鋼鉄ノ鳥   作:斬刄

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重い翼は空高く飛べない

錬金術師による実験によって、その身に力を宿した。

彼の名前はクロウ。

 

実験は神話に存在するグリフォンといった混合獣(キメラ)という扱いで実験を開始したものの動物同士による融合は果たせなかった為に結局は失敗に終わった。鳥と鉄を融合したことにで、彼が目を覚ますと無意識に翼を広げ、柔らかい皮膚も硬化させている。力の扱いが慣れないうちは研究員が暴走する度に薬を投与され、身体を弄られていた。

被験者となって身体を弄られていたのは彼だけではない。他の人達も実験体にはなったが命を絶った者もいれば、薬物に耐えきれず死んでいったものもいる。

それでも生きている者もいた。

 

ある人は警戒心が強く、好意的に話すこともなければ近づこうともすらしない。

 

彼は動きがぎこちなく、立つことすらやっとだった。能力の扱いが非常に乏しく、戦闘経験も皆無な為、ノイズと戦っても逃げ回ることしかできない。

同じ失敗作であっても、その時は自分の事で定いっぱいだった被験者達は会話も、関わることすらできない。彼らは鬱になりながらも、生きる為に適応するしかなかった。

 

しかし、実験体として血液中に流れていくパラケイア流体という怪物としての力を発揮することで死毒となって逆流し、体内全域に毒が身体に周って死に至る筈だが、その頃の彼の身体には力を発揮しても毒が回ることがなかったのはこの時は誰も知る由もない。

 

*****

 

パヴァリア光明結社の小さな研究所に長く滞在し、装者達の情報が入ってくる。

彼女達相手に特殊なアルカノイズを召喚しても歯が立たず、歌と聖遺物の力で多くの戦いを覆した。結社の首魁であるアダムですらも、装者を相手に敗北し、結果としての結社のほとんどが大打撃を受けることとなる。アダムについては無能だと一部では言われていたものの、それでも結社創設時の統制局長をやっているため錬金術師を総ている為に、長けていた。

その彼が敗れてしまったのだから、研究内は騒ついている。

更に組織に所属していた錬金術師達は、装者が黄金錬成の力を手にしたことも知り、結社の人数は減っていくばかりだった。

 

その間に彼は何もしていなかったわけではない。ある程度力をコントロールしつつ人間の機能を維持することに成功する。研究員に無理矢理飲まされた鉱物も今では自分から口に入れて接収することも可能となり、雑魚ノイズとの戦闘も鋼鉄の翼の羽を飛ばすことで纏めて撃破することもできた。手を刃に変えることも、小さい粒の鉄を飛ばして砂塵を飛ばすこともできる。

ただし、空を飛ぶことも滑空も可能だが、一定の高さに上昇すると翼の重さに身体が耐えきれず落下してしまう。

彼は鉄分のことに関する本を読み、自分の体の事を理解しようと一応努力する。研究所にいる間、研究員達が地道に彼の身体を調べた結果として、鉄を蓄えることで純粋な人間の血液を多量に増やすことができ、更にはパラケイア流体の他に血液の悪い成分を抑える効果(免疫)を持っていることが後から発覚した。ある意味成功ではあったが、後に実験用の生き血として使わされることになるとも彼は悪い予感はした。

 

注射針で血を抜かれ、それを貿易や緊急用の治療として冷凍室に保管させている。結社として力を宿したはずが、消耗品として扱われ、用が済んだら問答無用に処理される。

戦闘面においてもアルカノイズ、結社の幹部、局長でも勝てなかった相手ならば勝ち目などない。

 

この結社に対し、諦めがつくのはそう時間もかからなかった。

 

*****

 

研究所にまだ残っている彼の元に、ある3人がやってきた。

 

「…どちら様ですか?」

「ヴァネッサよ。

貴方のことは、二人から聞いたわ」

 

褐色の女の人が背後にはエルザとミラアルクがいる。クロウは二人とも顔見知り程度の知り合いではあったが、ヴァネッサについては何も知らない。

 

「俺に何の用だ」

「私達に手を貸してほしいの」

「帰ってくれ…悪いが、結社の仕事であったとしても、弱い俺と一緒になったところで何の戦力にはならない」

 

単刀直入に手を貸して欲しいと言ってきたが、クロウはキッパリと断った。彼女らの目的が、もし装者という自分よりも強大な相手をしなければならないものであるならば間違いなく勝ち目などない。

しかし、

 

「貴方は、何か勘違いしているわね」

「?勘違い?」

「…知らなかったのね、結社は倒壊したわ。

それ以来、私達はノーブルレッドとして活動しているの」

 

彼女と二人は、組織を抜けて自分達の組織を作り上げている。ずっと研究室にいた為に、そんな話を聞いたことはなかった。不利益を被る為に、あえて残党となった研究員達はその情報だけを上手く隠しつつ、黙っていたままにしていた。

 

「弱いのは、貴方だけじゃない。私も、二人もまた結社の実験によって運命に振り回され、虐げられた弱者よ。

今は、私達三人で元の生身の身体を取り戻す為に動いてるわ。

 

ここに残るのか、私達と一緒に行くのか。

今ここで決めなさい」

 

拒否して研究所に戻っても、また研究所達が良いように振り回され、不公平に身体を弄られる。自分の元の身体を取り戻す為に彼女達は立ち向かおうとする。たとえそれが、装者とも相対することとなるだろうとも。

 

 

「…分かった。貴方達を信じてみるよ」

 

ヴァネッサは、失敗作であるクロウも勧誘した。

クロウ自身、結社にはもう諦めがついている為、抜け出そうとは考えたが、この組織が倒壊したことが分かった今、この研究所に残るよりは彼女の誘いに乗る方が有意義だと理解した。あの身体の血液を他の誰かに売買されるよりは、彼女達の人間の身体に戻りたいという意思に同意する。

 

「それじゃあ…貴方には、私達の生き血になってもらおうかしら」

「…それって大丈夫なんですか?」

「大丈夫よ、貴方が抜いた血を活用させてもらったこともあったのだからね。貴方の実験資料も見させてもらったわ」

 

まず鉄を食らうことで力と体力を回復させる。その鉄を体内に蓄え、精製した血液を三人に分け与える。欠かせない血液が足りない時用としてクロウは【歩く抗生剤入りの輸血パック】といった扱いとなる。

 

半人外であるクロウの血を吸っても何も問題はない。実際に光明結社に保存されていた多量の輸血パックを使ったことがあったからだ。

彼女達が活動するには大量の生き血を搾取する必要がある。人間を襲って多量の血をいただく以上、死体の処理もする必要がある。クロウは貧血になっても鉄を体内に含めて何度も血を精製することで手間も省けることができる。人工的に作られた化け物とはいえ、彼の場合は元の身体になると人間と同じ性質の生き血を持っている。

 

(…人間じゃなくて、同じ化け物の血を吸っても大丈夫なのか)

 

クロウは研究員に無理矢理鉄を食わされ、血液を抜かれるよりは幾分かはマシだった。三人と共に同行することとなったが、実験の被験者とはいえ二人とはあまり接していないクロウを見て少し不安げな表情ではあった。

 

三人とも彼のことは知らないが、この四人で協力しつつ人間の身体を取り戻す為に協力して乗り越える必要があった。

こうして

 

ツギハギのフランケンシュタイン

主人思いのウルフ

血染めのドラキュラ

出来損ないのキメラ

 

以上、怪物に類する4名がノーブルレッドとして活動していく。

 

これは、神を打倒したSONG率いる装者達と敵対してでも、自分達の未来を取り戻す為に抗う物語である。

 

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