~紅魔館~
咲夜side
「ぶぇっくし!!」
「お嬢様……大丈夫ですか?」
「ふ、不覚だわ……この私が風邪なんか引くなんて……」
「うーん……お兄さんが添い寝してくれれば治る気がする……」
「妹様、それだけは許すわけにはいきません。」
「これはかなり厄介ね……引いてみてわかったけど、このウイルスは寄生した人間の魔力や霊力を吸い取って成長するわ。まあウイルスでは私達の力を吸い取りきれずにそのうち自滅してくれるでしょうね……うう寒気がする……。」
「パチュリー様、説明ありがとうございます。あ、もう水がないわ。美鈴、キッチンから水を持ってきて頂戴。」
「わかりました!」
お嬢様、妹様、パチュリー様と紅魔館屈指の実力者達が風邪を引いてしまったわ……この状態でもしも敵(魔理沙)が攻めてきたら、図書館の本の被害は甚大ね。来ない事を祈るばかりだわ。というか吸血鬼も風邪を引くものなのね。……はっ!?ということはまさか伊藤さんも風邪を引いてしまっている可能性もある!?これはまずいわ。あのグータラ巫女が伊藤さんの看病なんてできる訳が無いわ。というかさせてなるものですか!急いで伊藤さんをここに連れてきて看病しなくては!そしてそのままここに永住してもらって……ぐふふふ。
「咲夜、鼻血出てるわよ。」
「え?うわっ!?テ、ティッシュ!」
「……大丈夫かしらこのメイド。」
「大丈夫じゃない、大問題よ。」
「フラン、あなたどこでそんな言葉覚えたの?」
「お兄さんに教えてもらったの。結構便利よこの言葉。お姉様も使ってみる?」
「やめとくわ。」
鼻血がなかなか止まらないわ……妄想も程々にしとかないとね。
「ん?何かしらあれ。」
「どうしましたパチュリー様……ってあれは!」
窓の外を見ると、伊藤さんと霊夢が仲良く空を飛んでるではないか。……妬ましいわね。パルパル……
「……お嬢様、暫く出かけてきます。」
「え?咲夜一体どうしたの……ってあなた顔凄く怖いわよ。どうかしたの?」
「ちょっと巫女を駆逐しに行ってきます。」
「駆逐ってどういう……ってどわぁっ!?」
全て壊すんだ、といわんばかりに窓ガラスを見事に突き破ると咲夜はまっすぐ伊藤と霊夢のところへ飛んでいってしまった。
「……寒いわ。」
「咲夜、どうしたのかしら。」
「とりあえず部屋を移りましょう。ここにいると風邪が悪化するわよ。……は、ハックション!!」
伊藤side
誰かが凄まじい殺気を放ちながらこちらに向かってくる。げっ……あれは……
「や、やぁ咲夜さん。」
「伊藤さん?そこの女と何してるんですか?」
「い、いや、別に何かしているわけじゃないぞ?だからそのナイフを降ろしてくれないか?」
こちらに飛んできたのは紅魔館のメイド長、咲夜さん。しかし手には銀色に光るナイフが握られている。下手な回答をすれば間違いなく体に穴が一つ増える。それだけは避けたい。
「そうよ。私はこいつと異変解決に来ただけよ。」
「異変解決?」
「ええ。といってもそいつがこれは異変だと言って聞かないのよ。」
「いやだってそうとしか思えないだろ?もう春だというのに何で雪なんか降ってるんだよ。」
ナイス霊夢。上手く話をそらすことができた。このままなんとか穏便に……
「そうですか、異変ですか……。わかりました。それではその異変解決、私も協力させて頂きましょう。」
「うん、そうか……ってはい?」
「聞こえなかったの?だから、この異変の解決を私も協力するって言ってるの。」
「それはいいわね。その方が早く蹴りがつきそうだし。」
おい霊夢、お前まで何言ってんだ。
「それじゃあ決まりね。改めてよろしく伊藤さん。」
「え、ああ。よろしくな。」
咲夜さんと固く握手をする。もうどうにでもなれ。
魔理沙side
~アリスの家~
「アリス、大丈夫か?」
「うーん……だ、大丈夫よ魔理沙……ゴホッゴホッ。」
「大丈夫じゃあなさそうだな、ほい水。」
アリスまで風邪を引いてしまうとはな……。紅魔館の連中も風邪を引いてるから本も借りにいけないぜ。風邪の時に本を強dゲフンゲフン借りに行っても面白くないしな。
「ありがとう……それにしても今年は何でこんなに春が来るのが遅いのかしら……」
「本当だよな……うーん、何か面白いことは無いものか……」
「ふふっ……魔理沙らしいわね。それじゃあ私は少し寝るわ。魔理沙も一緒に寝る?」
「そんなことしたら私まで風邪を引いてしまうぜ。それじゃあアリスお大事にな。」
「ありがとう魔理沙。それじゃあまた。」
アリスは家から出てく私を見送ると、頭から布団を被って寝てしまった。
「うーん……何しようかな……紅魔館にも行けないし。……霊夢のとこにでも行くか。」
霊夢のとこなら退屈しないだろう。そう考えながら箒にまたがり、曇り空に向かって飛ぶ。
「しかし寒いな……お?あれってまさか霊夢か?それに伊藤までいるな。……何故かあのメイド長までいるぜ。面白そうだな。ちょっと行ってみるか!よし、トップスピードだ!」
魔理沙が叫ぶと、箒が伊藤たちに向かって物凄い速さで飛ぶ。
「おーい!霊夢ー!伊藤ー!PA……咲夜ー!」
「ん?おお魔理沙じゃないか。」
「何でこうゾロゾロと人が来るのかしらね……」
「魔理沙……さっき何を言いかけたの?返答次第ではあなたの頭からナイフが生えるわよ。」
「やめてください死んでしまいます。い、いやえーと……パ、パチュリーの様子はどうなのかなーと思ってだな。」
「あらあなた、パチュリー様が風邪を引いてること知ってたの?」
「これでも一応図書館の常連だからな。それくらいのことは既に知ってるぜ。」
「へー。まぁパチュリー様は寝てればそのうち治ると言ってたわ。」
「お、そうか。じゃあ治ったらまた本を狩りに行くか。」
「……魔理沙、漢字間違ってるわよ。」
「気にするな!」
「あんたは何処の魔王様だ。」
「そんなことより伊藤たちはこんな寒い中何してんだ?」
「ああ、ちょっと異変解決にな。」
「ほう、異変とな?」
「ああ。春になってもこの雪の量。どう考えてもおかしいだろ?」
異変か……なるほどなるほど。……中々面白そうだな。
「フフフ……ならばこの私もその異変解決を手伝わせてもらうぜ!」
「え、いいのか?」
「ああ!それになんだか面白そうだしな!」
「面白いかどうかはともかく、これでまた戦力が増えたわね。」
「この魔理沙様がいれば100人力だぜ!そんなことより、異変の首謀者がどこにいるのかわかってるのか?」
「それが……」
「どこにいるのか……」
「まったくもってわかりませぬ\(^o^)/」
「顔文字やめい。……ってあそこにいるのは文じゃないか?」
私が指差す方向には新聞記者こと射命丸文が買物袋を抱えて飛んでいる。
「あいつなら何か知ってるかもしれない!行くぞ!」
伊藤side
「おーい!文ー!」
「あやや?伊藤さんじゃないですか。霊夢さんに魔理沙さん、それに咲夜さんまでいるじゃありませんか。一体どうしたんですか?」
「ちょっとこの異変について聞きたいんだけどいいか?」
「異変って、この異常気象についてですか?うーん……それが私にも原因はわからないんですよね。冬の妖怪や氷精などが起こしているとも考えたのですが、彼女たちの力ではここまですることはできません。それに本人から直接話を聞いたところ、「冬がこんなに長引いて嬉しい!!」と、喜々として答えてましたからね。」
「うーん……そうか。ありがとう。」
文でもわからないか……うーんどうしよう。
「……ただ、少し気になるものが。」
「気になるもの?」
「はい。ちょっとついてきてくれます?」
「うむわかった。」
そういうと文は雲に向かってまっすぐ飛ぶ。それに続いて俺、霊夢、咲夜、魔理沙という順に飛び、雲を抜けると文がそのさらに上を指差す。
「ほら、あれです。」
「んー?何だあれ?」
文が指差す方向にはまるでブラックホールのような真っ黒い穴にピンク色のなんだか良く分からないものが吸い込まれている。
「ふーむ……これは少し調べてみる必要がありそうね。」
「文も来るか?」
「私はやめときます。椛が風邪を引いてしまったらしく、その看病に向かう途中だったんですよ。」
「椛も風邪引いたのか。そんなことも知らずにわざわざ呼び止めてすまなかったな。」
「いえいえいいんですよ。その代わり、これが異変だったときはしっかり取材させて頂きますからね!覚悟しといてください!」
「元からそのつもりだよ。それじゃあ俺達は行くからな。」
「はい!帰ってくるのを楽しみにしてます!それではまた!」
そういうと文は背中の羽を羽ばたかせて雲に突っ込んでいってしまった。
「さて、行くぞ!」
「さっさと蹴りつけて炬燵で寝たいわ。」
「お嬢様のこともあるし、早めに終わらさないとね。」
「なんだか面白くなってきたぜ!さあ行こうぜ!」
それぞれの思いを胸に、俺達は黒い穴に突っ込んでいった――――
風邪よりリターン・フロム・リンボしました。どうも俺です。これからなんとか投稿ペースを戻していきます。しかし今週末にはテストがあるのでまた休む可能性があります。ご了承ください。
さて次回からはバトルの予定!次回もゆっくり見ていってね!