「また、この夢か。」
目の前で父と母が殺される。この夢はいつ見ても慣れない。いや、慣れたら逆におかしいのだろうか。しかし、今日の夢はいつもと違った。
「俺に……もっと力があれば……」
「……力、ねぇ。」
「っ!?誰だ!」
突然背後から男の声がした。とっさに振り返ると、俺は驚愕した。
「何だ?俺の顔に何かついてるか?よぉ……もう一人の俺。」
ニヤニヤと俺を見る男は、まるで鏡に写したかの如く、俺にそっくりだった。違うところといえば、目が赤いことと、幽霊のように足がないことだ。
「……誰だ、お前は。」
「あ?まだ気付かないのか?平たく言えば、俺はお前の心の中の闇といったところだ。」
「心の闇?」
「ああ。人は誰しも心の中に闇を持っている。お前はこの事件で普通の人間よりも心の闇が深くなり、さらにNo.の影響でそれが増幅され、俺が誕生したってわけだ。はい説明終了。お疲れさん。」
「それで、そんなお前が俺に何の用だ?」
「さっき力が欲しいと言っただろう?くれてやるよ。……全てを破壊する、『C(カオス)』の力をな。」
『C』の力……か。確かにその力を使えば、皆を守れるかもしれない。
「……条件は何だ。」
「とても簡単だ。俺をここから開放してくれればいい。」
「開放?」
「ああ。俺はこんな事を言ってはいるが、所詮はお前から生まれた存在。俺はお前から離れる事が出来ないんだ。……お前が俺を開放しない限りな。」
「開放したら、どうするつもりだ。」
「さぁな……お前に教えるつもりはないね。で?どうするんだ?条件はお前にかなり有利だと思うんだが?」
「断ると言ったら?」
「別に何にもしないさ。……最も、それで困るのはお前なんだけどな。まぁ、いずれ俺の力が必要になる時がくるさ。」
「それはどう言う意味だ?」
「クックックッ……そのままの意味だよ。じゃあな。またいつか会おうぜ。もう一人の俺。」
「おい、ちょっと待て――――」
俺は自称心の闇に手を伸ばすが、突然辺りが光に包まれ、目を瞑ってしまう。
~博麗神社~
「――――ほらさっさと起きなさい!うちはNEETを養うほど甘くはないのよ!」
「うーん……れ、霊夢……後3年寝かせて。」
霊夢にたたき起こされ、俺はゆっくりと目を開ける。……寒い。そうだった。今は冬なんだった。俺はもう一度布団に潜り込む。冬の朝ほどオフトゥンが恋しくなる季節はない。あのもふもふの布団に、ふかふかの枕。ああ、オフトゥンこそ至高。ビバ、オフトゥン。
「お前はどんだけ寝るつもりなんだ!いいからさっさと起きろ!」
「寒っ!」
霊夢に掛け布団を引っペがされ、俺はようやく体を起こす。……やはり、あれは夢だったのか。そりゃそうだよな。心の闇なんかある筈がない。そんな事を思っていると、霊夢がどこにあったのかスコップを俺に差し出す。
「はい、これ。」
「ん?なぁにこれぇ。」
「見りゃわかるでしょ。雪かきよろしくね。」
「え……雪?」
「そうよ。昨日の夜だいぶ降ったらしいのよ。このままだと参拝客が転んで危ないからよろしくね。」
外を見ると、確かにどっさりと雪が積もっている。これを一人でやるのはきついな。
「霊夢はやらないのか?」
「私?かよわい乙女にそんな事をさせるつもり?」
「かよわいってお前……素手で妖怪を殴り飛ばす人間がそんな事を言っても説得力ないぞ?」
「ナニカイッタカシラ?」
「イエベツニナニモ。それじゃあやってくる。」
「気をつけてね~。」
霊夢に手を振られ、俺は玄関に向かって歩き始める。
「はぁ……いつになったら春が来るんだ……」
「春?春ならもう来てるわよ。」
「え?」
「カレンダー見なさいよ。」
霊夢に促されてカレンダーを見ると、確かに春だ。外はこんなんだが、カレンダーによると今は5月の始めらしい。
「何で春なのに雪が降ってるんだ?ひょっとして異変か?」
「そんな訳ないでしょ。今年は少し冬が長引いているだけよ。それよりさっさと頼むわよ。」
「へいへい。」
~博麗神社・外~
いざ外に踏み出してみると、足首がすっぽり埋まるほど雪がつもっている。これは全て片付けるのにはかなり時間がかかりそうだ。
「さて、よっと……」
まずは石畳の上の雪を掻き出す。……中々大変な作業だ。これを全て終わらせるにはかなりの時間が必要だ。
「主よ、まさか雪で滑って転ぶなんていう漫画のようなことは起きないよな?」
相棒こと、人間の(ryコートオブアームズが心配して出てくる。
「心配すんな。そんな事あるわけ……どわぁっ!?」
どうやら雪の中で何かふんづけてしまったようだ。そのせいで俺はギャグ漫画の如く盛大に滑り、そのまま倒れて石畳に頭をぶつけてしまう。
「……今のは笑うところなのか?」
「うるせぇ!おーいてぇ……」
ぶつけた頭をさすっていると、俺がふんづけたと思われる物がひらひらと俺の腹の上に落ちてきた。どうやらそれは黒いカードのようだった。……ん?黒いカード?
「あれ?これってまさか……」
「No.のようだな。まさか雪の中に埋まってたとはな。」
俺がそれを確認する。
「……タキオンドラゴン、か。」
No.107 銀河眼の時空龍(ギャラクシーアイズタキオンドラゴン)。通常のNo.とは少し違うオーバーハンドレットナンバーズの一枚だ。それにしても、さっき踏んづけた筈なのに全くの無傷であることに俺は驚いた。ただの紙の筈なのに、どうしてここまで強度があるんだろう。
「なぁ相棒、どう思う?」
「ふむ……このNo.からは全くと言っていいほど力が感じられない。偶然幻想入りしたただの紙という可能性もある。」
「ふーん……とりあえずもっとくか。」
とりあえず銀河眼の時空龍は俺のポケットに突っ込んどいた。
「さて、やりますか。……ってどわぁっ!?」
体を起こし、再び雪かきを再開しようとする俺。しかし今度は雪で滑り、顔面から地面に落ちてしまう。
「だ、大丈夫か?」
「……もう、うんざりだ。」
「え?」
~博麗神社・居間~
「霊夢!」
「え?何?雪かき終わったの?」
俺が今に入ると、霊夢は煎餅をかじりながらお茶を飲んでいた。
「霊夢!これはやっぱり異変だ!春なのに雪が降るわ、雪で滑って顔面から地面に落ちるわで最悪だ!」
「へ、へー。大変だったのね。」
「霊夢、いくぞ。」
「へ?どこに?」
「決まってるだろう?この異変の首謀者をぶっ〇しに行くんだよ!」
「え!?ち、ちょっとぉ!」
「問答無用!さっさといくぞ!」
俺は霊夢を炬燵から引っ張り出し、外に引きずり出す。
「寒っ!わかったから!わかったから少し準備させて!」
「よかろう。」
~数十分後~
「お待たせ。うー寒い……」
「よし、じゃあいくぞ!」
「はいはい。」
なんだかんだで俺と霊夢は異変解決に出発した。
[今回手に入れたNo.]
No.107 銀河眼の時空龍
なんだかんだで異変解決に動き出した伊藤と霊夢!次回予告?何それ美味しいの?それでは次回もゆっくり見ていってね!