歴史はヒーローになれるのか   作:おたま

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我々の目的は、勝利、この二字であります。あらゆる犠牲を払い、あらゆる辛苦に耐え、いかに長く苦しい道程であろうとも、戦い抜き勝ち抜くこと、これであります。

ウィンストン・チャーチル 


青年編
青年はさらに体を鍛えている


あれから三年経った。

 

もう伝馬は、男の子や、少年と呼ばれる年齢ではない。青年となったのだ。

 

彼は、中学3年生である。

ずっとヒーローになるために邁進している。

 

個性の能力を伸ばし、自らの体や技能を鍛えている。

 

きっと10歳の時のヴィランとまた対峙したら、そこそこ闘えるようになったであろう。

 

彼の個性の先生は、年を重ねるごとに増え、厳しさは増していった。

 

新しい先生となったのは、四人。

各国から一人ずつである。

 

イタリア王国からは、ジョヴァンニ・メッセ。ソビエト連邦からは、ヴァシリ・ザイツェフ。アメリカ合衆国からは、チャールズ・ケリー 。大日本帝国からは、舩坂弘だ。

 

そうそうたるメンツであろう。

 

父は興奮しながら、サイン用紙とマッキーペンを持ちながら近づくほど、ビックネームだらけだ。

 

その前に、彼らの容姿や特徴を説明しなければならない。

 

ジョヴァンニ・メッセは、ムッソリーニと同じで、緑色の軍服を纏っている。肩からベルトを巻いている。

軍帽をかぶっており、その軍帽は高い円筒形の帽子である。シャコー帽と言うやつだ。そして、正面には、ムッソリーニ同様、金色の鷲が、付いている。

顔はイタリア人らしく、彫りが深い。

 

ジョヴァンニ・メッセはイタリア王国の軍人及び政治家。

 

彼は指揮官だが、だれよりも判断能力が突出しているのである。

彼は、ソビエト戦線で、イタリア軍を偵察部隊として起用し、逐一敵を見つけたらドイツ軍に報告し、撃退させながら戦線を広げ、ソビエトの大地に深く進んだ。

 

所謂、イタリア流電撃戦である。

 

ジョバンニは、今自分ができることを見つけ、それを最大限活用することができた。

ヒーロでは、非常に大事な事であろう。

 

 

ヴァシリ・ザイツェフは茶色の軍服に身を纏い、茶色の外套を羽織っている。

軍帽はロシア帽で、コサックのような見た目に加え、耳元まで温かいように毛皮が追加されている。

顔は、無精ひげを生やしている。目は鋭い。説明するとしたら、”狩人”であろう。

 

彼は、スターリングラード戦で、活躍したスナイパー兵である。

一般的なモシン・ナガン・ライフルで32人のドイツ兵を倒した。

そして、ザイツェフは廃墟に設けた狙撃兵訓練学校で28人の兵士を狙撃手として育成し、結果として3,000人以上のドイツ兵が戦死したと云われている。

 

教育者としても、スナイパー兵としても、非常に熟練した兵士である。

 

 

チャールズ・ケリーは、茶色の軍服を纏い、胸には、陸軍名誉勲章をつけている。そして、ヘルメットをかぶっている。

顔は、普通のアメリカ人のようだ。そして、目は好奇心がふつふつを表れているような、まるで、子供のような目をしている。

 

だが、侮ることは絶対にしてはいけない。

 

彼の別名は、『コマンド―・ケリー』『戦争に愛された男』

 

この男は、ケリーはイタリアの南部のアルタヴィッラ近郊でドイツ国防軍の攻撃に晒されていた弾薬集積所の防衛に参加することになる。

彼は一晩中、倉庫内に立て篭もって抵抗を続けた。

撤退命令が下されると、彼は自ら、殿軍に志願し、追い詰められながらもドイツ兵の足止めを続けた。

 

ライフルが熱で焼けるまで撃ち続け、マシンガンが焼けるまで撃ち続け、バズーカを弾が集積所からなくなるまで撃ち続け、外に出て、対戦車砲で撃ち続けた。

弾薬集積所内を駆け回っては武器を探し、BARやトミーガンを撃ちまくった。

そして、アメリカの陸軍の中で最高位の勲章。陸軍名誉勲章を大統領から授与された。

 

化け物である。

化け物以外の感想が出てこないのである。

 

彼は何が必要かや、何が効果的か。瞬間に判断し実行出来る。後は、クレイジーさ。であろう。

 

 

舩坂弘は、カーキ色の軍服を纏っている。軍帽は、戦闘帽をかぶっている。見た目はベースボールキャップと言ったほうが分かりやすいのではないだろうか。

顔は、典型的な日本人顔だ。目は、温和そうだが、目の奥には、生きるという意思が燃え広がっているように感じられる。

 

彼は、生存に特化している。

彼の異名は『不死身の分隊長』だ。

 

舩坂は、パラオ・アンガウル島での戦いに参加し、戦場で米軍の攻勢の前に、左大腿部に裂傷を負う。米軍の銃火の中に数時間放置された。だが、まだ生きていた。

 

船坂は、重傷を負っていても、拳銃の3連射で米兵を倒したり、左足と両腕を負傷した状態で、銃剣で1人刺し、短機関銃を手にしていたもう1人に投げて顎部に突き刺すなど、奮戦を続けていた。

 

舩坂は、死ぬ前にせめて敵将に一矢報いんと、米軍司令部への単身斬り込み、肉弾自爆を決意する。

 

手榴弾6発を身体にくくりつけ、拳銃1丁を持って、数夜這い続けることにより、前哨陣地を突破し、4日目には米軍指揮所テント群に、20メートルの地点にまで潜入していた。この時までに、負傷は戦闘初日から数えて大小24箇所に及んでいた。

 

また、長い間匍匐(ほふく)していたため、肘や足は服が擦り切れてボロボロになっており、さらに連日の戦闘による火傷と全身20箇所に食い込んだ砲弾の破片によって、さながら幽鬼か亡霊のようであったという。

 

舩坂は指揮官が、指揮所テントに集まる時を狙い、待ち構えていたのである。

 

舩坂は、ジープが続々と司令部に乗り付けるのを見、右手に手榴弾の安全栓を抜いて握り締め、左手に拳銃を持ち、全力を絞り出し、立ち上がった。

 

だが、失敗してしまった。

 

手榴弾の信管を叩こうとした瞬間、左頸部を撃たれて昏倒し、戦死と判断されたのだ。

 

だが、彼は生きていた。

 

起きた瞬間、周囲の医療器具を壊し、銃口を自分の身体を押し付け俺を殺せ!!と暴れ回った。

 

 

これだけでもわかるであろう。

 

正に、不死身。正に、日本兵の体現である。

 

彼は、生存する能力にたけ、根性があり、頭もよい。

 

全てが戦いに特化しているのだ。

 

 

彼らは、各自が戦闘のプロであり、特化しているものがある。

 

こんな、化け物たちに教わっているのだ。強くならないわけがない。

 

彼らの長所・能力・技能を吸収すると、一体どれだけ強くなるのだろう。

 

 

だが、もっと訓練が厳しくなったのである。

 

 

勿論、母は怒った。毎回ケガをして帰ってくるのだ。帰ってきた瞬間、玄関で寝てしまうのだ。

そして、見てしまった。手や足には沢山の傷跡があり、血がにじんでいるのを。

 

 

 

母は激怒した。

必ず「あの人の心がない、鬼のような軍人達を、除かなければならぬ」と決意した。

母には、ヒーロに必要な身体能力や頭脳が、どれだけ必要かなど、全く分からぬ。

母は、市役所職員である。書類をコピーし、夫と息子と楽しく暮して来た。

 

だがどうだ。彼が個性を発現してからは、ケガばかりである。一週間に一回は必ずケガをしているのだ。

 

だが、血が出るくらいではなかったし、何よりも彼の個性自体が、狙われやすいのである。

世界のシンパが必要とするもの。其れは指導者である。

その指導者を、出せる能力が狙われるのは当然である。

だからこそ、彼を鍛えるのはしょうがないと思っていたし、どうにか容認したのだ。

一週間に一回ということで妥協をしたのだ。

 

だがどうだ。

確かに一週間に一回だ。それに、年を重ねるごとに訓練が厳しくなるのも当然だと思う。

 

だが、血が出ているのだ。やり過ぎだ。本当にやり過ぎなのだ。

 

これ以上、母的には、もう無理だ。怖いのだ。恐ろしいのだ。

 

帰ってくるたび心配になる。ケガだらけだ。

手足を見ると、小さいが大量に傷跡がある。これ以上は作らせたくない。これ以上は見たくない。

 

だから交渉をした、訓練官7人に加え、各国のトップ7人と。

 

勝てるわけがない。

彼らとは、全てが違う。

男の価値観、命の価値観。軍人としての価値観。今の平和な世の中とは全く違う。

 

それに加えて、口のうまさも違う。

母は論争をしたことがない。平和に生活をし、結婚をし、子をもうけた。ただの一人の母親である。

 

だが彼らはどうだ。

小さい頃から、論弁を研究し、論争を重ね、人に議論で打ち勝ち、今の地位を築き上げた。

 

論争の専門家だ。

 

勝てるわけがない。

 

だが負けなかった。

気迫や今まで、全力で勉強した英語の知識、東條と船坂以外の日本語の技量不足さ。

 

全てが、母のアドバンテージになった。

 

だが、彼らは言った。

伝馬は、”オールマイトのような、人を安心させることができるヒーローになりたい”と。

”その為には、どんな試練にも打ち勝つ”と。

 

彼は、彼らの前で言ったのだ。と。

 

これは、彼が夢を叶える為の、試練だと。

 

じゃあ、やり過ぎと思う訓練だけはやめてくれと。だから訓練内容を教えろ。と

母は言う。

 

訓練内容は、元々の個性の能力の向上。ランニングや、筋トレ、サバイバル能力や足の音を出さない等の、ステルス能力の向上。サイレント・キリングなどの格闘戦術。

他にも、銃剣術や、様々な銃の整備、撃ち方。狙い方。捧げ銃などの敬礼の仕方。

 

それに、加え

 

遠くからのスナイパーでの狙い方。

痛みに耐える、耐拷問訓練。

双眼鏡の見方、使い方。

判断力を増加させる、対多数訓練。

その辺にあるものを使い、自分の姿を隠す方法。

虫を食べる。調理する。

 

其の他諸々・・・。

 

母は激怒した。何倍も激怒した。

必ず「あの人の心がない、悪鬼羅刹のような、男どもを除かなければならぬ」と決心した。

 

母は怒った。もう訳も分からないほど激怒した。

 

母の怒り様は、もはや人間ではない。彼女こそ鬼であった。

 

14人は、鋼の心を持つ猛者だ。

 

だが、怖気た。

今だけは子供の時に戻った時のような感覚だった。恐ろしかった。どんな時よりも恐ろしかった。

 

赤い津波どころではない。核爆発クラスの恐怖である。

いや、隕石クラスに匹敵する。

 

 

訓練は何倍も緩和された。

 

 




生まれつき傷が治りやすい体質であったことに助けられたようだ

舩坂弘

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