【番外編】海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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ハロウィン要素皆無のハロウィン番外編です。
ヤンデレとハロウィンをなんとか混ぜられないか考えてたんですけど無理だからもうヤンデレならなんでもいいと思って書きました。
てか長くなってこれはハロウィンに完結しないですごめん。
百合部分だけめっちゃ筆の進みがよかったあたり性癖を感じる。







番外編::ヤンデレなアイちゃんとのあるひとつの結末_前編

鈴のような声。煌めく瞳。

いちごのように赤く潤った唇は。全部全部、私が独占できると。

そう、思っていたのに。

 

 

 

 

 

パンッ、と音が廊下に響いた。

私は何が起こったかわからなくて呆然と瞬きをする。

隣のダニーさんとリナリアさんが私の代わりのように怒っている。

目の前には涙目の女性。綺麗な人。でも見たことがない。誰だろう?

 

「憎しみの女王は私の担当よ!!ふざけないで!!」

「お前のがふざけてるだろ!!急になにしてるんだよ!?」

「本当だよ!!ミシェル、貴女ユリさんと初対面だよね!?何してるの!?」

 

私に掴みかかろうとする女性を、ダニーさんとリナリアさんが抑えている。

私は自身の頬を撫でた。じん、とした熱さと痺れ。

……叩かれたんだ。私。

……なんで?

 

「私が!!私が彼女の担当なの!!あんたは代替品なの!!わかる!?」

「ちょっと!本当にやめて!アブノーマリティも刺激することになるのわかってる!?」

 

どういう状況かわからなくて、近くにいるエージェントさんに女性のことを聞いた。

当事者だと言うのに落ち着いている私をその人は驚いていたが、何が起こっているのかわかっていないのだから慌てようもない。

むしろ痛みは私の頭を冷やした。

 

「彼女は、憎しみの女王の元担当だよ。怪我でしばらく休んでたけど。」

「アイの?」

「アイ?」

「あ、いえ。なんでもないです。」

 

私は慌てて口を噤んだ。アブノーマリティに名前を勝手に付けて読んでるなんて、いい気分じゃない人もいるだろう。

しかしそれに女性は目ざとく、いや、この場合耳ざとくか。反応して、私を強く睨んだ。

 

「マイ・クイーンに変なあだ名付けないでくれる!?」

「マイ・クイーン?」

「気安く呼ばないで!!」

「ええ……。」

 

なんというか、ヒステリックな人だ。

あまりにもはっきりした怒りが逆に怖くない。

どうすればいいかわからず私は困ってしまう。私はこの人の名前もどんな人かもよくわかっていない。というよりも初対面なのに。

 

「……とりあえず業務開始時間だ。作業指示は管理人から送られてくるんだから、ユリさんに何か言っても仕方ないだろ?」

「それはっ……。……。私は、あんたがクイーンの担当なんて認めないから。何よその弱そうな腕。貧弱で、哀れね!このブス!」

「おおぅ……。」

 

女性の言葉にリナリアさんとダニーさんは怒ってくれるが、もはやここまで来ると潔くて怒る気にもなれない。

私はただ苦笑いをして立つだけだった。なんにせよ時間はやってくる。業務開始。

喧嘩をしている時間はないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイミングがいいのか悪いのか。

今日の一番最初の指示はアイへの交信だった。

私が収容室に向かうと案の定女性に睨まれる。怖い……。

なるべく目を合わせないようにして、早足で収容室に向かった。

アイに元々担当がいたのは初耳だった。でも確かにアイは私よりも前にこの研究所にいたようだったし、担当制が多いこの仕事では当たり前なのだろう。

復帰したということは、私はアイの担当を外されるのだろうか。

……ちょっと、悲しいな。

仕方ない事だけど。私を慕ってくれる彼女と会えなくなるのはやっぱり寂しい。

カバンにしまったアイからもらった髪飾りを見る。

ハートのそれは、私にはちょっとキラキラしすぎているけれど。

可愛くて、綺麗で大好きだった。

 

大好きだったのに。

 

考え事をしていたせいで、少し収容室を過ぎてしまった。

慌てて引き返す。いけない。仕事なんだから、気を引き締めないと。

それにもしかしたら、もうあまり作業できないかもしれないんだから。

扉をあけると、いつも通りのかわいいあの子。

私に気がついてにっこり。美しい笑顔で迎えてくれる。

アイ、と思わず名前を呼んだ。すると彼女はとても優しい声で、私の名前を。

 

「ユリ!嬉しい!会いたかった!」

 

いつもと同じはずなのに、いつもよりも胸に響くのは。

考えなくてもわかる。さっきの事のせいだ。

もし、私が担当から外されなかったとして。あと人はもう一人の担当になるんだろう。

もしかしたら私よりも仲良くなって。

そしたら、私は。貴女をアイと呼ぶことは出来なくなっちゃうのかな。

 

「私も、会えて嬉しいよ。アイ。」

 

アイの笑顔に笑顔を返すと、アイは小さく首を傾げる。

綺麗な手が私に伸びてくる。モデルさんみたいな、お人形さんみたいな。作られたように完璧な手が。

私の頬にふれて、滑らかに指で撫でられる。

 

「どうしたの?大丈夫?」

「え……。大丈夫、だよ。」

「……大丈夫な人は大丈夫なんて言わないわ。」

「え?」

「大丈夫な人はね、なんでそんなこと聞くの?って言うのよ。でも、ユリは言わなかった。何かあったのね?」

 

すごく優しい、愛おしさを詰めたような。

そんな視線を向けられて。私は思わず目を逸らした。

不意打ちにそういうことをしないで欲しい。心臓がどっ、とうるさくなって、身体が震える。

涙が滲んでくる。でもそれは寂しさとか悲しさでは無い。そんな冷たいものでは無い。

じわじわと暖かな何かが身体に広がる。胸ががきゅうっと締め付けられる。

 

「……ユリ?」

「う、ぁ、なんでも、ない。本当に。」

「やだ、そんな可愛い顔しないでよ。照れちゃう。」

 

クスクスと小鳥のような笑い声が聞こえて恥ずかしくなる。

しかしちらっとアイをみると、彼女の白い頬は赤く染っていて花のようだった。

それが可愛くて、すごく好きで。思わず触れたくなって手を伸ばす。

私がその頬に触れると、少し冷たく感じた。本当にお人形さんなのではないかと思ってしまうほど白く美しい陶器の肌。

撫でるとアイはほぅ、と熱い息を吐く。それが甘くて変な気分になる。

 

変な気分って、なんだ。

分からないから私達はただ見つめあって。

きっとお互いのことを考えている。

あぁ、嫌だ。この子の担当じゃあなくなるかもしれないなんて。

この子が、私以外の誰かの頬を同じように撫でるかもしれないなんて。考えたくない。

なんて自分勝手なのだろうか。私のものでは無いのにね。そう、私のものでは無いの。

 

『マイ・クイーンに変なあだ名付けないでくれる!?』

 

私は貴女を、〝マイ・ラブ〟なんて呼べないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







忘れちゃったかもだけど、アイちゃんの名前の由来は愛と正義の愛からです。だから〝マイ・ラブ〟。

ユリちゃんそれ普通に恋人のあだ名ってわかってる????????



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