歴史はヒーローになれるのか   作:おたま

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凧が一番高く上がるのは、風に向かっている時である。風に流されている時ではない。

ウィンストン・チャーチル


青年は宣言した

大歴一家が寝静まったころ、リビングだけは、電気がついていた。

 

椅子に座っているのは、スーツや軍服を着た男たちである。

 

ウィンストン・チャーチル、アドルフ・ヒトラー、シャルル・ド・ゴール、ムッソリーニ。

ヨシフ・スターリンと東條英機。そしてフランクリン・ルーズベルトが座っている。

 

ホワイトボードには、いつものごとく、こう書かれていた。

 

第68回 大歴伝馬の個性を使う戦い方

 

と、日本語で書かれていた。

 

その下には、英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロシア語で書かれている。

 

まだ、続いていた。

 

ウィーン会議並みのグダグダである。

 

今回の議題はどうやら、各国の軍集団としての役割らしい。

 

その前に、彼の個性に分かったことがある。

 

彼は、軍人と政治家しか召喚出来ないのだ。

以前彼は、小学生の時、図工の宿題を教えてもらうために、ピカソを召喚しようとした。

贅沢すぎる人物を、宿題のためだけに召喚しようとしたのだ。

父が聞いたら気絶してしまうであろう。

 

だが、召喚出来なかった。それどころか、芸術家全般や歌手。今は亡き芸能人も召喚出来なかった。

 

なので、一つの仮説を立てた。

最初に召喚した人の、ジャンルしか召喚出来ないという仮説だ。

チャーチルは、政治家・軍人である。

 

 

 

其れしか召喚出来なかったのだ。

残念無念である。

 

 

 

話を戻そう。

各国家の役割を決めようとしていた。

確かにこの行為は、理にかなっている。

各軍が勝手に動いては、軍隊の意味がない。

 

日本はもう決まっているようだ。

救助、交渉、誘導の人命救助を優先にやるらしい。

そりゃそうだ。

 

ここは、日本だ。日本語を話せる人が救助をしなければ、かえって不安にさせてしまうだろう。

 

他の軍隊はどうするか、各国の特徴を整理してみよう。

 

個人的な見識である。異論は大いに認める。

 

イギリス軍:特に海と空に優れており、誉ある『ロイヤルネイビー』と、ドイツ軍との空戦『バトル・オブ・ブリテン』は有名であろう。陸軍は、元々が島国なので、規模は少ない。

有名な戦車は、チャーチル歩兵戦車。有名な戦闘機は、スピットファイア。有名な戦艦は、ウォースパイト 。

 

ドイツ国防軍:特に陸軍が優れており、フランスを1か月半で攻め落とし、独ソ戦でモスクワ目前まで迫ったのは、素直に称賛されるものであろう。

戦車、戦闘機、火器、全てにおいて平均以上。海軍以外は、トップクラスであろう。

有名な戦車は、VI号戦車 ティーガーI 。有名な戦闘機は、メッサーシュミット Bf109。有名な戦艦は、ビスマルク。

 

イタリア軍:特に海が優れている。だがそれ以外は、正直な所弱い。

資源がない。工業力がない。人がいない。

この七国の中では一番弱い。

だが、軍人の練度は高い。もともと警察国家だったから、軍人も相応の練度があった。

騎兵部隊や山岳部隊は、突出している。

有名な戦車は、P40。有名な戦闘機はフィアット CR.32。有名な戦艦はローマ。

 

フランス軍:防御線や、市街地戦に優れている。ドイツ国境に作られた、マジノ線は非常に有名であろう。マジノ線は、当時最強の防御力があり、最先端の要塞群であった。真面目に突撃をしてくれば、敵を一瞬で粉砕できたであろう。迂回されたら、元も子もないが。

レジスタンスは、非常に練度が高くあきらめない。個人的には、ノルマンディが終わった後、連合軍が陣地を作れた理由は、フランス全土でレジスタンスが、発生したお陰だと思っている。海と空はついで。

有名な戦車は、ルノー R35。有名な戦闘機は、MB.150。有名な戦艦は、リシュリュー。

 

アメリカ軍:資源、人、工業力。全てを持っている化け物。全てがトップクラス。

アメリカ軍だけいればいいんじゃないかな。

有名な戦車は、シャーマン戦車。有名な戦闘機は、P-51 マスタング。有名な戦艦は、ミズーリ。

 

赤軍(ソビエト軍):畑から人が取れる。陸はアメリカ以上。海は、大体旧型。空は普通に強い。

有名な戦車は、T-34。有名な戦闘機は、La-7。有名な戦艦は、オクチャブリスカヤ・レヴォリューツィヤ(十月革命)。

 

日本軍:全体的にバランスはとれている。工業力の低さを、工夫と練度でカバーしようとしていた。だから、練度は最強。陸軍は、強い部類。海軍も強い。空軍?ありませんよ。

有名な戦車は、九七式中戦車。有名な戦闘機は、零式艦上戦闘機。有名な戦艦は、大和。

 

 

陸軍順位:アメリカ=ソ連>ドイツ>日本>フランス=イギリス>イタリア。

 

海軍順位:アメリカ>イギリス>日本>フランス=イタリア>ドイツ>ソ連。

 

空軍順位:アメリカ>ドイツ>イギリス>ソ連=日本>フランス>イタリア。

 

異論は大いに認める。

 

彼らの議論は、紛糾を極めた。

 

 

そもそも役割とは何ぞやと、勝手に七つの派閥みたいに、勝手にやればいいではないかと。勿論統制は守り、伝馬の指示には従うが。

 

ここでの役割は、基本的に優先してやらなければならない事項である。

 

日本軍で例えよう。

日本軍は、戦闘に参加できるし、戦車を使ってもいいし、大和の46cm主砲で攻撃をしてもよい。

だが、それをする前に、ヴィランの被害にあった被害者を救助、救助の交渉、市民の誘導を終わらせなければ、戦闘には参加できない。

と言うことである。

 

役割は、大まかに7つ。

 

攻撃

 

防御

 

偵察

 

機動

 

救助

 

治安維持

 

遊撃

の7つである。

 

役割を説明せねばならない。

 

攻撃:その名の通り、ヴィランの相手をする役割である。

それゆえに被害も多いし、大量の装備をしながら、しっかりと準備をしなくてはならない。

 

防御:救助された被害者や、伝馬、チャーチルなどの各国のトップを守る役割である。

責任は重大である。防御に優れており、練度も高くないといけない。

 

偵察:ヴィランを見つけたり、被害者を発見する役割。

早く統制が取れ、練度も高くないといけない。

 

機動:戦車や機械化歩兵で、敵を包囲・撹乱する役割。

戦車に強く、柔軟な発想が必要となる。

 

救助:その名の通り、救助、交渉、誘導の人命救助を行う役割。

安心させながら、早く物事を行わなければならない。

 

治安維持:その名の通り、治安を維持する。警察が来る前まで、周りの治安を維持しながらヴィランを見張る。

優雅に、秩序を持っていなくてはならない。

 

遊撃:各役割の応援。臨機応変に対応し、支援する。

様々なことができなくてはならない。

 

この役割は結構早く決まった。

 

攻撃は、最も破壊力が多く、被害を少なく、敵を倒せる軍隊が最もよい。

そんな軍は、アメリカ軍しかいないであろう。

 

防御は、この中に一国だけ、もともと防御戦略で戦闘計画を構成していた軍がある。

フランス軍だ。

 

偵察は、早い戦車で技量が高いと、とても良い。

これに答えられるのは、もともと警察国家で全体的に技量が高く、とても速い豆戦車。C.V.33カルロ・ヴェローチェ=快速戦車がある、イタリア軍だ。

 

機動はこの中で戦車が最も有名で、威風堂々としている国は一つだけである。

ドイツ軍だ。

 

救助は、前述のとおり、唯一日本語が公用語である、日本軍が担当する。

 

治安維持は、秩序がなくてはならない。最も統制が取れているのは、大英帝国である。

 

遊撃は、全体的に兵が多い、ソビエト連邦が担当することとなった。

 

そして、伝馬の体力上昇によって、10000人から、15000人まで、耐えられる様になった。

 

だが、彼等が闇雲に召喚してしまったら、すぐに15000人を超えてしまうてあろう。

 

だから、各国家の上限人数を設定することとなった。

 

 

だが、その前に個性”歴史”の召喚の仕方を紹介しなければ。

 

まず、伝馬が、チャーチルやヒトラーなどの各国のトップを召喚する。

トップは勝手に出ることも自由に歩くこともできる。

そして、彼ら、国のトップが大将~少尉の士官を召喚。そして、士官が大尉~少尉などの尉官を召喚。そして尉官が曹長~伍長などの下士官を、下士官は兵長~二等兵の兵士を召喚する。

トップは、もちろんすべての軍人を召喚できる。伝馬はトップしか召喚出来ない。

 

軍隊と同じだ。

 

 

話を戻そう。何度も話がそれてしまい、申し訳ない。

 

兵は、攻勢を担当する、アメリカ・ドイツ・ソ連が3000人ずつを上限とし、その次に、イギリス・日本が2000人ずつ、イタリア・フランスが1000人配備された。

 

 

軍隊の準備は、大体が整った。

 

ドクトリンは、もうあきらめた。

各国の役割が終われば、勝手にヴィランを止めるために戦う。作戦はもちろん決めるが。

 

正に諸各国連合軍のようだ。

 

そして、最後の議論。

 

彼らの名称だ。

いちいちイギリス軍とか、赤軍とかいうと、だれの個性か全く分からないであろう。

だから統一する名前を決めることとなった。

 

 

『対ヴィラン戦闘協定列強諸各国軍団』(Army Corps of Strong Powers)

 

通称ACSPとなった。

 

 

 

彼、大歴伝馬は、15歳。受験期である。

身長は175cmとなり、父の身長に段々と近ずいてきた。

筋肉は、良い感じに鍛えられ、今風に言うと細マッチョだ。

 

彼は、オールマイトに紹介された高校。 雄英高校に受験をすることに決めた。

 

そして、受験の前日。

 

一番気が立つときにチャーチルから「20時に市民体育館の裏口に来てくれ。」と言われていた。

 

一番気が立っているときだ。

伝馬は、”なんで今呼ぶんだよ・・・”と、少し怒りながら、あずき色のジャージで体育館の裏側に行った。

 

裏側には、チャーチルがいた。スーツ姿ではない、燕尾服だ。どこで調達してきたのだろう。

 

チャーチルは、伝馬の手を引き、歩いていく。

 

歩いていると、衣裳部屋で、大礼服を着せられた。

大礼服(たいれいふく)は、明治時代から太平洋戦争の終戦まで使用されていた、日本におけるエンパイア・スタイルの宮廷服。いわゆる「大日本帝国の服装」における最上級の正装である。

 

近代の王族が着用するような宮廷服で、漆黒である。所々に美しい金の装飾があり、肩からは、紅白の美しい帯をかけている。胸の左右には、大きい、学生服のようなボタンがある。美しい、紅白のベルトもしている。

ズボンはシンプルで、黒い。

腰には、フランス式のサーベルの様な軍刀を差している。柄は黒い。鍔で、手や指を保護している。鍔の色は、金色だ。刀身は銀色に輝いている。鞘は、黒いが、花のような装飾があり、色は金色だ。

 

彼の高身長や、細いががっちりとした体つきで、とても様になっている。

 

伝馬は、”こんなに美しい服を纏うのだから、なんか凄いところに送られるのではないか”と、戦々恐々としていた。

 

そして、階段をあがれと、言われ階段を上がる。後ろからは、チャーチルが付いてくる。

 

階段を上がったら、そこには、赤絨毯が広がっていた。その先には、書見台があり、各国のトップが一堂に直立している。ルーズベルトは車いすだが。

チャーチルは進めと言った。

 

そして進んでいくと、ラッパの音がする。いや、ビューグルだ。First Callと呼ばれている短い曲を奏でた後、オー!!と声がした後、曲が奏でられた。

 

エドワード・エルガーが作曲した行進曲「威風堂々」だ。

軍楽隊が奏でるのに合わせて、様々な軍服を着た軍人が敬礼しながら、伝馬を見る。

 

伝馬は歩く。後ろからは、チャーチルが付いていく。

 

伝馬の足は震えていた。

 

そりゃあそうだろう。ただの中学生が突然こんなところで、まるでテレビみたいなことをやっているのだ。

 

だが、彼は強い。

震えながらも、一歩一歩確実に、堅実に歩いていく。

 

この強さに、皆が惹かれたのかもしれない。

 

曲調が静かになるころに、書見台の前まで来た。

 

伝馬は周りを見渡すと、様々な軍服を着た男達が立っている。胸につけられた勲章は、キラキラと輝いており、少し眩しい。

 

書見台には、本が置いてある。

本には、文章が書かれていた。

 

台本だ。

 

それには要約すると、ヒーローになるために、一生懸命頑張ると書かれていた。

 

だが、彼は、それを読んだ後、台本道理に読むのではなく、自分の言葉で話した。

 

覚悟は決まった。

 

『私、大歴伝馬は、ヒーロになりたい。私は自らの夢を叶えたい。

なのであなた方の力が必要だ。私は、あなた方が居なければ、只の無個性の人間だ。私は、あなた方がいるお陰で、ヒーローになれる。

だが決して、あなた方だけを頼ることは絶対にしない。私は貴方がたと共に戦う。町でヴィランと戦う。平原で戦う。森で戦う。丘で海岸で海で雪原で戦う。

我々は日々成長し、増す。

自信と力とをもって、空でも戦うのだ。

私は、皆を助ける。皆だ!みんな平等だ。ヒーローだって、市民だって、悪党だって、皆を助け、共に戦う。

私は、断じて夢をあきらめない!!私は、決してあきらめない!!!だから、ついてきてほしい。

そして、私の為に、今!!あなた方がいる!!何万という、歴戦の勇士が、私のために残ってくれているのだ!!

たとえもし、このようなことを私は信じないが、私が、幾つもの挫折を体験し、ヒーローと言う夢をあきらめそうになっても、あなた方が隣にいて、共に戦ってくれれば、諦めず戦い続られるであろう。ヒーローになるまで。世界が我々の存在を視認するまで。』

 

身ぶり手振り、自分のおもちゃを見せつけるように、楽しそうに話す。

だが声には、やり遂げるという意思が、ふつふつと燃え広がっているようだ。

目は、キリッとし、どこかのブルドックみたいに闘争心があふれている。

 

話し終わった後は、静かだった。誰も何も発しない。

”やってしまったか?”

と、伝馬はビクビクしたが、すぐに、やらかしていないということが、しっかりと分かったのだ。

 

そこにいるすべての人は敬礼をしていたのだ。士官は、美しい挙手の敬礼を、一般の兵は、一糸乱れぬ捧げ銃を。

 

伝馬は敬礼をすると、皆、直立した。

 

チャーチルは思った。

私はこれをやる。だからついてきてくれと、言っているだけなのに。

何故だろう。付いて行きたくなるのだ。

こう彼に言いたい。

言われなくても、私は君に付いて行くよ。どこまでも、君が望むところまで。地獄に進軍するなら、我々、ACSPは地獄の底で、ミノス王と一戦交えよう。と。

 

ヒトラーは思った。

私の演説の技を、殆ど盗んでいる。流石、チャーチルと私が見込んだ男だ。だが、ナチズムを継承させられなかったのは残念だ。もし、ナチズムを継承し、この技量で、ナチズムの演説を国際連合の真ん中ですれば、クーデターの一つや二つは、その日のうちに起こるであろうと。

どこまでも行こう。少年が夢を叶えても共に歩もう。と。

 

伝馬は帰っていく。今度は一人だ。しっかりと赤絨毯を踏みしめ、前を見据えている。

音楽がまた奏でられる。

 

伝馬はその曲を知らなかった。それは仕様がない。この曲は有名ではない。

 

曲は、ジョン・フィリップ・スーザの「忠誠」だ。

 

言葉はいらない。それを曲だけで証明した。

 

雄英高校受験まで、あと12時間。

 

士気は最高。

 

いつでもこい。




問題なく勝つことは単なる勝利だが、多くの苦労をして勝つことは歴史を作る。

アドルフ・ヒトラー

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