早いのか
遅いのか
12月、世間はクリスマス。東京には朝から雪が降り続いており、街はすっかり白銀の世界に包まれていた。そんな中、穂乃果の家「穂むら」の前では穂乃果の母が雪かきをしていて、その横で雪を見てはしゃぐ雪穂の姿があった
雪穂「うわ~っ、すごい雪! 真っ白だね~!」
穂乃果の母「もう、見てないでちょっとは手伝いなさい!」
雪穂「え~、せっかくの初雪なんだから満喫しなきゃ~…あれ、お姉ちゃんは?」
穂乃果の母「まだ寝てるんじゃない? 昨日の夜も早く布団に入ってたわよ。“体力温存しておく”とか言って」
雪穂「おお~……お姉ちゃんらしくない!」
その頃、穂乃果の部屋ではベッドの中からふと顔を出した穂乃果が、寒さに思わず鼻をすすりながら布団に潜り直そうとしていた
穂乃果「さむっ…あと五分だけ…」
二度寝しようとした時に穂乃果のスマホが鳴った
穂乃果「んぅ…ヨウタくぅん…おはよぉ…」
ヨウタ「…お前、今二度寝しようとしてただろ」
穂乃果「してないもん!たぶん…してない…はず…」
ヨウタ「口調がすでに眠そうなんだが?」
穂乃果「だって寒いんだもん~…お布団から出たくない…」
ヨウタ「ライブ本番当日にそのテンションやばいぞ」
穂乃果「…でも今日のライブは夕方からだから。まだセーフ…」
ヨウタ「昼は学校説明会があるんじゃねーのか?生徒会長なんだからサボるんじゃねーぞ?」
穂乃果「それくらい分ってるよ〜」
ヨウタ「それと…15時の便で東京に戻るから18時には羽田着く予定。何やかんやで19時ぐらいには会えると思う」
穂乃果「でも、こっちは雪降ってるよ。飛行機遅れたり飛ばなかったりしたらどうしよう…」
ヨウタ「大丈夫だろ?多分、なんとかなる」
穂乃果「そうかな…ヨウタ君のそういう適当な所、時々心配になるよ」
ヨウタ「うるせぇな。そんなに心配するならお前が飛行機乗って来いよ」
穂乃果「それは無理だよ!」
ヨウタ「けど、飛ばなかったら…泳いででも帰ってくるさ」
穂乃果「そんな無茶したら風引いちゃうよ」
ヨウタ「いや多分凍死する。まぁ今の所、飛行機も通常通りフライトするらしいから心配すんなよ」
穂乃果「じゃあ、夜会えるの楽しみにしてるね」
穂乃果が電話を切ろうとした時、俺は思わず声をかけた
ヨウタ「…あ、ちょっと待てって」
穂乃果「え?何?」
ヨウタ「あのさ…なんつーか…めちゃくちゃ練習してきたんだから、ライブは胸張って行けよ。お前なら…大丈夫だから…あ、いや、その…まあ、頑張れよ」
穂乃果「ありがとう、ヨウタ君♪」
電話が切れた後、ふとスマホを見つめながら、小さくつぶやく
穂乃果「…本当に、来てくれるのかな?」
その言葉とともに、心の奥に思い出がよみがえってくる数日前の記憶
――数日前の夜。音ノ木坂からの帰り道
穂乃果「明日から、沖縄だっけ?」
ヨウタ「ああ。母方のおばあちゃんの還暦祝い」
穂乃果「そうなんだ…家族の大切な日だね」
ヨウタ「まあな」
穂乃果「ねえ、いつ戻ってくるの?」
ヨウタ「ライブの日の夕方ぐらいかな?」
穂乃果「その日…帰ってきたら、少しだけでも会えたりする?」
ヨウタ「…どうだかな…東京は雪って予報だし、雪次第で飛行機も止まるかもしれねぇし」
穂乃果「…そっか…そうだよね…」
ヨウタ「…けど、絶対戻ってくる」
穂乃果「…え?」
ヨウタ「時間ズレても、遅れても。何があっても帰ってくる。だから…」
穂乃果「そっか…じゃあ、待ってるね」
ヨウタ「…ああ」
思い出を噛み締めるように、ゆっくり息を吐く。窓の外では雪がしんしんと降り続けていた
穂乃果「ヨウタ君…絶対、帰ってきてくれるよね」
小さく呟く声は震えていたが、どこか確かな希望も宿っていた
場所は変わって、真姫の家の前。雪は小降りになってきたが、相変わらず冷たい風が頬を刺す
ユウノスケ「ヘックション!!うー寒っ…」
凛「寒いにゃ~!こんな天気で本当にライブなんてやるの~!?」
花陽「予定通りあるみたいだよ」
凛「えぇ〜!?」
花陽「昼からは晴れる予報だし大丈夫じゃないかって」
ユウノスケ「お前らも大変だな…」
ライブなんて俺には縁遠い世界だが、寒さの中で踊るって普通に考えて根性いるよな
凛「寒いだけでも辛いにゃ〜!」
花陽「でも凛ちゃん。頑張ろうね!」
凛「かよちん…うん!もちろんにゃ!!」
ユウノスケ「応援にアイツらも間に合えばいいんだがな…」
そんなことを話していたら、真姫が門の中から姿を現した
真姫「お待たせ」
凛「遅いにゃ!!」
真姫「だから言ったでしょ。待っててくれなくていいって」
あいかわらずの言い草だが、そんだけ余裕があるってことか。でも凛は容赦しなかった。いたずらっぽく笑いながら、真姫の頬に自分の冷えた手を押し当てる
凛「待たせた罰だよ!」
真姫「ちょっと止めなさいよ!冷たいじゃない!!」
ユウノスケ「たく、さっきまでの凛とは大違いだな」
マジで寒そうにしてたのに、真姫相手だとテンション変わるのが分かりやすい。そして案の定、真姫から俺に視線が向く
真姫「ていうか、何でアンタもいるのよ」
ユウノスケ「アイツらに頼まれたんだよ。会場まで連れて行ってやれって」
真姫「多く作ってもらって良かったわ」
花陽「真姫ちゃん、それは?」
真姫「これ、お母さんがみんなにって…その…カツサンドよ!」
ユウノスケ「なるほどな。“勝つ”ってことか。良いお母さんだな」
真姫はちょっと顔を赤くして目を逸らした。
多分、照れてる
凛「真姫ちゃんのお母さん、神ってるにゃ…」
花陽「うん…元気出てきたかも」
ユウノスケ「わりぃ、先にもらっていいか?腹減ってんだ」
真姫「…別にいいけど、歩きなが食べるなんて行儀悪いわよ」
ユウノスケ「そんなの誰も気にしねぇって」
凛「ずるいにゃ〜!凛も食べたい〜!」
花陽「わ、いい匂い…!」
真姫「貴方達は会場ついてから。女の子が歩きながら食べるなんて、はしたないわよ」
凛「えぇ〜〜!?そんなのお腹には関係ないにゃ〜!」
花陽「…でも、真姫ちゃんの言う通りかも…」
俺はカツサンドをかじりながら、じゃれ合う3人を横目に歩き出す
ユウノスケ「んじゃ、行くか。雪が強くなる前に」
俺たちは雪の残る道を踏みしめながら、ライブ会場へと歩き出した
今日はにこの家で妹達の子守りを頼まれていた。それでリビングに入ると、2人がにこの前で「にっこにっこにー!」を真似して大はしゃぎしている
ここあ「にっこにっこにー!」
こころ「にっこにっこにー!」
にこ「にっこにっこにー♪」
にこも負けじと本物の「にっこにっこにー」を見せている
ここあ「うわぁ~!やっぱり本物は違うね!」
こころ「ええ!さあ、もう一度お姉様にエールを送りましょう!」
にこ「ありがとう!絶対、最終予選突破してみせるからね!!」
こころ「そうですよね!お姉様が居てこそのμ'sですもんね!」
にこ「えっ!?あ…」
ここあ「μ'sと一緒になったからって、お姉様はμ'sのセンターだもんね!」
にこ「えー…と、当然でしょ!私がいないとμ'sは始まらないんだから!」
俺はそんなにこの勢いを見ているとツッコミたくなってきた。だから口を挟む
マサ「にこ、嘘は良くない。今日の最終予選はにこはセンターじゃ…ふぐっ!?」
真実を言いかけた所で、にこに全力で口をふさがれた
にこ「アンタこそ妹達の前で嘘をバラしてんじゃないわよ!!」
その瞬間、ベランダのドアがガラリと開く音にみんなが驚いた。にこは思わず尻もちをついてしまう。そこにいたのは虎太郎だった
にこ「虎太郎!?」
ここあ「静かにしなよ!」
虎太郎「出来た…」
虎太郎の言葉に俺達は気になって見に行くと、そこには雪で作られたμ'sの9人の小さな雪だるまが並んでいた
マサ「すごい…1人で作ったのか?」
虎太郎「うん…みゅーず…」
にこはその雪だるまを見て、感謝の気持ちを込めて静かに言った
にこ「ありがとう、虎太郎」
虎太郎「頑張れ〜…」
にこ「うん!マサとお母さんに会場に連れて行ってもらいなさい。私がセンターで思いっきり歌うからね!」
ちょうどその時、家のチャイムが鳴る。にこが玄関に向かうと、そこには希と絵里の姿があった
希「にこっち、おはよう♪」
にこ「なんでアンタ達が来るのよ…」
にこがドアを閉めようとした瞬間、希が足を突っ込んで扉が閉まるのを阻止した
絵里「希がね。3人で行きたいって」
希「ウチやないよ、カードがそう告げたんや。一度くらい3人で行かないときっと後悔が残るかもしれないって」
にこ「何よそれ…」
絵里「素直じゃないでしょ?」
にこの言葉に絵里は希の顔を見て、見抜かれたことに苦笑いした
にこ「待ってて、すぐ準備するわ」
そう言ってにこは玄関を閉めようとするが、希達の顔を見ていると自然と視線が離せなくなった
希「どうしたん?」
にこ「寒いから、中入ってなさいよ」
その頃、穂乃果達は生徒会室で説明会に来てくれている生徒やその保護者が学校の中に入っていくのを嬉しそうに眺めていた
穂乃果「うわぁ~!こんな天気の中でも、たくさん生徒が来てくれてる!」
ことり「うん!」
雪の中来てくれてる生徒を眺めていると、窓を開けていたから外の寒い風が室内に入って来る。風を受けた穂乃果は勢いよく窓を閉める
穂乃果「うわぁ~ん寒いよ~!雪が降るのはいいけど、寒いのはいやだよ~!」
海未「雪が降って寒いのは当たり前の事です。そんな事より、私たちもそろそろ講堂に向かいましょう」
穂乃果「うん!」
ことり「そうだね」
穂乃果「挨拶をビシッと決めて、最終予選のライブに弾みをつけるよ!」
講堂に向かおうとしていた時、先生に引き止められ、穂乃果達に説明会の開始時間の事について知らされる
穂乃果「えぇー!?1時間も開始遅れるんですか!?」
先生「仕方ないだろ?この調子じゃ…」
説明会の時間が遅れる事を伝える為、絵里に電話する穂乃果
絵里『そう、それは仕方ないわね…』
穂乃果「理事長は説明会を欠席してもいいって言っていたけど、そういう訳にはいかないし…」
絵里『分かったわ。私が事情を話して6人で進めておくわ』
ユウノスケ「アイツらは遅れるのか?」
絵里「ええ。説明会が1時間ほど遅れるみたいなのよ」
レン「生徒会も大変だね〜」
凛「それにしても大きいにゃ〜」
にこ「あ、当たり前でしょ!最終予選なんだから」
レン「よし!そいじゃ皆ちゃま!?気合い入れていきましょう!?」
ユウノスケ「お前が仕切んな」
一方その頃、音ノ木坂の校門前。降り積もった雪が歩道を塞ぎ、来校する中学生や保護者の通り道を妨げていた
フミ「あー腰痛ぇ…なんで俺らは雪かきなんだよ」
シュウジ「俺達も一応は生徒会だろ。説明会に来る人が安全に通れるようにするのも仕事だ」
シオン「まあな。こんだけ積もってりゃ、放っときゃ事故になる」
フミ「それにしても、いつになったら雪は止むのか」
白い息を吐きながら俺は手を動かしていると、不意に明るい声が飛んできた
穂乃果「みんなー!手伝いに来たよ!」
ことり「スコップ、まだあるかな?」
海未「みんなで早く終わらせましょう」
振り返ると息を切らした穂乃果、ことり、海未が駆け寄ってきていた。正直、内心は助かったと思う気持ちだった…けれど――
フミ「たく、お前らにされるワケねーだろ」
シオン「気持ちはありがたいけどな」
シュウジ「今日は最終予選だろ?ここで余計な体力使ったらライブでバテるぞ」
穂乃果「え、でも!」
ことり「私達も何かしないと落ち着かなくて…」
海未「3人に任せきりでは流石に心苦しいです」
シュウジ「今日のお前らの仕事は雪かきじゃない。歌って、勝つことだ」
フミ「そういう事だ。お前らは説明会と最終予選の事だけ考えてろ。裏方は俺らで十分だ」
シオン「ほら、早く校内に戻れ。ライブ前に体冷やしたらどうすんだよ」
海未「ここは3人任せて私達は説明会の準備をしましょう」
穂乃果「うん。3人も頼んだよ!」
穂乃果達3人が校内に駆けていくのを俺達は黙って見送った
説明会も無事に終わり会場に向かおうと思ったのだが
絵里『えっ!動けない!?』
ことり「そうなの!電車が止まっちゃったらしくて…今、穂乃果ちゃんのお父さんに車出してもらおうと…」
穂乃果「ダメ!今、お父さんと電話で話したら道路も全然動けないって!」
海未「それでは移動手段が…」
フミ「…こうなったら、バイクで行くしかねぇな」
シオン「そうだな。3人でバイク出せば何とかなるだろ」
シュウジ「よし、これで会場まで…」
その時、ヤヨイが眉をひそめて横から声をかけた
ヤヨイ「ちょっと待ってください!3人のバイクってオフロード用じゃないですよね?それにタイヤにチェーンも巻いてませんし、こんな雪道で走るなんて絶対危険ですよ!」
シオン「…確かにな」
シュウジ「無理に行くと逆に事故る可能性もあるな
フミ「ったく、んな事は分かってるよ…けど、他に手がないんだよ」
穂乃果「走っていくしかないよ!」
シオン「正気かよ!」
ヤヨイ「この雪の中、歩くのも難しいかと…」
穂乃果「開演までまだ1時間はある!急げば間に合うよ!」
フミ「…分かった。行こう」
多分、アイツも同じ事言うに違いない
しかし、吹雪が横殴りに吹きつけ体温を容赦なく奪っていく。雪は目に入り、口を開けば冷たい息が瞬時に凍りつく
穂乃果「うぅ…寒いよ…!」
ことり「足が…滑る…!」
海未「このままでは前が見えません…」
シオン「落ち着け。無理に走ったら終わりだ」
シュウジ「雪が深すぎる……普通に歩くだけで疲れるな」
だが、必死に歩き続けるうち、吹雪は次第に弱まり、空の白が少しずつ薄くなってきた。雪の粒が和らぎ、視界が開けていく。すると階段から校門前、そして、その先まで、きれいに雪かきされた道が広がっていた
レン「やっと来たね〜」
フミ「レン、何でお前が…」
ヒデコ「遅いわよ!」
ミカ「また雪積もっちゃったじゃない!」
穂乃果「もしかして…これ、みんなが?」
フミコ「はい。スノーブーツ、サイズ合わなくても大目に見てね」
ミカ「心配しないで、会場までの道は私たちがサポートするよ!」
ヒデコ「電車が止まったって聞いたから、みんなに声をかけたの」
レン「そしたら、音ノ木坂の全校生徒が来たんだってさぁ〜。もちろん俺っち達も絵里さんに頼まれて加勢しに来たナリ」
穂乃果「みんな、ありがとう…」
レン「穂乃果ちゃん。ここで泣いてたらヨウちゃんに呆れられちゃうよ」
穂乃果「うぅ…だって…だってぇ…」
シオン「感動したい所だが、今は先を急ぐぞ」
レン「それぞれのチェックポイントにノスケちゃんや、マーちゃん、ユウちゃんもいるから道案内に従ってね」
シュウジ「ああ、分かった」
ヒデコ「さあ走って!音ノ木坂のみんなで作った道を!」
穂乃果「うん!」
会場までの道を雪掻きで開いてくれたレン達や全校生徒達に感謝しながら穂乃果達は走り出した。途中から応援してくる生徒達の声に穂乃果達はどんどん走るスペースを上げていく
フミ「もう少しで会場だ!」
シュウジ「みんな、頑張れよ!」
「「「うん!!」」」
絵里「穂乃果~!」
凛「穂乃果ちゃ~ん!」
すると、遠くから聞こえた声の先には絵里と凛だった。その2人が大きく手を振っているのも、ちゃんと見て取れる
凛「穂乃果ちゃ~ん!」
花陽「間に合った!」
希「良かった!」
穂乃果「みんな…!うわぁ~ん!!」
穂乃果は傘を投げ捨て絵里ちゃんの元に走り出す
絵里「穂乃果!」
穂乃果「絵里ちゃ~~ん!」
そして穂乃果は泣き叫びながら、絵里に抱きついた
穂乃果「寒かったよぉ!怖かったよぉ!みんなで結果を残せるのはこれで最後なのに…こんなに頑張ってきたのに何にも残らないなんて悲しいよ!だから…!」
絵里「……ありがとう!」
にこ「もう…泣いてる場合?」
希「にこっち、目うるうるしてるよ」
にこ「私は泣いてないし!希こそ…」
希「ふふっ…もうっ」
フミ「アイツらにも感謝しねーとな」
シオン「ラーメン奢れとか言い出すぜ。きっと」
レン「それは当たり前でしょ〜」
シュウジ「いつの間に」
マサ「みんなが到着するの見えたから切り上げて来た」
ユウノスケ「雪かきしてる生徒みんなでライブ見ようって話なってな」
ユウヤ「つーか、俺らの分のラーメン代お前らは払えるのか?」
ヤヨイ「割り勘すれば払えると思いますよ」
穂乃果「みんな、本当にありがとう!私たち、一生懸命に歌います!今のこの気持ちをありのままに!大好きを…大好きのまま…大好きって歌います!絶対、ライブ成功させるね!!」
穂乃果は音ノ木坂全校生徒の前で誓った
そして最終予選、μ’sの出番。歓声が飛び交う中穂乃果が少し前に出る
穂乃果「みなさんこんにちは!『μ’s』です!これから歌う曲は、この日に向けて、新しく作った曲です!たくさんの“ありがとう”を込めて、歌にしました!応援してくれた人、助けてくれた人がいたおかげで…私たちは今、ここに立っています!だからこれは…みんなで作った曲です!」
穂乃果「みなさんこんにちは!『μ’s』です!これから歌う曲は、この日に向けて、新しく作った曲です!たくさんの“ありがとう”を込めて、歌にしました!応援してくれた人、助けてくれた人がいたおかげで…私たちは今、ここに立っています!だからこれは…みんなで作った曲です!」
絵里(学校が大好きで…)
真姫(音楽が大好きで…)
にこ(アイドルが大好きで…)
凛(踊るのが大好きで…)
花陽(メンバーが大好きで…)
希(この毎日が大好きで…)
海未(頑張るのが大好きで…)
ことり(歌うことが大好きで…)
穂乃果(μ’sが…大好きだったから!)
『Snow halation』
そしてLIVE終わり
レン「よし!LIVE終わったから打ち上げしようぜ〜!」
ユウヤ「まだ雪降ってんのに無理だろ」
ユウノスケ「ああ、帰り大雪になったらマジで帰れなくなるぞ」
シオン「この天気だ。今日は絶対やめておいたほうがいい」
シュウジ「同感だな」
レン「えー、でも盛り上がりたいじゃん!」
フミ「ヨウタもいないんだし、日を改めてやるのが正解だろ」
レン「…しょうがないな、今日は我慢するか」
穂乃果「またみんな揃ったときにね!」
レン「という事で俺っちは帰るね〜。バーイ」
絵里「じゃあ、私達もここで」
希「みんな、気をつけて帰るんやで」
シオン「俺達も電車が止まるとまずいから、急いで帰るぞ」
シュウジ「ああ、そうだな」
凛「ユウノスケ!今日も来ていい?」
ユウノスケ「ああ、雪でもウチは営業してるからな」
凛「じゃあ、真姫ちゃんとかよちんも行こうよ!」
真姫「えぇ…でも…」
花陽「せっかくだし一緒に行かない?」
真姫「しょうがないわね。行ってあげるわ」
ヤヨイ「あの、僕も行っていいですか?」
ユウノスケ「ああ、良いぜ。多い方が賑やかだしな」
マサ「クリスマスだし、ケーキ買って帰ろうか」
にこ「え、アンタが買うの?」
マサ「そう。俺が買って、にこの家でみんなで食べよう」
にこ「お金は大丈夫なの?」
マサ「大丈夫。ちゃんと持って来たから」
にこ「…ふん、じゃあ期待してるわよ」
ユウヤ「うわぁ、アイツらから鬼電来てるよ…たく…」
フミ「暗いし、3人共送って行くよ」
穂乃果「ありがとう!」
ことり「寒い中ありがとう、フミ君」
海未「私も感謝します」
それぞれが別々の帰路に付くのであった
つづく
秋葉原駅の改札前。時計を見ると19時丁度良い。雪混じりの風が頬を冷たく刺すけれど、私は、待ち人の到着を心待ちにしていた
穂乃果(絶対来るよね…19時には来るって、約束信じてるんだから)
手袋越しにスマホを握りしめ、何度も時計を確認する。頭の片隅では「飛行機が遅れてたらどうしよう」なんて不安もよぎるけれど、心の奥底では「絶対に来てくれる」と信じていた。19時が過ぎ、20時近くになろうとしていた。周りの人たちはせわしなく行き交い、改札の向こうでは雪がちらついている
穂乃果(……やっぱり、駄目だったのかな……)
小さく呟き、肩をすくめる。手先の冷たさが、だんだん現実感を持たせていく。吹き付ける雪混じりの風に、少しだけ胸が締め付けられた。その時――
ヨウタ「雨は夜更け過ぎに〜♪ 雪へと変わるだろ〜♪ Silent night〜 holy night〜♪」
改札の向こう、たくさんの人混みの中に見覚えのある姿に思わず息をのむ
穂乃果「何してんの?」
その声を聞き、ジト目で問いかける。怒っているはずなのに、心の奥では安心しているのが自分でも分かった
ヨウタ「悪りぃ…遅れた」
穂乃果「もう…ちゃんと埋め合わせしてよね」
呆れつつも、私は小さく息を吐く。口元は思わず少し笑っていた
ヨウタ「分かってるって。つーか、それより腹減った。乗り継ぎばっかで何も食ってねーんだよ」
穂乃果(本当に相変わらずなんだから)
小さな笑いとともに、安心と苛立ちが入り混じった複雑な気持ちが胸の中で温かく広がった
食事を終えた私たちは、雪の降る街をそろそろと歩いた。冷たい空気が頬をかすめ、吐く息が白く舞う。私は少しだけ前を歩きながら、足取りも軽く、ある場所へ案内した
穂乃果「わぁ…綺麗…」
目の前に広がった光の海に、思わず息をのむ。
無数のイルミネーションが雪に反射してきらめき、世界がまるで宝石箱のように輝いていた。
ふと隣を見ると、ヨウタ君が少しだけ口を開け、光に照らされた横顔を見せている
ヨウタ「……ああ、そうだな」
そう答えた彼の声に、何やら疑問も湧く。本当にこの景色を綺麗だと思っているのか?でも、それ以上に私のためにここまで来て、一緒にこの瞬間を見てくれていることが嬉しかった
ヨウタ「ほら、これクリスマスプレゼント」
すると彼はポケットから取り出した袋を私に渡すら、袋の中を見ると、私の好きなキャラクターの小さなキーホルダー。思わず笑顔がこぼれる
穂乃果「私の好きなキャラクター!」
ヨウタ「空港で見かけたから」
穂乃果「ありがとう!覚えててくれたんだ」
ヨウタ「まぁな…」
軽く言うけど、その目は少しだけ照れている。こんな小さなことでまで、私の事を考えてくれていたのかと思うと嬉しくなる。その時、冷たい風が私達を包む。ふと横を見ると、彼は肩を少し震わせている
穂乃果「ヨウタ君…寒いの?」
ヨウタ「ああ…完全に舐めてた。沖縄から急いで来たから、防寒してねーんだ」
本当にこの人は…律儀に駅まで駆けつけてくれるくせに、こういう所は無防備で、なんだか子供っぽい。けれど、そんな不器用さもやっぱり愛おしいと思ってしまう
穂乃果「じっとしてて」
ヨウタ「え?」
穂乃果「いいから」
私は自分のマフラーをほどき、そっと彼の首に巻く
ヨウタ「おい、穂乃果――」
穂乃果「もう!動かないでよ!」
触れた瞬間、ふわりと彼の匂いがして心がドキドキする
穂乃果「うん!すごく似合ってる♪」
ヨウタ「…あ、ありがと」
その照れくさそうな顔に胸が一気に熱くなる。ちゃんと約束を守ってくれた人。寒さも無視して、私のために駆けつけてくれた人。その不器用な優しさが、嬉しくて、愛おしくて――どうしようもなく胸が高鳴る。気づけば指先が彼の頬に触れていた。温かさを確かめるみたいに。目が合った瞬間、呼吸が止まった。唇が自然に近づいて…あと少しで触れる所ではっと我に返る
穂乃果「……っ」
寸前で止めた。怖かった。もし拒まれたら…もし気持ちが一方通行だったら…けど同時に、どうしようもない想いが胸を突き破りそうで、もう隠せなかった。俯いたまま小さく震える声で呟く
穂乃果「ごめん…我慢できなかった…」
そして勇気を振り絞って顔を上げる。涙で滲みそうになる視界の向こうで、彼の瞳だけははっきりと見えた
穂乃果「ヨウタ君…大好きだよ…」
言葉の答えはすぐに返ってきた。彼の大きな手が私の肩に触れ、逃げ場をなくすように引き寄せられる。次の瞬間、唇が重なった。雪も、街のざわめきも、光のきらめきも、すべてが遠のいていく。残ったのは、胸の奥に刻まれる確かな温もりだけだった
やっと動いた