ウィンストン・チャーチル
今、僕が登っている山は標高300メートル位でなだらかな、初心者用の山らしい。
昨日オットーさんが教えてくれた。少年なら、すぐに登れてしまうと言っていた。
山に登って1時間くらいたつ。今は1つ目の休憩ポイントだ。
皆すごく疲れていて、水をがぶ飲みしている。
僕はなんともない。
汗はかいたが、疲れは特にないし。
正直言ってこの位の山であれば、一回も休まずに登れると思う。
そして、僕の隣には、同じように全く疲れていない男の子がいる。
名前は轟焦凍と言うらしい。
凄くかっこいい名前だ。
珍しく、髪の毛の色が紅白に分かれている。縁起がよさそうだ。
しかも、目の色も分かれている。かっこいい。
そして、左目にはやけどの跡があった。痛そうだ。
僕も気を付けなければならない。
そんなことを考えていたら休憩の終わりの笛が鳴った。
「先生。大丈夫でしょうか?」
若い先生は言った。何が?と返せば、
「今、ネットで見たのですが、ここらへんで殺人事件が起こったらしいです。私心配で・・・」
「大丈夫ですよ。生徒と先生もしっかりと、固まって動きますし、ヒーローも巡回している。心配はありません。」
「わかりました・・・」
笛の音がなった。生徒や先生方は歩かなければならない。生徒がブーイングを言う。
そりゃそうだ。
上り坂をぶっ通しで歩いて、ようやく心待ちにしていた休みが、たったの5分だ。
それに笛を持っている先生は体育の先生だ。
この伝馬がいる小学校では、体育だけ専門の先生が、授業を行うのだ。
生徒は思った。
ふざけるんじゃない。僕たちは、先生の様な体力を持っていないのだ。と。
他の先生方は思った。
ふざけるんじゃあない!!こちとら、もう足腰が限界なんじゃ!!!せめてあと5分休ませろや!!!と。
皆はこの思いを目で必死に訴える。
だが、体育の先生は何処吹く風だ。
まったくの非難の目に気づいていない。
このハイキングは地獄になるかもしれないと。3人を除いて思った。
手遅れである。
休憩から1時間立った。
さて、さっき3人を除いてと書いたが、その3人とは誰か分かるがろうか。
体育の教師。
轟焦凍。
大歴伝馬。
の三人である。
彼らはどんどん先へ進む。
先生や生徒が無断で休憩しても構わず、どんどんと進む。
彼らは、もはやライバル関係だ。
誰が一番に山頂にたどり着いて、昼飯を食べ終わるか。
意地を抱え、足を踏みしめる。
この3人は割と疲れていた。
突然、体育の教師は禁断の戦法に出る。
なんと走り出したのだ。
二人はびっくりした。
そこまでして、勝ちたいのか。
伝馬は心の中で罵倒を浴びせる。
轟は素直にドン引きしている。
二人は顔を見合わせる。
しょうがないから、自分たちで頑張ろうと意見が一致したのだ。
因みに二人とも、後退の二文字はない。あの体育教師に一泡吹かせたいのだ。
二人で歩いていく。
そうすると、分かれ道だ。
右か左か。分からないので、棒倒しで決めた。
左だ。
彼らは、左へ進む。
実は、この山はゲームではないが、難易度設定ができる。
右に行ったら、直線ルート、左に行ったら、急がば回れルート。
ハイキング競争は、体育教師が一位になった。
急がば回れルートは山をぐるぐる回るルートだ。
直線ルートよりも、長さが3倍になる。
しかも、殆ど人が行かないルートであるため、舗装などもお粗末であった。
だからだろうか。
男がいる。道端で穴を掘っている。深さは1メートルにもなる。その中にドサッと、何かを入れた。
男は道を戻る。
二人がいる方向に。
あの無駄口ききの、飲んだくれのチャーチルめ、奴が全人生で成し遂げた事などあるか?偽りの標本め。第一級の不精者め
アドルフ・ヒトラー