「ニゲナイデヨオニイサン!!」
「だが断る!」
降り注ぐ赤い糸の隙間をギリギリのところでよけながら部屋の中を逃げ回る。
「くっどうすれば……!」
フランに憑依しているNo.は二体、ヘブンズストリングスとジャイアントキラーだ。ヘブンズストリングスは赤い糸に捕まったモンスターを次のターンにすべて破壊するという強力な効果を持つモンスターだ。
「コッチニキテモットアソボウヨ!!オニイサン!!」
「どわっ!危ねぇ!」
フランが左手の指の一本一本から赤い糸を放つ。それは俺のすぐ目の前を飛んでゆく。もう少し早く飛んでたら捕まっていただろう。あれはジャイアントキラーの効果だ。ジャイアントキラーは指から糸を放ち、それに捕まったモンスターを引き寄せ、粉砕するこれまた恐ろしいモンスターだ。粉砕される自分の姿を思い浮かべ、冷や汗を流す。
「……ヤッパリオニイサンモニゲルノネ。」
「え?」
突然糸が降ってこなくなる。それと同時にフランの動きが止まる。
「イツモ、ミンナソウ……ワタシガアソボウトスルト、ミンナニゲル。ワタシハモットミンナトアソビタイダケナノニ……」
「フラン……」
「ナノニナンデ?ナンデミンナニゲルノ?ワタシハタダアソビタイダケナノ!ナンデミンナスグニコワレチャウノ!?モット、ミンナト、オニイサント、アソビタイヨ……!」
フランの頬に涙が流れる。そこにはもう先程までの残虐な彼女の姿は無かった。その姿はただ悲しみに暮れる一人の少女だった。
「……」
俺は何も言わずに剣をおろす。そして彼女の近くまで歩み寄る。
「……!」
俺は無言でフランを抱きしめる。
「オニイサン……コワクナイノ?ワタシ、オニイサンヲコワシチャウトコロダッタノヨ?」
「壊れる?あの程度で壊れるほど俺は弱くないさ。」
「オニイサン……」
「フラン……もっと遊ぼう?No.の力なんて、もういらない。俺は君と、フランと純粋に遊びたい。」
「オニイサン……ワタシ、モッと、お兄さんと遊びたいよ……。」
フランの中からNo.の力が消えてゆく。どうやら自力でNo.の呪縛を解いたようだ。まったくすごい子だな。
「……余計な事を。」
「「!」」
突然フランの背後にNo.40が現れる。
「フランドール。貴様はその能力のせいで人々から嫌われ、我々に目を付けられたのだろう?我々の力を拒絶したところで、一体何が変わるというのだ?人間なんて信じるだけ無駄だ。そんな事も分からないのか?」
「……っ!」
「フラン!惑わされるな!」
「そいつもそんな事を言っているが、どうせいつか貴様を裏切るのだ。それが人間という生き物だ。」
「違う!俺は君を裏切らない!そんな奴の言葉を信じるな!」
「フランドール。私と手を組んで世界を作りかえようじゃないか。人間なんていない、新しい世界を。」
「フラン!そんなのダメだ!」
「お、お兄さん……」
「「フラン(ドール)!!」」
俺とNo.40が同時に叫ぶ。
「私は……私は……!」
フランの右手に再びレーヴァテインが握られる。そして次の瞬間、フランが動いた。
「フ、フランドール……貴様……っ!」
俺が見ると、そこには頭から両断されたNo.40の姿があった。
「私は……お兄さんを信じる。お兄さんと一緒に新しい未来へ歩む!あんたなんて必要ないのよ!」
「フラン!よく決断した!後は俺に任せろ!」
俺は一瞬でNo.40の目の前まで移動する。そして剣を掲げ、あたりの光を集める。光が集まり、剣はより一層輝きを増す。
「ぐおおおっ……貴様らぁ……っ!」
「消えろ!No.40!」
掲げた剣をNo.40に向けて突き刺す。
「ぐおあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
断末魔と共にNo.40が剣に吸い込まれる。No.40がいたところは空中に剣が浮かんでいた。
「ふぅ……まったく手を掛けさせやがって。」
俺は空中に浮かぶ剣を取る。すると剣は光となって消え、俺の手にはカードとなったNo.40があった。
「お兄さん……終わったの?」
「ああ、終わったよ。全て、な。」
俺がそういうと、フランが俺に抱きついてきた。ヤバイ、可愛い。そんな事を思いながら俺はフランの頭を撫でる。そして一つ思い出す。
「そういえばフランにはもう一体No.が憑依してたよな?」
「あ、この子はいいの。この子も私と同じように人々から遊んでもらえなくなって、捨てられた人形がNo.となったものらしいの。ね?そうでしょ?」
フランがそういうと、返事をするように左手の甲の15という数字が淡く光る。
「……そうか。じゃあそのままでも問題ないかな。」
「うん!」
フランが嬉しそうに頷く。
「さぁフラン!遊ぼうぜ!」
「え!いいの!?」
「ああ!だが手加減はしないぞ!」
「ふふーん!その言葉後悔させてあげるわ!」
俺達は笑いながらスペルカードを展開する。
射撃『ゴッド・シャーター』
禁弾『スターボウブレイク』
~紅魔館外部~
「フラン!!」
俺達がボロボロの姿で外に出ると、レミリアが真っ先に飛びついてきた。よほど妹の事が心配だったのだろう。目には涙を浮かべている。
「お姉様……心配かけてごめんね。もう大丈夫よ。」
「フラン……馬鹿……ばかぁ……。」
俺はレミリアに今までの事を説明した
「……知らなかったわ。フランがそんな事を思っていたなんて。私がフランを大事にしすぎるあまり、人を殺さないよう地下に幽閉したのが……フラン、本当にごめんなさい。」
レミリアが涙を流したままフランに頭を下げる。その姿はいつものカリスマ溢れる吸血鬼ではなく、ただ妹のことを思う姉の姿だった。
「お姉様……もういいのよ。顔を上げて。」
「フラン……私を許してくれるの?こんなダメなお姉ちゃんを?」
「お姉様はダメなお姉ちゃんじゃないわ。お姉様は私の事を大切な家族だと思ってくれていたんでしょう?」
フランがそういうと、レミリアは無言で頷く。
「それで私は十分よ。これからもよろしくね。お姉様。」
「フラン……」
「伊藤さーん!」
俺がその光景を見てると、突然咲夜さんが飛びついてきた。
「どわっ!?」
「どれだけ心配したと思っているんですか!私の気持ちも考えないで!」
「う、うん。悪かったよ。ごめん。」
「ごめんで済むと思っているんですか!本当に償いたいんなら私と……」
「あー!咲夜!お兄さんは私のものよ!離しなさーい!」
「いいえ!いくらフランお嬢様でもこれだけは譲れません!」
フランと咲夜さんが俺の両腕を掴んで、別々の方向に引っ張る。
「いてててて!ちょっと!俺ちぎれる!頼むから離して!」
「「駄目(です)!!」」
「ぎぃやぁぁぁぁぁ!」
「……青春ね。」
「ええ、そうですね。」
パチュリーと美鈴がこちらを見てニヤニヤと笑っている。
「モテモテだな。主は。」
「なんだ?羨ましいのか?お前ひょっとしてロリコンか?お前がそんな奴だったとはな。意外だぜ。」
「……殺すぞ(ボソッ」
「え?」
「なんでもない。」
コートオブアームズとNo.96が何やら物騒な会話をしている。コートオブアームズの裏の性格を垣間見た瞬間だった。
~数分後~
「うー……死ぬかと思った。」
「ごめんなさい……お兄さん。」
「本当にすみません。つい取り乱してしまいました。」
フランと咲夜さんが俺に頭を下げて謝る。
「別にいいよ。あ、そうだ忘れるところだった。」
「何かしら?」
「一週間後、博麗神社で宴会があるんだ。その事を伝えにここに来たんだけど……危うく忘れるところだったよ。」
「えー!宴会!?」
宴会と言う言葉に真っ先に反応したのはフランだった。ずっと地下に幽閉されていたからこういう行事は珍しいのだろう。
「うん。フランも来るか?」
「行く行く!絶対行く!」
「分かった。霊夢に伝えておくよ。楽しみにしとけよ?」
「うん!お兄さんに会いにいくよ!すっごく楽しみ!」
「それじゃあ俺はそろそろ帰るよ。フラン、またな。」
「えー!お兄さんもう帰っちゃうの?」
「流石にそろそろ帰らないと夜になって危ないからな……」
辺りはもう既に暗くなり始めていた。夜は妖怪の活動が活発になるらしいからあまり出歩かないほうがいいらしい。
「伊藤。」
レミリアが俺の目の前に立つ。
「フランを救ってくれて、本当にありがとう。感謝するわ。」
「いやー、別に感謝される程でもないよ。」
「貴方、紅魔館に住む気はない?フランや咲夜も貴方にご執心のようだし。」
「あー……いやすまん。もう既に博麗神社に住むことが決まっているんだ。」
「そう……残念ね。まぁ何かあったらいつでもここに来なさい。私達は貴方を歓迎するわよ。」
「霊夢と喧嘩したらここに来ようかな?」
「ええ。いつでも来なさい。歓迎するわよ。」
「分かった、ありがとう。まぁそろそろ帰るよ。じゃあな!」
「お兄さーん!またねー!」
俺が空を飛んで帰ろうとすると、皆が手を振って見送ってくれた。俺は皆に手を振り返し、神社に帰っていった。
~博麗神社~
「あんたねぇ……何で宴会のことを伝えるだけなのにそんなにボロボロになっているのよ。」
「ちょっと遊んでた。」
「はぁ……まぁいいわ。風呂湧いてるからさっさと入ってきなさい。そのままだと汚いから。」
「おう、そうさせてもらうよ。」
傷だらけの体で風呂に入るとお湯が傷口に染みて凄く痛かった。うん、当たり前だね。
[今回手に入れたNo.]
No.40 ギミックパペットーヘブンズストリングス
昨日は出せなくてすみませんでした……小説書いてたらまさかの寝落ち\(^o^)/以後気をつけます。さて次回は博麗神社で宴会!それでは次回もゆっくり見ていってね!