【番外編】海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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【SCP関連の注意点について・必読】を必ず読んでからの閲覧をお願いします。

※この作品は宮野花が独自に書いたものです。

※主人公が闇堕ちしてます。SCP財団に歯向かう話。

※SCP財団を敵とみなす表現があります。



☆SCP:変化、或いは復元。_1

それに気がついた時の絶望とか、悲しみとか、痛みとか。

共有できる誰かがいるのなら、私はその人に会って、一緒に泣いてみたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋が荒れている。

クローゼットを倒してもスッキリしなかった。ドレッサーの鏡を割っても収まらなかった。椅子を壁に投げつけても、やっぱりこの痛みは取れなかった。

ある程度喚き散らして、それでも結局現実は変わらなくて。もうただ泣いているだけとなった、ところまでの記憶で途切れている。

気が付いたら私はベットの上にいた。起き上がると、そこにはいつもと変わらない部屋の姿。クローゼットはきちんと扉が閉まっていて、ドレッサーの鏡はピカピカで、椅子はテーブルとセットで置かれていて、何も無かったかのように。

コンコンとノックの音の後に、職員さんが入ってくる。お盆を持っているから食事を持ってきてくれたのだろう。

SCPとして収容されている私は、許可なくここを出ることが許されていない。だから食事を運んでもらうのはいつもの事だ。いつもと違うのは、その後に白衣を着た人が付いていることくらい。

 

「体調はいかがですか?昨日、突然倒れたんですよ。」

 

白衣の人が私に手を伸ばす。にこにことした笑顔。近付いてくる手。恐怖で一瞬呼吸を忘れて、私は反射的にその手を払い除けた。

 

「あっ……。」

 

しまった、と思った時には遅い。

払い除けた手の持ち主からは笑顔が消え、無表情で私を見つめる。

私は恐くなって目をそらした。すると「まだ疲れているのですね、ゆっくり休んでください。」という声と共に、職員さんが去る気配を感じた。その時どんな表情をしていたか、顔を見れない私にはわからなかった。

サイドテーブルにお盆が置かれている。食事はおかゆだった。きっと私が日本人という配慮も含めて食べやすいものを選んでくれたのだろう。

けれどそれに手をつける気にはならない。美味しい美味しいと楽しみにしていた食事だが、今となっては何が入ってるかわからないと疑ってしまう。

 

SCP財団に来て、何年になっただろうか。

昨日私は気がついてしまった。私にかけられた洗脳に。

ここで働きたいと思わされていたその呪いが、解けてしまったのだ。

 

それを知ってしまった時の感情と言ったら、例えようのない、強いて言うなら混乱のようなものだった。

騙されていたという思いはあまりなく、それは作られた感情だったのだろうけど偽物の感覚はなかった。

世界のためにという強い正義感は無くなりはした。けれどそれは〝気が付いたら忘れていた大好きだったもの〟に似ていて、自然と飽きてしまう、緩やかに覚めていく感覚に近かった。

 

だからだろうか。怒りはないのだ。驚く程に全く。今も。

 

それよりも痛くて痛くて仕方ない。心が、痛い。

私は部屋を見渡す。私を閉じ込めるための部屋。私はSCP。ここで私は人間ではない。

ならば今までのは。運ばれてきた食事は餌であって、頼まれた仕事は利用であって、定期的な見回りは監視であって、ここは、ゲージだ。

仲間だと思っていた人達にとって、私は所詮便利な収容物にしか、すぎなかった。

 

だと したら?

 

だとしたら、私は一生こうやって一人なのだろうか。

ここで死んでいくのだろうか。

満足に外に出してもらえずに、監視下の元、愛情すら偽物のここで、私は。

 

そんな、

 

……家族に会いたい。

私の大切な大好きな家族に会いたい!私のことを私として見てくれる母に、父に、兄弟たちに会いたい!!

友達に会いたい!!馬鹿みたいな話をして、一日を仕事もせず無駄に、楽しく終えたい!!

帰りたい!帰りたい!!そうすれば私は、また人間に戻れる!!

私は駆け出す。外に出るために扉に近づく。扉のノブに手をかける。

ここでない所に行きたくて、帰りたくて。

扉が開く。廊下に出る。そしてその廊下を進んでここから出た後は、その後は。

 

扉を開くと、職員さんがいた。

構えられた拳銃。発砲音。鋭い痛みに刺さる感覚。

目の前がぼやけて、次第に暗くなる。身体が支えられない。 倒れる中でうっすら聞こえた〝捕獲〟の言葉は、私の心を壊すのに十分だった。

 

 

 

 

 

 

 

「だから言っただろう。」

 

それは男の声だった。

 

「信じるなと。騙されていると。君は絶対に傷付くと。」

 

その言葉を聞いた後に、私は自分がベンチに座っていることに気が付いた。

ベンチは湖の前にある。ここは今何時なんだろう。空が灰色でよく分からない。

私の隣に男が座っている。その姿を見てここが夢の中なのだと気が付いた。

 

「そうだね、あなたの言う通りだった。」

「でも君は信じなかったね。」

「……ごめんなさい。」

「はは、いいよ別に。……いや、良くないか。結果君は傷ついてしまったのだから。」

 

この男に私は何回かあった事があった。同じような夢の中で、私達は会話した。

未来をよく知る彼の話は恐ろしくも面白かった。興味はあったし、気をつけた方がいいと教えてくれたことは、先の対処に繋がるので助かっていた。

その話の中で私が面白くないと思っていたのは、私の未来の話だ。

私は財団に洗脳されている。いつかその洗脳は解け、財団との関係は崩壊すると。

その話が嫌いだった。私は私の意思でここにいるのだと信じてやまなかった。今となっては信じたかっただけなのだと気付いたけれど。

 

「ねぇ、私これからどうなるの……。」

「このままだとまた洗脳されて、元に戻るだけだ。」

「そんな……。でも、その方が幸せなのかな……。」

 

また洗脳されて、私の意思だと信じていたあの時に戻れば。

この痛みはきっと無くなる。最初から無かったかのように。

 

「……叫んでしまえばいい。」

「え……。」

「彼らは助けてくれるだろう。」

「彼らって……。」

「SCP達だよ。」

「そんなこと出来ないよ!」

「何故?」

「皆の助けは……きっと、色んな人が死んじゃう。そんなこと、出来ないよ。」

「でも財団は君を殺す。」

「殺すまではされてないよ!」

「自分の頭を好き勝手に弄られて死んでないと君は思うのか?」

「そ、それは……。」

「殺されてたんだよ。君は君の意思を、財団に。」

 

男の言葉に、私は何も言えなくなる。

言い返せないということは、その言葉を否定出来ないという事だ。

けれどだからと言って男の言うことが正しいと思えない。思ってはいけない。もしそれを受け入れたら、私は人を殺すことになる。

 

「でもやっぱり、出来ないよ。殺したくなんてない……。」

「……君は優しいね。」

「……ごめん、なさい。」

「何故謝るんだい。」

「私のことを考えてくれたのに、それに応えられなくて……。」

「はは、そんな事か。別にいいんだよ。私は、君が幸せならそれでいいんだ。」

「……あなた達は、私に本当に優しいね。どうしてなの……?」

 

ずっと気になっていたことだった。どんなに探しても見つからなかった答えを、彼なら知ってるかもしれない。

私が聞くと男は笑った。柔らかく優しく。

 

「君が好きだからだ。」

「……なにそれ。」

 

その言葉に笑ってしまう。悲しみは少し薄れたようだった。

灰色の空が徐々に明るくなっていく。雲が晴れるのだろうか。

 

「そろそろ目覚めの時間だ。」

「そっか……行ってくるね。」

「これだけは忘れないで欲しい。私は君の味方だ。そして彼らも。君がどんな判断をしても、私達は君を攻めも、嫌いもしない。」

「……うん。ありがとう。■■■■■。」

 

私だけが知る彼の本当の名前。その響きが口に出た瞬間、目の前は真っ白になって、意識は遠のいた。

だから私は知らない。その言葉を彼が発した時、もう既に夢から覚めてしまっていたから。

 

「……たとえ君が〝悪い人間〟になったとしても。」

 

私達は君の味方だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ……眩しっ……。」

 

目を開けると、私はベットに拘束されていた。

眩しい光が当てられて、目が眩む。

多くの人たちが私を囲んでいる。白衣を着た人が私の顔をのぞき込む。

 

「瞳孔……正常。」

「あ!あの!はずして!逃げないから!お願い!」

「意識正常。いや、多少混乱もしてるか?」

「話を聞いて!ねぇ!」

「心拍、少し早いが異常なし。血圧も正常。」

「私、貴方達に協力する!だからどうか!」

 

私の言葉に一人の職員が動きを止めた。

 

「……SCP-000が何か言ってますが、」

「気にするな。続けろ。」

 

どうして。

 

「これは脅威になる可能性が高い。危険だ。さっさと洗脳して、記憶を消せ。」

 

どうして、信じてくれないの。

 

「どうして……。」

 

涙が溢れてくる。

どうして、そんなこと言うの。私は人を傷つけたいなんて思ったことない。

脅威って、何。

危険って、何。

 

『君は優しいね。』

 

夢の中の彼の言葉が頭に響く。胸が痛い。苦しい。

私は何もしてない。何もしたくなかった。

だって痛いのは嫌だ。死ぬのは怖い。殺されたくなんてない。

だから、それを誰かにしたいなんて思ったことない。

彼らにも家族があることを私はわかっている。そのために働くことも。皆一生懸命だって。生きるために精一杯なんだって。

私だってそうだ。生きるために働いているのだ。

ねぇ、だから私達は仲間でしょう。

私はずっとそう思っていた。大袈裟かもしれないけれど、こんな危険な職場で一緒に働く彼らは仲間だと思っていた。

 

違うの?

 

「……了解。特殊周波を流します。各自備えよ。」

 

……違うんだね。

 

 

ああ

 

 

 

 

 

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!

 

 

 

だれか!!!!だれか!!!!だれか!!!!

 

「助けて!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拘束を解いてくれたアベルは紳士的に私に手を貸してくれる。

らしくないと笑うと軽く小突かれた。痛い。

まだライトの眩しさが目に残っていて、慣らすために数回瞬きをする。

すると次目を開けた瞬間に目の前に彫刻がいて驚いた。

その硬い手を私の腰に回して硬直している。私は動かない彼の体を撫でた。触り心地がとても悪い。

しばらく撫でていると足元にふわふわとした感触。なんだろうと下を見るとビルダーベアことテディちゃんがいた。

ぎゅっと足首にしがみついている姿が愛らしくて、彫刻の腕のなかで上手く体を動かして、その体を抱き上げた。彫刻と同じように撫でる。こちらは触り心地最高だ。

 

「おい。」

 

ぶっきらぼうな声が聞こえて振り返る。

そこには予想してなかった姿があって、私は驚いてしまった。

 

「トカゲさんも来てくれたの?」

「お前のために来たわけじゃねぇ。楽しそうだからってだけだ。俺は別にお前が死んでもどうでもい、」

 

不死身の爬虫類ことトカゲさんに、時速160kmの速さでトマトが飛んできた。通り過ぎる時に私の髪が揺れる。すごい風だ。

トカゲさんの顔にクリーンヒットしたトマト。最強とも言えるその身体がよろめいたのだからもしかしたら時速160kmよりも早かったかもしれない。

 

「私が死ぬなんて、つまらないこと言うからだよ。」

 

私は笑う。なんだか楽しい。

トカゲさんから垂れたトマトの汁が床に落ちる。けれどもう既に真っ赤な床だから掃除する手間はないだろう。

吹っ切れてしまった私は思う。これなら赤い床も素敵ね、と。

たとえそれが職員達の血で染まったとしても、もう、気にならない。

 

 

 

 

 

 




この作品は以下を参考に制作された完全二次創作です。本家SCPとは一切の関係がありません。

【参考資料】

SCP財団日本支部
http://ja.scp-wiki.net/

Author: Dave Rapp
Title: SCP-990 - ドリームマン 
Source: http://www.scp-wiki.net/scp-990

Author: Researcher Dios
Title: SCP-1048 - ビルダー・ベア 
Source: http://www.scp-wiki.net/scp-1048

Author: Kain Pathos Crow
Title: SCP-076 - "アベル" 
Source: http://www.scp-wiki.net/scp-076

Author: Dr Gears
Title: SCP-682 - 不死身の爬虫類 
Source: http://www.scp-wiki.net/scp-682

Author: Moto42
Title: SCP-173 - 彫刻 - オリジナル 
Source: http://www.scp-wiki.net/scp-173

Author: BlastYoBoots
Title: SCP-504 - 批判的なトマト 
Source: http://www.scp-wiki.net/scp-504

CC BY-SA 3.0
(この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンス3.0ライセンスの下で公開致します。)
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