【番外編】海外移住したら人外に好かれる件について   作:宮野花

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【SCP関連について・必読】を必ず読んでからの閲覧をお願いします。

※この作品はNFS様と宮野花の合同作品になります。

※SCP財団を敵とみなす表現があります。



☆SCP:一つの結末_5

特別事案報告-000-990:20██/██/██、Crest博士の夢にてSCP-990が出現。Crest博士がインタビューを行った際、SCP-000に対しての発言がありました。インタビューを記録した媒体が存在せず、信頼性にやや欠けている点がありますが、重要度の高さから特別に本報告書に記載されています。

以下はCrest博士が起床直後に書き留めたメモの内容です。

 

 

SCP-990:やぁ、いい天気だね。Crest博士。

 

Crest博士:貴方は………ふむ、そういう事か。初めまして、だな。SCP-990。

 

SCP-990:そんな名前で呼ばないでくれ。そうだな…テリー、いや、ブライアンと呼んでくれ。

 

Crest博士:ならそうしよう、ブライアン。早速本題に入るとしようか。どうして君が私に会いに来たのか。何か理由でもあるのか?

 

SCP-990:何、少し話をしようと思っただけさ。『彼女』も目覚めた所だ、君達にちょっとしたアドバイスをしなければね。

 

Crest博士:彼女?

 

SCP-990:SCP-000。君ならよく知っているだろう?

 

Crest博士:[沈黙]

 

SCP-990:いつかの時はまだ彼女は生まれていなかったが…今では君達の見える所に彼女はいる。

 

Crest博士:…なるほど。文書990-02の『彼女』とは、SCP-000を指していたという事か。

 

SCP-990:[短い沈黙後]彼女は君達に大いなる利益をもたらし得るが、同時に大いなる災厄にもなり得る。君達は今後、いくつかの選択肢が用意されていく。それを決して間違ってはいけない。間違えれば、一度入った亀裂は治る事は無い。そしてその僅かな亀裂は拡大し、侵食し、いずれは全てを壊してしまうだろう。それ程迄に彼女は危ういバランスで今を保っている。彼女の悲しむ顔を見るのは、私も本意ではないのでね。

 

Crest博士:…貴方も、SCP-000の異常性の影響下か。

 

SCP-990:女性の流す涙は、我々が流す涙よりも何倍も悲しい物さ。…おお、これは…

 

Crest博士:…何が見えているんだ?

 

SCP-990:彼女と、彼女が出会ってきたSCP達。そして彼女と出会うであろうSCP達。この光景を見る事になるとは、いやはや、実に壮観だよ。このような光景を見るのは初めてだ。

 

Crest博士:…一体、何体のSCPが居るというんだ…

 

SCP-990:目覚まし時計の音だね。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……久しぶりだね、お嬢さん。」

「貴方がいるってことは……ここは……夢?」

 

気が付くとユリは湖の前に立っていた。

最近は疲れのせいでぼんやりとした頭が妙にすっきりしている。

恐らくそれはこの世界が夢なのと関係しているのだろう。事実、体も軽くて、こんなに体調がいいのは久しぶりだった。

 

「そうだよ。さぁ、そんな所に立っていないで座った方がいい。この隣はいつも君のために開けているのだから。」

「口が上手いなぁ。」

 

ユリに話しかけた男性は、自身の座るベンチの隣を軽く叩いてユリを誘った。

それに従って、ユリはベンチに腰掛ける。湖に向かい合わせになるこのベンチはユリのお気に入りだった。

夢は相変わらず曇り空だった。

それなのに湖は水面が揺らめく度にキラキラと輝き、優しく波打ち、音も立てずに流れていく。

ほぉ、とユリは息をついた。こんなにも穏やかな時間も気分も久しぶりすぎたのだ。

 

「……酷いクマだ。」

 

男性にそう言ってユリの目元を撫でた。

親指がゆっくりとそこを往復する。それが擽ったくて、肩をすくめる。

 

「やだ、不細工かな?」

 

そうおどけて言ったのに、男性は顔を顰める。

 

「もうずっと寝てないだろう。」

「そんなことないよ。」

「何日間寝てない?」

「……覚えてない。」

 

男性の鋭い指摘にユリは目を逸らす。何日寝ていないかなど、四日以降は数えるのを止めてしまったからだ。

ユリが眠る時、必ずSCPの誰かは傍にいてくれた。それに安心しながらもどうしても寝付くことは出来ない。

次第に寝たフリだけが上手くなり、疲れは蓄積するばかりであった。

眠れない理由など心当たりがありすぎてどれが原因なのかわからない。

ユリは湖の水平線を見つめる。灰色の空。雲の蓋はとれない。

 

「わからないの。もう何が正しいか、わからない。」

 

ポツリ、とそう零れた。

 

「叫んでしまったの。」

「助けてって。」

「そのせいで、多くの悲鳴が聞こえる。助けてって。」

「私、取り返しのつかないことをしちゃった。ううん、今もしてるの。取り返しのつかないとわかっていながら今も私は。」

 

ユリはまっすぐと向こうを見つめる。本当は目を逸らしたいけれど、彼女はそれは許されないことだと思っていた。

 

「きっと、家族も死んだ。」

「……生きているかもしれないじゃあないか。」

「いいえ。死んだの。こういう時に闘うのが家族の仕事だったから。」

 

ユリの手が震える。

 

「ひとり、ひとりと殺すうちに」

「私は人間で無くなってるのかもしれない。」

「……あぁ、どうか、泣かないで。」

 

とうとう零れてしまった涙を男性は優しく指の腹で拭ってやる。

それでも次々に溢れてきて、それは止まらない。

 

「泣くなんて、馬鹿みたいだよね。こんな酷いことしてるのに。」

「……それでも私は君が好きだ。」

 

男性がそう言うと、ユリはやっと視線を彼に向けた。

その瞳は大きく見開いて、しかしやがてくしゃりと歪んだ表情で、ユリは男性に抱きついた。

 

「お願い」

「お願い、私を。私を殺して。」

「もう、私は耐えられない。」

 

それはもう、悲鳴だった。

絞り出した言葉はユリの苦悩で、鉛玉のようだった。

本当にユリは限界なのだろう。今まで出せなかった恐怖が、不安が、後悔が、嫌悪が、罪悪感が、全てが彼女を圧迫し殺しにかかってくる。

それでも男性は目の前の人を殺すことなどできなかった。ただ優しく抱き締め返して、その震える背を撫でることくらいしか、彼にはできない。

 

「殺せない。死なないでくれ。」

「どうして。」

「君のような美しい人を、殺すことなんてできない。」

 

男性の声は心からのものだった。

彼はこんなに悲しいことなどないと、苦しそうにそう言ったのだ。

その言葉にユリはたまらなくなって、より強く男性に抱き着く。酷い表情を見られないように、胸に顔をうずめた。

 

「……まだ、私を人間って言ってくれるんだね。」

 

その言葉は救いであった。それと同時にとても残酷なものであった。

まだ彼女は死ぬ事が出来ない。多くの命を奪った罪から目を背けるなど許されることとではなかった。

それでも彼女は死んでしまいたかった。もう全てを投げ捨てて、もう明日などきてほしくなかった。

暫く泣いていたが、ユリは不意に顔を上げた。

そうしてまた湖の先を見る。

 

「……!!」

「また閉じ込めるつもり?」

 

ユリはそう叫んだ。誰かに向かって。

しかし男性には誰の声も聞こえない。

 

「何回言っても、話してもくれない。そうやってまた攻撃してきて。」

 

それはユリにだけ聞こえているのか。

それともユリが作り出したものなのか。

男性にはわからないけれど、ユリの明確な怒りは伝わってきた。彼女は、怒っている。

 

「……謝ってよ!!」

「そうすれば済む話だわ!!何度だって言ってるじゃない!!ちゃんと、話して!!協定を!!私を信じ……、」

 

そこまで言って、ユリは言葉を止めた。

彼女はわかっている。この争いの根本は。

自分が、信じてもらえないような器であるせいだと。

自身の手を見る。弱々しい手。なんの力もないと、幼い頃に両親から言われたのと同じ手。

変わっていない。あの頃からずっと自分は、誰にも信じてもらえない。

 

「……起きなきゃ。」

「……行くのかい?」

「うん。」

 

いつかの、誰かの言葉を思い出す。

 

『妹さん……は、力がないですよね。違う方に電話かわっていただけますか。』

 

「もう、うんざりだけど。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイテム番号:SCP-000

オブジェクトクラス:Apollyon [当オブジェクトはSCP-000の異常性に暴露しています]

 

緊急プロトコル:現在無力化及び破壊手段、反ミーム因子の研究が最優先で継続されています。あらゆる状態でもSCP-000の直視を避け、可能な限り確認、情報拡散しないように徹底して下さい。認識災害に暴露した者に対する記憶処理は、Gクラスであっても無意味です。よってSCP-000の認識災害に暴露した者は即座に自己終了、もしくは即時終了の対象となります。暴露者を発見次第あらゆる方法で認識災害の拡大を阻止して下さい。このような異常性により、現在SCP-000の詳細な情報は全て破棄され、極めて強力な認識災害を展開する事以外は分かっておりません。全機動部隊は当オブジェクトとの接触を可能な限り回避して下さい。

 

説明:SCP-000は現実改変によって自身に異常性を獲得した人型オブジェクトです。現実改変による他SCPの統率能力に加え、SCP-000を目視する事によってクラスX以上の認識災害に暴露し、平均して約24時間〜72時間の段階的かつ重度の精神異常の後に、暴露者はSCP-000-3となります。SCP-000-3はSCP-000と酷似した異常性を持つようになりますが、コミュケーションを介してのみ認識災害を拡大させます。この為、SCP-000-3とのコミュケーション行為は一切禁止されております。この認識災害はミーム汚染的側面を持っており、SCP-000-3とのコミュケーションでも認識災害は拡大してしまうからです。

 

補遺1:SCP-000の異常性に始めて暴露した機動部隊[削除済]、GOC排撃班の回収後、サイト-57に移送されました。結果、移送より16時間後にサイト-57内にてミームパンデミックが発生。サイト-57は緊急閉鎖。以降如何なる理由であってもサイト-57の立ち入りは緊急閉鎖より504時間の間は禁止されています。

 

補遺2:SCP-000は現在[データ破損]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方達にはとことんうんざりさせられる、

 

 

貴方達は嫌になる程抵抗する。

 

 

もう貴方達の抵抗は無意味だというのに、何で貴方達は無駄に抵抗するというの?最早貴方達はこの星の支配種足り得ない、そもそもこの星は何者の物でも無いというのに。

 

もう、終わりにしよう?こんな悲しい事は。時計の針を留めて、こんな世界を変えてあげる。誰も争わない、静寂で、平和な、そんな幸せな世界を。あの子達に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして全てが終わったら。

安っぽいロープの輪と、腐った木の椅子

結末は用意されている 

 







この作品は以下を参考に制作された完全二次創作です。本家SCPとは一切の関係がありません。

【参考資料】

SCP財団日本支部
http://ja.scp-wiki.net/

Author: Dave Rapp
Title: SCP-990 - ドリームマン 
Source: http://www.scp-wiki.net/scp-990

CC BY-SA 3.0
(この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンス3.0ライセンスの下で公開致します。)
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