魔の森で
で、そこに保護者と思しき少女が現れて……
「私はマァム。ミーナを助けてくれてありがとう」
「ダイです」
「おれはポップ」
ここまでは良かった。
「オレはハドラーだ」
「って魔王じゃないの! 何でこんなところに!?」
魔弾
やめてくれよ、物騒だな。
「それが、かくかくしかじかで……」
「アバン先生が夜逃げ!!?!?!?!?!?!??!!!」
マァムは膝から崩れ落ちた。
「あの優しかった先生が、そんなに追い詰められて……!! それで、どうしてウチに来てくれないのよ! 先生……!!」
「マァムがあっちから来たから、お家はあっちかな。一緒に行こうね」
ミーナと手を繋いで歩き出す。
マァムが肩に手を置いてきた。
「なんで無視するわけ???」
「会うなり鉄砲向けてくる人はちょっと……」
「堂々と魔王を連れ歩いてる人に言われたくないわよ!?」
ごもっとも。
「落ち着け、娘よ。今のオレは最早魔王でも魔軍司令でもない、ただの魔族なのだ。そう邪険にするな」
「ウチの父さん、あなたとの戦いの傷がもとで死んだんだけど……」
「ミーナちゃん食べ物は何が好き? ダメだよ~お菓子ばっかり食べてちゃ」
ミーナと手を繋いで歩いていく。
マァムが肩に手を置いてきた。
「なんで無視するわけ???」
「長くなりそうだったから……。早くミーナちゃんお家に帰してあげたいし」
当たり前だよなあ?
「魔王を連れ歩いてるような人を村に入れられるワケないじゃない!」
「だからオレはもう魔王では」
「元魔王を連れ歩いてるような人を村に入れられるワケないじゃない!」
「それでいい」
「入村拒否自体はいいのね!?!?」
残当。
俺は頷いた。
「待ってくれ!」
ポップが前に出てきた。
「おれたちは大魔王バーンを討伐しようって一行だぜ。ここは村で歓迎してくれた方がいいんじゃないか? のちのち、宿屋が勇者御用達ってことで繁盛するぜ」
「世界中を旅して、立ち寄った全部の宿屋を御用達にするの?」
ポップは黙った。
「先生からアウトドアの技は習ったし、野宿でも何とかなるって。行こうぜポップ、ハドラー」
「仕方ねえな」
「うむ」
こうして俺たちはマァムと別れ、森を
猛々しい遠吠えが聞こえ――それがどんどん近付いてくるではないか!
間もなく、大樹を割って巨躯のワニ男が姿を現した。
「我が名は獣王クロコダイン!! 先ごろ魔軍司令に昇格したミストバーンの勅命により、ダイ、お前を討つぐふううううううううううううううううううううううううううううう」
ソフトな正拳突きで30mくらい吹き飛ばした。
森を抜けようと歩みを再開し――おっと、クロコダインが走って戻ってきて、また立ちはだかってくる。
めっちゃぶるぶる震えて、今にも死にそうなツラで血ィ吐いてるけど。鎧粉々で全裸だし。
「根性あるな」
「ぜはあ、はあ……!! うぷっ……!! こ、この獣王、鋼鉄の肉体が取り柄……!! この程度はダメージのうちに入らぬわ!」
「ダイ貴様、オレには最初から風穴開けたくせに、なぜクロコダインには手加減するのだ?」
ハドラーが不平を述べてきた。
いやお前はバナナの木を犠牲にしたやんけ。その差だわ。
「しかしダイよ、このクロコダインも、百獣魔団を操り多数の人間を殺しているのだぞ」
「ハドラー!!! 裏切り者!!!」
クロコダインが焦った顔で不平を述べた。
これは黒ですわ。
俺は指をボキボキ鳴らした。
「選べ。戦って死ぬか、降伏か」
「た、戦うに決まっているだろう! オレは戦士だぞ!!」
「ポップさあ、お城についたら何食べたい? 俺はやっぱりでっかい骨付き肉を……」
俺とポップとハドラーは歩き出した。
クロコダインが肩に縋りついてきた。
「ま、待て!! なぜ無視するのだ!?」
「その方がダメージあるだろうと思って」
「オレには相手をする価値もないと言うのか!? くっ……殺せ!!!」
クッコロダインかあ。
俺はポップとハドラーを抱えると走り出した。
クロコダイン(全裸)は殺せ殺せと言いながら必死に追ってきたが、そのうちどんどん距離が開いていき、やがて振り向いても見えなくなった。
それでもウオオオオオオオン殺せえええええええって、真夜中の森に響いて聞こえてくる。
怖かったです。