奈落神 扇の異世界転移戦線   作:黎殲神 祟

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第三話、実戦

俺達が転移してから一週間が過ぎ、レベルも上がりこの世界にも慣れて来た頃、鍛錬中に隣の都市に存在する約地下100層にも及ぶグラン・テラ大迷宮がある宿場町テラへ向かうことになった

 

(自室にて)

 

扇「輝流、お前は緊張してるか?」

 

輝流「そうだね、魔物って言っても大迷宮の外の魔物より少し強いって言ってたからね、しかも下に行くに連れて魔物もドンドン強くなるらしいし」

 

扇「そうだな、マァ、力試しには丁度良いだろ、誰も死ななきゃ良いが」

 

輝流「俺達なら大丈夫だよ」

 

扇「果たしてそうかね、マァ良い、明日は朝早ぇんだ、寝るぞ」

 

輝流「そうだね、お休み」 

 

扇「あぁ、お休み」

 

一夜が明け一行は宿場町テラへと到着し、出撃準備を整えながら談笑していた

 

扇「此処が大迷宮か……楽しみだ」

 

輝流「扇らしいな、初めて見る物にワクワクしたりするのは」

 

小百合「そうだね~、扇君ホントに喧嘩した事無い不良さんと喧嘩したりするときとか楽しそうに笑ってるもん」

 

扇「喧嘩が終わった後の落胆が凄ぇけどな、一撃で沈めてお終いなモンで」

 

輝流「でも今は凄く口角が上がってるぞ?」

 

扇「そうだな、つってもお前も楽しそうじゃねぇか、方頬上がってるぞ?」

 

小百合「ホントだ~、輝流君も人の事言えないじゃん」

 

扇「お前は緊張してんなぁ~」

 

小百合「そっ、そう?」

 

扇「お前はもうちょっと低い筈だぜ?其れが今は上擦ってんじゃねぇか」

 

輝流「そう言えば……そうだな」

 

扇「お前は人の機微に気付け、カリスマは人を惹き付けるだけに人に利用もされ易い、そう言う人間を見つけ出す観察眼も身に付けろ」

 

輝流「そんなの如何やって身に付けるんだ?」

 

小百合「そうだよ、扇君みたいに才能がある訳じゃ無いんだし」

 

扇「人間観察して見ろ、分かる様になってくる、良く知らん奴との喧嘩前の俺を見てるみてぇによ、見れば全員楽観的だが緊張もしてる」

 

二人「成る程……」

 

扇「そんな話をしてる内にダグラスが宿を取り終えたようだな、そろそろ出発だな、気ィ引き締めてくぞ」

 

二人「分かった……」

 

扇「俺は最後尾からお前等んとこ見てるからよ、俺の出番来たら見てくれよ?」

 

小百合「えぇ~、扇君は私達と同じ所じゃ無いの?」

 

輝流「一緒に居てくれた方が安心してやれるんだが……」

 

扇「馬鹿言え、お前等には桜華も付いてるだろうが、俺は彼奴苦手なんだよ」

 

輝流「あはは、そう言ってやらないでくれ、桜華も自分は輝流の友達の扇に嫌われてるんじゃ無いかって」

 

扇「嫌っては居ない、苦手なだけだ」

 

小百合「逆に落ち込まれそう」

 

扇「知らねぇよ……取り敢えず最前列行って来い」

 

輝流「はいはい、そろそろ行かないと桜華が一人だしな」

 

小百合「扇君と少し話したいって言われてたけど無理っぽいなぁ~……」

 

扇「諦めろ、切欠も無きゃ話さねぇ」

 

そんな感じで話ながら輝流達は最前列へ、扇は最後尾へ向かい大迷宮へと潜った、潜ってから程なくして最初の魔物と遭遇し最初は輝流達が引き受けることになった

 

扇「さて、輝流達だな……よもや1階層で躓く様な事は無いよな……?」

 

扇の心肺は杞憂に終わり輝流達は難なく魔物を撃破し一行は先に進む、そして5層で遂に扇の出番が始まる

 

桜華「次は奈落神君ね、訓練の時見てたけど彼の戦闘が一番早く終わってたわね、其れも余裕の勝負で」

 

輝流「扇は特別という訳では無いけど特殊だからね、勉強は平均的らしいけど身体能力は俺より圧倒的に上だからね」

 

桜華「其程なの?」

 

小百合「運動でも何でも輝流君は勉強以外じゃ扇君には一度も勝ってないよ?」

 

桜華「凄いわね……」

 

そんな会話を余所に扇が戦場に立つ

 

輝流「扇の戦闘が始まるよ」

 

ダグラス「扇、魔物の数は多いが大丈夫か?」

 

扇「こんなモン一人で十分だ、所詮5匹だろ(構えを取る)」

 

構えを取った途端蛇型の魔物と狼型の魔物が一斉に襲い掛かる

 

扇「やはり所詮は魔物……大した知能も無い獣か……(前列の2匹の狼型の魔物を蹴り飛ばし蛇型の魔物の喉を腕を突っ込み内側から打ち破る)」

 

魔物が危機感を感じ飛び退り、様子を見るように扇に注目する

 

輝流「一気に3匹を……」

 

小百合「凄い……」

 

桜華「何てキレのある蹴りなの……見えないなんて……」

 

扇「所詮、大した知能の無い獣の様子見だ……(居合いの体勢で静止する)」

 

其の静止を好機と見た魔物が一斉に襲い掛かり次の瞬間何が起きたかも分からず綺麗にズレた

 

扇「待つ刃を知らんのか魔物は……(抜刀した刀を鞘に収める)」

 

輝流「流石……と言うべきなのか……言葉が浮かばない……」

 

小百合「速すぎて見えなかった……」

 

桜華「居合い術まで……(扇の所へ向かう)」

 

ダグラス「扇、アレは何なんだ?俺にはよく見えなかったが、魔物が斬れる前は抜剣してなかったはずだが」

 

扇「刀固有の剣術で、居合い術と言われる代物だ、主にカウンターとしての役割を持つ、だが極めた物は先手でも居合いを使う時が有るな」

 

桜華「奈落神君、貴方が剣術が出来るのはステータス公開の時に聞いたけど……居合い術まで使えたとは驚いたわよ……」

 

扇「マァ、これでも剣術は師範位持ってるんでね」

 

桜華「とは言えアレは父を越えてるわよ……?」

 

扇「葛城道場師範の娘さんの桜華殿にそう言って頂けるとは光栄」

 

桜華「いえ、私の方こそ、貴方みたいな剣士に名前を覚えてて貰ってたのは光栄よ」

 

扇「取り敢えず俺は最後尾戻るわ」

 

桜華「待ってくれないかしら」

 

扇「待たねぇよ、抑も男女双方からの嫉妬の視線が痛いんじゃ、クールビューティーは男子からだけで無く女子からもモテるようで」

 

桜華は終盤軽く躱され扇は逃げるように最後尾へと戻り、桜華は少し話せただけ良しと思い輝流太刀の元へ戻る

 

輝流「扇の処に向かってたみたいだけど、扇とは話せたか?」

 

小百合「如何だったの?お友達にはなれた?」

 

桜華「其れには程遠いわね……名前を覚えてて貰ってたのは良かったと思ったけど終盤軽く躱されて強引に丸め込まれたわ」

 

輝流「扇らしい……まぁ戦の得意分野だからね」

 

小百合「そうだねぇ~、扇君は色んな方法で人を躱したり、上手い具合に避けたりするからね~」

 

桜華「しかも自分の事も全部他人事みたいな話し方で少しムッとしたりもしたけど、悪い人では無いと思うの」

 

輝流「扇は悪い奴では無いよ、口は悪いけどね」

 

小百合「そうだね、外見は学校でも人気在るけど人を寄せ付けないオーラが凄いからね~」

 

そんな会話をしながら一行は難なく20層迄来たが、此処で一人の生徒が壁のトラップを触ってしまい足下に大規模な魔方陣が展開される

 

扇「誰かやると思ったよ……探し切れてないトラップの作動とか……良くある見落としに引っ掛かるパターン……」

 

扇がそう言うと共に魔方陣が輝き見知らぬ場所へ転移させられる

 

扇「転移系トラップか……(周囲を見渡す)」

 

扇が周囲を見渡すと輝流達は流石最前線と言うべきか周囲を警戒しているが何人かは転んで無様にも尻餅をついたりしていた

 

扇「う~むテンプレ……」

 

扇が後方に視線を巡らせると大量よ魔方陣が其処に在った、其の魔方陣から大量のスケルトン型の中型モンスターが出て来る、そして更に振り返ると、今度は巨大な魔方陣が現れる

 

ダグラス「なっ!?何だっ!?……アレはっ!?」

 

扇「分からんが、状況的には相当不味いことは分かる」

 

そして正面の魔方陣がいっそう強い輝きを放ち、人型の大型モンスターが現れる

 

ダグラス「なっ……!?アレは………トア………クラウス……」

 

扇「トア・クラウス?何だそりゃ」

 

ダグラス「あの魔物だ……奴は歴代最強の百年ほど前、冒険者が殺られた魔物だ……出現が確認された場所は……65階層……」

 

扇「となると此処は其の最高到達点だな、奴のあいてをする必要も在りそうだ、主に遅滞戦闘だが」

 

輝流「俺達がやります」

 

小百合「そうだよ、今の私達なら出来るよっ」

 

桜華「そうね、やってみせるわ」

 

扇「お前等引っ込んで後ろ行け」

 

輝流「何でだ、今の俺達ならあんな化け物でも倒せる」

 

桜華「そうよ、奈落神君には勝てないだろうけどアレになら未だ」

 

小百合「そうだよ扇君、此処は私達に任せてっ!」

 

扇「状況と自分の力に酔ってんじゃねぇよ!!、お前等じゃ実力も経験も足りてねぇんだよ!!お前等は彼所で恐慌してる奴等の陣頭指揮に専念しとけや」

 

輝流「お前は如何する気なんだ?……」

 

扇「俺は奴を殺すだけだ……良いか、今後ろの戦況を変えうるのはお前等だ、俺は捨て駒だ、なら其の捨て駒も有効活用して後ろの援護へ迎え」

 

小百合「捨て駒なんてっ……」

 

桜華「そうよ……私達がやれば何とかなるわ」

 

輝流「お前がこの中で一番強いんだ、そんなお前を捨て駒にはさせられない」

 

扇「お前等のカリスマは今後ろの戦況を変えるのに役立つから言ってんだ、端っから死ぬ気なんざねぇよド阿呆、早く引っ込め」

 

輝流「わかった……生きて帰って来いよ……」

 

扇「うっせぇ、フラグ建築してねぇでとっと行けや」

 

そう言うと輝流達は後方へ向かい敵陣に穴を開け士気を高める

 

扇「さて……殺し合いと行こうか……?トア・クラウスさんよぉ……(トアに敵を向ける)」

 

敵意に気付いたトアが咆哮を上げ扇に突撃を行う

 

扇「人型とは言え……所詮は魔物……単調か(待ち拳の構えを取る)」

 

トアが扇の目の前に到達し拳を振り下ろした瞬間……

 

扇「待ってましたっ、一撃じゃ殺せねぇけど、往生せいやオラッ(トアの鳩尾に上段へ意見突きを放つ)」

 

ズドンと言う轟音と共にトアが壁にめり込む、その内に扇が一瞬で距離を詰め跳躍を行う

 

扇「喰らえやオラァ!!(トアの顔面に飛び膝蹴りを叩き込む)」

 

丁度起き上がろうとしたトアの眉間に飛び膝蹴りが決まり更に壁の内側にめり込み、扇を摑もうとした右腕は蹴りで吹き飛ばされる

 

扇「フィニッシュと行こうや……神の世界にっ!引導を渡してくれるっ!!(蹴りや拳、暗器や刀を使い連撃を仕掛ける)」

 

扇の怒濤の連撃を受け肉塊にされ、トアは息絶える

 

扇「ふぃ~、終わったぜ~」

 

ダグラス「なっ……あの……トア・クラウスをいとも簡単に……」

 

扇「そりゃあ、化け物とは言え形は人と一緒なんだ、なら潰し方も一緒だろ」

 

ダグラス「そう言う問題なのか……?」

 

扇「そうだろ、違うのか?」

 

ダグラス「其れはお前だけだと思うんだが、先ず俺達では刃すら入れられない……」

 

扇「そうなのか、あっ……1人とち狂って特攻掛けて死にやがった……多分トラップ触った奴だな」

 

ダグラス「何ッ!?」

 

扇「恐らく自分一人でも生き残ろうとして突撃を掛けたんだろ、其の結果、あっさり殺されたって訳だ、恐らく彼奴等も見ただろう……マァ良い行ってくるか」

 

ダグラス「俺も行こう、仲間が一人死んで見過ごせる筈が無い」

 

扇「ベテランのアンタが居てくれると心強い」

 

ダグラス「期待に応えられるよう努力するとしよう」

 

扇「そんじゃ行くか(魔物の最前列へ一瞬で踏み込み飛び回し蹴りで最前列を一瞬で薙ぎ払う)」

 

輝流「扇っ!やったのか!?」

 

扇「あぁ、ミンチにしてやったぞ」

 

輝流「扇は流石だ……なのに……俺は…」

 

扇「アレはさっき死んだ奴が全面的に悪い、トラップ触った保身の為にとち狂って自分だけ生き残ろうとしただけだからな」

 

輝流「だが……同じクラスメイトだろ」

 

扇「死人に口なしだ、その前にお前等全員が生き残る方法を考えろ、追悼は後だ」

 

輝流「済まない……自分達も死ぬかも知れない此の状況で……」

 

扇「んなモン皆一緒だろ、俺は彼奴の事全く知らねぇから死んだって何も思わねぇけど、黙禱くらいは捧げてやるわ、今は声張って鼓舞しろ」

 

桜華「奈落神君、其れはちょっと薄情じゃない?」

 

小百合「扇君は前からこんな感じだよ……知らない人が死んでも何とも思わないからね、例えクラスメイトでも」

 

扇「人間其処んとこは一緒だ、関わりの一切無い奴が死んでも結局関わりのねぇ事だからな、俺に苦言を呈するのは後だ、今は生き残れ」

 

桜華「分かったわ……とは言っても苦言なんてもう出てこないけどね」

 

輝流「皆!!聞いてくれ!!今、俺達の仲間が一人死んでしまった!!でも今は死を恐れて蹲る暇はない!!結局戦わないと俺達は死んでしまう!!だが、背後の脅威は去った、今は正面に集中して、ゆっくりと敵陣に穴を開けよう!!」

 

クラスメイト全員「おぉー!!」

 

扇「お前等にもう一つ!!帰ったらとち狂って死んだ奴の追悼するぞ!!人数は多いに越した事はねぇ!!今此処に居る全員生きて帰還を果たすぞ!!」

 

クラスメイト全員が咆哮を上げ、ゆっくりとだが敵の数が減っていく、その中、格段多くの敵が減る場所が二つ有った、其れは言わずもがな扇が居る戦線、扇は一気に一撃一撃で敵を薙ぎ払い、最も早く敵を減らしていた、もう一つは輝流達の三人である、彼所は卓越したコンビネーションと高い火力を以て確実に敵陣に食い込んでいく、其れ等を見たクラスメイトは希望を見て更に咆哮を上げ力を振り絞り、遂には全員階段の前に辿り着いた

 

扇「お前の演説、良かったじゃねぇか」

 

輝流「扇こそ、最後は皆咆哮を上げてたじゃないか」

 

小百合「扇君凄かったよ、皆うおぉぉぉぉぉぉぉって」

 

桜華「流石よ、奈落神君、如何やったらあんなに出来るの」

 

扇「俺にカリスマは無い、只周囲の杞憂を取り払っただけだ」

 

輝流「そうなのか……となると俺は鼓舞、扇はケアをやった形なのか」

 

小百合「扇君はカリスマじゃ無くても人心掌握に長けてるんだね」

 

桜華「そうね、如何すれば人の心が動くか分かってるみたい」

 

扇「俺は只何をすべきか教え、杞憂を晴らし、希望を見せ、戦意で死の恐怖を一時的に忘れさせただけだ、誰の人心も掌握しちゃ居ない」

 

そうやって会話をしながら一行は長い階段を登る、そして階段を登り切ったところで扉が其処に見え、其れを上げると其処は20層だった

 

扇「抜けたな、此処で一つ……総員良く聞け!!此処で休む暇は無い!!此処で休めば様々な疲労が原因で動け焼くなり、此処で結局死んじまう!!其れが嫌なら足と腕を動かせ!!先導は俺達が務める!!」

 

ダグラス「流石の演説だ、では先を急ごう」

 

そうして一同は20層から1層までの道程の魔物を扇、輝流、小百合、桜華が片っ端から処理しグラン・テラ大迷宮から漸く出た一行、肉体的、精神的な疲れからか皆地面にへたり込み、壁に背を預けて項垂れる者も居る

 

ダグラス「今回のトラップの報告の死者一名の報告をしてこよう」

 

扇「助かる、俺達は其処で休んでるわ」

 

ダグラス「分かった、報告を済ませたら迎えに来るから其れまで待っててくれ」

 

扇「了解」

 

輝流「分かりました」

 

小百合「はい」

 

桜華「了解したわ」

 

扇「俺は軽く刀の素振りでもしてくるわ」

 

輝流「そうか、無茶はするなよ」

 

小百合「一番ハードな戦闘してたの扇君なんだから無茶しないでよ?」

 

桜華「余り無理しない様にね」

 

扇「その辺は問題無い」

 

ダグラス「残念ながら素振りしてる時間は無いな、後は明日……報告の為に王都に帰ることになった、良いな」

 

ダグラスの号令で皆宿へ戻り、全員宿から大迷宮へ黙禱を捧げ、疲れた様子で夕食を済ませ皆眠りに就いた、そして、其の死んだ筈の生徒が生きているのは扇以外に知る者は居ない……

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