【番外編】海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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【SCP関連について・必読】を必ず読んでからの閲覧をお願いします。

※この作品はNFS様と宮野花の合同作品になります。

※SCP財団を敵とみなす表現があります。





☆SCP:不毛な会話_3

20██/██/██/03:00

第二次プロトコル・シィキュアル開始。

 

20██/██/██/05:02

攻撃部隊は壊滅するも、第二次プロトコル・シィキュアルは成功。SCP-000は厳重な拘束及び警備態勢の元、サイト-██へと直ちに収容された。

 

20██/██/██/06:40

SCP-000-2群、無差別攻撃を開始。防衛線βが致命的な被害を受ける。

 

20██/██/██/07:00

事態の収束を図る為、O5評議会は厳戒態勢の元、SCP-000へのインタビューを許可。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実はね、少し考える時もあるんです。私はこんなこと本当にしたかったのかなって。」

 

収容室の中、多勢での厳重な警備と拘束をされた彼女はそう言った。

彼女は椅子に縛り付けられている。動けないよう腕足、首も固定され目隠しもされている。先程まで口も塞がれていたのだが、財団は彼女に発言権を許した。

話す事を許された彼女はゆっくりと口を動かした。赤い唇の動きに、そこにいる誰もが唾を飲む。

 

「悪いことをしたという気はあります。罪悪感も。後悔も。私のせいで、もっと言えば私のために動いたあの子達が原因で多くの人が死に、今も死に続けている。」

「……なら、それを今すぐ止めさせてほしい。」

「私だって元はただの一般人。痛いのは嫌だし、殺しなんて見たくない。」

「我々も君にこんなことをしたいわけではない。」

「……は?」

 

彼女と対話する職員の言葉に、彼女はあからさまに声のトーンを下げた。

 

「こんなことをしたいわけでは、ない?こうなったのはどうしてだっけ?ねぇ、どうしてこうなったか、わかる?あの日、私にかけられた洗脳が解かれて、貴方達は私の言葉も聞かずに私の脳をまた弄ろうとした。どうして?私の言葉を聞いてくれなかったのは、何故?」

「それは……。」

「私は、……貴方達を仲間だって思ってた。それは洗脳が解けても同じだった。たとえ最初が作られた感情ではじまったものだったとしても、働いているうちに芽生えたものに嘘はなかった。私は、信じて欲しかった。」

 

彼女の声がだんだんと小さくなっていく。震えている声は悲しみを訴えていた。

その姿を見てその場にいる者の心は皆少なからず揺さぶられる。ある者は同情、ある者は疑惑、ある者は彼女を、助けたいとさえ思った。

何故なら彼女はついこの間まで、この場にいるもの達と共に働き、会話し、コミュニケーションをとっていたからだ。

その上で、この言葉である。私情によって何らかの感情が芽生えるのはある意味当然で、けれど世界最高峰のセキュリティの彼らはそれを外に出すことは許されていなかった。

 

「ねぇ……、私をこれからどうするの。」

 

彼女が聞く〝これから〟は、あまりいいものではなかった。

それは仕方の無いことであった。彼女は反逆者だ。

彼女はSCP-000。〝他の異質から好かれる〟という特異体質を持つSCP。その力を使って起きた集団収容違反は最悪の被害を今も出している。

危険と恐れ、収容し、管理下に置いているSCP。それをたった一言「助けて」で彼女は動かしてしまった。

そんな存在を野放しにしているわけにはいかない。けれど彼女の場合殺すわけにもいかない。

それは彼女への慈愛ではなく、他SCPの怒りを買うことを恐れた結果であった。

彼女の今後は、より厳重な監視下に置かれることが決定されている。

しかもそれは今のように動きを封じ、ただ生かすために栄養と水分を与え、ひたすら植物のように過ごすというものだ。そうして人類はただただ彼女の寿命を待つ。それしかなかった。

それを口にするのを職員は躊躇う。彼女は返事を待たずにまた口を開いた。

 

「……あの子達を止めてあげてもいいですよ。」

「!本当か!」

「はい。……ただ、条件があります。」

「その、条件は。」

「私と、私の指定するSCPの解放。」

「それは……!?」

 

彼女の言葉に、その場がざわついた。

 

「SCPは確かに危険な存在でもあります。でも、あの子達は私の言うことを聞いてくれる子も多い。私がちゃんと説明すれば逆にSCP収容を手伝ってくれるでしょう。さすがに全てのSCPとは言いませんが……、だからちゃんと指定します。」

「それは無理だ!あまりにも危険すぎる!」

「危険にならないよう、私がいるんでしょう。それにこのまま鳥籠に閉じ込めるなんてあの子達が可哀想です。」

「可哀想って、……そんなのは綺麗事だ。」

「綺麗事?危険だから閉じ込めるのはわかりますよ。人間の勝手だったとしても、私達はそうやって身の安全を守り繁栄してきた。けれど言ってるでしょう。私がいれば、あの子達は危険じゃあない。以前以上にしっかり、私があの子達に言い聞かせます。危険でもないあの子達を縛り付けるのは間違ってる。」

「……随分自信があるんだな?」

「はい。信じてください。」

 

彼女のはっきりした声に、職員はしばし考えた。

ピンと張り詰めた空気が流れる。彼女は返答を待った。その場にいる隊員も、職員の言葉を待った。

悩んだ末に、職員は口を開いた。出した結果はNo。けれど口には了承の言葉を用意した。

彼女の言うことを呑むことはできない。どちらにせよ職員一人で決断していいものではなかった。

けれどとりあえず、今外で起きているSCP達の暴動を止めなければいけない。その為には形だけでも彼女の条件を呑むしかないと考えたのだ。

 

「いいだろう。その条件を呑む。」

「……本当ですか?」

「あぁ。……嬉しくないのか?」

「どうしてか、理由を聞いても?」

「君ならSCP達を止められる。これからのメリットもある。互いの利害が一致した交渉の結果だと思うが?」

「……ふぅん。じゃあ早くこの拘束解いてください。」

「……SCPを止めるのが先だ。今も被害が酷い。一刻も早く止めてくれ。」

 

職員の言葉に、彼女の一瞬彼女の口が動きを止めた。

しかし直ぐに、唇を噛むように動き、きつく噛み締められたその口からは、酷く苦しんだ声が出た。

 

「結局貴方達は私をただの〝力〟としてしか見ていない。」

「は……。」

「どうせ条件を呑むつもりなんてないんでしょう。少しでも期待した私が馬鹿だった……。」

「待て、約束は守る。本当だ。」

「貴方一人でそんな決定出せるんですか?本当に考えてくれるなら、もっと考える時間を要求されると思いますが。それをしないということは、はなから要求を呑むつもりなんてないんでしょう。」

「それは……。」

「結局貴方達は、私を信じてくれない!!私の〝力〟しか、信用していない!!」

 

彼女は今までにない叫びを職員に浴びせた。

あまりにも大きくて、力強い声を出したせいか、彼女の息は乱れ、苦しそうだった。

それでも彼女は話し続ける。

 

「もちろん自分の力を私も信じています。けど、それ以上に私はあの子達を信じている。好意を持っていたとして、私の願いを聞いてくれる保証なんてない。けど、あの子達ならきっとわかってくれると信じていたから、私はこの話をしたんです。

本当に考えてくれるのなら、あの子達を止めるつもりでした。嘘なんて、私はついてない。ついたことない。あの時だって、記憶をいじられる時だって、私は本心で〝協力する〟って言ったのに……。どうして、信じてくれないの……。」

 

話し続ける彼女は泣いているようだった。

目隠しの隙間から、涙が流れていく。それは頬を伝って重力に身を任せ落ちていく。そうしてただただ彼女の服を濡らした。

 

「私はあの子達を信じて、貴方達は私を信じるべきだった。そうであってほしかった。でも貴方達は、私を信じなかった。……もう、いい。」

「!SCP-000の口を塞げ!!」

「もういいよ。殺して。」

 

瞬間、隊員達の頭は吹っ飛んだ。

幸か不幸か、いや確実に不幸だろう。話していた職員はその時無事であった。彼は何が起こったのか状況がわからない。何故か突然人の首が吹っ飛び、そして何故か今、彼女の拘束具が外されているのだ。

未知の恐怖に職員は怯え、腰が抜けて動けなくなっていた。

その姿を見て、拘束が解かれた、自由の身の彼女は笑った。

 

「私が、何の対策も無く貴方達に捕まる訳が無いじゃないですか。わざと捕まったんですよ。ちょっとお話がしたくて。そしてこの子はずっと私のそばにいました。でも私のお願いを聞いてずっと何もしないでいてくれてたんです。言ったでしょう?私がいれば、この子達は危険じゃないと。」

 

 

彼女はそう言って、上に手を伸ばした。

そして、次の瞬間、その場にいた何かの正体が露わになる。彼女の手に合わせて屈んだSCP-372が、そこにはいた。

彼女はSCP-372の頭を撫でる。優しく。愛情を込めて。

 

「……まぁ、それもさっきまでの話ですけどね。」

 

彼女は伸ばしていた腕を職員の方に向けた。手の形は人差し指だけを伸ばして、職員を指さす。

 

「貴方は特別に生かしておいてあげます。そして、ここから見ていればいい。貴方達の世界から太陽がなくなるのを。深く深く、真っ暗な地獄に人類が落ちていく過程を見ながら、今この瞬間のことをずっと後悔して、最後にはこれ以上ないくらいに苦しんで、そして、死ね。」

 

彼女はそう言って、職員に背を向けた。

そうして出口へ歩いていく。もう振り向くことは無い。

歩いている途中、彼女の隣を歩くSCP-372は、彼女の頬を軽く撫でた。

先程隊員の頭を飛ばしたとは考えられないほどの優しさで、その手は動く。それが擽ったくて彼女はつい笑ってしまった。

 

「ふふっ、ありがとう。慰めてくれてるの。」

 

SCP-372は誰も止めることの出来なかった彼女の涙を拭った。

彼女は頬にあたたるその手に自らの手を被せて、人ではない体温を感じながらそれにお礼を告げる。

 

「貴方にも名前をつけてあげなきゃね……。〝視界を飛ぶもの〟なーんて、呼びにくいもん。」

 

その言葉に反応したのか、彼女の頬に触れている手が嬉しそうに震えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20██/██/██/07:14

サイト-██より救難信号受信。機動部隊[編集済]が救援に向かう。

 

20██/██/██/07:29

機動部隊[編集済]の報告により、サイト-██壊滅を確認。SCP-000は再度収容違反。SCP-000の収容違反発覚とほぼ同時刻にSCP-000-2群は総攻撃を開始。防衛線β壊滅。死者累計は最低████万人と推定される。 




この作品は以下を参考に制作された完全二次創作です。本家SCPとは一切の関係がありません。

【参考資料】

SCP財団日本支部
http://ja.scp-wiki.net/

Title: SCP-372 - 視界を飛ぶモノ 
Author: Sylocat
Source: http://www.scp-wiki.net/scp-372
CC-BY-SA



CC BY-SA 3.0
(この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンス3.0ライセンスの下で公開致します。)
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