!」
その言葉に苦笑を浮かべるクラスメイト達。
魔石と言うのは、まぁ、魔法の上でかなり必須アイテムと言えるようなもので、魔物の体内にある。
…のだが、先程から肉片も残らないレベルのオーバーキルで魔石なんて残らないので団長達は私が前線に出ると戦闘終了時にはホクホク顔になっている。
しかし空気が緩んだのもつかの間。
「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」
メルド団長の忠告が飛ぶ。
その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。物凄くゴリラだ。戦闘にそんな暇などないだろうに。
「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」
メルド団長の声が響く。原作通り光輝達が相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウント(筋肉)の豪腕(筋肉)を龍太郎(筋肉)が拳(筋肉)で弾き返す。光輝と雫が取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。
龍太郎(筋肉)の筋肉を抜けられないと感じたのか、ロックマウント(筋肉)は後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。
直後、
「グゥガガガァァァァアアアアーーーー!!」
部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。もっとも、それなりに遠く、かつ耳を塞いだ私に効果はないが…
「ぐっ!?」
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
まんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。もっとも、雫は何かを感じて耳を塞ぎ効果を軽減させたようだが。
ロックマウント(筋肉)はその隙にサイドステップし、傍らにあった岩を持ち上げ香織達後衛組に向かって投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで! 咄嗟に動けない前衛組の頭上を越えて、岩が香織達へと迫る。
香織達が、準備していた魔法で迎撃せんと魔法陣が施された杖を向けた。避けるスペースが心もとないからだ。
しかし、発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。
なんと、投げられた岩もロックマウント(筋肉の2乗)だったのだ。空中で見事な一回転を決めると両腕をいっぱいに広げて香織達へと迫る。その姿は、さながらル○ンダイブだ。「か・お・り・ちゃ~ん!」という声が聞こえてきそうである。しかも、妙に目が血走り鼻息が荒い。香織も恵里も鈴も「ヒィ!」と思わず悲鳴を上げて魔法の発動を中断してしまった。
なので
「ほれ、スパッとな。」
いかにも切れ味悪いですよ感を出すために物凄く手加減して攻撃する。まぁ、それでもスパッと一撃だったが。
「こらこら、戦闘中に何やってる!」
メルド団長が一喝する。
香織達は、「す、すいません!」と謝るものの相当気持ち悪かったらしく、まだ顔が青褪めていた。
さぁ、フラグは全回収だ。いけ、⑨。
「貴様……よくも香織達を……許さない!」
(このご都合解釈)はえー、すっごい。
「万翔羽ばたき、天へと至れ──〝天翔閃〟!」
「あっ、こら、馬鹿者!」
さぁ、奈落ルートフラグも全回収だな。
time 367:10:07:307
……次回……………………………
伏線的なアンケ。
-
友情の試練
-
不屈の試練
-
勇気の試練
-
闘争の試練
-
作者過労の試練