ナポレオン・ボナパルト
「クソっクソォ!!」
なんで俺は、こんなところで、こんな奴を埋めているんだ!!ふざけんじゃねえ!!
これも全て、このヤロウのセイだ!!
コイツが、あんな事をしてくれなきゃよかったんだ!!
「畜生ォ!!」
穴を掘り終わったぞぉ!!さっさとこの糞野郎入れて逃げなきゃあならねえ!!
んん?
なんだァ?ガキがいるぞぉ?
もしかしてぇ、見られたのかぁ!!?
やばい!!?ヤバいぞぉ!!?
殺さなくては!!絶対に殺さなくては!!
じゃねえと、俺には明日がねえ!!
なんか穴掘っている人がいる。
「なんだあれ?」
「何やってるんだろうね。」
よく観察する。穴を掘っている。深そうだ。腰まで穴の中だ。
凄く怒っている。何故だろう。
掘っているのは男だ。父位にデカい。
何かを入れたぞ。でっかく黒いバックだ。
こっちを見た。焦っているようだ。何かまずいことでもあるのか?
!!!!
あの感じは、不味い!!知っている!!この感じを知っている!!
「轟君!!逃げろ!!!」
瞬間。あの男が物凄いスピードで走る。体が、段々と変わっていく。
足はバッタの様に、人間が曲がってはいけないほうに変形していく。
腕の肘から、まるでカマキリのような刃がニョキニョキと腕の中から出てゆき、手の甲からは、ハチの針のような、鋭い針が出てくる。
口から下にはアリのような、ハサミのような歯に代わっていく。
身体全体はカブトムシのような装甲に変わっていった。
もはや、人間ではない。
アメリカのB級ホラーサスペンスのような、恐ろしい昆虫人間だ。
「テメエらミチマったなぁ・・・!!殺しタクハなかったが・・・。コロスしかねえぇよなぁ!!!!」
顎をカチカチと鳴らしながら喋る。
そうか。あれが、
あんなにも恐ろしいのか。敵とは。敵はこんなにも恐ろしいのか。
ヴィランが目の前に突進してくる。体が動かない。
今まで、訓練をしてきたのに動かない。思考がまとまらない。
クソ!!動け!!今までやってきたことを思い出せ!!
何のために、おじさんたちが教えてくれていたんだ。
咄嗟にライフルを取り出す。
Gewehr 98だ。ドイツ帝国で製造された、ボルトアクション式小銃である。装弾数は5発。銃口には銃剣が付いている。
だが、遅かった。
銃を放とうとした時、すでに目の間ににいたのだ。
だが、銃剣が付いているので、男の胸に刺さった。
いや、違う。刺さったのではない。
挟んでいるのだ。男の顎が剣を挟んでいるのだ。
バキッと銃剣が折れた。
折れた瞬間伝馬は、身をかがめ、銃を放つ。
一発・二発。
銃声が誰もいない道にこだまする。
だが、効かない。
人並みに大きくなった、カブトムシの装甲はどれぐらいになるのだろう。
きっと火砲を浴びせないと、装甲は破れないだろう。
「ぐわっ!!」
首をつかまれた。
必死にもがく。だが、力が違いすぎる。
正に大人と子供。いや、人間と虫くらいの差があるであろう。
個性とはそれほどもまでに、凶悪で強力なのだ。
ヴィランは笑う。凶悪に笑う。
「お前、何をするんだ!!」
隣で見ていた轟は、咄嗟に、氷をヴィランに浴びせた。
もしかしてだが、伝馬に当たってしまうかもしれないが、そんなことは考えられなかった。
目の前の新しい友人を救いたかったのだ。
だが、避けられる。
さっきは記してはいなかったが、ヴィランの目は複眼になっている。トンボのように。
トンボの複眼は、全てが見えるという。そう。上下左右前後すべて見えているのだ。
奇襲は通用しない。
轟は蹴り上げられ、上がったところを、ジャストに首をつかまれたのだ。
二人とも、首をつかまれていた。
実は、男が走ってきたときから、30秒も経っていない。
早すぎる決着であった。
ヴィランは、二人を穴に投げた。
どうやら、バッグと共に二人を埋めるらしい。
スコップで、土を二人に浴びせる。
意識が朦朧としてきた。
俺は、このハイキングはあまり乗り気ではなかった。意味があるとは到底思えなかった。
早く終わらないかと最初から思っていたら、他校の奴が話しかけてきた。
別に今日だけなんだから、別に話さなくてもいいだろう。
と、思っていたが、なんだコイツは。ずっと話しかけてくる。
天気が良いだの、何処の小学校なのかとか、とにかく喧しい。
しょうがないから付き合うことにした。名前を教えたり、個性の事とか。
だいぶ話してしまった。何故か、いろいろ話してしまうのだ。
何故だろうか。
そうしていたら、後続はいなくなっていた。
気づいたら三人だけだった。
そうしていて、歩いていたら先生は突然走っていった。
ガキかよ。
そうして、コイツの提案の棒倒しで、分かれ道の方向を決めることにした。
それが、間違いだったんだ。
まさかあんなやつがいるなんて。
コイツはあの男を見た瞬間、逃げろ!と言った。俺は頭が真っ白になって、動けなくなってしまった。
そうしていたら、バンと大きな音がした。
ハッとして、ヴィランを見ると、もう目の前にいて、隣の奴が、上にいたんだ。
首を絞められていた。
助けなくては。そう思った。
目の前の新しい友人を救いたかった。
だが、無理だった。
体が動かない。
もう、だ・・っめか・。
轟の意識が止まる、ほんの少し前。ヴィランを吹っ飛ばした男がいた。
「もう大丈夫!」
「何故って?」
「 私 が 来 た ! ! 」
その男の服は赤と青と黄色、そして白のスーツを着ている。
まるでアメリカのスーパーマンのようだ。
筋肉隆々で常に笑顔。
これがヒーロー。という見た目だ。
そう。みんな知っているヒーローがここに来てくれた。
今、山を歩いている小学生のリュックの中にヒーロー辞典が入っていた。
最初のページに書いてある。大々的に二面で紹介されている。
『人気ナンバー1ヒーロー。ナチュラルボーンヒーロー。平和の象徴。』
オールマイト
子供を助けるためにただいま参上!!
偉人なくして偉業はない。そして偉大になろうと決意した人物だけが偉人となるのだ。
シャルル・ド・ゴール