初めての迷宮での実戦訓練から1週間が経過したが、未だ勇者達は死者が出たと言うショックから立ち直れずに居た、そして今は王都で療養している所で在る
扇「こんなで戦争なんて出来んのかねぇ~……」
輝流「戦争か……どの位死ぬと思うんだ?」
扇「相当な数の人間が命散らすだろうな、そうなれば此処に居る奴等も例外では無くなる、抑も平和惚けした日本人じゃ戦争や知り合いの死は耐え難いショックと恐怖、ストレスを植え付けるからな」
輝流「そうだな……俺ももう少し時間が掛かりそうだが、最初から覚悟してた桜華はショックは在ったが直ぐに持ち直したみたいだし、お前は始めから影響無いしな……」
扇「俺、お前、桜華、小百合の四人の中で一番参ってんのは小百合だがな、彼奴は未だ部屋から出て来ようとしねぇ、飯はちゃんと喰ってるらしいが量が少ねぇ、結構厄介な状態とも言えるだろうな」
輝流「そうだな、彼奴は殺される瞬間を見てたし、死体も見てしまったからな……」
扇「そうだな、俺も見ては居たが何も感じずに彼奴トチって突っ込んだ挙げ句死にやがった程度の認識しか無かったな」
輝流「ホントに扇は興味が無い物に対しては反応が薄いよな」
桜華「そうね……只その後の鼓舞は流石だと言わざるを得なかったけど」
輝流「そうだな、弔いも、悲しみも恐怖も後だと言って皆に咆哮を上げさせる程だったからな」
扇「ちょっと恐怖を忘れさせてやっただけだ」
輝流「其れはマァ、良いんだが……扇はさっきから何を考えてるんだ?」
桜華「確かに、思い詰めたような難しい顔よ?」
扇「桜華の観察眼は知ってるから兎も角……何故輝流に分かるんだよ……」
輝流「長い間一緒に居たお前の数少ない友達を見くびって貰ったら困る」
扇「ハァ……一緒に居た時間の問題か……確かに考えちゃ居るがな、いや……考えてると言うより此から如何するかって言う方針を絞ってるんだわ」
輝流「如何言う事だ?聞かせてくれないか?」
桜華「気になるわね、貴方が絞ってる方針について」
扇「マァ、俺は一人で別行動を取ろうと思っててな、行動を起こす日日と向かう方向って処だな」
輝流「なっ……!?其れは如何言う事だ…?」
桜華「詳しく聞かせて貰っても良いかしら」
扇「此の1週間考えてた事だ、此の状態じゃ魔族との戦争は不可能だ、其れ処か下手すりゃその前に全滅する、其れを避ける為とは全く違うが俺は俺で行動を起こそうと思う、魔王軍が既に何か策を講じていないとも言い切れねぇからな」
輝流「其れは扇一人で行くのか……?」
桜華「其れは危険よ、其れなら此処で皆の回復を待ってからでも遅くないんじゃ……」
扇「いや、遅いかも知れねぇだろ、其の可能性を危惧して言ってんだよ、俺は、この世界はご都合主義的じゃ無い、なら別で動ける奴が必要になる、其処で現状一番動ける俺がやる必要がある」
輝流「なら、俺も行く……」
桜華「何言ってるの、輝流」
扇「お前はクラスのコンダクターだ、そんな奴が此処から抜ければ此奴等は一生動けなくなる、其れは俺としては絶対に避けたい事態だ」
輝流「済まない……少し感情的に成り過ぎた」
桜華「でもアテはあるの?」
扇「先ずは霧の樹海、クラウ・アールに行こうと思ってる」
桜華「彼所は亜人族以外活動出来ない場所よ?更に彼所の魔物も厄介で帰らずの森とも呼ばれる場所よ?」
扇「知ってるし人間とも相当仲が悪い、そりゃマァ帝國が原因だし此処じゃ差別の対象だからな、たが俺は何の偏見も無い、抑も彼所程動き易い場所もそうそう無い、行かない理由が殆ど無い場所だ」
輝流「其処迄決まってるのか……なら一つ……俺からの頼みを聞いてくれないか?」
扇「何だ?」
輝流「クラスメイト全員で見送りさせろそして一発殴らせろ!!」
桜華「二つじゃ無いの其れ、一発殴るのは渡しの方でやっておくから」
扇「二人で人続ずつの願いって事で聞いてやろう」
桜華「なら遠慮無く、折角仲良くなれたのにたったの一週間しか友達として話せなかったじゃないの!!(扇の腹に見事な右ストレートを入れる)」
扇「止めるのは無粋だな、仕方ねぇ……受けてやらぁ(腹部にストレートを受ける)」
桜華「魚籠ともしないわね……私の本気の拳だったのに……」
扇「マァ、鍛え方が違うからな」
輝流「其れで、出発は何時にするんだ?」
扇「二日後だ、其れ迄に全員集めておけ」
輝流「分かった、マァ、今此処に小百合を除く全員が居るから今の内に声でも掛けておこうかな」
扇「お前の自由にしろ」
輝流「分かった、皆聞いてくれ」
クラスメイト達全員が輝流に注目したのを確認して輝流は話し始める
輝流「二日後、別行動をする扇を全員で見送ろうと思ってる、早朝、城の正門で見送りをしよう、其れで良いか?扇」
扇「其れで構わん」
輝流「と言う訳でその日は皆に来て欲しい」
クラスメイト男子全員「マァ奈落神には命を助けられたしな、行って欲しくは無いが守られた側の俺達には何も言う権利は無い、其れに俺達には輝龍と葛城(桜華)さんも居るしな」
クラスメイト女子全員「そうだね、せめてもの御礼として奈落神君を見送ってあげようよ」
扇「此奴ら全員人が好過ぎるな、マァ良い、明後日は見送り頼むわ」
クラスメイト全員「応っ(うんっ)!!」
扇「うむ、そんじゃ俺は部屋に戻る、輝流も良く考えたな、俺を見送るって話なら、小百合も否が応でも出て来るだろうからな」
輝流「其れもあるが俺は純粋にお前を全員で見送りたいだけだ」
扇「周知もあるしな」
輝流「そうだな」
そして扇は輝流達と別れ一度自室へと戻る、そして輝流は小百合の部屋の前に居た
輝流「小百合、ちょっと言いか」
小百合「輝流君……如何したの……?」
輝流「話が在るんだ、そのままで良いから聞いてくれないか?」
小百合「何……?」
輝流「実はな……扇が二日後の早朝、俺達から離れて別行動を取る事になったんだ、其の見送りにだけでも来てくれないか?」
小百合「如何言う事?其れって……扇君が一人で別の処に行くって事?」
輝流「そう言う事になる」
小百合「止めなかったの?なんでそんな話になったの?私達四人は此処で一人欠けちゃうの?」
輝流「止めはした、俺も着いて行くって、そしたら怒られたが……とは言え又何時か四人で話せる時が来るさ」
小百合「でも、なら何でそんな話になったの?」
輝流「扇は俺達の精神状態を案じて、一人で行動することを決めただけだ」
小百合「……私も着いて行く、扇君一人には行かせられないよ!!」
輝流「俺も怒られたんだ、小百合は特に精神状態も危ない、扇が許す訳ないだろ!!」
小百合「っ……分かった、時間は分かったけど……場所は何処なの?」
輝流「正門で、見送る事になってる」
小百合「分かった……扇君は決断を翻さないんだね」
輝流「あぁ、前からそうじゃないか」
小百合「そうだね、其れじゃあ二日後……扇君の見送りで」
輝流「あぁ……分かった」
話が終わり輝流は部屋で扇に会話の内容を話し、其の件について相談していた
扇「小百合の奴随分な荒れ様だったようだな、大好きな親友四人の内一人が自分の前から居なくなるんだ、当然と言っちゃ当然だろうな、だが其れは仕方の無い事だ、何かアクションを起こしてきても俺が何とかしよう、俺が撒いた種だ、其れは俺が摘む」
輝流「済まない、任せきりにして……」
扇「気にするな」
輝流「あぁ、分かった」
扇「そろそろ寝ようぜ、明日もお前等はカウンセリングが在るんだからよ」
輝流「そうしよう、其れじゃあお休み」
灯りを消して二人が睡眠に入る、其れから二日が経過しその日の早朝、扇はクラスメイト皆に見送られていた
扇「小百合を含めホントに全員ちゃんと来たのか、其れじゃあ、お前等が生きてりゃ又何れな」
輝流「あぁ、又扇と言葉を交わせる日を楽しみにしてるよ」
桜華「私も短期間限りでお終いにはしたくないから、又会いましょ」
クラスメイト全員「縁起でも無い事言わないで、奈落神(君)も気を付けて」
小百合「本当に行っちゃうの?」
扇「当然だ、俺が動かねぇと誰も動けねぇだろ」
小百「そう言われると行動を起こす気も無くなっちゃうな」
扇「抑も行動を起こせねぇだろ、行動を起こそうにも其れを起こせる材料が無くなったんだからな」
小百合「扇君には敵わないな、必ず追い付くから、行ってらっしゃい」
扇「諸君等と又同じ戦場に立てる事を願おう」
その言葉を最後に扇は皆に見送られてクラウ・アールへと歩みを進める、其の先で待ち受けるかも知れない苦難や敵にちょっとした期待を抱きながら