ダイに大転生   作:液体クラゲ

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13 超竜軍団もう来ないで

「待ってレオナさん!!! ひとりで先走らないで!!!」

「あたしたちのデートを邪魔したのよ!? 天誅を下してやるわ!!」

 

 ベンガーナ王国。

 都会と呼べるこの町で、服を見たり食事をしたりと、俺は自分でも意外なほど普通にデートを楽しんでいた。

 が、そこにドラゴンの群れがやって来たのだ。

 

 レオナは激怒した。必ず、かの邪知暴虐のドラゴンを除かねばならぬと決意した。

 レオナには政治が分かる。しかし、人と人との温かな繋がりの大切さにも、人一倍に敏感であった。

 

「ベギラゴン!!! ベギラゴン!!!」

「いや出てない! 出てないから!! まず逃げよう!? ね!? 俺が倒すからさ!!」

 

 俺はレオナを抱え、彼女を避難させようと走り出す。

 しかしレオナは後ろを向いて、なおもベギラゴンを撃とうとする。

 

「ベギラゴーーーーン!!!!!」

 

 めっちゃ出た。

 ドラゴンの群れが焼け死んだ。

 

「やったわ!! 見て見てダイ君!」

「えぇ……」

 

 同時に俺の魔法力が減る感覚があった。

 黒の核晶(コア)を食べて膨大な魔法力をゲットしたはいいけど、呪文契約が全然出来なくて、宝の持ち腐れだったんだよな……。

 しかしなんか変な回路が繋がってしまったようである。

 

「あ、でも、ちょっと、クラッと来たわ……」

 

 そりゃ身の丈に合わない大呪文を使えばね。

 あとは俺に任せろ。

 

 残るのはヒドラだ。

 近付いて炎を吐いてきた。

 俺は掌圧でそれを吹き散らし――

 

「あっ」

 

 風の余波でレオナのスカートがめっちゃめくれた。

 レオナは咄嗟に手で押さえたが、遅かった。

 周りの避難民のうち、男たちの視線がこっちを向いていた。

 めちゃくちゃガン見していた。

 

「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

 俺は激怒した。必ず、かの邪知暴虐なヒドラを除かねばならぬと決意した。

 俺には性欲は分かる。しかしひとりの乙女に恥じらいを強いた罪には、人一倍に敏感であった。

 いや半分は俺のせいだけども!!!!!

 

「オラァ!!!!!!!」

 

 レオナを背に庇いながら、八つ当たり気味にヒドラを正拳突きで消し飛ばした。

 怒りのあまりか、額には(ドラゴン)の紋章が輝いていて――消えた。

 

 これで超竜軍団は片付いたか。

 周囲の住民も避難をやめ、瓦礫に挟まった人を助けようなどとしている。

 誰もこちらを見ていなかった。

 

「何よ……! ダイ君に一言お礼くらい……」

 

 みんなはレオナの方を向いて言った。

 

「「「「「ありがとうございました!!!!!!」」」」」

「やめて!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 そりゃいいモノ見えたからね。仕方ないね。

 俺はその辺の壁に目を向けた。

 

「いるんだろ? 出て来いよ」

「……」

 

 キルバーンが出てきた。

 

「おおかた、人間どもを俺の力で恐怖させ、排斥の流れを作ろうとしたんだろうが……残念だったな。人間はそんな謀略に負けない!!!」

「いやカッコいいこと言ってるけど、性欲に負けてるよね?」

「はい」

 

 これはちょっと言い訳できない。

 レオナは顔を真っ赤にしていた。

 可愛い。

 

「まあいいさ。見たいモノは見た……」

「レオナのを!!?!???!」

「やめてくれないか、ボクをスケベキャラにしようとするのは!! (ドラゴン)の紋章の話だよ!!」

 

 何だ、そうか。

 キルバーンは咳払いをして続けた。

 

「全く酷い父親だと思うよ……目の前で紋章を見たのに、もう一度しっかり確認したいだなんてさ……。いくらゴリラだったからって」

「思い出させるな!!!」

「ウフフッ。ともあれ、この死神キルバーン……今回はここまでさ。次は地獄で会おう……!!」

 

 キルバーンは壁をすり抜けるように消えていく。

 俺は壁ごと毟り取るようにキルバーンを掴んだ。

 

「えっ」

「言いたいことだけ言って逃げてんじゃねえ!!!」

 

 引き摺り出す。

 

「瓦礫を片付けるのを手伝え。今回はそれでチャラにしてやる」

「断ったら……?」

「お前がロリコンでホモだって噂を世界中にばら撒く」

「やめてくれ!!!! ボクの妖しい魅力が台無しじゃないか!!!!!」

 

 キルバーンは焦った。

 こいつめちゃくちゃ気取ってるから、そういうの気にすると思ったわ。

 ここで倒そうとして、黒の核晶(コア)が万一爆発しては困る。流石に魔界のマグマ血液ごと喰うのは無理があるだろうし……。決着はお預けだ。

 

 と、キルバーンが話しかけてきた。

 

「ところで勇者ダイ君」

「なん?」

「君は見たのかね? レオナ君のスカートの奥を」

「……!?」

 

 レオナが赤い顔で睨みつけてくる。

 俺は首を振った。スカートが翻ったのは見えたが、その奥までは……角度の問題で……。

 

「ウフフッ」

「キルバーン……テメエまさか……!」

 

 こいつやっぱり見てんじゃねえか!!!

 

「教えようか? 何色だったか。可哀想にねえ! 自分で見られなかったなんて!!」

 

 しかもミステリアスキャラをかなぐり捨ててまで、俺を小馬鹿にしようと……!?

 

「オラァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 俺は迷いなくキルバーンの脚をへし折ると、顔面を両手で掴んだ。

 額には(ドラゴン)の紋章が燦然。

 

「ここで呪法(トラップ)発動――あれ?」

 

 そんなもん、攻撃のために踏み込んだときに踏み潰したわ!!

 

「ドルオーラーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 そのまま上空に向けて竜闘気砲呪文をブッパ。

 隠された黒の核晶(コア)の爆発は闘気流に押し流され、ただ空にキノコ雲を浮かせた。

 被害者ゼロ。

 

「ひっ……!!」

「ば、化物……!」

「度を越えた脳筋……! ゴリラ、恐るべきゴリラだ……!!」

「ゴリラ……!」

「ゴリラの騎士……!?」

 

 おい、誰だ今最初にゴリラって言い出した奴。

 このベンガーナじゃまだ広まってないハズだろ!?

 

 見れば一つ目ピエロが、モシャスを使い群衆に混じって、立ち去っていくところだった。

 ピロロか! あいつ!

 

 群衆はすっかり俺に怯えていた。

 

「ダイ君……」

 

 レオナは深刻そうな顔をして……

 

「戦ったらお腹空いたわ。無事なお店を探しに行きましょう」

「あっはい」

 

 俺はレオナには勝てない。

 そう悟った。

 




ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
ネタ切れ感が出てきましたので、一気に終わらせます。(最終話まで1分ごとに更新)

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