覇者の冠だったオリハルコン塊を粘土代わりに捏ね、遊びながら鍛えていると、三度船の接近があった。
って軍艦じゃねーか!!!!!!!!!!!!!!
めっちゃ大砲ついてるよ!!!!
「ブラスじいちゃん! 軍艦だ! 軍艦が攻めてきた~!!!」
「なんじゃとお!?」
食事中だったところを驚かせてしまい、飯を噴き出された。
空中で全てキャッチし、そっとお椀に戻した。
ふたりで船を確認しに行く。未だ沖にあるため、望遠鏡を使い――
「バカタレ! 何が軍艦じゃ早とちりしおって!」
あれぞまさしく聖なる船らしい。
「でもめっちゃ大砲ついてるよね? 軍艦同然だよね?」
「……まあの……」
だよね??????
まあ実際、船は発砲して来なかった。それならそれでいい。
やがて停泊した船からは、怪しげなローブの兵士たちと、冷たそうな目の男、そしてハゲが降りてきた。
ハゲが言う。
「ゴリラの勇者ダイくん。それにブラス老ですな……」
「おい、誰が考えた二つ名だよ。捻り殺すぞ」
ゴリラは森の賢者なんだぞ!
ゴリラさんに失礼だろうが!
しかし俺は無視された。
代わりと言っては何だが、地味に露出の多い美少女が出て来る。
わおっ。
「あなたが……ゴ――勇者ダイ?」
「今ゴリラって言いかけたろ。ゴリラって言いかけたろ!?」
「どんなゴリラかと思ったら、意外と小さいのね」
「もう完全にゴリラって言ったよね?」
ちょっと覇者の冠を捻り殺しただけじゃないか!
まあそれはともかく。
何でもロモス王からこの島のことを聞き、レオナ王女の儀式のために赴いたらしい。そうそう、そんな話だったよね。でも島に来るの久し振りで地理が分からんから、現地民の俺に案内してほしいと。はいはい。
いいともよ。しかし気になることがある。
「お代は如何ほどいただけるんで?」
ということだ。
そしたらブラスじいちゃんに殴られてしまった。名誉なことなのに何言ってんだと。
しかし考えてもみてほしい。こんな最果ての地で、人の世の名誉もクソもねえもんである。そんなことより美味しいモノをくれ。
「ではこれを」
バナナをもらった。
剥いて食べた。
美味しかったです。
それを見てレオナが不機嫌そうに言う。
「キミィ……本当に大丈夫!? 途中で迷子になっちゃったりしたら置いてくわよ」
「そういうこと言う奴に限って、あとから泣き言囀るんだよな。とりあえず服用意するから着替えろや」
と言うのも、露出度が高過ぎる。肩も腿も全開て。森を舐め過ぎだ。
細かい枝葉に引っ掛けて肌を切ったり、いつの間にかヒルに噛み付かれていたりするハメになる。
怪物島とは言え、怪物しか住んでないワケではない。でないと肉食の奴らが困るしね。普通の動物や虫なんかもいる。毒虫もいるし、毒草もある。
レオナはボロマントを纏って、逆に機嫌が良さそうだ。
俺が言うのも何だけど臭くない? それ。大丈夫?
「意外と頼りになりそうじゃない。腕力以外も」
一言余計だわ。
「じゃあ他に何か特技あるの? 魔法とか」
両手を思い切り叩き合わせた。掌の狭間で圧縮された空気が赤熱し、一瞬、炎が生じる。
「メラだ」
「今のはメラじゃないわ……」
今のはメラではない……。
今のはメラではない……。
「何だっけ……」
「知らないわよ」
まあちょっと仲良くはなれた。道中なかなか話が弾んだものである。
しかしいきなり魔のサソリが襲ってきたので手刀で真っ二つにし、更に洞穴の奥に向かおうとしたところで、突如の轟音と共に洞穴の出口が崩れて塞がってしまった。
外から攻撃されたようだ。
「ちょっと、何よこれ!?」
「暗殺じゃない?」
「そうか、世継ぎの私を亡き者にすることで国の実権を握ろうと! テムジン……!!」
洞察力高いな、この王女さま。
「でもどうしよう、閉じ込められたワケよね。ダイ君、どこか別の道は――」
「オラァ!!!!!」
崩壊した出口を正拳突きで吹き飛ばして開通させた。
「今のはイオラかしら」
「オラァって掛け声でダジャレをしたつもりはないよ!? 微妙だしね! 悪かったよ、さっきのメラは確かにメラじゃないよ……。ごめんね」
「微妙で悪かったわね」
さて、じいちゃんが心配だ。
来た道を戻って海まで行くと、ちょうど船が内から吹っ飛んでキラーマシーンが出て来るところだった。
「ダイ、逃げろ! そいつはキラーマシーン! 勇者を殺すために生まれた殺人機械じゃ! 殺されるぞ!」
「マジで? パねえな」
とりあえずぶん殴ると、粉々に砕け散った。
拳圧が大気を断熱圧縮して莫大な熱量を孕み、爆発に至ったのだ。
そして焦げカスと化したバロンが落ちてきた。
「ベギラマだ」
「今のはベギラマじゃないわ……」
その後何やかんやあって、テムジンとバロンはお縄。
レオナ姫も無事に儀式を終えてめでたしめでたしだ。
「ねえダイ君、あたしのボディーガードやらない? 日当バナナ5束で」
「は? 舐めんな。10束だろ」
お礼にバナナの木を貰いました。
やったあ。植えて増やすぞー!!!