そうして何年もが経った。
ある日、でろりん一味の船が訪れた。遂に来たか。
しかし悪そうなツラしてんな。望遠鏡越しに見て、本当にそう思う。
人は見た目じゃないなんて言うが、何だかんだ内面は見た目に表れるものだ。
さて、わざわざ船に乗り込みには行かず、海岸で島の皆と一緒に待った。
何しろこの島に船が来るなど、俺が流れ着いて以来だ。珍しい光景は、皆で一緒に見て楽しみたい。そうだろ?
彼らは船を停泊させると、ボートに乗り換えて海岸までやって来た。
大小様々種々雑多な
実力はそこそこあるんだから、堂々とすればいいのに……。
そう思っているうちに、俺の頭の上で輝くゴメちゃんに気付いたようだ。
彼らはニヤリと笑んだ。
「初めまして……そしてサヨナラだ! 怪物ども!」
でろりんが剣を抜き、斬りかかってきた。
刃を指で摘まんで止め、捻ってへし折る。
「えっ……」
そしてソフトめに正拳突き。
でろりんは海を割って吹っ飛び、乗ってきた船に突き刺さった。
「ようこそ、デルムリン島へ。ご用件は?」
それから両手を広げて歓迎する。
残りの3人はガクガク震えながら、必死に首を振った。
歓迎の意は伝わったのだろうか?
「「「お、お、お、お邪魔しました~~~~!!!!」」」
物凄い勢いで帰っていった。
さよ~なら~。
「何だったんじゃ……?」
「ゴメちゃん超絶レアモンスみたいだし、攫いに来たんじゃない? めっちゃ見てたし」
「なるほどのう」
「ピィー」
この日はこれで解散した。
そしてしばらく後、また船がやって来た。
今度は揃いの制服を着て槍を持った――兵士かな。兵士がいっぱい乗っている。
あと文官だろうか、なんか賢そうな人(絶望的に賢くなさそうな形容)。
俺たちはまた総出で歓迎した。
人間たちはめちゃくちゃ警戒しながらも、何とか平静を装っている様子。
文官の人が挨拶してくれた。
「先日でろりん一味がこの島に訪れたということですが」
偽勇者を本物の勇者と思い持て囃していた結果、この島にも迷惑をかけた、ということで詫びに来たらしい。なんて礼儀正しい国なんだ。
もちろん快く赦した。誰も被害に遭ってないしね。むしろでろりん生きてた? ああ、生きてたの。良かった。流石に人殺しはな。
「ついてはお詫びの印として、でろりん一味に下賜する予定だったこの『覇者の冠』を」
「マジかよ」
国宝とかじゃないの、これ? オリハルコン製でしょ?
原作でもスゲーあっさりあげてたけど。
それともこの世界じゃ違うのだろうか。
俺は覇者の冠を摘まんで曲げてみた。
ぺきんっ。
「……」
「……」
「ごめんなさい」
オリハルコンじゃないの……?
「オリハルコンを……へし折った……?」
オリハルコンなのかよ。
まあダイ大のオリハルコンって結構脆いからね。仕方ないね。
だからってこうも軽く折れるとは思わなかったけど。
「代金はふたつ分払うんで、新しいのに替えてもらっていいッスか?」
「ねえよ」
ですよねー。
「いえ、まあ、差し上げたモノですから。どう扱おうと自由ですが……。できれば丁重に……あっ、無理にくっつけようとしないで! 砕けちゃう!」
いや、大丈夫だから。圧力かけたら温度上がるべ? それで溶接――ほらできた!
「えぇ……」
ちょっと不格好だけどさ。まあディテールは追々ね。今はこんなもんでね。
俺は覇者の冠を装備した。
溶接したところが微妙に盛り上がってて、肌にゴツゴツする。付け心地悪い。
俺は覇者の冠を外した。
「これ1から作り直していいッスか?」
「もう好きにしてください……」
ロモス王国の使者は帰っていった。
死者みてーな土気色のツラのまま。
あ、これはダジャレだけど。
「ダイや」
傍らで呆然と見ていたブラスじいちゃんが、神妙な顔で言う。
「なん?」
「すまなんだ。常識を教える必要があったようじゃ」
「知ってるけど」
「知ってるだけじゃ無意味なんじゃよなあ……」
難しいね、世の中って。
反省。