「待ってレオナさん!!! ひとりで先走らないで!!!」
「あたしたちのデートを邪魔したのよ!? 天誅を下してやるわ!!」
ベンガーナ王国。
都会と呼べるこの町で、服を見たり食事をしたりと、俺は自分でも意外なほど普通にデートを楽しんでいた。
が、そこにドラゴンの群れがやって来たのだ。
レオナは激怒した。必ず、かの邪知暴虐のドラゴンを除かねばならぬと決意した。
レオナには政治が分かる。しかし、人と人との温かな繋がりの大切さにも、人一倍に敏感であった。
「ベギラゴン!!! ベギラゴン!!!」
「いや出てない! 出てないから!! まず逃げよう!? ね!? 俺が倒すからさ!!」
俺はレオナを抱え、彼女を避難させようと走り出す。
しかしレオナは後ろを向いて、なおもベギラゴンを撃とうとする。
「ベギラゴーーーーン!!!!!」
めっちゃ出た。
ドラゴンの群れが焼け死んだ。
「やったわ!! 見て見てダイ君!」
「えぇ……」
同時に俺の魔法力が減る感覚があった。
黒の
しかしなんか変な回路が繋がってしまったようである。
「あ、でも、ちょっと、クラッと来たわ……」
そりゃ身の丈に合わない大呪文を使えばね。
あとは俺に任せろ。
残るのはヒドラだ。
近付いて炎を吐いてきた。
俺は掌圧でそれを吹き散らし――
「あっ」
風の余波でレオナのスカートがめっちゃめくれた。
レオナは咄嗟に手で押さえたが、遅かった。
周りの避難民のうち、男たちの視線がこっちを向いていた。
めちゃくちゃガン見していた。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
俺は激怒した。必ず、かの邪知暴虐なヒドラを除かねばならぬと決意した。
俺には性欲は分かる。しかしひとりの乙女に恥じらいを強いた罪には、人一倍に敏感であった。
いや半分は俺のせいだけども!!!!!
「オラァ!!!!!!!」
レオナを背に庇いながら、八つ当たり気味にヒドラを正拳突きで消し飛ばした。
怒りのあまりか、額には
これで超竜軍団は片付いたか。
周囲の住民も避難をやめ、瓦礫に挟まった人を助けようなどとしている。
誰もこちらを見ていなかった。
「何よ……! ダイ君に一言お礼くらい……」
みんなはレオナの方を向いて言った。
「「「「「ありがとうございました!!!!!!」」」」」
「やめて!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そりゃいいモノ見えたからね。仕方ないね。
俺はその辺の壁に目を向けた。
「いるんだろ? 出て来いよ」
「……」
キルバーンが出てきた。
「おおかた、人間どもを俺の力で恐怖させ、排斥の流れを作ろうとしたんだろうが……残念だったな。人間はそんな謀略に負けない!!!」
「いやカッコいいこと言ってるけど、性欲に負けてるよね?」
「はい」
これはちょっと言い訳できない。
レオナは顔を真っ赤にしていた。
可愛い。
「まあいいさ。見たいモノは見た……」
「レオナのを!!?!???!」
「やめてくれないか、ボクをスケベキャラにしようとするのは!!
何だ、そうか。
キルバーンは咳払いをして続けた。
「全く酷い父親だと思うよ……目の前で紋章を見たのに、もう一度しっかり確認したいだなんてさ……。いくらゴリラだったからって」
「思い出させるな!!!」
「ウフフッ。ともあれ、この死神キルバーン……今回はここまでさ。次は地獄で会おう……!!」
キルバーンは壁をすり抜けるように消えていく。
俺は壁ごと毟り取るようにキルバーンを掴んだ。
「えっ」
「言いたいことだけ言って逃げてんじゃねえ!!!」
引き摺り出す。
「瓦礫を片付けるのを手伝え。今回はそれでチャラにしてやる」
「断ったら……?」
「お前がロリコンでホモだって噂を世界中にばら撒く」
「やめてくれ!!!! ボクの妖しい魅力が台無しじゃないか!!!!!」
キルバーンは焦った。
こいつめちゃくちゃ気取ってるから、そういうの気にすると思ったわ。
ここで倒そうとして、黒の
と、キルバーンが話しかけてきた。
「ところで勇者ダイ君」
「なん?」
「君は見たのかね? レオナ君のスカートの奥を」
「……!?」
レオナが赤い顔で睨みつけてくる。
俺は首を振った。スカートが翻ったのは見えたが、その奥までは……角度の問題で……。
「ウフフッ」
「キルバーン……テメエまさか……!」
こいつやっぱり見てんじゃねえか!!!
「教えようか? 何色だったか。可哀想にねえ! 自分で見られなかったなんて!!」
しかもミステリアスキャラをかなぐり捨ててまで、俺を小馬鹿にしようと……!?
「オラァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺は迷いなくキルバーンの脚をへし折ると、顔面を両手で掴んだ。
額には
「ここで呪法
そんなもん、攻撃のために踏み込んだときに踏み潰したわ!!
「ドルオーラーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そのまま上空に向けて竜闘気砲呪文をブッパ。
隠された黒の
被害者ゼロ。
「ひっ……!!」
「ば、化物……!」
「度を越えた脳筋……! ゴリラ、恐るべきゴリラだ……!!」
「ゴリラ……!」
「ゴリラの騎士……!?」
おい、誰だ今最初にゴリラって言い出した奴。
このベンガーナじゃまだ広まってないハズだろ!?
見れば一つ目ピエロが、モシャスを使い群衆に混じって、立ち去っていくところだった。
ピロロか! あいつ!
群衆はすっかり俺に怯えていた。
「ダイ君……」
レオナは深刻そうな顔をして……
「戦ったらお腹空いたわ。無事なお店を探しに行きましょう」
「あっはい」
俺はレオナには勝てない。
そう悟った。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
ネタ切れ感が出てきましたので、一気に終わらせます。(最終話まで1分ごとに更新)