凄く普通の決闘者が幻想入り   作:うー☆

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第二十一話 No.の影

――――強い。伊藤は妖夢の繰り出す斬撃を紙一重でかわしながら感じる。少しでも気を抜けば間違いなく俺の胴と頭が離れてしまうだろう。

 

「この程度ですか!?」

「さあ……どうだろうね」

 

伊藤がそういうと、妖夢はその発言に少々怒りを覚えたらしく、より一層斬撃が激しくなる。

 

「妖夢、と言ったか!?」

「ええ、言いましたとも!」

 

剣を交えながら伊藤は妖夢に問う。

 

「お前はこの戦いが始まる前に言ったな!『これは殺し合いだ」と!」

「ええ言いましたよ!それがどうしました!」

「何故だ!何故こうやってなんでも剣で解決しようとする!」

「話し合いでもするつもりですか!?どんな人間でも、切ってみればわかる!それが私のモットーです!」

「……切ってみればわかる?」

 

突然伊藤が妖夢から離れ、剣を構えたまま睨む。

 

「……未熟だな」

「……何?」

 

伊藤の突然の発言に妖夢は怒りを覚えた様子だ。

 

「私が……未熟?」

「ああ。未熟だ。何が切ってみれば分かるだ。そんな人間は剣士と呼ばない。そいつはただの、辻斬りだ」

「……何だと?」

 

伊藤の発言に妖夢は怒りをこらえるのに必死な様子だ。

 

「お前は誇り高き剣士などではない。……未熟者が」

 

伊藤が言い終わるやいなや、妖夢が怒りをこらえきれずに切りかかる。

 

「私は未熟なんかじゃない!!私が幽々子様を守るためにどれだけの努力をしたと思っている!!それをお前が、お前なんかに分かるものか!!」

「……やはり未熟だな。自身の感情のコントロールもできないとはな」

「黙れ!!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇっ!!」

 

妖夢が我を失い怒りの赴くままに剣を振るう。その目には涙がにじんでいる。

 

「……どりゃぁっ!」

「!!」

 

伊藤が妖夢の振るう刀を蹴りあげる。その衝撃で妖夢は倒れ、持っていた刀は妖夢の手を放れ、綺麗な放物線を描きながら地面に突き刺さる。

 

「くっ!!」

「無駄だ」

 

妖夢は飛んでいった刀を取りに行こうとする。しかし伊藤は妖夢の首にメダリオンソードを突きつけ制止する。

 

「……完敗です。私は剣の腕も、心も貴方ほど強くなかった。悔しいですが、確かに貴方の言うとおり私は未熟でした。……どうぞ、お好きなように」

 

妖夢は落ち着きを取り戻し、覚悟を決めたように目を閉じる。

 

「……いい刀だな」

 

伊藤は無言で地面に突き刺さっている妖夢の刀を抜き、呟く。

 

「……それは楼観剣と言います。とある妖怪が鍛えた刀で、ひと振りで幽霊十匹分の殺傷能力があると言われてます」

「幽霊十匹分って言われてもよく分からんな……はい」

 

伊藤が刀を妖夢に渡すと、妖夢は驚いた様子で刀と伊藤を交互に見る。

 

「……私を殺さないんですか?」

「殺す?何で?」

「私は貴方を殺そうとしたんですよ?それも、切ってみれば分かるなどという理由で。私はあと少しのところで人の道を踏み外す所でした。それを正してくれた貴方に切られるならば、私も本望です。さぁ、どうぞ」

 

妖夢は再び覚悟を決め、目を閉じる。

 

「……殺さないよ」

「……どうしてですか?」

「そもそも殺す必要がない。俺はただ春を取り戻しに来ただけだし、それにお前が死ぬことで悲しむ人間もいるはずだ」

「そ、そんな物は私には……」

「それじゃあお前が死んで、さっき話してた幽々子様とやらはどう思う?」

「……っ!」

「何と言うかさ……うまく言えないけど、そこまで気に病む必要はないんじゃないか?間違いなんて誰にでもあるんだから。それにそんなこといちいち気にしてほら、人生は楽しんだ者勝ちってどこかの誰かが言ってた気がする」

「人生は……楽しんだ者勝ち……」

 

 

 

 

「――――でやぁっ!!」

「ほっほっほ。妖夢、精が出るのう」

「し、師匠……」

「それにしても妖夢、お前は少々力が入りすぎだと思うのじゃが?」

「師匠もいつまでもここにいるとは限りませんし……その時は私が幽々子様をお守りしなければならないので」

「むっ。妖夢、わしはまだまだ現役じゃぞ」

「し、しかし……」

「まぁそう気を張るでない。お前ももうそんな年なんじゃし、そろそろわしも孫の顔を見てみたいのう」

「まっ……まままままま孫ぉ!?し、師匠!?一体何を言ってるんですか!?」

「ほっほっほ、冗談じゃよ。まぁ、そんなに気を張らずともいいということじゃ。ほら、人生は楽しんだ者勝ちとよくいうじゃろ?」

「人生は楽しんだ者勝ち……ですか」

「うむ。……おっと、もうこんな時間か。お嬢のために晩飯を作らねばな。妖夢、少し手伝ってくれんか?わし一人ではさすがにお嬢の胃袋を満腹にすることはできないからのう」

「は……はいっ!――――」

 

 

 

 

「ん?どうした?おーい」

「し……」

「え?」

「師匠っ!!」

 

妖夢が目を輝かせながら突然立ち上がり、伊藤の目の前まで顔を近づける。

 

「伊藤さん、いえ師匠!!貴方のことはこれから師匠と呼ばさせていただきます!!」

「え、ちょ、何があったし。いやいや、俺あんな偉そうなこと言ったけど実際は人間なんかほとんど出来てないからね?感情のコントロール?何それ美味しいの状態だからね?」

「それでも構いません!貴方は私に大切な事を思い出させてくれました!!それだけでもう十分です!!」

「いや、そもそも俺師匠っていうキャラじゃないというか……」

「それではお友達から!」

「ヨウム、マイフレンドってか?まぁそれならいいかな?」

「はい!!よろしくおねがいします、伊藤さん!!」

「うん、こちらこそ」

 

伊藤と妖夢が固く握手をする。

 

「ところで先に行った霊夢達はどうなったんだろう?」

「はっ!この先には幽々子様が!」

「それなら急ごう。こっちで合ってるよな?」

「はい!行きましょう!」

 

 

その頃――――

 

「ち、ちょっと!!三対一なんて卑怯じゃないの!?」

「なんとでも言いなさい!!」

「どんな手を使おうが!!」

「最終的には!!」

「「「勝てばよかろうなのだぁぁぁぁぁ!!」」」

 

三人が同時に叫ぶと、一斉にスペルカードを発動する。

 

霊符『夢想封印 集』

恋符『マスタースパーク』

幻符『殺人ドール』

 

「きゃあああああああああああっ!!」

 

幽々子は三人の放ったスペカに直撃し、地面に落ちてゆく。

 

「オーライオーライ……っと」

「ナイスキャッチです」

 

落ちてきた幽々子を既に下でスタンバッてた伊藤と妖夢が受け止める。

 

「う、うーん……あら?妖夢じゃないの」

「幽々子様……申し訳ありません。私があの者達を止めていれば……」

「本当よ。博麗の巫女一人で戦うと思ってたのにまさか三人一緒に来るとは思わなかったわ」

「いいじゃない。勝ちは勝ちよ」

 

霊夢達が俺達の元に降りてくる。

 

「汚い、さすが巫女汚い」

「うるさいわね。ほら、約束よ。春を返してもらうわ」

「うーん……仕方ないわね。一応約束だものね」

 

幽々子は伊藤と妖夢の手の中から降りると、蕾をつけている西行妖まで歩み寄る。

 

「残念ね……貴方の満開を見れると思ったのに」

 

幽々子は残念そうに西行妖に手を当てる。……しかし、何も起こらない。

 

「……おかしいわ。西行妖が……」

 

その瞬間だった。西行妖の幹に大きく101という文字が浮き出てきたのだ。

 

「っ!?幽々子!!そこから離れろ!!」

「え?……きゃあっ!?」

 

伊藤が叫ぶが、時すでに遅しだった。突然意思を持ったように、西行妖の枝が幽々子を掴み、空中に持ち上げる。

 

「くっ!!皆!!ここから離れろ!!巻き込まれるぞ!!」

「ゆ、幽々子様ぁっ!!」

 

妖夢が我を忘れ、幽々子を救けるために飛び出していってしまった。

 

「妖夢!!駄目だ!!戻ってこい!!」

「妖夢!!こっちに来ては駄目よ!!」

 

伊藤と幽々子が叫ぶが、妖夢はそれを無視して西行妖に向かって突っ込んでゆく。

 

「西行妖ぃっ!幽々子様を離せぇっ!」

 

妖夢は楼観剣を使い攻撃してくる西行妖の枝を一つ残らず叩ききる。

 

「幽々子様!!」

「妖夢、後ろ!!」

 

妖夢は幽々子に手を伸ばすが、幽々子に気を取られていたせいで後ろから迫り来る鋭く尖った枝に気づかなかった。

 

「!!」

 

妖夢が気づいた時には、もう枝は妖夢の目の前まで迫っていた。――――避けられない。妖夢は反射的に目を瞑る。

 

ズブリ

 

……そう音はしたが、妖夢は痛みを感じない。恐る恐る妖夢は目を開ける。そして、驚愕した。

 

「い……伊藤さん!!」

「が……はっ……!」

 

妖夢の目の前には、腹部を枝に貫かれた伊藤の姿があった。枝からは伊藤から流れた真っ赤な血が滴り落ちている。

 

「い、伊藤さん……何で……?」

「もう、人が死ぬのは……見たくないからな……体が、反射的に……がはっ!!」

 

伊藤が口から血を吐き出す。かなりの重症だ。いくら吸血鬼とはいえ、急いで止血しなければ命に関わるだろう。

 

「伊藤!!待ってなさい、今行くわ!!」

「い、伊藤さん!!」

「おい伊藤!!大丈夫か!!」

 

霊夢達が急いで伊藤の元に飛ぶ。

 

「れ、霊夢……駄目だ、来るな……!!」

「そんなこと言ってる暇無いわよ!!急いで止血を……きゃあっ!?」

「れ、霊夢!!どわぁっ!?」

「くっ!!何よこの枝!!」

 

霊夢達が伊藤の元に飛ぶが、西行妖の攻撃によって近づくことが出来ない。

 

「くっそぉ!!邪魔なのよ!!どきなさい!!」

 

霊夢達が枝に悪戦苦闘していると、伊藤を貫いていた枝と幽々子を掴んでいた枝は空高く持ち上げられ、西行妖の幹に何やら巨大な穴が開いた。

 

「くっ……!!ブラックミスト!!」

 

伊藤は力を振り絞り、No.96のカードを空中に投げる。するとカードに黒い霧が集まり、ブラックミストが現れる。

 

「お、おい!!お前、どういうつもりだ!!」

「ブラックミスト……!!力を解放する!!皆を守ってくれ!!」

「お、おい!!ちょっと待て!!」

 

ブラックミストの言葉も虚しく、西行妖は伊藤と幽々子を巨大な穴に放り込む。すると瞬時に穴は閉じ西行妖についていた蕾が一気に開き、まだ全てではないがほとんどの花が咲いた。

 

「な、何!?」

 

霊夢は気づいた。花が咲いた瞬間、一気に西行妖の妖力が膨れ上がったことに。

 

「まずいわ。もしもあの桜が完全に花開いたら!!」

「私達では止められないぜ……!!」

「ど、どうすれば……!!伊藤さんは西行妖の中に!!」

「っ!?てめぇら来るぞ!!急いで避けろ!!」

 

ブラックミストが叫んだ直後、先ほどの攻撃の倍近くある量の枝が襲い掛かる。

 

「……仕方ないわ。皆!!やるわよ!!」

「まさかの連戦か……!!」

「伊藤さん……絶対に助けます!!」

 

三人が同時にスペルカードを発動する。

 

霊符『夢想封印 集』

恋符『マスタースパーク』

幻符『殺人ドール』

 

三人のスペルカードが西行妖に直撃する――――




西行妖に取り込まれてしまった伊藤と幽々子!二人の運命はいかに!それでは次回もゆっくり見ていってね!
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